ＡＩ彼女

木之本浩史のケース

酒ニ溺レタ翌日ハ

朝起きると酷い頭痛に襲われた。
　
　「あたたた...完全に飲みすぎたな。」
　
　二日酔いにはなにがいいんだったか。
　
　久しくここまで飲んでいなかったのでこうなった時にどうすればいいかなかなか思い出せない。
　
　「まぁ、自業自得だな。」
　
　頭痛は仕方ないとしてせっかくの休みだ。
　
　とりあえず、少し散歩でもしようかと思いながらたまたま机の上をみた。
　
　そこに置いてあったのは『ＡＩ彼女』
　
　「あぁ、そうだ。昨日買ったんだったな。頭痛も酷いし、出かける前に少しだけやってみるか。」
　
　そうすれば少しは頭痛も引くかもしれない。
　
　パッケージを開けると、スマホと似たようなサイズの端末が出てきた。
　
　ゆっくりと説明書に目を通す。
　
　「へぇ、自分で彼女の性格が選べるのか。」
　
　性格の選び方は二種類あるらしい。
　
　１つは直接彼女の性格を決める方法。
　
　もう１つは質問に答えていき、自分の性格にあった彼女の性格を選んでもらう方法。
　
　どちらも面白そうだ。
　
　「俺の性格に合う女の子ってどんな性格なんだろうな。」
　
　興味が湧いたので質問に答えていく方法を選ぶ事にした。
　
　どちらかと言えばインドア派や、好きな本の種類など、当たり障りのない質問から、これは関係あるのだろうかという意味のわからない質問まで（まさか、いま履いている下着の色を聞かれるとは思わなかった）適当に答えていくと画面には
　
　『あなたにピッタリの彼女を紹介します』
　
　と表示された。
　
　画面をタップすると
　
　『ボイスモードをオンにしますか？』
　
　と表示が切り替わる。
　
　なるほど、これで彼女と直接会話ができるというわけか。
　
　俺は迷わずボイスモードをオンにした。
　
　「初めまして、神沢 紗（かみさわ さや）です。」
　
　俺は呆然と画面を見ていた。
　
　相性がいいと表示された彼女は別れた彼女、神代さやか（かみしろ さやか）とどことなく似ていた。
　
　名前まで似ているなんてなんの嫌がらせなんだろうか。
　
　「どうか、しましたか？」
　
　彼女が、神沢紗が不安そうにこちらをのぞき込むような動作をみせる。
　
　「いや、なんでもないよ。初めまして、木之本浩史といいます。よろしく。」
　
　画面に向かって話すのはどこか恥ずかしいと思いながらもこちらも自己紹介をしてみる。
　
　「よかった！こちらこそよろしくお願いしますね、浩史さん。」
　
　そう言ってにっこりと笑った紗はやはり、さやかに似ていた。