ぱられるの部屋

黒はんぺん

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りょう⑥

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 やりたくはないのだが、ここで時間をさかのぼって物語ることにする。回顧シーン、あるいはフラッシュバックとかキャッシュバックって言うんだろ。それぐらいオレだって知ってる。5分も戻らないから心配しないでくれ。

 ドア・ハッチを開け放ち、猛然とパス子は走る。船首をめざす。タコ走りってまさに爆走なのだよ。そのくせ、足音を立てない。その時ねーちゃんは甲板の掃除をしていた。別に掃除が趣味じゃない。でもちぎれたアンモナイトの触手とか、殻の破片とかが散らばっていて、なんとも無残な感じだったからだ。
 その少し前には操舵室に爆弾が仕掛けられ、窓ガラスやら室内にあったものやらが散らばっていて、オレやあむるで甲板を掃除したんだ。こんな船にも竹箒があるんだね~あむるは感心してた。その箒をねーちゃんやその友だちが使っていたんだね。
(怖さで泣いているのなら、そんな普通のことをしていた方がいいんだよ、とはねーちゃんの弁だ。心理学者かいな、ねーちゃんは)
 で、ねーちゃんたちがアンモナイトの残骸を掃き捨てていると……デカいタコがタコ走りで甲板を突っ切ったわけだ。ねーちゃんたちあ然。悲鳴もあげなかったそうだ。そのまま船首に行き、またタコ走りで戻ってきた。ねーちゃんの目の前に。
「久しぶりだな」

 以前のバイト先「UFOバーガー」店内に出没するパス子の姿にねーちゃんノイローゼにもなったのだが、パス子の方は能天気な「久しぶり」だもんな。いや、ねーちゃんに見られていたことはわかっていたのか、感心するべきか。
「妹がお世話になってます」
 とか、ねーちゃんも挨拶したらしい。何をいったのか、頭ん中まっしろ覚えてないけどね、だとさ。
「今もみんなと遊んできたよ。でもパス子はこれでどろんするよ」
 だって。ウ~ン。船内のパス子とずいぶん違うじゃないか。でも穏やかな雰囲気はそこまで、パキケが襲いかかってくる、船内から出てきたひとたちもパス子を取り囲む。状況は一変。ねーちゃんも何がおきたのか理解できなかったけど……理解できないまま……そしてオレもねーちゃんと同じにわけわかんないまま……。

 だからパス子への暴力は長時間ではなかった。長時間続いたら今ごろパス子はもっとぺちゃんこ、延しダコになってただろう。
 さあ、キャッシュバックはここまで。
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