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第42話 お1人様1万円コース(酒を除く
しおりを挟む「電話してみるもんだ。当日予約なんて中々空いてないんだが」
得意げに言う部長に連れてこられたのは、ススキノ中心部から更に南下した南7条にある日本料理店だ。
「ミシュラン北海道で星三つだからな」
1人じゃ経費使えないからとダシに使われたなこれは。自分が来たかっただけだろう。
卓袱台を挟み、対面に座ると接待をしている気分だ。
「とりあえずビール2つで⋯⋯」
「部長! 自分は日本酒が飲みたいです!」
和服姿の女将さんや、ふすまに囲まれた個室にやや気後れしながらも、ここは譲れない。譲ってはいけない。
「そ、そうか? 好きなのを頼むといい」
ここは奢りだからといって高い大吟醸なんぞを頼むのは分かりやすく悪手だ。繊細な和の味と香りと喧嘩せず、むしろ高め合う酒が好ましい。
「⋯⋯北斗随想でお願いします」
北海道、栗山町の純米吟醸酒をチョイス。限定の純米大吟醸もあったが食後でいいだろう。
「はーい」
愛想の良いおばちゃんだ。
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
先付けは山菜の和え物がメイン。これをビールはないだろう。
チラリと見やるとビールをちびちびやりながら嬉しそうに食べている上司がいた。
⋯⋯まぁ人それぞれだろう。自分の正義を押し付ける気は毛頭ない。
「そういえば、お客さんとは上手くいってるのかね?」
「そうですね。担当の方もゲームのプレイヤーらしくて、色々教えてもらいながら進めています」
「社内的には対外メールのやり取りにはCCを付けて欲しい所だが」
「割と砕けた会話をしているので、どうなんでしょうね。もしかしたら嫌がるかも知れません」
結構、ガッチリ支配下に置きたいタイプなのかな。
吸い物はボタン海老のすまし汁だ。海老が薫る上品な仕上がり。麩まで上品。
熱い汁に冷えた酒。
動物性脂肪の暴力的な旨味とはまた違い、舌の上を雅びやかに舞う。ここには日本の伝統が息づいている多分。
部長がビールを飲み終えるのとタイミングを合わせて、セーブしていた酒を飲み干す。
「斎藤君は美味そうに飲むな。私も酒にしようかな」
「これ美味しいですよ」
向付け、焼き物と酒と共に進んでいく。魚は北海道産を豊洲市場から逆輸入している物が多いらしい。そちらの方が上物の流通経路がしっかりしていて物がいいのだそうだ。何とも残念な話ではある。
道産春野菜の煮物も繊細な出来。野菜本来の味をしっかりと盛り上げる鰹出汁が素晴らしい。北海道は魚ばかり注目されるが野菜も美味い。
「ところで、最近あの店には行ってないのかね?」
「あの店とは⋯⋯ガールズバーですか?」
「そうそう。店名は忘れたが」
「行ってないですね。通えるほど財力もないですし」
「そうか。じゃ、この後行こうか!」
⋯⋯あれ? そこも部長が行きたいだけですよね? 何でそんなノリノリやねん。
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