ゆるゾン

二コ・タケナカ

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「もっと聞きたい?そうかそうか。」
ふーみんは頷いていないけど、アタシは構わず語った。
「95年というのは結構重要な年でね。あの新世紀エ○ァンゲリオンが放送された年なんだ。10月からの放送で翌年3月までの全26話。当時のアニメオタクはその複雑なストーリーを考察する事にのめり込んだし、その人気は徐々に一般人にも広まっていったんだよ。丁度その年は阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、金融機関の不良債権問題の表面化だとか日本にとって災厄の年だったんだ。そんな不穏な社会情勢を写し取ったかのようなエ○ァのストーリーは多くの人の心を引き付けたんだよ。人気は続いて97年になると再放送される事になったんだけど、その時は深夜枠にもかかわらず大きな注目を集めたんだ。昔はね、アニメと言えば夕方に子供向けに放送されるものだったんだよ?それが深夜放送にされたというのはやっぱりエロシーンが出てくるからだろうね。夕飯時に家族揃ってみるには気まずいから、ムフフ。」
アタシの表情にふーみんが眉をしかめた。構わず更に続ける。
「当時のアニメオタクはみんなビデオテープにアニメを録画していたんだよ。見た事ある?VHS。笑い話を1つ教えてあげよう。ビデオテープって何度も再生するうちに劣化するんだよ。今のデジタル記録じゃ考えらんないけど。で、綾波○イの例のシーンを何度も何度もその場面だけ再生していたもんだからテープが劣化して、ノイズのせいで大事な部分に勝手に自主規制が入ったたって。クククッ!」
「ハイ、ハイ、」ふーみんが手をヒラヒラと振る。アタシは気を取り直して続けた。
「オホン!このエ○ァの深夜枠での放送が今の深夜アニメの定着に繋がったと言われているんだよ。知ってた?おかげでこっちはリアタイする為に年中寝不足だよ。まったく。それはいいとして、エ○ァはよく内容が難解だって言われるけど、ラスト2話が衝撃的過ぎるからなんだろうね。完結したの?これで?みたいな。だから劇場版が公開されるって決まった時にはファンは全ての謎が明かされるんだって期待したのさ。その頃には社会現象にまで発展していたんだ。あ、劇場版はもちろんシンの方じゃないよ?旧の方だからね、」
「つきかちゃん、月光ちゃん。話がだいぶ逸れてきてるよ」
「おっと!これは失礼。」
「月光ちゃん、アニメの事になると話が長くなるから」付き合いの長いはなっちはよく分かっていらっしゃる。

「うん。何の話だっけ?」
「岐阜になんで聖地が多いのかって話よ」
「アニメと行政の関わりについてです」
「そうそう。95年というのは時代の境目だったのさ。オタクが世間の目を気にしつつ殻に閉じこもったままなのか、好きなものを好きと言えるようになるかのね。そんな時代に漫画やアニメを産業の柱として育てていこうと行政が既に乗り出していたんだから、知事が剛腕だろうが何だろうが先見の明があったと言っていいと思うよ」
かいちょがうん、うん、とうなづいている。
「岐阜では図書館以外にもアニメを中心に据えた取り組みを広げていったんだ。それは最初、小さなきっかけだったかもしれない。けど、文化というのはいきなり生まれるものではないからね。行政が後押しした事で少しづつそういう活動が目に触れる機会が増え、そこからアニメや漫画に携わる人が誕生していったんじゃないかな?さっき言ったご当地アニメの原作者の多くは岐阜出身なんだ」
「そうだったんですね」
「出身が岐阜なら地元だから題材にしやすいというのは分かるんだけど、何故か岐阜って他のクリエイターからも注目されやすいみたいでね。2016年に公開された『君○名は』知ってるでしょ?」
「月光ちゃんが聖地回りたいって言ってたやつ?」
「そう。あの映画の大ヒットによって今まで一部のマニアがやっていた聖地巡礼が一般の人にも知れ渡る事になったんだ。丁度、同じ年に公開された『聲○形』も大垣が舞台で、聖地巡礼のブームに乗る形になって飛騨と大垣は観光地として注目を集めた。まあ、これはたまたまだとは思うけど」
「たまたまなの?」
「うん。ヒットなんて狙って起こせるものでもないと思うし。人気が出なければアニメの聖地巡礼なんて言葉、未だに浸透してなかったかもしれないよ。ただ、ヒットさせようと仕掛ける事は出来る。その仕掛けの1つはやっぱり実在する場所が出てくる事。一般人にはまだ知れ渡る前から、オタクの間では実際にアニメに登場するシーンを巡る事は行われていたからね。そんな聖地巡礼の先駆け作品としては埼玉県の『らき○すた』とか滋賀県の『けい○ん』とかが挙げられるんだけど、これら現実の場所が登場する作品はウケが良かったのは制作する側も分かっていたはずだよ。登場した場所を特定する事もファンの間では楽しみの一つになっていたし。他にも仕掛けはあるんだろうけど『君○名は』は大ヒットを飛ばした。キービジュアルに使われているあの階段なんて東京四ツ谷に実際にあってファンが押し寄せる事になったからね。そうやって仕掛けの中にたまたま岐阜が取り上げられていただけさ」
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