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6話:心配と喜び
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ほかほかのシチューを食べて、体も温まった頃合いを見ておじいさんが尋ねてきた。
「さてと、坊主。何があったか話せるか?まだ辛いなら話さなくていいが」
「いえ、大丈夫です。ただ……」
言い淀んでしまう。何があったか、そしてこの世界がどこなのか大体検討が付いたが、僕自身が信じられてない。そんな状況の話を二人に話したところで信じて貰えるのか。嘘つきとして追い出されたら僕は行く当てがなくなる。行く当てがないということは野宿すると言うということ。野宿するということは出会った時に言っていたモンスターの餌食になると言うこと。僕は二度死ぬと言うこと。
「坊主、大丈夫か!顔が真っ青だぞ。やっぱり言わなくていい、言いたくなった時に言えばいい」
「いいえ!!言います……ただ、信じられない話、だからなんて思われるか心配で」
信じて貰えるか、追い出されないか、この二人に見捨てられたら、考えれば考えるほど嫌な想像をしてしまい暖まったはずの体が震えてくる。思考の渦に飲まれていたら背中に暖かいものが添えられた。
「大丈夫よ、ここには貴方を傷つける人も怒る人も信じない人も居ないわ。安心して良い場所よ」
背中をそっとなでてくれ暖かい言葉をかけてくれたのはおばあさんだった。
「大丈夫よ、大丈夫」
背中がだんだん暖かくなる。そうだ、この人たちは信じても大丈夫な人だ。僕がそう思ったじゃないか、自分を信じろ!
「少し長くなるんですけど、話しても良いですか……」
「ああ、もちろんだ。何日でも何年でも付き合うぞ!」
「流石にそこまでは長くありませんよ」
思わず笑ってしまう。大丈夫、大丈夫だ。
僕は話した。子供を速い乗り物から救い上げた時、代りに自分がその速い乗り物に轢かれてしまったこと、その時確実に死んでしまった事。そうして目が覚めた時にはあの森にいたこと。そしてこの部屋にあるものの大半が死ぬ前にいた世界で見たことがないこと。乾燥している植物もランプも本棚にある本の表紙の文字も。全てあのゲームにそっくりだと言いたかったがそこはグッと堪え、試しに僕は日本語を書いてみる。おじいさんとおばあさんは首をかしげる。声を揃えて「見たことない文字」だと。
「これが事の顛末です。信じられないですよね、だって僕自身信じられないんですから。未だに夢でも見てるのか変なあの世に来てしまったのかと」
改めて話すと本当に信じられない。僕は確かに死んで、こうして生きているなんて。信じられなさ過ぎて笑いがこみ上げてくる。自然と頬は緩み、眉が下がる。きっとこれが苦笑いという奴なのだろう。人は本当に困った時に笑うものなのか、二人があっけにとられているのを他人事のように見て、他人事のように考える。話してしまえば決心も付く。さてさて、これで追い出されてからどうしようか、そんな事を考え始めようとした時おじいさんが口を開く。
「じゃあ、坊主は異界ってやつから来たって事か。いやはや、異界なんて御伽話だと思っておったが」
そこまで言われ、僕は少し縮こまる、が次の言葉にばっと顔を上げる。
「そうしたら家も知識もないだろうに、家に住むか?御伽噺と坊主からじゃ到底勇者なんて大それたものじゃないだろうから王都に出向く必要もないだろう」
ガハハ!と笑うおじいさんにそんな失礼なこと言うんじゃありません!とおじいさんを叩くおばあさん。
「ごめんなさいね、坊や。じいさんにはデリカシーなんて物なくてねぇ。でもおじいさんの言うとおり、行く当てがないでしょう、こんな所で良ければいてもいいのよ」
会ってから数時間しかたってないけど二人の温かさは確かだった。自分を信じてよかった。なによりこの二人が優しい人で良かった、心の底からほっとする。でもこんな優しい人の世話になってもいいのだろうか。この世界の事をよく知らない僕が出来る事なんてとても少ない。ただの穀潰しになってしまうのではないだろうか。
「この家に住むのは嫌か?」
「いえ!そんな事はないですけど、もうこんなにも良くして貰っているのに住まわせて頂くなんて……。それに僕に出来る事なんてとても少ないだろうし……」
「まだ子供なんだからそんなこと考えなくてもいいさ!」
「あ、そのことなんで」「でもどうしてもやりたいってのなら、いい仕事がある」
自分が子供でなく、もう20歳の成人だと伝えようとしたら遮られてしまったが、仕事があるというなら食いつくしかなかった。
「どんな仕事ですか!?」
「それはな、わしらの仕事の手伝いだ。おーっと、そんなこと、と思うなかれよ!わしらはこの世界でも少ないポーション作りの職人だ!その手伝いはとても厳しいものだぞ」
この老夫婦がポーション作りの職人!?と思わず叫びそうになったが、なんとか飲み込む。この世界が本当にあのゲーム、「レドクロ」の世界だとしたらポーションを作る人は世界でも数えるほどしかおらず、その殆どが王都に集中しているはずなのに。そして主人公が教わるポーションもその王都の王宮薬師から教えられるはずだ。この時点で「レドクロ」の世界だとしても自分は主人公でないことが殆ど確定してしまう事に少し落胆してしまう。が、僕は自他共に認めるポーション廃人だ。レドクロでどれだけのポーションを作り上げてきたことか。それを間近で手伝いながら見られるなんて夢みたいだ!
「ぜひ、ぜひ!手伝わしてください!」
気が付いたらそう叫んでいた。
「ハハハ!殊勝な坊主だ!住む場所よりもポーション手伝いに喜ぶなんてな」
そう言われ頭を撫でられた僕は色々な意味で顔を真っ赤にし俯く事しか出来なかった。だが一つ誤解を解かなくては。
「僕、もう20歳です……」
「さてと、坊主。何があったか話せるか?まだ辛いなら話さなくていいが」
「いえ、大丈夫です。ただ……」
言い淀んでしまう。何があったか、そしてこの世界がどこなのか大体検討が付いたが、僕自身が信じられてない。そんな状況の話を二人に話したところで信じて貰えるのか。嘘つきとして追い出されたら僕は行く当てがなくなる。行く当てがないということは野宿すると言うということ。野宿するということは出会った時に言っていたモンスターの餌食になると言うこと。僕は二度死ぬと言うこと。
「坊主、大丈夫か!顔が真っ青だぞ。やっぱり言わなくていい、言いたくなった時に言えばいい」
「いいえ!!言います……ただ、信じられない話、だからなんて思われるか心配で」
信じて貰えるか、追い出されないか、この二人に見捨てられたら、考えれば考えるほど嫌な想像をしてしまい暖まったはずの体が震えてくる。思考の渦に飲まれていたら背中に暖かいものが添えられた。
「大丈夫よ、ここには貴方を傷つける人も怒る人も信じない人も居ないわ。安心して良い場所よ」
背中をそっとなでてくれ暖かい言葉をかけてくれたのはおばあさんだった。
「大丈夫よ、大丈夫」
背中がだんだん暖かくなる。そうだ、この人たちは信じても大丈夫な人だ。僕がそう思ったじゃないか、自分を信じろ!
「少し長くなるんですけど、話しても良いですか……」
「ああ、もちろんだ。何日でも何年でも付き合うぞ!」
「流石にそこまでは長くありませんよ」
思わず笑ってしまう。大丈夫、大丈夫だ。
僕は話した。子供を速い乗り物から救い上げた時、代りに自分がその速い乗り物に轢かれてしまったこと、その時確実に死んでしまった事。そうして目が覚めた時にはあの森にいたこと。そしてこの部屋にあるものの大半が死ぬ前にいた世界で見たことがないこと。乾燥している植物もランプも本棚にある本の表紙の文字も。全てあのゲームにそっくりだと言いたかったがそこはグッと堪え、試しに僕は日本語を書いてみる。おじいさんとおばあさんは首をかしげる。声を揃えて「見たことない文字」だと。
「これが事の顛末です。信じられないですよね、だって僕自身信じられないんですから。未だに夢でも見てるのか変なあの世に来てしまったのかと」
改めて話すと本当に信じられない。僕は確かに死んで、こうして生きているなんて。信じられなさ過ぎて笑いがこみ上げてくる。自然と頬は緩み、眉が下がる。きっとこれが苦笑いという奴なのだろう。人は本当に困った時に笑うものなのか、二人があっけにとられているのを他人事のように見て、他人事のように考える。話してしまえば決心も付く。さてさて、これで追い出されてからどうしようか、そんな事を考え始めようとした時おじいさんが口を開く。
「じゃあ、坊主は異界ってやつから来たって事か。いやはや、異界なんて御伽話だと思っておったが」
そこまで言われ、僕は少し縮こまる、が次の言葉にばっと顔を上げる。
「そうしたら家も知識もないだろうに、家に住むか?御伽噺と坊主からじゃ到底勇者なんて大それたものじゃないだろうから王都に出向く必要もないだろう」
ガハハ!と笑うおじいさんにそんな失礼なこと言うんじゃありません!とおじいさんを叩くおばあさん。
「ごめんなさいね、坊や。じいさんにはデリカシーなんて物なくてねぇ。でもおじいさんの言うとおり、行く当てがないでしょう、こんな所で良ければいてもいいのよ」
会ってから数時間しかたってないけど二人の温かさは確かだった。自分を信じてよかった。なによりこの二人が優しい人で良かった、心の底からほっとする。でもこんな優しい人の世話になってもいいのだろうか。この世界の事をよく知らない僕が出来る事なんてとても少ない。ただの穀潰しになってしまうのではないだろうか。
「この家に住むのは嫌か?」
「いえ!そんな事はないですけど、もうこんなにも良くして貰っているのに住まわせて頂くなんて……。それに僕に出来る事なんてとても少ないだろうし……」
「まだ子供なんだからそんなこと考えなくてもいいさ!」
「あ、そのことなんで」「でもどうしてもやりたいってのなら、いい仕事がある」
自分が子供でなく、もう20歳の成人だと伝えようとしたら遮られてしまったが、仕事があるというなら食いつくしかなかった。
「どんな仕事ですか!?」
「それはな、わしらの仕事の手伝いだ。おーっと、そんなこと、と思うなかれよ!わしらはこの世界でも少ないポーション作りの職人だ!その手伝いはとても厳しいものだぞ」
この老夫婦がポーション作りの職人!?と思わず叫びそうになったが、なんとか飲み込む。この世界が本当にあのゲーム、「レドクロ」の世界だとしたらポーションを作る人は世界でも数えるほどしかおらず、その殆どが王都に集中しているはずなのに。そして主人公が教わるポーションもその王都の王宮薬師から教えられるはずだ。この時点で「レドクロ」の世界だとしても自分は主人公でないことが殆ど確定してしまう事に少し落胆してしまう。が、僕は自他共に認めるポーション廃人だ。レドクロでどれだけのポーションを作り上げてきたことか。それを間近で手伝いながら見られるなんて夢みたいだ!
「ぜひ、ぜひ!手伝わしてください!」
気が付いたらそう叫んでいた。
「ハハハ!殊勝な坊主だ!住む場所よりもポーション手伝いに喜ぶなんてな」
そう言われ頭を撫でられた僕は色々な意味で顔を真っ赤にし俯く事しか出来なかった。だが一つ誤解を解かなくては。
「僕、もう20歳です……」
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