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第93話 馬乗り
しおりを挟む早朝に自分のホテルに戻り、泥のように眠ってしまった。
ドアを叩く音で目覚めた時には、すっかり日が傾いてしまっていた。頭と体が重い。もう徹夜などする年じゃない。
「斉藤社長。これはどういうことですか?」
ドアを開けると同じ宿に泊まっていたらしい佐藤女史が整った眉を吊り上げていた。これとは……? その前になぜ部屋番号を知っているのだ。
「カイザーが短縮詠唱で風幕を使っているとネット記事で見ました。心当たりは?」
「あぁ……昨晩みっちり朝まで付き合わされまして……」
ツカツカと歩み寄ってくる佐藤女史に対して思わず後退ってしまう。圧が凄い。
「私の方が先約だったはずでは?」
「も、戻る前にどうしてもと仰いまして……」
膝の裏がベッドの角に当たる。もう後ろがない。
「私は魔法使い。言わば一番弟子ですよね?」
ずいと寄せられる顔にのけ反ってしまう。
トンと肩を押されると、膝の可動域通りに背中から大の字にベッドに倒されてしまう。
佐藤女史はおもむろにタイトなスカートをずり上げ、俺の腹の上に跨がった。
——マウントを取られた。
「不自然さを感じます。何か隠し事でも?」
流れるような自然な動きでマウントポジションを取った佐藤女史は、俺の顔の横にやや乱暴に手をつくと覗き込むように言った。
まつ毛長いな。
目が合うと、こちらの心の奥底を覗かんとするような瞳に目を逸らしてしまう。
「ふむ……そろそろ嗅ぎ付けられましたか。でもご安心を。私はあなたを売ったりはいたしません。むしろ利用価値のなくなったあんな糞溜めみたいな職場は辞して、世界最高峰の今の職場に骨を埋める所存です。賃金も自分で稼ぎますのでご心配なく。これからもずっとあなたのお側に」
……近い。そして怖い。横を向いていても、まるで佐藤女史の体温が感じられるようだ。
かちゃりと耳に何かを取り付けられる。
「では、詠唱短縮の続きをいたしましょう」
イヤホンマイクだったようだ。
「と、とりあえず、ドアを閉めませんか」
開けっ放しのドアがどうしても気になって的外れなことを言ってしまった。こんな姿を目撃されてもコトだ。多分。
「密室がご希望でしたか。詠唱が外に漏れても迷惑になりますものね」
音もなくするりと立ち上がった佐藤女史は入り口のドアを閉めると、ほっと一息ついていた俺を再び押し倒しマウントを取った。
「ではよろしくお願いします」
悪魔のような微笑みだった。
顔を上げると見てはいけないものが目に入り、腹にはお尻の感触。詠唱すると息が乱れたり、もぞりとしたり。
新手の拷問かなと思いつつも、早く終わらせるために詠唱に力を入れるのだった。低音重視で。
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