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第一章 幼少期
第十二話 属性眼
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「今の……私が……?」
ポツリとセリアの声が響く。
そっか。僕はあんな強力な魔法をソルがあっさりと消したことに驚いていたけど、セリアは自分があんなに強力な魔法を使えるなんて思って無かったから、そこに驚いているんだろう。
「勘違いすんなよ。今のは魔法とは呼べねぇ。キチンと自分で制御して、やっと魔法と呼べるんだ。……あぁ? テメェセリア、目どうした?」
ソルに言われて気づく。セリアの目は元々青色だったはずなのに、今は翡翠色に変化している。
「目……?」
「まさかな……次は土属性の魔法を使え」
ソルはセリアにそう命じた後、僕に教えてくれた適切な魔力量をはかる方法をセリアにも教えていた。
「じゃあ教えた通りにやってみろ。そうすりゃ制御出来るはずだ」
「ん……」
セリアは拳ほどの大きさの土の塊を発生させた。さっきの魔法とは違い制御出来ているようで、自分の周りをくるくると回らせて遊んでいた。
「オレの気のせいか……それともこの程度じゃまだ出ねぇのか……。おい、魔力はどれだけ残ってる?」
「……半分?」
「それだけあれば多分いけるだろ。残りの魔力ほとんど全部使って土魔法使ってみろ」
「……? わかった」
小首を傾げつつもセリアは素直に指示に従う。相当な魔力を使うからか、しばらく目をつぶって集中しているようだった。数十秒経ち、目を開くとセリアの目の前に巨大な岩が現れ、前に倒れ込んだ。
巻き上げられた砂埃を僕が風魔法で散らすと、セリアが少し目を見開いていた。
「やっぱりか……チッ」
ソルの舌打ちの意味は僕にもわかった。セリアの目の色は琥珀色・・・に変化していたのだ。
『ねぇ、ソル。これって――』
「あぁそうだ。十中八九、属性眼だろうな」
そう、セリアの目の色の変化は属性眼と全く同じなのだ。まだ風魔法と土魔法しか試していないとはいえ、魔法を使った後で目の色が変化するのは属性眼くらいしかない。
『魔王だけが使えたっていうヤツだよね』
「あぁ。まさか人族で発現するやつがいるとはな……」
『これ、不味いよね』
「あぁ? 何がだ?」
『普通の人は属性眼は魔王しか使えないって思ってるわけでしょ? だったらセリアは恐れられるんじゃ……』
恐れられるだけではなく、迫害され、最悪殺される可能性もあるだろう。
人とはただでさえ自分と違うものを怖がる生き物だ。なのにそのうえ、恐怖の象徴である魔王の特徴を持つとなると――
「それの何が問題だ? あのガキはお前と無関係じゃねぇか。あのガキがどうなろうと、お前には関係ない。そうだろ?」
『そうだけど、全く見知らぬ仲ってわけじゃないんだ。見て見ぬふりはできないよ』
「けっ、お人好しが。言っとくがこっちの世界はお前の世界とは違うんだ。そんな考えで色んなことに首を突っ込んでたら、死ぬぞ」
『うん、肝に銘じとくよ。それでもこの考えは捨てられない。命を奪う仕事、アサシンに生まれたからこそ、助けられる命は助けたいんだ』
それが、命を奪ったことのある僕の義務のようなものだろう。贖罪という訳では無いけれど、そうしないと僕が僕ではなく、殺人鬼になってしまう気がするから。
「チッ、めんどくせぇヤツだ」
『ごめんね、ソルには迷惑をかけるよ』
「……? ソーマと話してる……?」
僕とソルが話しているとセリアが声をかけてきた。
セリアの目の色はもう元に戻っているようで、綺麗な青の目だった。
「あぁそうだ。テメェの眼について話してたんだよ」
「眼……?」
『ソル、ここからは僕が説明するよ』
そう言い僕はソルと入れ替わる。
「うん、セリアの眼には少し問題があってね」
「……ソーマ……?」
「うん、セリアの眼については僕が説明するよ。セリアの眼はね、属性眼と呼ばれる物らしいんだ」
「属性眼……?」
反応からして、セリアは属性眼のことを知らないようだ。
「そう、属性眼。とても強い魔法が使える人の眼は属性眼になってしまうんだ。それでね、属性眼っていうのは魔法を使った時にその属性の色に眼の色が変化してしまう眼のことなんだ」
「セリアの眼……色変わる……?」
「そうだよ。今は元に戻っているけど、さっきまでセリアの眼は琥珀色になってたんだ」
「……土魔法使ったから……?」
セリアは賢いようで、僕の話をしっかり理解しているようだった。
「うん、その通り。でもね、この属性眼はね、持っている人が魔王しかいないんだ。だから属性眼は決して悪いものじゃないのに皆に怖がられてしまうんだ」
流石に小さな女の子を怯えさせることは出来ないので、少しぼかして説明する。迫害されるなんて言えないしね。
「それは……嫌……」
「そうでしょ? だからこの眼の事は僕達だけの秘密にしよう」
「……嫌……」
返ってきたのは僕の予想に反して、拒否する言葉だった。
「……どうしてかな?」
「魔法……パパとママに見せたい……」
そうか、それが魔法を覚えたい理由だったのか。
(ソル、属性眼を使わないように魔法を使う方法ってないの?)
『あるぞ。だが魔法を完璧に制御する必要があるから難易度が高い。しかも威力が落ちる』
(それでもいいから教えてあげてよ)
『チッ、めんどくせぇが約束だからな。仕方ねぇ』
ソルは意外と優しいのかな? 魔法を教えるようには頼んだけど、今回のはその範囲外だろうに……
「セリア、属性眼を使わずに魔法を使う方法があるみたいなんだ」
「……パパとママに魔法見せれる……?」
「そうだよ。ただその方法はとても難しいんだ」
「それでもいい……頑張る……」
「そっか。それじゃあ教えてあげるよ。って言っても教えるのはソルなんだけどね」
僕がそう言った時、セリアのお腹から、きゅぅぅと可愛らしい音が響いた。
「ははは、もうお昼だもんね。母さんがセリアと一緒に食べなさいってサンドイッチを作ってくれたんだ。一緒に食べよう」
「ん……」
僕達はソルに頼んで作ってもらった石で出来た椅子に座り、サンドイッチを食べる。
サンドイッチは甘辛いタレで炒めた牛肉とシャキシャキとしたレタスを挟んだものや、蜂蜜をかけた果物を挟んだデザートまであった。
「ん……美味しい……」
セリアは少しだけ顔を綻ばせる。そして凄い勢いでサンドイッチを食べ尽くす。食べ終わったあとは自分の手をじっと見つめる。
結構な量があったはずだが、セリアは少し物足りないようだ。
「……セリア、僕の分も食べる?」
いつも無表情なセリアが美味しそうに食べていたのがなんだか嬉しくてセリアにサンドイッチを差し出す。
「……いいの……?」
「うん、セリアは今日頑張ったからね。そのご褒美だよ」
「……ありがと……」
セリアは少しはにかむと、今度はゆっくり味わうようにサンドイッチを食べる。僕はセリアが食べ終わるまでその様子を眺めていた。
食べ終わると今度は僕の魔法の練習をする。セリアはしばらく見学だ。
今日は無属性魔法の身体強化を試してみようと思う。《魔道の極め方》によるとイメージは体に流れる魔力の量を意図的に増やし、その魔力を体に与えていく感じらしい。他の魔法とは違い、魔力を一箇所に集め、属性を変える必要はないらしい。
「よし、やってみようか」
体に流れる魔力の量を増やし、その魔力が毛細血管に流れる血液のように体のあらゆるところを巡っていき、細胞の一つ一つに力を与えていくのを想像する。すると体がじんわりと温かくなり、力がみなぎってくる。
「……できたのかな?」
魔法が成功したのかを確かめるために、軽くジャンプしてみる。すると五メートルはあるであろう木を軽々と超えてしまった。
『……相変わらず規格外な野郎だ』
ソルに呆れたように言われてしまった。セリアの方を見ると、わかりづらいが少し口が開いているので驚いているようだった。
ポツリとセリアの声が響く。
そっか。僕はあんな強力な魔法をソルがあっさりと消したことに驚いていたけど、セリアは自分があんなに強力な魔法を使えるなんて思って無かったから、そこに驚いているんだろう。
「勘違いすんなよ。今のは魔法とは呼べねぇ。キチンと自分で制御して、やっと魔法と呼べるんだ。……あぁ? テメェセリア、目どうした?」
ソルに言われて気づく。セリアの目は元々青色だったはずなのに、今は翡翠色に変化している。
「目……?」
「まさかな……次は土属性の魔法を使え」
ソルはセリアにそう命じた後、僕に教えてくれた適切な魔力量をはかる方法をセリアにも教えていた。
「じゃあ教えた通りにやってみろ。そうすりゃ制御出来るはずだ」
「ん……」
セリアは拳ほどの大きさの土の塊を発生させた。さっきの魔法とは違い制御出来ているようで、自分の周りをくるくると回らせて遊んでいた。
「オレの気のせいか……それともこの程度じゃまだ出ねぇのか……。おい、魔力はどれだけ残ってる?」
「……半分?」
「それだけあれば多分いけるだろ。残りの魔力ほとんど全部使って土魔法使ってみろ」
「……? わかった」
小首を傾げつつもセリアは素直に指示に従う。相当な魔力を使うからか、しばらく目をつぶって集中しているようだった。数十秒経ち、目を開くとセリアの目の前に巨大な岩が現れ、前に倒れ込んだ。
巻き上げられた砂埃を僕が風魔法で散らすと、セリアが少し目を見開いていた。
「やっぱりか……チッ」
ソルの舌打ちの意味は僕にもわかった。セリアの目の色は琥珀色・・・に変化していたのだ。
『ねぇ、ソル。これって――』
「あぁそうだ。十中八九、属性眼だろうな」
そう、セリアの目の色の変化は属性眼と全く同じなのだ。まだ風魔法と土魔法しか試していないとはいえ、魔法を使った後で目の色が変化するのは属性眼くらいしかない。
『魔王だけが使えたっていうヤツだよね』
「あぁ。まさか人族で発現するやつがいるとはな……」
『これ、不味いよね』
「あぁ? 何がだ?」
『普通の人は属性眼は魔王しか使えないって思ってるわけでしょ? だったらセリアは恐れられるんじゃ……』
恐れられるだけではなく、迫害され、最悪殺される可能性もあるだろう。
人とはただでさえ自分と違うものを怖がる生き物だ。なのにそのうえ、恐怖の象徴である魔王の特徴を持つとなると――
「それの何が問題だ? あのガキはお前と無関係じゃねぇか。あのガキがどうなろうと、お前には関係ない。そうだろ?」
『そうだけど、全く見知らぬ仲ってわけじゃないんだ。見て見ぬふりはできないよ』
「けっ、お人好しが。言っとくがこっちの世界はお前の世界とは違うんだ。そんな考えで色んなことに首を突っ込んでたら、死ぬぞ」
『うん、肝に銘じとくよ。それでもこの考えは捨てられない。命を奪う仕事、アサシンに生まれたからこそ、助けられる命は助けたいんだ』
それが、命を奪ったことのある僕の義務のようなものだろう。贖罪という訳では無いけれど、そうしないと僕が僕ではなく、殺人鬼になってしまう気がするから。
「チッ、めんどくせぇヤツだ」
『ごめんね、ソルには迷惑をかけるよ』
「……? ソーマと話してる……?」
僕とソルが話しているとセリアが声をかけてきた。
セリアの目の色はもう元に戻っているようで、綺麗な青の目だった。
「あぁそうだ。テメェの眼について話してたんだよ」
「眼……?」
『ソル、ここからは僕が説明するよ』
そう言い僕はソルと入れ替わる。
「うん、セリアの眼には少し問題があってね」
「……ソーマ……?」
「うん、セリアの眼については僕が説明するよ。セリアの眼はね、属性眼と呼ばれる物らしいんだ」
「属性眼……?」
反応からして、セリアは属性眼のことを知らないようだ。
「そう、属性眼。とても強い魔法が使える人の眼は属性眼になってしまうんだ。それでね、属性眼っていうのは魔法を使った時にその属性の色に眼の色が変化してしまう眼のことなんだ」
「セリアの眼……色変わる……?」
「そうだよ。今は元に戻っているけど、さっきまでセリアの眼は琥珀色になってたんだ」
「……土魔法使ったから……?」
セリアは賢いようで、僕の話をしっかり理解しているようだった。
「うん、その通り。でもね、この属性眼はね、持っている人が魔王しかいないんだ。だから属性眼は決して悪いものじゃないのに皆に怖がられてしまうんだ」
流石に小さな女の子を怯えさせることは出来ないので、少しぼかして説明する。迫害されるなんて言えないしね。
「それは……嫌……」
「そうでしょ? だからこの眼の事は僕達だけの秘密にしよう」
「……嫌……」
返ってきたのは僕の予想に反して、拒否する言葉だった。
「……どうしてかな?」
「魔法……パパとママに見せたい……」
そうか、それが魔法を覚えたい理由だったのか。
(ソル、属性眼を使わないように魔法を使う方法ってないの?)
『あるぞ。だが魔法を完璧に制御する必要があるから難易度が高い。しかも威力が落ちる』
(それでもいいから教えてあげてよ)
『チッ、めんどくせぇが約束だからな。仕方ねぇ』
ソルは意外と優しいのかな? 魔法を教えるようには頼んだけど、今回のはその範囲外だろうに……
「セリア、属性眼を使わずに魔法を使う方法があるみたいなんだ」
「……パパとママに魔法見せれる……?」
「そうだよ。ただその方法はとても難しいんだ」
「それでもいい……頑張る……」
「そっか。それじゃあ教えてあげるよ。って言っても教えるのはソルなんだけどね」
僕がそう言った時、セリアのお腹から、きゅぅぅと可愛らしい音が響いた。
「ははは、もうお昼だもんね。母さんがセリアと一緒に食べなさいってサンドイッチを作ってくれたんだ。一緒に食べよう」
「ん……」
僕達はソルに頼んで作ってもらった石で出来た椅子に座り、サンドイッチを食べる。
サンドイッチは甘辛いタレで炒めた牛肉とシャキシャキとしたレタスを挟んだものや、蜂蜜をかけた果物を挟んだデザートまであった。
「ん……美味しい……」
セリアは少しだけ顔を綻ばせる。そして凄い勢いでサンドイッチを食べ尽くす。食べ終わったあとは自分の手をじっと見つめる。
結構な量があったはずだが、セリアは少し物足りないようだ。
「……セリア、僕の分も食べる?」
いつも無表情なセリアが美味しそうに食べていたのがなんだか嬉しくてセリアにサンドイッチを差し出す。
「……いいの……?」
「うん、セリアは今日頑張ったからね。そのご褒美だよ」
「……ありがと……」
セリアは少しはにかむと、今度はゆっくり味わうようにサンドイッチを食べる。僕はセリアが食べ終わるまでその様子を眺めていた。
食べ終わると今度は僕の魔法の練習をする。セリアはしばらく見学だ。
今日は無属性魔法の身体強化を試してみようと思う。《魔道の極め方》によるとイメージは体に流れる魔力の量を意図的に増やし、その魔力を体に与えていく感じらしい。他の魔法とは違い、魔力を一箇所に集め、属性を変える必要はないらしい。
「よし、やってみようか」
体に流れる魔力の量を増やし、その魔力が毛細血管に流れる血液のように体のあらゆるところを巡っていき、細胞の一つ一つに力を与えていくのを想像する。すると体がじんわりと温かくなり、力がみなぎってくる。
「……できたのかな?」
魔法が成功したのかを確かめるために、軽くジャンプしてみる。すると五メートルはあるであろう木を軽々と超えてしまった。
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