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第一章 幼少期

第三十九話 防衛策

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 セリアへの魔法の指導を早めに切り上げ、僕は一度家に帰ってきていた。と言ってもセリアに教えていたのはソルなので、僕はその間魔物の対策を考えていたのだ。

「色々思いついたことはあるんだけど、魔法が使えない今の僕じゃできないから……母さんに協力してほしいんだ」

 僕は家で父さんの武器や防具の整備をしていた母さんに話しかける。思いついた作戦は魔法が無くては実現が難しい。


「ふふふ~いいわよー。お母さんは何をすればいいのかしら~」
「村の柵にちょっと細工をしてほしいんだ」
「ん~それなら、お父さんの許可が必要ね~。お父さんは村の防衛を任せられてるから~」

 父さんが村の防衛を? 知らなかったなぁ。でも父さんはAランク冒険者だったし、不思議じゃないね。

「じゃあ父さんのところに行かないと……父さんは今どこに?」
「今は村の男の人たちを集めて魔物の襲撃について話しているはずよ~。だから村長さんのお家にいるんじゃないかしら~」
「それじゃあ今行っても無駄かな……」

 大事な話の途中だと邪魔になるだろうし……なるべく早い方がいいんだけど、魔物が来るまではまだ数日はあるはずだし大丈夫かな。
 ソルの話だとフラムは重症らしいから、魔物にまともに指示を出せるようになるには数日はかかるらしい。禁術とは魂だけでなく肉体も大いに傷つけるそうだ。

「そろそろ終わってるはずだし、大丈夫よ~。ほら、行きましょ~。あ、魔法が必要なのよね~? だったらこれ持っていかないと~」

 母さんはそう言って部屋に引っ込み、大きな杖を持ってきた。先端に紫の宝石がはめ込まれている、いかにも魔法使いの杖というようなものだ。
 母さんはその杖を左手に持ち、右手で僕の手をとる。そのまま村長さんの家に向かって歩いていく。

 村長さんの家に着くと、母さんの言った通り話が終わったのか父さんと村の男達が出てきた。

「ん? どうしたんだ? ソーマとソレイユ、二人揃ってこんなところに。杖まで持ってきて」
「ちょっと魔物対策で思いついたことがあってね~。村の柵に仕掛けをする許可を貰いに来たのよ~」

 父さんは僕の方をちらりと見ると納得したようだった。僕が言い出したことだと気がついたんだろう。

「面白そうだな。俺も手伝う」

 父さんは少年のような笑顔を浮かべ、そんなことを言い出す。

「今からソレイユと村の柵に魔物対策を施してくる、みんなそれぞれ魔物の襲撃に備えろよ」

 父さんは振り返って村の男達に向かってそう言う。

「わかりました、スーノさん。村の柵の方はよろしくお願いします。俺達はまだ魔物の襲撃を知らないやつらに教えてきますんで!」
「おう! よろしく頼む!」

 男達は父さんに敬語を使っていた。やっぱりAランク冒険者の父さんは村でも一目置かれているみたいだ。

「よし、それじゃあ行くか。ソーマ、ソレイユ」
「うん!」
「ええ行きましょう~」
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