90 / 108
第89話 先っぽだけ
しおりを挟む「モモカさん、討伐イベントはいつからですか?」
「い、1ヶ月後から2週間と書いてありました」
「討伐イベントについてレクチャーは受けていますか?」
「は、はい。なんとなくは」
モモカに問い詰めるかのように質問していた佐藤女史が、眼鏡をクイ上げしながら更に続ける。
「基本的に運営から界の主への賞金イベントなのですが討伐対象によって賞金が変わるため、恐らくですがホクダイ界は上級に、ドーリ界や他の初級界も難度を上げてくる可能性が高いです」
「は、はぁ」
「そして現金が乱れ飛びます」
「えっ?」
……は?
「討伐イベントの本質は、界へのプレイヤーの誘致合戦です。界の主は討伐賞金を見込んでプレイヤーに討伐賞金を出すのが定石となっています」
界の主に賞金が出るから、界の主はプレイヤーに現金で賞金を出すのか……。そしてプレイヤーを集めて敵を倒してもらうと。
「1ヶ月後であればある意味で良い機会かもしれません。レートや支払いタイミングでホクダイ界に競り勝ち、高レベルプレイヤーをイースト界に引き込んではどうでしょうか。斉藤社長?」
女帝の矛先がこちらにきてしまった。
「冒険者ギルドとしてできることはなんですか?」
「運営から界の主への支払いはイベント終了後に暗号通貨で行われます。そのため資金力のない界はプレイヤーへの支払いも後払いになったり、討伐賞金を低めにしたりするのですが、イーストの主であるモモカさんに冒険者ギルドから融資を行うことで即時支払いが可能かと。プレイヤーにとってかなりのインセンティブになります」
EP換金は諦めたが金貸しはありなのか……。
「上手く回せば、他の界の主とも優位に立てそうです。信用面で」
他の界にも融資をちらつかせておいて、融資枠をいくらにするかや融資自体をするかしないかの決定するのはこちらだから、というわけか。黒くなってきたが、アリかナシかでいうとアリだろう。
なるほどギルド……冒険者ギルド合同会社は協同組合でこそないが、似たり寄ったりの「助け合い」構造が作れるわけか。一歩間違うと暗黒面に堕ちそうだ。
「金額はどのくらいあればいいんですかね?」
「とりあえず1千万円ほどコミットすればよろしいかと」
さらりと言ってのける佐藤女史だが、隣のモモカは既に顔面蒼白だ。
いたいけなロリっ娘モモカを、借金漬けにする悪い大人の会話だと思われてしまっている。
「落ち着けモモカ。コミットメントラインは貸し付けると決まったわけじゃない。言ってくれればいつでも貸せますよという数字だ」
「しゃ、借金はいやですぅ」
「困ったら立て替えるだけ、立て替えるだけだから」
そんなセリフを涙目のモモカに吐いておきながら、先っぽだけ、先っぽだけだからという言い訳に似ているなと思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる