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11 夢の中に、落ちていく
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ランシェに案内されたのは、最上階の奥の部屋だった。
「いや、あの……ここ、で……いいんですか?」
開けられた扉の中を恐る恐る覗き、柚季は半歩前に立つランシェを見上げた。
重そうな家具が並ぶ室内に、何人で寝るつもりだ、と言いたくなるほど大きなベッドが置かれている。おそらく、ホテルに改装する前は主人の寝室だったのだろう。バハールのホテルが一泊いくらくらいするものか柚季は知らないが、ここで一番高そうな部屋に見える。
「すみません、柚季様のお住まいに比べれば狭いでしょうが……」
「いえ! あの! 全然そんなことはないです! 僕の家より広いです!」
申し訳なさそうな顔をするランシェに、柚季は慌てて否定の言葉を並べた。お世辞でも何でもなく、おそらく水車小屋の床面積を合わせた方がこの部屋1つより狭い。
「そうじゃなくて……こんな良さそうな部屋、お借りしてしまっていいのかなって……」
「ああ、本日はこの部屋しか空きがなかったんですよ」
貼り付けたような笑みを浮かべたランシェに促され、室内に入る。ふかふかとした絨毯は、足音1つ立たない。
一通り室内や備品について説明した後、「それでは、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」とランシェは去っていった。
耳をそばだてるが、廊下を帰っていく足音は聞こえない。体感でそろそろどこかに行っただろうという時間を開け、柚季は大きくため息をついた。そのままベッドに倒れ込む。
「……つかれた」
また変な男にのこのこついてきてしまった。何をしているんだ、と頭の中の冷静な部分が言っている。何も学習していない。ランシェに馬車を呼んでもらって、それで帰ればよかったのだ。
とはいえ今更「やっぱり帰る!」とも言えない。
「あー、本当、なんで……」
なんでこんな思いをしながら、それでもお見合いを続けているんだか。柚季はまたため息をついた。なんだか息苦しくて、そうでもしないと呼吸ができない気がした。
――理由なんて、わかっていた。
結局……寂しいのだ。一人が。
クラスメート達に置いていかれたのは、仕方のないことだとは思っている。けれど、目覚めたときに書き置きの1つもなくただ置き去りにされたことを、どこかで受け入れられていない自分がいるのだ。
日本に帰りたい、わけではない。今さら戻っても馴染めないだけだ。
ただ、帰れなくて辛かったね、と慰めてくれて、側にいてくれる存在が欲しかった。
そんな自分の我儘に誰かを付き合わせるべきではないから、ずっと引きこもって暮らしてきたのだ。けれど女王の言葉に欲が出て、つい頷いてしまった。
「はあ……」
また大きく息を吸う。肺の中に入った空気からは、全く酸素が取り込めていない気がした。
ベルカントなら、きっと柚季の願いを叶えてくれる。全部お前のせいだと、だから僕のために尽くせと命じても、彼なら受け入れてくれそうな気がした。
けれど、それはベルカントの未来や人生との引き換えになる。
――だから、自分は間違ってなんかない。
ぐるぐるとした思考にまた戻っていってしまっているのが自分でもわかった。けれど、止め方はわからない。
目を閉じて、ベッドに沈んでいく自分をイメージする。
柚季にできる唯一の方法は、眠りによって思考から逃げることだけだったから。
「いや、あの……ここ、で……いいんですか?」
開けられた扉の中を恐る恐る覗き、柚季は半歩前に立つランシェを見上げた。
重そうな家具が並ぶ室内に、何人で寝るつもりだ、と言いたくなるほど大きなベッドが置かれている。おそらく、ホテルに改装する前は主人の寝室だったのだろう。バハールのホテルが一泊いくらくらいするものか柚季は知らないが、ここで一番高そうな部屋に見える。
「すみません、柚季様のお住まいに比べれば狭いでしょうが……」
「いえ! あの! 全然そんなことはないです! 僕の家より広いです!」
申し訳なさそうな顔をするランシェに、柚季は慌てて否定の言葉を並べた。お世辞でも何でもなく、おそらく水車小屋の床面積を合わせた方がこの部屋1つより狭い。
「そうじゃなくて……こんな良さそうな部屋、お借りしてしまっていいのかなって……」
「ああ、本日はこの部屋しか空きがなかったんですよ」
貼り付けたような笑みを浮かべたランシェに促され、室内に入る。ふかふかとした絨毯は、足音1つ立たない。
一通り室内や備品について説明した後、「それでは、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」とランシェは去っていった。
耳をそばだてるが、廊下を帰っていく足音は聞こえない。体感でそろそろどこかに行っただろうという時間を開け、柚季は大きくため息をついた。そのままベッドに倒れ込む。
「……つかれた」
また変な男にのこのこついてきてしまった。何をしているんだ、と頭の中の冷静な部分が言っている。何も学習していない。ランシェに馬車を呼んでもらって、それで帰ればよかったのだ。
とはいえ今更「やっぱり帰る!」とも言えない。
「あー、本当、なんで……」
なんでこんな思いをしながら、それでもお見合いを続けているんだか。柚季はまたため息をついた。なんだか息苦しくて、そうでもしないと呼吸ができない気がした。
――理由なんて、わかっていた。
結局……寂しいのだ。一人が。
クラスメート達に置いていかれたのは、仕方のないことだとは思っている。けれど、目覚めたときに書き置きの1つもなくただ置き去りにされたことを、どこかで受け入れられていない自分がいるのだ。
日本に帰りたい、わけではない。今さら戻っても馴染めないだけだ。
ただ、帰れなくて辛かったね、と慰めてくれて、側にいてくれる存在が欲しかった。
そんな自分の我儘に誰かを付き合わせるべきではないから、ずっと引きこもって暮らしてきたのだ。けれど女王の言葉に欲が出て、つい頷いてしまった。
「はあ……」
また大きく息を吸う。肺の中に入った空気からは、全く酸素が取り込めていない気がした。
ベルカントなら、きっと柚季の願いを叶えてくれる。全部お前のせいだと、だから僕のために尽くせと命じても、彼なら受け入れてくれそうな気がした。
けれど、それはベルカントの未来や人生との引き換えになる。
――だから、自分は間違ってなんかない。
ぐるぐるとした思考にまた戻っていってしまっているのが自分でもわかった。けれど、止め方はわからない。
目を閉じて、ベッドに沈んでいく自分をイメージする。
柚季にできる唯一の方法は、眠りによって思考から逃げることだけだったから。
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