赤い目の猫 情けは人の為ならず

ティムん

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第九話 お忍び

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 おっと、うだうだしているうちに結構時間が経っちまったみてぇだ。太陽は相も変わらず分厚い雲の鎧を纏ったままだが、内側から鎧を赤く染めている。黒と赤が入り交じったような空はどことなく気味がわりぃ。

 その時、分厚い鎧に切れ目が生まれ、そこから赤の光が零れ落ちて道を照らした。照らされた道には五、六才の女の子。さっき、雑貨屋の婆さんにブレスレットの作り方を習おうとしていた子だ。

 手には何やら小さな紙袋を持っている。あれか、婆さんに習って作ったブレスレットか。でもそれならなんで紙袋なんかに? 腕に付けて帰りゃあいいだろうに。何より奇妙なのはその表情だ。雑貨屋で見せた無邪気な顔はそこにはなく、接着剤で固められたように硬い表情をしている。

 ……やる事もねぇし、ついて行ってみるか。もしかすると家が見つかるかもしれねぇしな。

 俺はストーキングを開始した。抜き足差し足忍び足。まぁ、そんなことする必要ねぇんだけどな。何故かって? そりゃ、俺が猫だからさ。俺の足にゃ立派な肉球ってぇ消音グッズがあるんだから、音は鳴らねぇのさ。

 潜入スパイの気分で楽しくストーキングをすること五分ほど。女の子はボロっちいアパートに入っていった。錆び付いた階段を上り、所々塗装が剥げた廊下を歩き、二〇三と書かれたプレートのある扉の前で足を止めた。
 ポケットをまさぐり、鍵を取り出すとガチャりと鈍い音を立てて鍵が開く。

 あぁ、ダメだな。今の音からするに鍵穴が錆びてやがる。まったく、ちゃんと手入れしないと開かなくなっちまうぞ? 手入れしてやりてぇが、猫の俺じゃ無理だよなぁ。早めにどっかの鍵屋にでも頼んで手入れして貰えよ?
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