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りょう⑦
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「さてパス子。あきらめて全てを話しなさい」
ここは自分が仕切るべきと思い直したのだろう、銀ちゃんはお尻の下に声をかける。具体的にパス子が何をしたいのか、何を企んでいるのかわかってはいないのだ。船に乗り込む全員の生命にかかわりなく破壊すると宣言した。ただ、それだけなのだ。
そのメッセージは誰の耳にも明瞭だった。パス子の声は大きいのか。どうも違うようだ、パス子の声は耳で聞いているんじゃない。テレパシーなんだ。
あまりにも自然に胸の底にとどくものだから、音声は聞いてないことにすぐには気づかないのである。
パス子は破壊工作をして、船から逃げ出そうとしたのか? 爆弾をしかけたのならどこに、そして爆発はいつ?
「それは……最初から話すと長い長い話になる。長い長い夢のようなお話だ……」
どんな話をするつもりだ。甲板の人々は固唾を飲んでパス子に注目する。つい先ほどまで狂気のように殴りつけていたひとたちが静まり返っている。
パキケトゥスまでもがおとなしく腰を落として小首をかしげているのだ。
銀ちゃんもパキケと同じ表情をしてるな。
「我々も深い感情を抱くことはあるが、人間と違い涙をながすことはできない。それはたとえば……ほらあそこ、水平線にかかる積乱雲。少しはずれたところに、一群れの小さな雲がある」
パス子の一本の腕が空を指した。まるで指揮者のよう、みんな空を見る。どの雲なの? 銀ちゃんもパス子の指す雲を探して……。
強靭なバネのように、パス子は跳ねる。小石みたいに弾かれる銀ちゃん。パス子は居並ぶ人々のはるか頭上を越える。固まる人々とパキケトゥスのいないところにパス子は着地。音もなく。
銀ちゃんは旋回してすぐに戻ってくる。「きっさま~!」許さん!
ところが痛めつけられたのが嘘みたいに走り、跳ぶパス子。なんてタフネス。
晴天の霹靂ってこのことかな、飛び跳ねるパス子に電撃の乱打。嵐を呼ぶ少女だぜ!
なかなかヒットしない。エネルギーを浪費させられているんだ! 一瞬にして人々はカオスになる。
オレは?
オレとねーちゃんは。
大混乱のなか、逃げ回ることもできず立ってるだけ。ホントの頓馬。頓馬シスターズの前にパス子が。
「学習しないやつら」
とパス子はいった。
あざけるよりは、苦笑するような調子だったから、
「そ~ね~」ことばを返すねーちゃん。
「我々は、だが似たり寄ったり……なんだろう」
えっ、えっ。我々って誰のことだ。
「ともあれ、船全体を破壊する必要はないのだ。ゲートを破壊するだけだ。ふたりには、教える」
「あらま」
「誰も殺さないんだな」これは確かめなきゃ。
「その必要はない」
オレたちはなぜのんびり会話してるのだ? オレは不審に思って、見回して。アシュラの顔した銀ちゃんは、すぐそばまで迫っていて、空中で静止していた。
「時間を止めているだけだ。私の仕事は終わったから、もう船を降りる。ふたりにだけは挨拶をしたかった」
そしてオレとねーちゃんの頭の上に触手を乗せて(おい、これが挨拶か)ロケットのように飛び上がった。海へ落ちていった。
ここは自分が仕切るべきと思い直したのだろう、銀ちゃんはお尻の下に声をかける。具体的にパス子が何をしたいのか、何を企んでいるのかわかってはいないのだ。船に乗り込む全員の生命にかかわりなく破壊すると宣言した。ただ、それだけなのだ。
そのメッセージは誰の耳にも明瞭だった。パス子の声は大きいのか。どうも違うようだ、パス子の声は耳で聞いているんじゃない。テレパシーなんだ。
あまりにも自然に胸の底にとどくものだから、音声は聞いてないことにすぐには気づかないのである。
パス子は破壊工作をして、船から逃げ出そうとしたのか? 爆弾をしかけたのならどこに、そして爆発はいつ?
「それは……最初から話すと長い長い話になる。長い長い夢のようなお話だ……」
どんな話をするつもりだ。甲板の人々は固唾を飲んでパス子に注目する。つい先ほどまで狂気のように殴りつけていたひとたちが静まり返っている。
パキケトゥスまでもがおとなしく腰を落として小首をかしげているのだ。
銀ちゃんもパキケと同じ表情をしてるな。
「我々も深い感情を抱くことはあるが、人間と違い涙をながすことはできない。それはたとえば……ほらあそこ、水平線にかかる積乱雲。少しはずれたところに、一群れの小さな雲がある」
パス子の一本の腕が空を指した。まるで指揮者のよう、みんな空を見る。どの雲なの? 銀ちゃんもパス子の指す雲を探して……。
強靭なバネのように、パス子は跳ねる。小石みたいに弾かれる銀ちゃん。パス子は居並ぶ人々のはるか頭上を越える。固まる人々とパキケトゥスのいないところにパス子は着地。音もなく。
銀ちゃんは旋回してすぐに戻ってくる。「きっさま~!」許さん!
ところが痛めつけられたのが嘘みたいに走り、跳ぶパス子。なんてタフネス。
晴天の霹靂ってこのことかな、飛び跳ねるパス子に電撃の乱打。嵐を呼ぶ少女だぜ!
なかなかヒットしない。エネルギーを浪費させられているんだ! 一瞬にして人々はカオスになる。
オレは?
オレとねーちゃんは。
大混乱のなか、逃げ回ることもできず立ってるだけ。ホントの頓馬。頓馬シスターズの前にパス子が。
「学習しないやつら」
とパス子はいった。
あざけるよりは、苦笑するような調子だったから、
「そ~ね~」ことばを返すねーちゃん。
「我々は、だが似たり寄ったり……なんだろう」
えっ、えっ。我々って誰のことだ。
「ともあれ、船全体を破壊する必要はないのだ。ゲートを破壊するだけだ。ふたりには、教える」
「あらま」
「誰も殺さないんだな」これは確かめなきゃ。
「その必要はない」
オレたちはなぜのんびり会話してるのだ? オレは不審に思って、見回して。アシュラの顔した銀ちゃんは、すぐそばまで迫っていて、空中で静止していた。
「時間を止めているだけだ。私の仕事は終わったから、もう船を降りる。ふたりにだけは挨拶をしたかった」
そしてオレとねーちゃんの頭の上に触手を乗せて(おい、これが挨拶か)ロケットのように飛び上がった。海へ落ちていった。
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