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3話:あの世か現実か
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おじいさんについて森を歩いていると元居た場所と違い木々が鬱蒼と茂っていて木漏れ日も少なかった。なぜあそこだけあんなに温かい木漏れ日があったのだろう。それに草や花は見たこともないものばかりだった。ゲームに出てきそうな草花だがきっと自分の知識不足だろう、後でスマホで調べてみよう。あの斑点模様の草なんていかにも毒です、という雰囲気を醸し出している。
そこで気が付く。僕スマホないや……。事故に遭った時持っていたものは全てなくなっている。そもそもとして、駆け出したときに鞄もスマホもバス停に投げ捨てているから例え今流行りの異世界転生だとしても持ってこれないだろう。前に並んでた兄ちゃんが持っていてくれたな。救急車も呼んでてくれたし名の知らぬ兄ちゃんに僕の分まで幸あれ。
前世(?)の世界に想いを馳せていると前を歩いていたおじいさんがぴた、と歩みを止める。
「どうかしたんですか?」
「ここがわしの家だ。」
そう言われ、おじいさんの前を覗いてみるとそこにはこれまた絵本に出てきそうな、小屋というには少し大きい木の建物があった。入り口には森の中で何度か見た草が逆さまに吊されて乾燥させてあり、窓から少し見えた小屋の中にも入り口の草と同じように逆さまに吊り下げられた草花があった。どこかで見た魔女の家を彷彿とさせる小屋だった。
「こんなファンタジーな建物があの世にもあるのか」
「お前さんまだ言ってるんか。さあ、中に入りな」
おじいさんはその入り口を開け、中に招き入れる。中に入るとよく祖父が使っていた湿布みたいな薬品の匂いがする。別に気持ち悪いとか臭いは無いけど、反射的に一瞬目をしかめてしまった。僕の顔が見えたのかおじいさんはまたハハハ、と笑う。
「すまんな、うちはしがないポーション作りでな。少し臭うと思うがすぐ慣れるさ」
「あ、ごめんなさい。そんなつもりはなかったんですが」
「いいさ、ここに来る奴は皆お前さんみたいな顔するのさ」
本当に申し訳なくてどう謝罪するか迷っていたら部屋の奥の方から声がする。
「あら、じいさん? お客様?」
そこに現れたのは白髪は多けれど、小柄で腰が曲がっており少しふくよかなおばあさんだった。
「ああ、森の奥深くにいてな。不思議なこと言うもんだったから連れてきちまった。茶でも出して少し落ち着かせてやってくれないか」
「あらあら、この森の深くにいれるなんて……、随分歩いたでしょ。落ち着いてるように見えるけど落ち着くのと疲れが取れるハーブ入れるわね」
僕が返事をする間もなくおばあさんはまた奥に行ってしまった。おじいさんには椅子を勧められ大人しく座る。おばあさんの言う通り、僕は落ち着いている。このおじいさんが勝手に思っていることだ。……でも、ここに来るまでで少し混乱している自分がいる。知らない森にゲームみたいな草花、そしてモンスターやポーションという単語。まるでここがゲームの世界のような。いやいや、そんなことあるわけないじゃないか。僕は確かに死んだ。あの少年を庇ってバイクに轢かれ宙を飛んだ。痛さも体が冷えていくのも覚えている。あれが死んでなくてまだ生きているとしたならここはどこなんだ、日本なのか、地球なのか、それともいせか「おまえさん、急に顔色悪くなったが大丈夫か? 臭いきつかったか?」
ハッとする。今僕は突拍子もないことを考えていた。僕に限ってそんなことあるわけない。大丈夫、大丈夫。
「すみません、ちょっと色々考えてただけですから大丈夫です。それに別に匂いは全然気になりませんよ。むしろ慣れてきたら落ち着くっていうか……」
「落ち着くにおいか……それにしても酷い顔色だ。すぐ茶来ると思うが横にでもなるか?」
「本当に大丈夫ですよ! それに流石にそこまでお世話になるわけにはいきませんし」
「そんなこと気にせんでいい。ばあさん!ちと坊主をベッドに連れて行くから茶はそっちに持ってきてくれ!」
はいはい~とのんびりした声が聞こえたかと思えば僕の体は宙に浮いていた。何事かと思えばおじいさんに抱き上げられていた。しかも俗にいうお姫様抱っことかいうもの。確かにおじいさんの体格はいいものだが、平均身長体重の僕をこんな軽々と持ち上げてしまうとは。一瞬唖然としてしまった。
「ええ!? だ、大丈夫ですって! 降ろしてください!」
「ええい! 暴れるな! 落としてしまうぞ!」
なんかもう色々ショックだった。それなりの体格だったはずなのにこんなにも軽々と持ち上げられ、挙句の果てにはお姫様抱っこだなんて。ヤバい、考えたら余計と具合悪くなったかも。もうそこからは大人しくその体勢のままベッドまで連れていかれそのまま降ろされた。敷布団も掛布団もふかふかで疲れた体と頭は今にもこのまま寝たいとシグナルを出している。でも人様の家で寝る訳にもいかない。僕は必死にくっつきそうな瞼を持ち上げる。それもまたおじいさんにばれてしまったのか「寝ていいぞ、坊主。疲れただろう。茶は後で飲もう。」と優しく頭をなでる。
その頭をなでられた感覚と森で目が覚める前に見た夢と重なり、落ちてゆく瞼の裏に涙が溜まる。そして2つの瞼がくっついた時、溜まってしまった涙が一粒流れる。
お父さん、親不孝者でごめんなさい。そう思った時には深い眠りに落ちていた。
そこで気が付く。僕スマホないや……。事故に遭った時持っていたものは全てなくなっている。そもそもとして、駆け出したときに鞄もスマホもバス停に投げ捨てているから例え今流行りの異世界転生だとしても持ってこれないだろう。前に並んでた兄ちゃんが持っていてくれたな。救急車も呼んでてくれたし名の知らぬ兄ちゃんに僕の分まで幸あれ。
前世(?)の世界に想いを馳せていると前を歩いていたおじいさんがぴた、と歩みを止める。
「どうかしたんですか?」
「ここがわしの家だ。」
そう言われ、おじいさんの前を覗いてみるとそこにはこれまた絵本に出てきそうな、小屋というには少し大きい木の建物があった。入り口には森の中で何度か見た草が逆さまに吊されて乾燥させてあり、窓から少し見えた小屋の中にも入り口の草と同じように逆さまに吊り下げられた草花があった。どこかで見た魔女の家を彷彿とさせる小屋だった。
「こんなファンタジーな建物があの世にもあるのか」
「お前さんまだ言ってるんか。さあ、中に入りな」
おじいさんはその入り口を開け、中に招き入れる。中に入るとよく祖父が使っていた湿布みたいな薬品の匂いがする。別に気持ち悪いとか臭いは無いけど、反射的に一瞬目をしかめてしまった。僕の顔が見えたのかおじいさんはまたハハハ、と笑う。
「すまんな、うちはしがないポーション作りでな。少し臭うと思うがすぐ慣れるさ」
「あ、ごめんなさい。そんなつもりはなかったんですが」
「いいさ、ここに来る奴は皆お前さんみたいな顔するのさ」
本当に申し訳なくてどう謝罪するか迷っていたら部屋の奥の方から声がする。
「あら、じいさん? お客様?」
そこに現れたのは白髪は多けれど、小柄で腰が曲がっており少しふくよかなおばあさんだった。
「ああ、森の奥深くにいてな。不思議なこと言うもんだったから連れてきちまった。茶でも出して少し落ち着かせてやってくれないか」
「あらあら、この森の深くにいれるなんて……、随分歩いたでしょ。落ち着いてるように見えるけど落ち着くのと疲れが取れるハーブ入れるわね」
僕が返事をする間もなくおばあさんはまた奥に行ってしまった。おじいさんには椅子を勧められ大人しく座る。おばあさんの言う通り、僕は落ち着いている。このおじいさんが勝手に思っていることだ。……でも、ここに来るまでで少し混乱している自分がいる。知らない森にゲームみたいな草花、そしてモンスターやポーションという単語。まるでここがゲームの世界のような。いやいや、そんなことあるわけないじゃないか。僕は確かに死んだ。あの少年を庇ってバイクに轢かれ宙を飛んだ。痛さも体が冷えていくのも覚えている。あれが死んでなくてまだ生きているとしたならここはどこなんだ、日本なのか、地球なのか、それともいせか「おまえさん、急に顔色悪くなったが大丈夫か? 臭いきつかったか?」
ハッとする。今僕は突拍子もないことを考えていた。僕に限ってそんなことあるわけない。大丈夫、大丈夫。
「すみません、ちょっと色々考えてただけですから大丈夫です。それに別に匂いは全然気になりませんよ。むしろ慣れてきたら落ち着くっていうか……」
「落ち着くにおいか……それにしても酷い顔色だ。すぐ茶来ると思うが横にでもなるか?」
「本当に大丈夫ですよ! それに流石にそこまでお世話になるわけにはいきませんし」
「そんなこと気にせんでいい。ばあさん!ちと坊主をベッドに連れて行くから茶はそっちに持ってきてくれ!」
はいはい~とのんびりした声が聞こえたかと思えば僕の体は宙に浮いていた。何事かと思えばおじいさんに抱き上げられていた。しかも俗にいうお姫様抱っことかいうもの。確かにおじいさんの体格はいいものだが、平均身長体重の僕をこんな軽々と持ち上げてしまうとは。一瞬唖然としてしまった。
「ええ!? だ、大丈夫ですって! 降ろしてください!」
「ええい! 暴れるな! 落としてしまうぞ!」
なんかもう色々ショックだった。それなりの体格だったはずなのにこんなにも軽々と持ち上げられ、挙句の果てにはお姫様抱っこだなんて。ヤバい、考えたら余計と具合悪くなったかも。もうそこからは大人しくその体勢のままベッドまで連れていかれそのまま降ろされた。敷布団も掛布団もふかふかで疲れた体と頭は今にもこのまま寝たいとシグナルを出している。でも人様の家で寝る訳にもいかない。僕は必死にくっつきそうな瞼を持ち上げる。それもまたおじいさんにばれてしまったのか「寝ていいぞ、坊主。疲れただろう。茶は後で飲もう。」と優しく頭をなでる。
その頭をなでられた感覚と森で目が覚める前に見た夢と重なり、落ちてゆく瞼の裏に涙が溜まる。そして2つの瞼がくっついた時、溜まってしまった涙が一粒流れる。
お父さん、親不孝者でごめんなさい。そう思った時には深い眠りに落ちていた。
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