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第二章 行き着く先は
第十七部
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そろそろ、陸路組も準備を整えなければ。
……しっかし、イリューシャン、一向に離れようとしないな。あれ?寝てる?まぁ、疲れてしまうのも無理はないか。
「中隊長殿、申し訳ございません。副旅団長はお休みの様ですので、案内は私が行います」
いきなり後ろから話しかけられた。60、ヒューイは帰路に着いたらしく、ある程度の声量であれば聞き取ることが出来た。
「副旅団長は私が運ばせていただきます」
「いや、大丈夫ですよ。イリューシャンは私が背負うよ。案内をお願いします」
私は少し苦笑いをした。イリューシャンが離れてくれないのだから仕方が無い。無意識かどうかは知らないが、引っぺがすことが出来ない。
話しかけてきた者は、僅かな光をも鋭く反射させる手入れの行き届いた鎧を着装していた。パジャシュやイリューシャンと違って、白銀のような色合いだ。戦車小隊の斎藤小隊長よりも目力があり、痛々しい傷痕が幾つもあった。
ふと、夜春率いる陽動部隊と関班の心配が表れた。私の心に余裕が出来てきたのか。だが、心配したとしても無事回収された事を祈る事しか出来ない。
そして、チヌークの爆音も去っていった。
「愛桜隊長、中隊本部班と桐分隊の出発準備完了しました。それと、捕虜の中にありあけの副長を名乗る方がいらっしゃいましたのでお連れしました」
「分かった。あ、鈴宮、悪いけど私の背嚢を頼める?」
「了解」
早口でお願いをして、副長を名乗る男に目を向けた。四十代位の男だ。
「あなたが、ありあけの副長ですか?」
男は頷いた。
「吉田翔界三等海佐、ありあけの副長兼、機関長を務めています」
見た感じ、負傷していなさそうだ。応急処置も受けていない。
戦闘での負傷者は、潜入部隊では複数人であったと報告を受けた。今回の作戦は、大成功と言っても文句は出て来ないだろう。
吉田さんの自己紹介に不審な点は無かったし、日本語も流暢。そもそも、ここで嘘を吐く利点が無い。
「では、吉田三佐は救出された方々をまとめて下さい。辛いのは重々承知していますが、よろしくお願いします」
イリューシャンを抱えたまま頭を下げた。かなり滑稽な姿に見えると思う。
「助けて下さったこの御恩、ここで少しばかり返させて頂きます!」
吉田三佐は、一礼して救い出した人達が集まっている所へ去っていった。
「撤退する!桐分隊の四名を誘導組とする!分隊長が指名!」
「撤退!桐分隊は誘導組を編成!」
私の命令を、改めて鈴宮が隊員に下達した。桐分隊は、疲れていても限りある力を振り絞って返答した。
誘導組とは、ここでは負傷者等の誘導を担当とする部隊だ。まさかこの状況下で、車両の誘導をしようとしだす隊員はいないだろう。
生々しい血が、先の戦闘を物語っている。ヘリコプターでは回収しきれなかった我々は、薄暗い収容所を出た。
先導するのは、神聖ロリ守護騎士旅団の構成員。私が背負っているイリューシャンを除けば、ここにいる旅団構成員は全員大人の男だ。「ロリ」というのはこちらで使われている言語では全く違う意味なのか、パジャシュとイリューシャンがトップだからなのか。
イリューシャンと言えば、今は寝息を立てている。
収容所は山の麓寄りに位置している為、少し歩くことで山肌を隠す森林に到達することが出来る。
「こちらです」
と、旅団構成員が案内したのは、5メートル四方はありそうな口を持つ洞窟であった。
洞窟は見る限り暗闇である為か、旅団構成員は入り口に立て掛けられていた恐らく松明であろう物に火を点けようとした。この世界にはライターのような物は無いようなので、旅団構成員は石を用いて火を点けようとしている。
「あ、私がライト付けますよ」
そうしたら当然、スイッチを軽く押すだけの懐中電灯の方が楽だ。
鈴宮達に振り返ると、言わずもがな自分たちの懐中電灯を点灯させていた。
「ライト……ですか?」
旅団構成員は首を傾げた。
説明も兼ねて、私は懐中電灯のスイッチを押した。カチッとバネが震えた。
「これの事です。これ、結構明るいですし、簡単に点くんですよ」
「何ですか、これは?!ガス灯の光を前に飛ばしている……?いや、魔法石の発光を利用しているか。いずれにしても画期的すぎる」
「え?魔法石?」
独り言に思わず口を挟んでしまった。
「はい?魔法石が何か?」
いや、当然の事の様に言われても……
「えっと……これは、LEDって言うものに電気を通して光ってるんです」
魔法石について聞こうと思ったが、後にすることにした。洞窟の前でいつまでも立ち止まる訳にはいかない。
「電気」に妙に驚かれた後、懐中電灯で照らしても数十メートル先は見えない暗闇を進んだ。
数時間……確かに山を越えるよりも短い時間で、暗闇は綻んだ。もう無心で歩いていたら、一筋の光が差し込んでいる事に気付いたのだ。
とうとう、太陽の光を浴びることが出来た。
夜目に慣れてしまったせいで、最初は世界が真っ白に見えた。虹彩が順応してくると、OD色や自衛隊迷彩の車両が並んでいるのが分かった。まだ夜目が完全には治っていない為、一瞬ばかり背景の森林と同化して見えた。
……しっかし、イリューシャン、一向に離れようとしないな。あれ?寝てる?まぁ、疲れてしまうのも無理はないか。
「中隊長殿、申し訳ございません。副旅団長はお休みの様ですので、案内は私が行います」
いきなり後ろから話しかけられた。60、ヒューイは帰路に着いたらしく、ある程度の声量であれば聞き取ることが出来た。
「副旅団長は私が運ばせていただきます」
「いや、大丈夫ですよ。イリューシャンは私が背負うよ。案内をお願いします」
私は少し苦笑いをした。イリューシャンが離れてくれないのだから仕方が無い。無意識かどうかは知らないが、引っぺがすことが出来ない。
話しかけてきた者は、僅かな光をも鋭く反射させる手入れの行き届いた鎧を着装していた。パジャシュやイリューシャンと違って、白銀のような色合いだ。戦車小隊の斎藤小隊長よりも目力があり、痛々しい傷痕が幾つもあった。
ふと、夜春率いる陽動部隊と関班の心配が表れた。私の心に余裕が出来てきたのか。だが、心配したとしても無事回収された事を祈る事しか出来ない。
そして、チヌークの爆音も去っていった。
「愛桜隊長、中隊本部班と桐分隊の出発準備完了しました。それと、捕虜の中にありあけの副長を名乗る方がいらっしゃいましたのでお連れしました」
「分かった。あ、鈴宮、悪いけど私の背嚢を頼める?」
「了解」
早口でお願いをして、副長を名乗る男に目を向けた。四十代位の男だ。
「あなたが、ありあけの副長ですか?」
男は頷いた。
「吉田翔界三等海佐、ありあけの副長兼、機関長を務めています」
見た感じ、負傷していなさそうだ。応急処置も受けていない。
戦闘での負傷者は、潜入部隊では複数人であったと報告を受けた。今回の作戦は、大成功と言っても文句は出て来ないだろう。
吉田さんの自己紹介に不審な点は無かったし、日本語も流暢。そもそも、ここで嘘を吐く利点が無い。
「では、吉田三佐は救出された方々をまとめて下さい。辛いのは重々承知していますが、よろしくお願いします」
イリューシャンを抱えたまま頭を下げた。かなり滑稽な姿に見えると思う。
「助けて下さったこの御恩、ここで少しばかり返させて頂きます!」
吉田三佐は、一礼して救い出した人達が集まっている所へ去っていった。
「撤退する!桐分隊の四名を誘導組とする!分隊長が指名!」
「撤退!桐分隊は誘導組を編成!」
私の命令を、改めて鈴宮が隊員に下達した。桐分隊は、疲れていても限りある力を振り絞って返答した。
誘導組とは、ここでは負傷者等の誘導を担当とする部隊だ。まさかこの状況下で、車両の誘導をしようとしだす隊員はいないだろう。
生々しい血が、先の戦闘を物語っている。ヘリコプターでは回収しきれなかった我々は、薄暗い収容所を出た。
先導するのは、神聖ロリ守護騎士旅団の構成員。私が背負っているイリューシャンを除けば、ここにいる旅団構成員は全員大人の男だ。「ロリ」というのはこちらで使われている言語では全く違う意味なのか、パジャシュとイリューシャンがトップだからなのか。
イリューシャンと言えば、今は寝息を立てている。
収容所は山の麓寄りに位置している為、少し歩くことで山肌を隠す森林に到達することが出来る。
「こちらです」
と、旅団構成員が案内したのは、5メートル四方はありそうな口を持つ洞窟であった。
洞窟は見る限り暗闇である為か、旅団構成員は入り口に立て掛けられていた恐らく松明であろう物に火を点けようとした。この世界にはライターのような物は無いようなので、旅団構成員は石を用いて火を点けようとしている。
「あ、私がライト付けますよ」
そうしたら当然、スイッチを軽く押すだけの懐中電灯の方が楽だ。
鈴宮達に振り返ると、言わずもがな自分たちの懐中電灯を点灯させていた。
「ライト……ですか?」
旅団構成員は首を傾げた。
説明も兼ねて、私は懐中電灯のスイッチを押した。カチッとバネが震えた。
「これの事です。これ、結構明るいですし、簡単に点くんですよ」
「何ですか、これは?!ガス灯の光を前に飛ばしている……?いや、魔法石の発光を利用しているか。いずれにしても画期的すぎる」
「え?魔法石?」
独り言に思わず口を挟んでしまった。
「はい?魔法石が何か?」
いや、当然の事の様に言われても……
「えっと……これは、LEDって言うものに電気を通して光ってるんです」
魔法石について聞こうと思ったが、後にすることにした。洞窟の前でいつまでも立ち止まる訳にはいかない。
「電気」に妙に驚かれた後、懐中電灯で照らしても数十メートル先は見えない暗闇を進んだ。
数時間……確かに山を越えるよりも短い時間で、暗闇は綻んだ。もう無心で歩いていたら、一筋の光が差し込んでいる事に気付いたのだ。
とうとう、太陽の光を浴びることが出来た。
夜目に慣れてしまったせいで、最初は世界が真っ白に見えた。虹彩が順応してくると、OD色や自衛隊迷彩の車両が並んでいるのが分かった。まだ夜目が完全には治っていない為、一瞬ばかり背景の森林と同化して見えた。
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