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第一章 幼少期
第八十三話 村の危機
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時はフラム達との戦闘が終わった頃までさかのぼる。
土煙が晴れると、そこにはフラム達の姿は無かった。身動きも出来ないようにしたし、魔法を使う暇もなかったはず。なら、どうやって逃げたんだ……?
『魔道具でも、使ったのかも、しれねぇな。かなり貴重で、しかも使い捨てに、なるが、転移できる、魔道具が、あったはずだ』
魔法のダメージがまだ残っているのか、ソルが苦しそうに途切れ途切れで言う。でも、冷たいようだけど、今はそれにかまっている余裕はない。
僕はソルに質問を重ねる。
「その魔道具で転移できる距離は? まだ近くにいる可能性は?」
『転移出来る距離は、物によるがざっと数千キロメートルは可能だ。近くにいるなんて淡い希望は抱かない方がいい』
完全に逃げられたってわけか。くそっ! 確実に仕留めるつもりだったのに。
だが、今はそんなことを悔やんでいる場合じゃない。今こうしている間にも、地下を通って魔物が村を襲っているかもしれないのだ。
「ソル、この穴、村のどこに繋がっていると思う?」
確実なのはこの穴を通って魔物を追いかけることだけど、それだとどうしても遅くなる。デコボコで動きづらい穴の中を通るよりも、地上を走った方が早いのは当然だ。
『フラムの狙いはオレ達だ。そしてフラムはオレ達がまだ怪我をしたままだと思っていた』
フラムは、僕達を殺すために作らせた穴だと言っていた。ってことは、穴は僕達がいると思われる場所に繋がっているはずだ。怪我人である僕達がいる場所。
ということは――
「避難所か!」
『あぁ、そうだろうな。急ぐぞ、あのガキが危ねぇ』
僕はフューを頭に乗せると、村に向かって走り出した。急がないと。地下からの襲撃は想定していなかった。
母さんが村の周りの落とし穴を水で満たしてくれたけど、この穴は落とし穴よりも深い。ということは水の影響を受けていないということだ。
戦闘を開始してから、かなりの時間がたっている。実際には、戦闘より少し前から穴を掘っていたと考えられるので、かれこれ数時間は穴を掘り続けていたはずだ。
ここから村まではかなりの距離があるが、それだけの時間掘り続けていたとなると、もうほとんど時間は残されていないだろう。穴を掘った魔物の中には、魔法が使える魔物もいるだろうし、既に村に着いてしまっているかもしれない。
「速く……もっと速く……」
力の限り速く足を回し、地面を全力で蹴る。後先考えない全力疾走だ。少しでも速く、その一心で走り続ける。
すると、急に体が速くなった。なんというか、何かに背中を押されているようなのだ。
『なるほどな、風の魔法で後押ししたわけか』
風の魔法を使った……ってことは、フューか!
頭に意識を向けてみると、フューが胸を張っていた。
「ありがとう、フュー! そうだ、前の風をどけたり出来ないかな?」
空気抵抗が無くなれば、もっと速くなれるはず。ダメ元でのお願いだったが、フューはしっかりと叶えてくれた。速度がまた上昇する。
やがて村が見えてきた。柵の周りには魔物達が相変わらず押し寄せているが、やはり士気は低下したままだ。渋々戦っている、という感じだ。
スコルがいなくなったことに気づけば、彼らは逃げ出すかもしれない。
ここはもう問題ない。直に戦いは終結するだろう。
土煙が晴れると、そこにはフラム達の姿は無かった。身動きも出来ないようにしたし、魔法を使う暇もなかったはず。なら、どうやって逃げたんだ……?
『魔道具でも、使ったのかも、しれねぇな。かなり貴重で、しかも使い捨てに、なるが、転移できる、魔道具が、あったはずだ』
魔法のダメージがまだ残っているのか、ソルが苦しそうに途切れ途切れで言う。でも、冷たいようだけど、今はそれにかまっている余裕はない。
僕はソルに質問を重ねる。
「その魔道具で転移できる距離は? まだ近くにいる可能性は?」
『転移出来る距離は、物によるがざっと数千キロメートルは可能だ。近くにいるなんて淡い希望は抱かない方がいい』
完全に逃げられたってわけか。くそっ! 確実に仕留めるつもりだったのに。
だが、今はそんなことを悔やんでいる場合じゃない。今こうしている間にも、地下を通って魔物が村を襲っているかもしれないのだ。
「ソル、この穴、村のどこに繋がっていると思う?」
確実なのはこの穴を通って魔物を追いかけることだけど、それだとどうしても遅くなる。デコボコで動きづらい穴の中を通るよりも、地上を走った方が早いのは当然だ。
『フラムの狙いはオレ達だ。そしてフラムはオレ達がまだ怪我をしたままだと思っていた』
フラムは、僕達を殺すために作らせた穴だと言っていた。ってことは、穴は僕達がいると思われる場所に繋がっているはずだ。怪我人である僕達がいる場所。
ということは――
「避難所か!」
『あぁ、そうだろうな。急ぐぞ、あのガキが危ねぇ』
僕はフューを頭に乗せると、村に向かって走り出した。急がないと。地下からの襲撃は想定していなかった。
母さんが村の周りの落とし穴を水で満たしてくれたけど、この穴は落とし穴よりも深い。ということは水の影響を受けていないということだ。
戦闘を開始してから、かなりの時間がたっている。実際には、戦闘より少し前から穴を掘っていたと考えられるので、かれこれ数時間は穴を掘り続けていたはずだ。
ここから村まではかなりの距離があるが、それだけの時間掘り続けていたとなると、もうほとんど時間は残されていないだろう。穴を掘った魔物の中には、魔法が使える魔物もいるだろうし、既に村に着いてしまっているかもしれない。
「速く……もっと速く……」
力の限り速く足を回し、地面を全力で蹴る。後先考えない全力疾走だ。少しでも速く、その一心で走り続ける。
すると、急に体が速くなった。なんというか、何かに背中を押されているようなのだ。
『なるほどな、風の魔法で後押ししたわけか』
風の魔法を使った……ってことは、フューか!
頭に意識を向けてみると、フューが胸を張っていた。
「ありがとう、フュー! そうだ、前の風をどけたり出来ないかな?」
空気抵抗が無くなれば、もっと速くなれるはず。ダメ元でのお願いだったが、フューはしっかりと叶えてくれた。速度がまた上昇する。
やがて村が見えてきた。柵の周りには魔物達が相変わらず押し寄せているが、やはり士気は低下したままだ。渋々戦っている、という感じだ。
スコルがいなくなったことに気づけば、彼らは逃げ出すかもしれない。
ここはもう問題ない。直に戦いは終結するだろう。
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