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第2章 明かされた過去~奏太編
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ザザー
海の波音が聞こえてきた。
奏太のすぐ横にはあおいが座っている。これまで、ずっとバカにされていたので、正直、苦手な女と思っていた。奏太はちらっと横目で、あおいを見てみた。ショートヘアで、中学2年のまだ幼さの残る横顔。しかし、海を見つめているあおいの瞳が、キラキラ輝いていて、その瞳がとてもきれいだった。
ドキ
奏太はドキっとした。
(嫌な女と思っていたけど、けっこう、かわいいところ、あるんだな)
奏太は、横目であおいをぼーっと見つめていた。
ん?
奏太の視線を感じたのか、あおいがこちらへ振り返ってきたので、奏太は慌ててあおいから目線をそらした。あおいは、何事もなかったかのように、再び海を見つめ始めた。
奏太(ふう~、あせった。彼女を見つめていたこと、ばれなかったみたいだ。しかしたまには、研究のことを忘れて、女の子と海を眺めているのも悪くないな……)
奏太はしばらく、彼女と静かに海を眺めることにした。
……
「おい、奏太、奏太……」
「……あ、栄一」
「どうしたんだよ。ぼーっとして」
「ああ、ちょっと昔のことを思い出してな……」
奏太は現実に戻ってきた。今、奏太は、大学サークルの研究の途中で頭を休めるため、校舎の屋上で休憩していた。
栄一「ずいぶん、いいこと思い出してたみたいだな。幸せそうな寝顔してたぞ」
奏太「え、そんなふうに見えたかのかい?」
栄一は笑って話した。
「見えたよ。誰か好きな人のこと、思い浮かべていたのか?」
「そんなことねえよ」
「そうかなあ」
奏太はぼーっとしているとき、3年ほど前のことを思い出す。あおいと初めて出会い、一緒に眺めていた海岸を……。
* * *
俺の名は安室奏太そうた。
え、あおいちゃんのこと、どう思っているのか気になるって。
それは物語が進むにつれてわかってくるので、今はまだ内緒だ。ここで俺の自己紹介をしておく。つまらないかも知れないが、少し我慢して付き合ってくれたら嬉しい。
俺は今、大学2年生。港区の西凛大学に通っている。西凛大学は、日本の理系大学では3本指に入る有名大学だが、俺には大学が有名かどうかなんてどうでもよい。俺にはやりたいことがあるからだ。
俺の実家は、千葉の九十九里浜の近くにある南井みなみい町にある。実家は田舎町ということもあり、家は古いが、かなり大きく、庭も広い。かつて俺のおじいちゃんが仕事というか、半分は趣味でもあるのだが、実験や研究で使っていた2階建ての古いコンクリートの研究所が、実家から300メートル離れた場所にある。
この研究所は、おじいちゃんが若い頃からずっと使っていた仕事場と聞いている。研究所はおじいちゃんが亡くなってから、ずっと閉鎖している。元から人を雇うのが嫌いで、後継者をつくることはしなかった。しかし今でも研究所の中は、おじいちゃんの作った実験品や試作品の山でいっぱいだ。
俺の父は、俺が小学1年生のときに交通事故で亡くなっている。そしておじいちゃんは、俺が中学3年生のときに亡くなった。おばあちゃんも俺が生まれる前に、若くして亡くなっていて、写真でしか見たことがない。
今、家族は母がいて兄弟はいない。母一人、子一人の母子家庭だが、母は働いているわけではない。おじいちゃんの発明品の特許料や使用料で、今でも十分な収入があり、資産も豊富にあった。
おじいちゃんはがらくたばかりつくっていると業界から言われていたが、稀にヒットする発明品を開発し、そのお陰で十分に暮らしていける。それでもおじいちゃんは、世間的には変わり者として扱われていた。
――さて、俺が小学1年生の頃、おじいちゃんが発明したある実験機が、マスコミの間で日本中を巻き込んだ大きな話題となった。しかし、おじいちゃんの大発明に嫉妬したお偉い大学の教授陣が手を組んで実験の不備を指摘し、それから日本中のマスコミが、「まったくの紛い物」「インチキ」として、おじいちゃんを叩くようになった。
最初マスコミは、おじいちゃんを「世紀の大発明だ」「日本に天才科学者、現れる!」など、新聞やテレビ報道で持ち上げるだけ持ち上げた。しかし紛い物という発表があった後は、手をひっくり返すかのように徹底的に叩き潰しにきた。
これはマスコミの常套手段だ。最初に持ち上げるだけ持ち上げて話題をつくり、次に叩き潰す。そのやり方で行うと視聴率が上がり、新聞や週刊誌の販売部数が増えるからだ。記者会見では、おじいちゃんは常にマスコミの質問攻めにあった。その様子は、テレビでも連日、流れていた。
おじいちゃんは十分な検証をしないで、いきなり発明品をつくることがよくあった。そのため実験過程の調査状況をノートにほとんど記録していなかった。そこを教授陣が「証拠がない」「実験が不十分だ」「科学的実証ができていない」などのように、実験の不備を徹底的に指摘したのだ。
父は、「再実験を行って証明する」と言ったが、大学の圧力により、実験機を動かすのに必要なエネルギーの原料を工場から確保できなくなった。さらに、実験機の部品を作っていた町工場の会社も、連日のマスコミの騒ぎと教授陣の圧力により、おじいちゃんの仕事の依頼を断るようになってしまった。
その影響は家族にまで及んだ。俺は学校でひどいいじめに遭あい、父は仕事場で苦い思いをいただけでなく、当時、住んでいた東京のマンションまで、マスコミが連日のように押し寄せてきた。そのため父は、日々、睡眠不足に陥った。
それがたたってか、親父は車の事故で亡くなってしまった。警察では居眠り運転と処理したが、マスコミが連夜押し寄せて、寝不足にならない人はいない。母親の話では、「精神的に相当まいっていたけど、家族に心配かけないように耐えていた」と言っていた。
それっきり、毎日、何十社も来ていたマスコミがピタッと家に来なくなった。
父が亡くなった時、母は連夜、泣いていた。マスコミに大勢で叩かれても、全く譲らない、負けず嫌いのおじいちゃんは、さすがに息子が亡くなって落ち込んでしまった。やがておじいちゃんは、マスコミから消えるようにいなくなり、おじいちゃんの話題もいつの日か消えてしまった。
それからおじいちゃんは港区の事務所を閉鎖し、昔からずっと使っていた九十九里の研究所にずっと籠こもるようになった。そして俺と母も、東京のマンションからおじいちゃんの古い家に引っ越し、おじいちゃんと一緒に暮らすことになった。
おじいちゃんは、そこでこれまでのように発明品をつくり続け、母はときどき、助手としておじいちゃんの仕事を手伝った。
おじいちゃんの作るものはがらくたばかりだが、ヒットする商品もいくつかあった。その使用料や特許料は大きく、俺たち家族にも大きな財産を残し、今でも使用料で安定した収入が入っていた。俺は親父が亡くなってから、マスコミが本当に嫌いになった。そして社会的な地位にしがみついているエセ教授もそうだ。
……奏太は東京から千葉の南井町に引っ越したときも、おじいちゃんの発明事件のことでいじめられることがあったが、奏太はたくましく育っていく。勉強もスポーツもできるようになり、やがて誰からもいじめられなくなった。
――おじいちゃんは、変わったことをよく話していた。世間的には大勢の人から変わり者扱いされていたが、一部の知識人からは礼賛する人がいた。
「君のおじいちゃんは、まるでタイムマシンに乗って、未来を見なければ知り得ないことを知っているんだよ」
「おじいちゃんが作ったものはがらくたばかりだけど、たまにものすごいものを作ってしまうんだよな」
確かにおじいちゃんは変わった人で、常人では思いつかないことを言ったり、考えることがあった。母は、「それは発明家だからでしょ」と聞かされ、発明家とはそうゆうものだと俺は思っていた。
おじいちゃんは父が亡くなって以降、父がわりに家計を支えてくれた。とても孫思いで、賢く、俺はおじいちゃんがとても好きだった。そしておじいちゃんは、俺に発明品を見せたり、発明品の原理を説明してくれたものだ。
そんなこともあって、小学3年から科学や物理が好きになり、おじいちゃんから発明品の話を聞くのがすっかり好きになっていた。もちろん、発明品の原理を聞いてもわからないことだらけだったが、おじいちゃんが嬉しそうに話す様子を見るだけでも、俺は嬉しかった。学校が休みの日には、おじいちゃんの仕事の手伝いをすることもあり、いつしか、俺も将来、おじいちゃんのように世界が驚くような発明品を作りたいと思うようになっていた。
* * *
それから年月が過ぎて、おじいちゃんが亡くなる数日前。
それは奏太が中学3年の15歳の時だった。おじいちゃんが珍しく真剣な表情をして、「ずっと私が秘密にしていたものを、今度、奏太に見せてやるぞ」と言ったことがあった。
ただ結局、それを知ることなく、おじいちゃんは数日後に心不全で突然、亡くなってしまった。結局、それがおじいちゃんの遺言になってしまった。俺はおじいちゃんのその言葉がずっと心に遺っていた。
しかし、その遺言の意味が高校2年の7月に理由がわかった。おじいちゃんの研究所にある、実験品の山の中から驚くべきものを見つけた。
俺は、実験品の山の中から鍵が掛かっている箱を見つけ、鍵を壊してこじ開けた。
その箱の中に入っていたものは、霊界通信機の試作品だった。そして、箱の中におじいちゃんの数十ページほどの薄い研究ノートが入っていた。
おじいちゃんはエジソンの熱心なファンだった。エジソンは晩年、霊界通信機の研究をしていたことは、エジソンファンなら誰もが知っている。おじいちゃんの研究ノートによると、実験機の本体自体は完成に近いが、四次元以降の波長を感知するセンサーが作れなかった。しかし、ノートにはセンサーに必要な材料や構造が書かれていた。おじいちゃんが生きていた時代には開発されていないが、ノートには、「ごく近い未来にセンサーとなる素材、もしくは部品が日本でもきっとできあがるだろう」と書いてあった。
奏太は、おじいちゃんのノートを呼んで、すぐさまセンサーの代替え品になりそうなものを探すことにした。そして思いの外、そのセンサーに該当するものが見つかった。
おじいちゃんが生きていた時代には見つけられなかったセンサーの部材が、大和やまと大学の岬教授が発明した部材で代用できるかもしれないと、奏太は考えた。
奏太は岬教授が在籍する大和大学に電話して、「教授に直接会わせてくれ」と何度も頼んだが、高校2年生のためか、窓口で門前払いされ、相手にしてもらえなかった。
しかし、「熱心に電話をかけてくる高校生」の話が岬教授の耳に入ると、その気持ちに応えてやりたいと思った。岬教授には、理系の天才と言われる子供がいた。それが栄一だった。
岬教授は、テレビや雑誌に何度か紹介された実績のある教授で、本も書かれていて、とても多忙だった。そこで、年齢も同じで物理の知識に長けている息子の栄一なら、きっと気が合うだろうと考えた。
岬教授は、息子の栄一に「安室奏太君と、コンタクトとってくれないか」と話した。それから栄一は、千葉市で奏太と待ち合わせをして、奏太から霊界通信機の原理の話を聞いたところ、栄一も大変な興味を示したのだ。
そして9月下旬の連休に、九十九里浜近くの旅館でじっくり実験計画を立てないかという話になった。
そして、待ち合わせの初日、九十九里海岸で、奏太は、はじめてあおいちゃんと出会ったのだった。
海の波音が聞こえてきた。
奏太のすぐ横にはあおいが座っている。これまで、ずっとバカにされていたので、正直、苦手な女と思っていた。奏太はちらっと横目で、あおいを見てみた。ショートヘアで、中学2年のまだ幼さの残る横顔。しかし、海を見つめているあおいの瞳が、キラキラ輝いていて、その瞳がとてもきれいだった。
ドキ
奏太はドキっとした。
(嫌な女と思っていたけど、けっこう、かわいいところ、あるんだな)
奏太は、横目であおいをぼーっと見つめていた。
ん?
奏太の視線を感じたのか、あおいがこちらへ振り返ってきたので、奏太は慌ててあおいから目線をそらした。あおいは、何事もなかったかのように、再び海を見つめ始めた。
奏太(ふう~、あせった。彼女を見つめていたこと、ばれなかったみたいだ。しかしたまには、研究のことを忘れて、女の子と海を眺めているのも悪くないな……)
奏太はしばらく、彼女と静かに海を眺めることにした。
……
「おい、奏太、奏太……」
「……あ、栄一」
「どうしたんだよ。ぼーっとして」
「ああ、ちょっと昔のことを思い出してな……」
奏太は現実に戻ってきた。今、奏太は、大学サークルの研究の途中で頭を休めるため、校舎の屋上で休憩していた。
栄一「ずいぶん、いいこと思い出してたみたいだな。幸せそうな寝顔してたぞ」
奏太「え、そんなふうに見えたかのかい?」
栄一は笑って話した。
「見えたよ。誰か好きな人のこと、思い浮かべていたのか?」
「そんなことねえよ」
「そうかなあ」
奏太はぼーっとしているとき、3年ほど前のことを思い出す。あおいと初めて出会い、一緒に眺めていた海岸を……。
* * *
俺の名は安室奏太そうた。
え、あおいちゃんのこと、どう思っているのか気になるって。
それは物語が進むにつれてわかってくるので、今はまだ内緒だ。ここで俺の自己紹介をしておく。つまらないかも知れないが、少し我慢して付き合ってくれたら嬉しい。
俺は今、大学2年生。港区の西凛大学に通っている。西凛大学は、日本の理系大学では3本指に入る有名大学だが、俺には大学が有名かどうかなんてどうでもよい。俺にはやりたいことがあるからだ。
俺の実家は、千葉の九十九里浜の近くにある南井みなみい町にある。実家は田舎町ということもあり、家は古いが、かなり大きく、庭も広い。かつて俺のおじいちゃんが仕事というか、半分は趣味でもあるのだが、実験や研究で使っていた2階建ての古いコンクリートの研究所が、実家から300メートル離れた場所にある。
この研究所は、おじいちゃんが若い頃からずっと使っていた仕事場と聞いている。研究所はおじいちゃんが亡くなってから、ずっと閉鎖している。元から人を雇うのが嫌いで、後継者をつくることはしなかった。しかし今でも研究所の中は、おじいちゃんの作った実験品や試作品の山でいっぱいだ。
俺の父は、俺が小学1年生のときに交通事故で亡くなっている。そしておじいちゃんは、俺が中学3年生のときに亡くなった。おばあちゃんも俺が生まれる前に、若くして亡くなっていて、写真でしか見たことがない。
今、家族は母がいて兄弟はいない。母一人、子一人の母子家庭だが、母は働いているわけではない。おじいちゃんの発明品の特許料や使用料で、今でも十分な収入があり、資産も豊富にあった。
おじいちゃんはがらくたばかりつくっていると業界から言われていたが、稀にヒットする発明品を開発し、そのお陰で十分に暮らしていける。それでもおじいちゃんは、世間的には変わり者として扱われていた。
――さて、俺が小学1年生の頃、おじいちゃんが発明したある実験機が、マスコミの間で日本中を巻き込んだ大きな話題となった。しかし、おじいちゃんの大発明に嫉妬したお偉い大学の教授陣が手を組んで実験の不備を指摘し、それから日本中のマスコミが、「まったくの紛い物」「インチキ」として、おじいちゃんを叩くようになった。
最初マスコミは、おじいちゃんを「世紀の大発明だ」「日本に天才科学者、現れる!」など、新聞やテレビ報道で持ち上げるだけ持ち上げた。しかし紛い物という発表があった後は、手をひっくり返すかのように徹底的に叩き潰しにきた。
これはマスコミの常套手段だ。最初に持ち上げるだけ持ち上げて話題をつくり、次に叩き潰す。そのやり方で行うと視聴率が上がり、新聞や週刊誌の販売部数が増えるからだ。記者会見では、おじいちゃんは常にマスコミの質問攻めにあった。その様子は、テレビでも連日、流れていた。
おじいちゃんは十分な検証をしないで、いきなり発明品をつくることがよくあった。そのため実験過程の調査状況をノートにほとんど記録していなかった。そこを教授陣が「証拠がない」「実験が不十分だ」「科学的実証ができていない」などのように、実験の不備を徹底的に指摘したのだ。
父は、「再実験を行って証明する」と言ったが、大学の圧力により、実験機を動かすのに必要なエネルギーの原料を工場から確保できなくなった。さらに、実験機の部品を作っていた町工場の会社も、連日のマスコミの騒ぎと教授陣の圧力により、おじいちゃんの仕事の依頼を断るようになってしまった。
その影響は家族にまで及んだ。俺は学校でひどいいじめに遭あい、父は仕事場で苦い思いをいただけでなく、当時、住んでいた東京のマンションまで、マスコミが連日のように押し寄せてきた。そのため父は、日々、睡眠不足に陥った。
それがたたってか、親父は車の事故で亡くなってしまった。警察では居眠り運転と処理したが、マスコミが連夜押し寄せて、寝不足にならない人はいない。母親の話では、「精神的に相当まいっていたけど、家族に心配かけないように耐えていた」と言っていた。
それっきり、毎日、何十社も来ていたマスコミがピタッと家に来なくなった。
父が亡くなった時、母は連夜、泣いていた。マスコミに大勢で叩かれても、全く譲らない、負けず嫌いのおじいちゃんは、さすがに息子が亡くなって落ち込んでしまった。やがておじいちゃんは、マスコミから消えるようにいなくなり、おじいちゃんの話題もいつの日か消えてしまった。
それからおじいちゃんは港区の事務所を閉鎖し、昔からずっと使っていた九十九里の研究所にずっと籠こもるようになった。そして俺と母も、東京のマンションからおじいちゃんの古い家に引っ越し、おじいちゃんと一緒に暮らすことになった。
おじいちゃんは、そこでこれまでのように発明品をつくり続け、母はときどき、助手としておじいちゃんの仕事を手伝った。
おじいちゃんの作るものはがらくたばかりだが、ヒットする商品もいくつかあった。その使用料や特許料は大きく、俺たち家族にも大きな財産を残し、今でも使用料で安定した収入が入っていた。俺は親父が亡くなってから、マスコミが本当に嫌いになった。そして社会的な地位にしがみついているエセ教授もそうだ。
……奏太は東京から千葉の南井町に引っ越したときも、おじいちゃんの発明事件のことでいじめられることがあったが、奏太はたくましく育っていく。勉強もスポーツもできるようになり、やがて誰からもいじめられなくなった。
――おじいちゃんは、変わったことをよく話していた。世間的には大勢の人から変わり者扱いされていたが、一部の知識人からは礼賛する人がいた。
「君のおじいちゃんは、まるでタイムマシンに乗って、未来を見なければ知り得ないことを知っているんだよ」
「おじいちゃんが作ったものはがらくたばかりだけど、たまにものすごいものを作ってしまうんだよな」
確かにおじいちゃんは変わった人で、常人では思いつかないことを言ったり、考えることがあった。母は、「それは発明家だからでしょ」と聞かされ、発明家とはそうゆうものだと俺は思っていた。
おじいちゃんは父が亡くなって以降、父がわりに家計を支えてくれた。とても孫思いで、賢く、俺はおじいちゃんがとても好きだった。そしておじいちゃんは、俺に発明品を見せたり、発明品の原理を説明してくれたものだ。
そんなこともあって、小学3年から科学や物理が好きになり、おじいちゃんから発明品の話を聞くのがすっかり好きになっていた。もちろん、発明品の原理を聞いてもわからないことだらけだったが、おじいちゃんが嬉しそうに話す様子を見るだけでも、俺は嬉しかった。学校が休みの日には、おじいちゃんの仕事の手伝いをすることもあり、いつしか、俺も将来、おじいちゃんのように世界が驚くような発明品を作りたいと思うようになっていた。
* * *
それから年月が過ぎて、おじいちゃんが亡くなる数日前。
それは奏太が中学3年の15歳の時だった。おじいちゃんが珍しく真剣な表情をして、「ずっと私が秘密にしていたものを、今度、奏太に見せてやるぞ」と言ったことがあった。
ただ結局、それを知ることなく、おじいちゃんは数日後に心不全で突然、亡くなってしまった。結局、それがおじいちゃんの遺言になってしまった。俺はおじいちゃんのその言葉がずっと心に遺っていた。
しかし、その遺言の意味が高校2年の7月に理由がわかった。おじいちゃんの研究所にある、実験品の山の中から驚くべきものを見つけた。
俺は、実験品の山の中から鍵が掛かっている箱を見つけ、鍵を壊してこじ開けた。
その箱の中に入っていたものは、霊界通信機の試作品だった。そして、箱の中におじいちゃんの数十ページほどの薄い研究ノートが入っていた。
おじいちゃんはエジソンの熱心なファンだった。エジソンは晩年、霊界通信機の研究をしていたことは、エジソンファンなら誰もが知っている。おじいちゃんの研究ノートによると、実験機の本体自体は完成に近いが、四次元以降の波長を感知するセンサーが作れなかった。しかし、ノートにはセンサーに必要な材料や構造が書かれていた。おじいちゃんが生きていた時代には開発されていないが、ノートには、「ごく近い未来にセンサーとなる素材、もしくは部品が日本でもきっとできあがるだろう」と書いてあった。
奏太は、おじいちゃんのノートを呼んで、すぐさまセンサーの代替え品になりそうなものを探すことにした。そして思いの外、そのセンサーに該当するものが見つかった。
おじいちゃんが生きていた時代には見つけられなかったセンサーの部材が、大和やまと大学の岬教授が発明した部材で代用できるかもしれないと、奏太は考えた。
奏太は岬教授が在籍する大和大学に電話して、「教授に直接会わせてくれ」と何度も頼んだが、高校2年生のためか、窓口で門前払いされ、相手にしてもらえなかった。
しかし、「熱心に電話をかけてくる高校生」の話が岬教授の耳に入ると、その気持ちに応えてやりたいと思った。岬教授には、理系の天才と言われる子供がいた。それが栄一だった。
岬教授は、テレビや雑誌に何度か紹介された実績のある教授で、本も書かれていて、とても多忙だった。そこで、年齢も同じで物理の知識に長けている息子の栄一なら、きっと気が合うだろうと考えた。
岬教授は、息子の栄一に「安室奏太君と、コンタクトとってくれないか」と話した。それから栄一は、千葉市で奏太と待ち合わせをして、奏太から霊界通信機の原理の話を聞いたところ、栄一も大変な興味を示したのだ。
そして9月下旬の連休に、九十九里浜近くの旅館でじっくり実験計画を立てないかという話になった。
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