ゆるゾン

二コ・タケナカ

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ファイル12「配給」

今日、シャツとパンツが配給された。
今着ているのはどれくらい洗っていないだろう。この前、雨が降った時以来か。川が使えればいいんだが、汚染されているかもしれないからと使用は禁止されている。クソッ!
しかも新しいパンツはTシャツか何かを再利用したものだった。惨めな気分に何もかも嫌になる。クソッ!

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「遅くなってゴメーン。」
私が遅れて部室に入ると既に3人とも揃っていた。かいちょはいつも通り勉強し、それに触発されたのか、はなっちとふーみんまで今日の授業で出された課題をしていたらしい。
ふーみんが意外そうに聞いてくる。
「アンタだけ遅れてくるなんて珍しいわね。先生に呼び出しでも喰らってたの?」
「あたしゃ優良生徒ですからね。そんな呼び出し食らう事なんてありませんよ。と言うより、呼び出されるようなヘマはしませんぜ。へへへっ」
「月光ちゃん、言い方」苦笑いするはなっちの前にアタシは袋を置いた。
「そろそろいい頃合いだから家に取りに行ってた」
「あ!もしかして⁉」
はなっちが目を輝かせて袋を開ける。
「やっぱり!私、コレ好き」
出てきたのはファミリーサイズの袋に入ったひと口チョコレート。
「花、チョコ好きなの?言ってくれれば買ってきてあげたのに」
「月光ちゃんのチョコは特別なんだよ」
そう言って早速、一粒頬張る彼女。いつものニコニコ顔が更に緩む。
「特別?どこにでも売ってそうなチョコじゃない。私も1つ貰っていい?」
チョコに伸びたふーみんの手をアタシは阻む様に掴んだ。
「なっ!ナニよ。いつもお菓子あげてるのに、私にはくれないのっ!」
「違うよ。ふーみんは初めてだろうからビックリするかもしれないし、私が食べさせてあげようと思って、」
ふーみんからは見えない様にセロファンの包みを開ける。
「ホラ、あーん」
「べっ、別に食べさせてくれなくても・・・・・・」恥ずかしがって目をそらしつつ、ためらいがちに口を開けた彼女。(この娘、八重歯があるな)そんな反応されるとこっちまで恥ずかしくなってくるんですけど。

チョコを放り込む。口が閉じられ、ひと噛み。その途端、彼女の眉間にシワが寄った。
「ん⁉ん~っ!」喋る事が出来ず、うめき声が漏れる。
飲み込むことも出来ないから、彼女の顔がすぐ横にある流しに向いた。
「吐いちゃダメ!だいじょうぶ、大丈夫だから。」
ふーみんの視線が「何なのよ!」と訴えかけてくる。
「変なモノじゃないから。ちょっと特別なチョコなんだよ。見てみ?はなっちは喜んで食べてるよ」
はなっちがこちらに向けて「んべぇー」と口を開き舌まで出して見せてくれた。
それでも変なものを食べさせられたのではないかと訴えかけてくるふーみん。吐いてしまいかねないのでアタシは彼女の下アゴを指で支えた。
「ほら。ごっくん」
観念した彼女は目をギュッとつむんだ。喉がゴクリと動く。
「うえぇ、」
うめき声と共に開いた口からヌラヌラと光る舌がのぞく。(これは・・・・・・)私の視線に気付いたふーみんはすぐに横を向いてしまった。
「何するのよ!飲んじゃったじゃない」
「あはは、」やらせておいてなんだけど、エロいぞふーみん!これじゃあナニさせたみたいになってるじゃないか。彼女は何も気付いてないみたいだけど。

「何なの?このチョコ」
ふーみんが一粒チョコを手に取り包みを開いた。
「ちょっと!これカビてるじゃない!」
突きつけてきたチョコは確かにチョコレート色の茶色ではなく、白っぽく粉を吹いていてカビていると言われてもしょうがない。だからアタシはふーみんに見せないようにしたのだ。こういうの食べない人は頑なに食べようとしないから。
アタシはソレを指につまみ自分の口に放り込んだ。ひと噛みしただけでホロホロと口の中で砕けて無くなってしまった。
「そんなの食べて大丈夫なの!?」
「大丈夫だよ。これはブルーム現象ってヤツだから。ほら」
チョコの袋を裏返し、そこに書かれている注意書きを指さした。ふーみんがそれを読み上げる。
「んー?・・・・・・チョコレートは高温になると中に含まれる油分(カカオバター)が表面に浮き出し、再度固まる事で白く粉を吹いた状態になる事があります。これをブルーム現象といいます。食べても害はありませんが本来の物より風味は劣ります」
またふーみんの目がこちらへ訴えかけてくる。
「なんでこんなモノ食べさすのよ」
「こんなとは失礼な!美味しいでしょうに!ねえ?はなっち」
「うん!おいしいよ」
「いや、花はお菓子なら何でもおいしいって言うんじゃない?」確かに。
アタシはもう一粒食べてみせた。
「この噛んだ瞬間に全て粉々に砕け散る食感!最高じゃないか。まあ、チョコレート本来の滑らかさは失われているから初めてだと驚くけどね。風味も若干劣るけど劣化した分、かえってその安っぽさが駄菓子感覚を生んでいるのさ。例えるならグ○コのカプ○コを更に柔らかく繊細にした感じ」
「んー、そう言われれば食べられない事も無いかもしれないけど、」

「私も1つ貰っていいですか?」
興味を持ったのか、かいちょも勉強の手を止め頬張る。
「あら、変わった食感ですね。おいしいですよ」
「でしょ?この食感を出すまでに結構手間暇かけてるんだ」
「もしかしてアンタわざわざこれ作ってるの?」
「そだよ」
とっておきのレシピをふーみんにも教えてあげようじゃないか。
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