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第一章 四天王になるまで
第八話 決意のお話
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先ほどまでの楽しそうな雰囲気はなくなり、一気に空気が張り詰める。
「ウィディナ・フィー・ケルトクア……長いのでフィーさんと呼びましょうか。フィーさん、何故私が貴女にお話があるのか、分かりますよね?」
「ええと、四天王への、勧誘……?」
「はいそうです」
即答だった。
そして少し間を開け、エリヌ様は少し残念そうな顔をして話し始めた。
「この前の人間軍の侵攻により、残念なことに風が倒されてしまいました。なので新たなる四天王として貴女を迎え入れようと、そういうわけです」
今朝のカルラの話は本当だったらしい。四天王がやられたということは相当やばい状況だったのだろう。しかし勇者の名前が出てこなかったため不意打ちでもされたのだろうか。
そしてその欠けた1人を埋めるべく、人を探していたと。
しかしわからないことがある。それは、
「――でも何で私なんですか? もっと私よりも優秀な人がいると思うんですけど……」
「あら、やはりそこが気になっちゃいますか」
わかりますわかります、とエリヌ様は微笑んだ。
すると魔法陣を展開し、そこに手を入れた。とぷんと音がし、そこを中心に波紋が広がる。おそらく異空間収納魔法だろう。そしてそこから何かを取り出す。
ゴトリと重たい音が鳴る。机に置かれたのは先程の音に釣り合わない大きさの、金の台座に乗った緑色の宝玉だった。中で光が渦巻いている。
「これは『颱風の眼玉』という宝玉です。今は亡き初代魔王様が作られた、『七魔宝玉』の内の一つです」
『七魔宝玉』、前に授業で習ったことがある。先程エリヌ様が言った通り、初代魔王が作ったもので、7つの幻素である火、水、風、土、雷、聖、魔にそれぞれ対応した7つの魔石のことだ。それを所持するだけでその属性の魔法適正及び魔法威力が大幅に上がるという恐ろしいものだ。これを持つだけでその属性のほぼ全ての魔法が使えるようになってしまうほどの効果がある。
実はその効果のほかにもう1つ効果があるらしいが、先生からは教わっていない。
「この宝玉は一定量の魔力を流すと、ある特殊な風を放ちます」
「特殊な風……。何か関係があるんですか?」
「ええ。その風は一部の人にしか反応しない風なのです。どういう人に反応するのかは分かりませんが、四天王になる資格がある人だそうです」
「ほう……。どんな風なんだ」
興味を持った声を放った先生を見て、エリヌ様はちょっと驚いた顔をした。
「あら、先生も気になりますか? では実際にやってみましょう」
ニコニコしながら宝玉に触れると、宝玉が光った。
「っ!?」
とたんに風がきた。暖かくも、涼しくもない風。そして心を包むような風。
そして私はこの風を知っている。そう、この風は、
「今朝の風!?」
「ん? おいウィディナ、風きたか?」
「ふふふ、先生が分からないのはしょうがないですよ。
そうです。今朝この風を放ちましてね? そうしたら貴女に反応したんですよ。先生が感じないのは風の適性がないということです」
「くっ、何か納得がいかないが……」
という先生の目の前でエリヌ様が宝玉をしまう。
すると私の方を真っ直ぐ見て、
「はい、貴女の質問には答えましたよ。次は貴方が答える番です。私と一緒に魔王城へ行きますか? それとも……ここに残りますか?」
「――っ」
私は、ここに残るのは避けたい。先程のことがあったばかりだ。元はと言えばこの人が原因だったんだけどね。でも話してみたら悪い人じゃなかった。ここで責められていじめられるよりかは、私は憧れの四天王になりたい。
私はもっと強くなりたい。かっこよくなりたい。憧れるようになりたい。
私は――
「――私は四天王になりたいです!」
「……それがお前の選択か、ウィディナ」
「ええ、彼女はそれを選びましたよ? 先生」
ただ、これからどうなるかは分からない。四天王としてうまくやっていけるのか。戦いに負けて死ぬのか。それとも耐えられなくなって辞めるのか。
だけど私は四天王になることを選んだ。
「ではフィーさん。魔王城に行って魔王様に許可をもらえば貴女は正式に四天王です。これからよろしくお願いしますね」
「は、はいっ!」
「はい、いい返事です。では明日の朝、ここに迎えに来ますね」
……え? 明日の朝? 今から行くんじゃないの?
「え、あの、今からじゃないんですか……?」
するとエリヌ様はにっこり笑って、
「ええ、今日は最後の授業を受けて、そして先生との強化練習という理由で学校の寮で一泊してくださいね」
「そんな……」
「あ? ウィディナ私の授業が嫌か?」
「い、いえ」
次はお弁当を食べて、その後はカロナ先生の剣術指導だ。
「てか今日の指導って剣のランキング決定戦じゃん……」
「あぁ、覚えていたか。今日は順位戦だからお前カルラとやれるぞ」
「ええっ」
先生さっきカルラといろいろあったって察してたじゃん……。ずらしてくれたりしないの……。
ていうより今日はランキング決定戦。その名の通り剣術の順位を決める。
カルラは剣術第一位。そして私は第二位。順位戦は挑上試合方式(ちょうじょうしあいほうしき)といって、偶数順位の人は1つ上の順位の人に試合を挑み、もし勝てたのなら順位を入れ替えるという方式が採用されている。
だから私は三位とカルラと戦う。
「まぁ、剣術の試合ですか! フィーさんの力を見させてもらいたいですね」
「あぁ、お前が見るというのなら皆気合が入るだろう。ウィディナ、今後のことも考えてお前はカルラに勝たねばならんぞ?」
「ふふーん、エリヌ様がみているのなら勝てますよぉ。まぁ今回勝つためにとっておきがありますからねぇ!」
「ほう、楽しみにしておこう」
現時点でそのとっておきを知っている人はいない。親ですら知らないからこれでも議選には勝てるだろう。
あぁ、今からとっても楽しみだなぁ!
そしてこの試合に勝って、四天王になるんだ……!
「ウィディナ・フィー・ケルトクア……長いのでフィーさんと呼びましょうか。フィーさん、何故私が貴女にお話があるのか、分かりますよね?」
「ええと、四天王への、勧誘……?」
「はいそうです」
即答だった。
そして少し間を開け、エリヌ様は少し残念そうな顔をして話し始めた。
「この前の人間軍の侵攻により、残念なことに風が倒されてしまいました。なので新たなる四天王として貴女を迎え入れようと、そういうわけです」
今朝のカルラの話は本当だったらしい。四天王がやられたということは相当やばい状況だったのだろう。しかし勇者の名前が出てこなかったため不意打ちでもされたのだろうか。
そしてその欠けた1人を埋めるべく、人を探していたと。
しかしわからないことがある。それは、
「――でも何で私なんですか? もっと私よりも優秀な人がいると思うんですけど……」
「あら、やはりそこが気になっちゃいますか」
わかりますわかります、とエリヌ様は微笑んだ。
すると魔法陣を展開し、そこに手を入れた。とぷんと音がし、そこを中心に波紋が広がる。おそらく異空間収納魔法だろう。そしてそこから何かを取り出す。
ゴトリと重たい音が鳴る。机に置かれたのは先程の音に釣り合わない大きさの、金の台座に乗った緑色の宝玉だった。中で光が渦巻いている。
「これは『颱風の眼玉』という宝玉です。今は亡き初代魔王様が作られた、『七魔宝玉』の内の一つです」
『七魔宝玉』、前に授業で習ったことがある。先程エリヌ様が言った通り、初代魔王が作ったもので、7つの幻素である火、水、風、土、雷、聖、魔にそれぞれ対応した7つの魔石のことだ。それを所持するだけでその属性の魔法適正及び魔法威力が大幅に上がるという恐ろしいものだ。これを持つだけでその属性のほぼ全ての魔法が使えるようになってしまうほどの効果がある。
実はその効果のほかにもう1つ効果があるらしいが、先生からは教わっていない。
「この宝玉は一定量の魔力を流すと、ある特殊な風を放ちます」
「特殊な風……。何か関係があるんですか?」
「ええ。その風は一部の人にしか反応しない風なのです。どういう人に反応するのかは分かりませんが、四天王になる資格がある人だそうです」
「ほう……。どんな風なんだ」
興味を持った声を放った先生を見て、エリヌ様はちょっと驚いた顔をした。
「あら、先生も気になりますか? では実際にやってみましょう」
ニコニコしながら宝玉に触れると、宝玉が光った。
「っ!?」
とたんに風がきた。暖かくも、涼しくもない風。そして心を包むような風。
そして私はこの風を知っている。そう、この風は、
「今朝の風!?」
「ん? おいウィディナ、風きたか?」
「ふふふ、先生が分からないのはしょうがないですよ。
そうです。今朝この風を放ちましてね? そうしたら貴女に反応したんですよ。先生が感じないのは風の適性がないということです」
「くっ、何か納得がいかないが……」
という先生の目の前でエリヌ様が宝玉をしまう。
すると私の方を真っ直ぐ見て、
「はい、貴女の質問には答えましたよ。次は貴方が答える番です。私と一緒に魔王城へ行きますか? それとも……ここに残りますか?」
「――っ」
私は、ここに残るのは避けたい。先程のことがあったばかりだ。元はと言えばこの人が原因だったんだけどね。でも話してみたら悪い人じゃなかった。ここで責められていじめられるよりかは、私は憧れの四天王になりたい。
私はもっと強くなりたい。かっこよくなりたい。憧れるようになりたい。
私は――
「――私は四天王になりたいです!」
「……それがお前の選択か、ウィディナ」
「ええ、彼女はそれを選びましたよ? 先生」
ただ、これからどうなるかは分からない。四天王としてうまくやっていけるのか。戦いに負けて死ぬのか。それとも耐えられなくなって辞めるのか。
だけど私は四天王になることを選んだ。
「ではフィーさん。魔王城に行って魔王様に許可をもらえば貴女は正式に四天王です。これからよろしくお願いしますね」
「は、はいっ!」
「はい、いい返事です。では明日の朝、ここに迎えに来ますね」
……え? 明日の朝? 今から行くんじゃないの?
「え、あの、今からじゃないんですか……?」
するとエリヌ様はにっこり笑って、
「ええ、今日は最後の授業を受けて、そして先生との強化練習という理由で学校の寮で一泊してくださいね」
「そんな……」
「あ? ウィディナ私の授業が嫌か?」
「い、いえ」
次はお弁当を食べて、その後はカロナ先生の剣術指導だ。
「てか今日の指導って剣のランキング決定戦じゃん……」
「あぁ、覚えていたか。今日は順位戦だからお前カルラとやれるぞ」
「ええっ」
先生さっきカルラといろいろあったって察してたじゃん……。ずらしてくれたりしないの……。
ていうより今日はランキング決定戦。その名の通り剣術の順位を決める。
カルラは剣術第一位。そして私は第二位。順位戦は挑上試合方式(ちょうじょうしあいほうしき)といって、偶数順位の人は1つ上の順位の人に試合を挑み、もし勝てたのなら順位を入れ替えるという方式が採用されている。
だから私は三位とカルラと戦う。
「まぁ、剣術の試合ですか! フィーさんの力を見させてもらいたいですね」
「あぁ、お前が見るというのなら皆気合が入るだろう。ウィディナ、今後のことも考えてお前はカルラに勝たねばならんぞ?」
「ふふーん、エリヌ様がみているのなら勝てますよぉ。まぁ今回勝つためにとっておきがありますからねぇ!」
「ほう、楽しみにしておこう」
現時点でそのとっておきを知っている人はいない。親ですら知らないからこれでも議選には勝てるだろう。
あぁ、今からとっても楽しみだなぁ!
そしてこの試合に勝って、四天王になるんだ……!
応援ありがとうございます!
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