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りょう⑧
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パス子が海に飛んだのは時間が止まっている間だったので、他のひとたちにはパス子が突然消えたように見えただろう。これがパス子の忍術のタネかもしれない。
ムササビのように飛来する銀ちゃんを避ける余裕はオレたちにあった。少し先の甲板に銀ちゃんは着地。ホントは腹から落下したのだ。銀ちゃんのカエル脚がかわいい。
カミナリを落としすぎてエネルギー不足になったのだろう。尻をついたままで悔しがる。「チックショウ、タコめ、タ~コ~め~!」今度来やがったらただじゃすまさね~。
たぶん、パス子は戻っては来ないだろう。淋しい。そんなふうに思っている自分にオレは驚いた。
大声で触れ歩くのも面倒なので、銀ちゃんにだけ教えてやる。
「結局あれはパス子のハッタリだよ。みんなを殺すつもりはなかったんだ」
なんでわかるの?
「本人が言ってた」
いつ?
「パス子は時間を止められるんだよ。時間を操作できるんだ」
ややこしい話なので銀ちゃんはなかなか理解してくれなかったけどね。でも、あんたたちもタイムマシン持ってるでしょ。
ねーちゃんに「タイムパラドックス」の説明をしたのは銀ちゃんじゃないの。
そのねーちゃんはハンカチを手にオレに迫ってきたから、ハンカチを奪い取る。嬉しいけどね~顔ぐらい自分でふけるわい。こんな時にもポッケにハンカチ忍ばせてるねーちゃんすごい。ハンカチは真っ黒になる。
ありゃあ。
丁寧にたたんでお返しする。
パス子もう帰ってこないよ。
あいつ、何をしたかったんだろう?
そばにいた真智やしじみたちに言う。とにかく何かしらしゃべりたかっただけなんだ。明確な答えなどパス子に聞かなきゃわからないだろ。
「そうねえ」
真智も首をかしげる。なんだか船全体が放心状態みたい。気の抜けた太古の海、日差しの強い夏の午後。
「船にある特別なタイムゲートを壊したかった、のかもねぇ」
と真智。
なんとなくといった口調だったけど、座り込んでいた銀ちゃん、反応する。パッと立ち上がったから充電0パーセントではなかったんだ。
「誰からそれを聞いたの!」
オレらもびっくりする勢いだ。
「いや、別に……でも、この船にもタイムゲートあるんでしょ」真智は当惑顔。
「船のタイムゲートのことは秘密だったのよ」
おいおい、思いっきり肯定してるじゃないか。銀ちゃんの様子にこちらに顔を向けるひとも何人もいるぞ。
「だって、竹箒……」真智はふと言葉を切り、銀ちゃんの顔を見すえた。
「箒が欲しいの~ってあむるのムチャぶりに応えて用意してくれたのよね。こんな船にも竹箒なんてあるんだね、あむるは喜んでたけど。掃除用具はあるかもしれないけど……こんなタ・ケ・ボ・ウ・キあるわけないじゃない。四本も。ハリイくんはあわてて時を越えて竹箒を取りにいったんでしょうね。案外、うちの学校のものかな。船にタイムゲートがあることは誰でもわかる」
あ、真智いいきったぞ。そんなこと、夢にも考えなかった、オレ。
「パス子がタイムゲートを破壊したかったら機会はいくらでもあったはず。わざわざこのタイミング。ひとやパキケトゥスもなるべくいない方が楽なのに」
「大勢を殺そうと……」
「ナンセンス。魚雷でも巡航ミサイルでも強力なのを一発、でカタがついちゃう。船にあるタイムゲートはハリイくんたちの世界に通じているのね、それを破壊するかその世界に潜入するのが目的。動物を使っての襲撃なんて派手だけど効果的ではない。みんなの目を引きつけるためなんだ」
ねーちゃんはオレの腕をつかんだ。
「何、あの子、りょうの同級生?」
今さらなんだ?
「まるでアケチミツヒデみたいじゃない」
誰だって?
「ほらテレビでよくやってる名探偵」
……ああ。たぶん、名前間違えてるんだろうけど、誰のことを言ってるのかわからない。コナンならわかるんだが。
「すぐに逃げられたのにあえてパキケに咬まれたままでいたのね」
抵抗しないで殴らせていたのか。ハードボイルドなパス子。オレも一発殴ったっけ。やんなきゃよかったな。
「もちろんタイムゲートに近づいたのはパス子ではなく」
「パス子ちゃんのお友達!」
しじみが叫ぶ。こいつは言葉の選択がおかしい。
「待てよ、じゃあまだ船にタコは残っているのか」やっとわかってきたよ、オレ。
「だからハリイくん、出てきていないのね?」ずみちゃんも加わる。そういやあいつの顔がない。
「あむあむがいない!」としじみ。
そういやあむるの顔も……ふたりは船内に残っているんだ。
真智はドア・ハッチに向かっている。待て名探偵。
「ロックされてるわ」
ドアの前で当惑の銀ちゃんだ。内側から閉めたやつがいるんだ。「畜生!」
苛立ってドアノブの音をたてる。
「だったらなかに行って開けてきて」
平静な真智。「操舵室の窓から入れるでしょ」
一瞬ぽかんとする銀ちゃん。「うん。わかった」彼女は舞い上がった。
○お話は未完ですが、未完という完結の仕方だと思ってくださいね。
ありがとうございました。
ムササビのように飛来する銀ちゃんを避ける余裕はオレたちにあった。少し先の甲板に銀ちゃんは着地。ホントは腹から落下したのだ。銀ちゃんのカエル脚がかわいい。
カミナリを落としすぎてエネルギー不足になったのだろう。尻をついたままで悔しがる。「チックショウ、タコめ、タ~コ~め~!」今度来やがったらただじゃすまさね~。
たぶん、パス子は戻っては来ないだろう。淋しい。そんなふうに思っている自分にオレは驚いた。
大声で触れ歩くのも面倒なので、銀ちゃんにだけ教えてやる。
「結局あれはパス子のハッタリだよ。みんなを殺すつもりはなかったんだ」
なんでわかるの?
「本人が言ってた」
いつ?
「パス子は時間を止められるんだよ。時間を操作できるんだ」
ややこしい話なので銀ちゃんはなかなか理解してくれなかったけどね。でも、あんたたちもタイムマシン持ってるでしょ。
ねーちゃんに「タイムパラドックス」の説明をしたのは銀ちゃんじゃないの。
そのねーちゃんはハンカチを手にオレに迫ってきたから、ハンカチを奪い取る。嬉しいけどね~顔ぐらい自分でふけるわい。こんな時にもポッケにハンカチ忍ばせてるねーちゃんすごい。ハンカチは真っ黒になる。
ありゃあ。
丁寧にたたんでお返しする。
パス子もう帰ってこないよ。
あいつ、何をしたかったんだろう?
そばにいた真智やしじみたちに言う。とにかく何かしらしゃべりたかっただけなんだ。明確な答えなどパス子に聞かなきゃわからないだろ。
「そうねえ」
真智も首をかしげる。なんだか船全体が放心状態みたい。気の抜けた太古の海、日差しの強い夏の午後。
「船にある特別なタイムゲートを壊したかった、のかもねぇ」
と真智。
なんとなくといった口調だったけど、座り込んでいた銀ちゃん、反応する。パッと立ち上がったから充電0パーセントではなかったんだ。
「誰からそれを聞いたの!」
オレらもびっくりする勢いだ。
「いや、別に……でも、この船にもタイムゲートあるんでしょ」真智は当惑顔。
「船のタイムゲートのことは秘密だったのよ」
おいおい、思いっきり肯定してるじゃないか。銀ちゃんの様子にこちらに顔を向けるひとも何人もいるぞ。
「だって、竹箒……」真智はふと言葉を切り、銀ちゃんの顔を見すえた。
「箒が欲しいの~ってあむるのムチャぶりに応えて用意してくれたのよね。こんな船にも竹箒なんてあるんだね、あむるは喜んでたけど。掃除用具はあるかもしれないけど……こんなタ・ケ・ボ・ウ・キあるわけないじゃない。四本も。ハリイくんはあわてて時を越えて竹箒を取りにいったんでしょうね。案外、うちの学校のものかな。船にタイムゲートがあることは誰でもわかる」
あ、真智いいきったぞ。そんなこと、夢にも考えなかった、オレ。
「パス子がタイムゲートを破壊したかったら機会はいくらでもあったはず。わざわざこのタイミング。ひとやパキケトゥスもなるべくいない方が楽なのに」
「大勢を殺そうと……」
「ナンセンス。魚雷でも巡航ミサイルでも強力なのを一発、でカタがついちゃう。船にあるタイムゲートはハリイくんたちの世界に通じているのね、それを破壊するかその世界に潜入するのが目的。動物を使っての襲撃なんて派手だけど効果的ではない。みんなの目を引きつけるためなんだ」
ねーちゃんはオレの腕をつかんだ。
「何、あの子、りょうの同級生?」
今さらなんだ?
「まるでアケチミツヒデみたいじゃない」
誰だって?
「ほらテレビでよくやってる名探偵」
……ああ。たぶん、名前間違えてるんだろうけど、誰のことを言ってるのかわからない。コナンならわかるんだが。
「すぐに逃げられたのにあえてパキケに咬まれたままでいたのね」
抵抗しないで殴らせていたのか。ハードボイルドなパス子。オレも一発殴ったっけ。やんなきゃよかったな。
「もちろんタイムゲートに近づいたのはパス子ではなく」
「パス子ちゃんのお友達!」
しじみが叫ぶ。こいつは言葉の選択がおかしい。
「待てよ、じゃあまだ船にタコは残っているのか」やっとわかってきたよ、オレ。
「だからハリイくん、出てきていないのね?」ずみちゃんも加わる。そういやあいつの顔がない。
「あむあむがいない!」としじみ。
そういやあむるの顔も……ふたりは船内に残っているんだ。
真智はドア・ハッチに向かっている。待て名探偵。
「ロックされてるわ」
ドアの前で当惑の銀ちゃんだ。内側から閉めたやつがいるんだ。「畜生!」
苛立ってドアノブの音をたてる。
「だったらなかに行って開けてきて」
平静な真智。「操舵室の窓から入れるでしょ」
一瞬ぽかんとする銀ちゃん。「うん。わかった」彼女は舞い上がった。
○お話は未完ですが、未完という完結の仕方だと思ってくださいね。
ありがとうございました。
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