札幌でクソゲーを攻略するお仕事ですが、残業代は出ますか?

nov

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第12話 ニューワールド

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 強い香水の香りが鼻腔を刺す。思考は回っていないがそれだけが強く脳裏に焼き付いた。

「え? ちょっ⋯⋯」

「あ、ここの挨拶みたいなものだから気にしないで。ヌーブラしてるし」
 あっさりと離れたルイさんは事もなげにそう言い放った。ヌーブラとはシリコン的な肩ひもなしなブラジャーみたいアレか。

「かさ増ししてるんですね」
「じゃないとこんなに谷間はできないし」
 更に寄せながら言われても目のやりどころに困る。

「ところで飲み放題70分と時間無制限とあるけど、70分でいいかな? 前金になりまーす」
 言われるがまま頷き、安くはない料金を差し出し、飲み物をオーダーする。今日は課金し過ぎで金銭感覚が麻痺している。危険だ。

 バックヤードに向かうルイさんの後姿はTバック。そして、目の前に広がるのは倒錯的な空間だった。

 ガールズバーという事で基本的には仕切りなどないオープンスペースで、女性も席に着いたりしている訳ではない。席というか客の上に乗っている女性はいるが⋯⋯。

「お待たせしましたー」
 戻ってきたルイさんが頼んだウーロンハイを持ってきた。

 ちびりと口を付けると、悪酔いしそうなアルコールの味がした。飲み放題の酒は体に合わない。

「あの⋯⋯あれは?」
 視線で、客の上で激しく腰を振っている女性を指し示す。

「あー。プライベートダンスね。千円挟んで」
 ブラジャーの胸元の肩ひもを摘み上げたルイさんはニッコリ笑顔営業スマイルだ。課金要素多いなこの店。

 昔、ニューハーフのショーパブでこういうシチュエーションあったなぁと懐かしみながら千円札チップを縦に折り、ブラひもに挟む。

「じゃ失礼しまーす。お触りはダメですからね」
 椅子に座ったまま跨られる。お触りダメとかよく分からない次元で色々な所が密着してるんですが。

 照明とBGMが落ちる。

「ステージね。三千円でできるやつなの。一緒に観よ」
 ⋯⋯また新たな課金要素か。

 ポールの前に椅子が置かれたステージにスポット照明が灯り、ボンテージ風の女の子が二つ折りにしたベルトをパチンパチンいわせながら登場する。

 淫靡な雰囲気の音楽がかかり、客の一人がステージに招かれる。

 ストリップなショーなのかと思っていたら、半裸に剥かれた男性客がベルトで打たれ始めた。

「ステージもやってみる?」
 耳元で囁くルイさんの甘い声。

 やる訳ねぇだろが! なんだこの課金サービス! ドMの祭典か?

「これ、誰得なんですか?」

「ええ? 結構、好評なのよ?」

「ドMに?」
「ドMとか、魔法使いに」

「一緒にしないでもらっていいですか? 特殊性癖はそっち方向じゃないので」

「特殊性癖は否定しないんだ」
「否定できませんね」

「ふーん?」
 再び谷間に埋められる顔。脳髄にクラクラくる。

「こっちかな?」
「否定できませんね。良いものをお持ちで」
「ぶふっ。⋯⋯ありがと」
「じゃ、そろそろ帰ります 」
「えっ。まだ来たばっかじゃん」
 こんな所にいては課金地獄にはまり込んでしまう。俺の課金予定は既に埋まっているのだ。

「たまたま近くだったので昼間のお礼程度にと考えてたので⋯⋯。金使い過ぎない内に撤退します」

「賢明な判断ね。良い魔法使いになれるわ」


 ⋯⋯褒められてるのか貶されてるのか判断つかねぇな。
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