7 / 47
内宇宙へ……!
しおりを挟む
我がヒロインの脳裡に展開するイメージや、おしゃべりおしゃべりおしゃべりなどは、木偶の坊の私などには目まぐるしくて、ついていけないところも多々あって……でもでも、音符のひとつひとつの全てがクリアに聞き取れていなくても、音楽を楽しむことはできるでしょう? リズムに弾んでメロディーに浸り、全身で幸福を感じることはできるでしょう?
私にはヒロインの心の中で揺らめき燃える炎が見えるし、温かさを感じ取れるし、おしゃべりが楽しい音楽に聞こえるし、素晴らしいコンサート会場の特等席に座らせてもらっているような気持ちになるのだ。ヒロインの奏でる音楽が快い。
実は私にはまわりの様子を感じ取る能力はあまりないのだ。ただの鉄の箱みたいなもの。でも夜には私の上に星空が広がることは知っている。しじみさまの生きる街が広がることを知っている。しじみさまの生きる時間が流れ、季節が巡っていることを知っている。しじみさまが好きなそれらを、しじみさまから見せられ、聞かされ、教えられて知っているのだ。
正直な話、星に関心はなかった。私と星が関わったことはなかった。我がヒロインは、だけど星が大好き。彼女のあとを追いかけて、少しでも星に近づいてみようと思う。
その前に、しなければならない事がある。
微力だけど、我がヒロインを救うために。
私に力を貸してほしい、誰でも歓迎だ。
私は先に行ってるから……。
しじみさまは下校中に異形の生物が街を歩いているのを見つけてしまった。すみません、敬称略でいきますね。敬愛の念は変わりません。しじみはその生物を追いかけた。まるでかわいい仔犬を見つけたみたいに、大喜びで。すぐそばには頼もしいあっちゃんもいたのに。いっしょにクラスメートの男子もいて、そいつは若干スケベでも、悪気は無さそうに見えたのだが、ボディガードになりそうなふたりを連れずにしじみは行ってしまったのだ。
まことに奇怪な生物だった。
「やめろ、すぐに引き返せ」私は叫んだが、彼女には声が届かなかったのだ。心の底には恐れの感情をいだいていたのに、追跡をやめない。好奇心の強いしじみ。好奇心に衝き動かされるしじみ。
誰にも止められない。
彼女に万が一、危険が迫ったときに駆けつけることも、身を挺することもできない私だが、だからといってかまえていることはできない。
私にできることは何かないか。
コンサート会場の席から私は立ち上がる。
幸い、あくまで僥倖に過ぎないと思うのだが、我がヒロインに危害を加えられてはいない。いっしょにバーガーを食べているだけである。そのまま何事もなくしじみが宇宙人と離れてくれればいいのだが、彼女は席を立とうとはしない。
しじみは本物の宇宙人と話ができることに興奮状態だ。こんなにはしゃぐ彼女を見たことがない。彼女が喜んでいるのにしもべの私が不満をとなえることもないのだが……勝手にしもべ宣言してしまった、その入れ込みように不安を覚えるのだ。
しじみは私が彼女に取り憑いているみたいに言ってたけど、彼女の周辺を駆け回るムシムシには違いない。私には彼女の心の中に燃える炎が見えるが、私からのメッセージはあまり伝わっていないみたいだ。彼女だけではなく、誰の心にも揺らぎ燃える炎があるのに、あのザリガニの殻の中には暗い闇があるばかりだ。空っぽなのだ。
映画に出てくるゾンビってこんなのではないかな。何も感じることもなく、考えることもなく、表面的に受け答えはできる。私が怖いと思うのはここだ。しじみはこの怪物が大好きになってしまった。彼女の気持ちと空っぽの闇との格差。
私はしじみに警告をするために、客席を立ち彼女のステージに上がった。注意やアドバイスではなく、警告をするためだ。
真っ暗な部屋の周辺に、小さなLEDがたくさん散りばめられている。あれ。しじみさまの心の中にはいったつもりなのになぁ。なぜ、こんな気味の悪いところに来てしまったのだろう。間違えちゃったかな?
「しじみさま。しじみさま。……おーい、おーい」
このまま進むべきか、撤退すべきか。いきなり進退極まってどーすんだ、俺。やっぱりあっちゃんを呼んでくるべきかしら。もっともあのお嬢さんをどうやってこの世界に連れてくるのか、やり方がわかりません。
その時、彼方に銀色に輝く何かが見えた。それが何なのかわからないので、大きさもわからない。だから彼方にあるのかどうかも本当はわからない。そばにあるのかも。
とにかく、なんかが見えた。
……。
私はぞっとした。やっぱり私は何の役にも立たないんじゃないかしら、そう、思い当たったからである。どうしよ。
しかし、銀色の何かは徐々に大きくなってきた。あるいは近づいてきた。それは最初、瞳のない目の形をしていた。
私に迫ってきた。
私に衝突する前に向きを変える。
横幅より前後が長い、全体が滑らかな曲線で構成された、なにか。前より後ろの方が細くなっている。前後を輪切りにするラインが何本もはいっている。そのフォルムはコロッケか笹かまぼこに似ている。私の描写は完璧だな。
その側面にはピカピカ光るイルミネーションが並んでいた。早くもクリスマス気分。
「はーい。あたしに呼びかけたのはどなた?」
懐かしい声。笹かまぼこが私に声をかけたのではなく、あの中にそのひとがいるってことだよね。
「はい、はい、はい。私です。私が呼びました」
私は嬉しくて返事をした。その声は間違いない。やっぱり私はしじみさまの心の中に到達できたのだ。
「ごめーん。あなたを捕捉できませーん。そこらをいっぺんに収容するわね。しばしお待ちを……」
「私はどうすればいいんですか」
「……。そうねえ。じゃあ、あなたの十八番でも歌っててください」
「は?」
予想外のお答え。歌わなければ収容してもらえないのか。得意どころか私は歌なんて何も知らないよ。頭が真っ白になるってこのことか? 次々と難問が襲いかかるぅ。
ピンポロピン・ピンポロピン……
私の唯一発することのできる電子音のメロディー。これでよろしいのでしょうか、しじみさま。
笹かまぼこの下部が膨らみ出した。一見金属のような光沢なのに、かなりしなやかな物質でできているようだ。もう一度こちらを向く。膨れ上がったあたりに大きな楕円形の口が開いてるではないか。いや、本当に口のように見えるんだよ。笹かまぼこがこちらに寄ってくる。食われる! って思ったもの、でも私は恐怖をこらえ、ピンポロピン・ピンポロピン……は止めずに待ち受ける。
それで大口が閉じると私は壁が白いばかりの何も無い部屋に残された。壁と床の境も白い曲面になっていたから区別がつかない。あたかも白いタマゴの殻の中に閉じ込められたようなものです。デカい鳥が産んだんだね。すると、シューという音が響く。その音がだんだん低くなっていく。音が止む。
壁の一部が小さな口を開け、彼女が飛び込んできた。下校時のままの制服姿のしじみだ。
「あたしの船にようこそ! よくいらっしゃいました。歓迎……」
「ピンポロピン・ピンポロピン……」
しじみは口をつぐむ。
「やだ。誰もいないじゃん。捕まえそこねちゃった」
出入り口からまた出ていきそうになる。あ、待ってピンポロピン。
「え。いるの」キョロキョロ「え。どこ、どこ」キョロキョロ。
やがてしじみは私に目を止めて、思い切り眉にしわをよせて、眼鏡を取ってまたかけて、キョロキョロ。
「あの、そのあたり空気がもやもやしてるんですけど、白い壁の前でもやもやされてもわかりにくくて、あの」
「はいはいはい、います、ここにいます、はいはい」
はっきりと私の姿が見えないらしい。
ぽかんとするしじみ。
「あ、どうぞ、ブリッジにいらして、どうぞどうぞ」
「もやもやして、気配だけのひと。あらためてようこそ、あたしの船へ」
船。わかったぞ。宇宙船なんだ。私が乗せてもらったこれって宇宙船なんだ。
「あたしの船に招いたお客様ってあなたが初めて、ちょっとどきどきしているの」
「私もひとと話をするのが初めてで、どきどきしています。こんにちは、はじめまして」
「はじめまして」
「でも、しじみさまのことはよく知ってます」
「は?」
「しじみさまのところにたどり着けてよかったです」
「はあ?」
宇宙船の内部というと、精密な電子機器がぎっしりというイメージなんだけど、彼女の船はかわいいお部屋である。赤いカーペットに落ち着いた色調の木の壁。ただし壁の一面だけは大きな窓になっている。部屋の真ん中にはどっしりとした背もたれとひじ掛けのついた椅子。安楽椅子。テーブルはなく、椅子は窓に向いている。あとは左右の壁にやはり木の本棚とライティングデスク。ニスの色がつややかだ。
不思議なことに本当のしじみの部屋とはまるで違う。スチールのロフトベッドの下に学習机、ホームセンターで買ったカラーボックスに本がぎっしり。入り切らない本が部屋のあちこちに積み上がっているのだった。
「あ、とりあえずこの椅子に座ってて」
真ん中の安楽椅子を指す。だが待て、ここが船だとすると、これはキャプテンの席ではないか。それにそもそも私は座る必要がないのだ。丁重にことわる。「そうなの。ではあたしが座らせていただきます」
「きちんと歌える歌がなくて、困ってしまいました。歌を知らないんです。なぜあそこで歌が必要なんですか」
「あ……冗談だったのに。ずっとピンポロピンさせてごめんね」
あ。そんな気もしてたんだけど。
「それで、ゆっくりあいさつもしてられないんです」
「でも、あの電子音の口真似、すごいじゃない。どうしたらあんな声出せるの。絶対あれウケるよ」
「そうですか」褒められてちょっとうれしいけど、宴会芸披露しに来たわけではないのでピンポロピン。「ザリガニです、私はザリガニの」
「ザリガニのものまね? 芸達者なのね」
ではなくて、しじみさま、あなたが今この瞬間にも話をしているザリガニです。宇宙人です。今すぐやつから離れてください。できるものなら私が退治してやりたいが、ともかくしじみさま、危険です。逃げて。逃げてください。
私にはヒロインの心の中で揺らめき燃える炎が見えるし、温かさを感じ取れるし、おしゃべりが楽しい音楽に聞こえるし、素晴らしいコンサート会場の特等席に座らせてもらっているような気持ちになるのだ。ヒロインの奏でる音楽が快い。
実は私にはまわりの様子を感じ取る能力はあまりないのだ。ただの鉄の箱みたいなもの。でも夜には私の上に星空が広がることは知っている。しじみさまの生きる街が広がることを知っている。しじみさまの生きる時間が流れ、季節が巡っていることを知っている。しじみさまが好きなそれらを、しじみさまから見せられ、聞かされ、教えられて知っているのだ。
正直な話、星に関心はなかった。私と星が関わったことはなかった。我がヒロインは、だけど星が大好き。彼女のあとを追いかけて、少しでも星に近づいてみようと思う。
その前に、しなければならない事がある。
微力だけど、我がヒロインを救うために。
私に力を貸してほしい、誰でも歓迎だ。
私は先に行ってるから……。
しじみさまは下校中に異形の生物が街を歩いているのを見つけてしまった。すみません、敬称略でいきますね。敬愛の念は変わりません。しじみはその生物を追いかけた。まるでかわいい仔犬を見つけたみたいに、大喜びで。すぐそばには頼もしいあっちゃんもいたのに。いっしょにクラスメートの男子もいて、そいつは若干スケベでも、悪気は無さそうに見えたのだが、ボディガードになりそうなふたりを連れずにしじみは行ってしまったのだ。
まことに奇怪な生物だった。
「やめろ、すぐに引き返せ」私は叫んだが、彼女には声が届かなかったのだ。心の底には恐れの感情をいだいていたのに、追跡をやめない。好奇心の強いしじみ。好奇心に衝き動かされるしじみ。
誰にも止められない。
彼女に万が一、危険が迫ったときに駆けつけることも、身を挺することもできない私だが、だからといってかまえていることはできない。
私にできることは何かないか。
コンサート会場の席から私は立ち上がる。
幸い、あくまで僥倖に過ぎないと思うのだが、我がヒロインに危害を加えられてはいない。いっしょにバーガーを食べているだけである。そのまま何事もなくしじみが宇宙人と離れてくれればいいのだが、彼女は席を立とうとはしない。
しじみは本物の宇宙人と話ができることに興奮状態だ。こんなにはしゃぐ彼女を見たことがない。彼女が喜んでいるのにしもべの私が不満をとなえることもないのだが……勝手にしもべ宣言してしまった、その入れ込みように不安を覚えるのだ。
しじみは私が彼女に取り憑いているみたいに言ってたけど、彼女の周辺を駆け回るムシムシには違いない。私には彼女の心の中に燃える炎が見えるが、私からのメッセージはあまり伝わっていないみたいだ。彼女だけではなく、誰の心にも揺らぎ燃える炎があるのに、あのザリガニの殻の中には暗い闇があるばかりだ。空っぽなのだ。
映画に出てくるゾンビってこんなのではないかな。何も感じることもなく、考えることもなく、表面的に受け答えはできる。私が怖いと思うのはここだ。しじみはこの怪物が大好きになってしまった。彼女の気持ちと空っぽの闇との格差。
私はしじみに警告をするために、客席を立ち彼女のステージに上がった。注意やアドバイスではなく、警告をするためだ。
真っ暗な部屋の周辺に、小さなLEDがたくさん散りばめられている。あれ。しじみさまの心の中にはいったつもりなのになぁ。なぜ、こんな気味の悪いところに来てしまったのだろう。間違えちゃったかな?
「しじみさま。しじみさま。……おーい、おーい」
このまま進むべきか、撤退すべきか。いきなり進退極まってどーすんだ、俺。やっぱりあっちゃんを呼んでくるべきかしら。もっともあのお嬢さんをどうやってこの世界に連れてくるのか、やり方がわかりません。
その時、彼方に銀色に輝く何かが見えた。それが何なのかわからないので、大きさもわからない。だから彼方にあるのかどうかも本当はわからない。そばにあるのかも。
とにかく、なんかが見えた。
……。
私はぞっとした。やっぱり私は何の役にも立たないんじゃないかしら、そう、思い当たったからである。どうしよ。
しかし、銀色の何かは徐々に大きくなってきた。あるいは近づいてきた。それは最初、瞳のない目の形をしていた。
私に迫ってきた。
私に衝突する前に向きを変える。
横幅より前後が長い、全体が滑らかな曲線で構成された、なにか。前より後ろの方が細くなっている。前後を輪切りにするラインが何本もはいっている。そのフォルムはコロッケか笹かまぼこに似ている。私の描写は完璧だな。
その側面にはピカピカ光るイルミネーションが並んでいた。早くもクリスマス気分。
「はーい。あたしに呼びかけたのはどなた?」
懐かしい声。笹かまぼこが私に声をかけたのではなく、あの中にそのひとがいるってことだよね。
「はい、はい、はい。私です。私が呼びました」
私は嬉しくて返事をした。その声は間違いない。やっぱり私はしじみさまの心の中に到達できたのだ。
「ごめーん。あなたを捕捉できませーん。そこらをいっぺんに収容するわね。しばしお待ちを……」
「私はどうすればいいんですか」
「……。そうねえ。じゃあ、あなたの十八番でも歌っててください」
「は?」
予想外のお答え。歌わなければ収容してもらえないのか。得意どころか私は歌なんて何も知らないよ。頭が真っ白になるってこのことか? 次々と難問が襲いかかるぅ。
ピンポロピン・ピンポロピン……
私の唯一発することのできる電子音のメロディー。これでよろしいのでしょうか、しじみさま。
笹かまぼこの下部が膨らみ出した。一見金属のような光沢なのに、かなりしなやかな物質でできているようだ。もう一度こちらを向く。膨れ上がったあたりに大きな楕円形の口が開いてるではないか。いや、本当に口のように見えるんだよ。笹かまぼこがこちらに寄ってくる。食われる! って思ったもの、でも私は恐怖をこらえ、ピンポロピン・ピンポロピン……は止めずに待ち受ける。
それで大口が閉じると私は壁が白いばかりの何も無い部屋に残された。壁と床の境も白い曲面になっていたから区別がつかない。あたかも白いタマゴの殻の中に閉じ込められたようなものです。デカい鳥が産んだんだね。すると、シューという音が響く。その音がだんだん低くなっていく。音が止む。
壁の一部が小さな口を開け、彼女が飛び込んできた。下校時のままの制服姿のしじみだ。
「あたしの船にようこそ! よくいらっしゃいました。歓迎……」
「ピンポロピン・ピンポロピン……」
しじみは口をつぐむ。
「やだ。誰もいないじゃん。捕まえそこねちゃった」
出入り口からまた出ていきそうになる。あ、待ってピンポロピン。
「え。いるの」キョロキョロ「え。どこ、どこ」キョロキョロ。
やがてしじみは私に目を止めて、思い切り眉にしわをよせて、眼鏡を取ってまたかけて、キョロキョロ。
「あの、そのあたり空気がもやもやしてるんですけど、白い壁の前でもやもやされてもわかりにくくて、あの」
「はいはいはい、います、ここにいます、はいはい」
はっきりと私の姿が見えないらしい。
ぽかんとするしじみ。
「あ、どうぞ、ブリッジにいらして、どうぞどうぞ」
「もやもやして、気配だけのひと。あらためてようこそ、あたしの船へ」
船。わかったぞ。宇宙船なんだ。私が乗せてもらったこれって宇宙船なんだ。
「あたしの船に招いたお客様ってあなたが初めて、ちょっとどきどきしているの」
「私もひとと話をするのが初めてで、どきどきしています。こんにちは、はじめまして」
「はじめまして」
「でも、しじみさまのことはよく知ってます」
「は?」
「しじみさまのところにたどり着けてよかったです」
「はあ?」
宇宙船の内部というと、精密な電子機器がぎっしりというイメージなんだけど、彼女の船はかわいいお部屋である。赤いカーペットに落ち着いた色調の木の壁。ただし壁の一面だけは大きな窓になっている。部屋の真ん中にはどっしりとした背もたれとひじ掛けのついた椅子。安楽椅子。テーブルはなく、椅子は窓に向いている。あとは左右の壁にやはり木の本棚とライティングデスク。ニスの色がつややかだ。
不思議なことに本当のしじみの部屋とはまるで違う。スチールのロフトベッドの下に学習机、ホームセンターで買ったカラーボックスに本がぎっしり。入り切らない本が部屋のあちこちに積み上がっているのだった。
「あ、とりあえずこの椅子に座ってて」
真ん中の安楽椅子を指す。だが待て、ここが船だとすると、これはキャプテンの席ではないか。それにそもそも私は座る必要がないのだ。丁重にことわる。「そうなの。ではあたしが座らせていただきます」
「きちんと歌える歌がなくて、困ってしまいました。歌を知らないんです。なぜあそこで歌が必要なんですか」
「あ……冗談だったのに。ずっとピンポロピンさせてごめんね」
あ。そんな気もしてたんだけど。
「それで、ゆっくりあいさつもしてられないんです」
「でも、あの電子音の口真似、すごいじゃない。どうしたらあんな声出せるの。絶対あれウケるよ」
「そうですか」褒められてちょっとうれしいけど、宴会芸披露しに来たわけではないのでピンポロピン。「ザリガニです、私はザリガニの」
「ザリガニのものまね? 芸達者なのね」
ではなくて、しじみさま、あなたが今この瞬間にも話をしているザリガニです。宇宙人です。今すぐやつから離れてください。できるものなら私が退治してやりたいが、ともかくしじみさま、危険です。逃げて。逃げてください。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる