異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~

ス々月帶爲

文字の大きさ
25 / 54
第二章 行き着く先は

第十七部

しおりを挟む
 そろそろ、陸路組も準備を整えなければ。
 ……しっかし、イリューシャン、一向に離れようとしないな。あれ?寝てる?まぁ、疲れてしまうのも無理はないか。

「中隊長殿、申し訳ございません。副旅団長はお休みの様ですので、案内は私が行います」

 いきなり後ろから話しかけられた。60、ヒューイは帰路に着いたらしく、ある程度の声量であれば聞き取ることが出来た。

「副旅団長は私が運ばせていただきます」
「いや、大丈夫ですよ。イリューシャンは私が背負うよ。案内をお願いします」

 私は少し苦笑いをした。イリューシャンが離れてくれないのだから仕方が無い。無意識かどうかは知らないが、引っぺがすことが出来ない。
 話しかけてきた者は、僅かな光をも鋭く反射させる手入れの行き届いた鎧を着装していた。パジャシュやイリューシャンと違って、白銀のような色合いだ。戦車小隊の斎藤小隊長よりも目力があり、痛々しい傷痕が幾つもあった。
  ふと、夜春率いる陽動部隊と関班の心配が表れた。私の心に余裕が出来てきたのか。だが、心配したとしても無事回収された事を祈る事しか出来ない。
 そして、チヌークの爆音も去っていった。

「愛桜隊長、中隊本部班と桐分隊の出発準備完了しました。それと、捕虜の中にありあけの副長を名乗る方がいらっしゃいましたのでお連れしました」
「分かった。あ、鈴宮、悪いけど私の背嚢を頼める?」
「了解」

 早口でお願いをして、副長を名乗る男に目を向けた。四十代位の男だ。

「あなたが、ありあけの副長ですか?」

 男は頷いた。

「吉田翔界しょうかい三等海佐、ありあけの副長兼、機関長を務めています」

 見た感じ、負傷していなさそうだ。応急処置も受けていない。
 戦闘での負傷者は、潜入部隊では複数人であったと報告を受けた。今回の作戦は、大成功と言っても文句は出て来ないだろう。
 吉田さんの自己紹介に不審な点は無かったし、日本語も流暢。そもそも、ここで嘘をく利点が無い。

「では、吉田三佐は救出された方々をまとめて下さい。辛いのは重々承知していますが、よろしくお願いします」

 イリューシャンを抱えたまま頭を下げた。かなり滑稽な姿に見えると思う。

「助けて下さったこの御恩、ここで少しばかり返させて頂きます!」

 吉田三佐は、一礼して救い出した人達が集まっている所へ去っていった。

「撤退する!桐分隊の四名を誘導組とする!分隊長が指名!」
「撤退!桐分隊は誘導組を編成!」

 私の命令を、改めて鈴宮が隊員に下達した。桐分隊は、疲れていても限りある力を振り絞って返答した。
 誘導組とは、ここでは負傷者等の誘導を担当とする部隊だ。まさかこの状況下で、車両の誘導をしようとしだす隊員はいないだろう。
 生々しい血が、先の戦闘を物語っている。ヘリコプターでは回収しきれなかった我々は、薄暗い収容所を出た。
 先導するのは、神聖ロリ守護騎士旅団の構成員。私が背負っているイリューシャンを除けば、ここにいる旅団構成員は全員大人の男だ。「ロリ」というのはこちらで使われている言語では全く違う意味なのか、パジャシュとイリューシャンがトップだからなのか。
 イリューシャンと言えば、今は寝息を立てている。
 収容所は山の麓寄りに位置している為、少し歩くことで山肌を隠す森林に到達することが出来る。

「こちらです」
 と、旅団構成員が案内したのは、5メートル四方はありそうな口を持つ洞窟であった。
 洞窟は見る限り暗闇である為か、旅団構成員は入り口に立て掛けられていた恐らく松明であろう物に火を点けようとした。この世界にはライターのような物は無いようなので、旅団構成員は石を用いて火を点けようとしている。

「あ、私がライト付けますよ」

 そうしたら当然、スイッチを軽く押すだけの懐中電灯の方が楽だ。
 鈴宮達に振り返ると、言わずもがな自分たちの懐中電灯を点灯させていた。

「ライト……ですか?」

 旅団構成員は首を傾げた。
 説明も兼ねて、私は懐中電灯のスイッチを押した。カチッとバネが震えた。

「これの事です。これ、結構明るいですし、簡単に点くんですよ」
「何ですか、これは?!ガス灯の光を前に飛ばしている……?いや、魔法石の発光を利用しているか。いずれにしても画期的すぎる」
「え?魔法石?」

 独り言に思わず口を挟んでしまった。

「はい?魔法石が何か?」

 いや、当然の事の様に言われても……

「えっと……これは、LEDって言うものに電気を通して光ってるんです」

 魔法石について聞こうと思ったが、後にすることにした。洞窟の前でいつまでも立ち止まる訳にはいかない。
 「電気」に妙に驚かれた後、懐中電灯で照らしても数十メートル先は見えない暗闇を進んだ。
 数時間……確かに山を越えるよりも短い時間で、暗闇はほころんだ。もう無心で歩いていたら、一筋の光が差し込んでいる事に気付いたのだ。
 とうとう、太陽の光を浴びることが出来た。
 夜目に慣れてしまったせいで、最初は世界が真っ白に見えた。虹彩が順応してくると、OD色や自衛隊迷彩の車両が並んでいるのが分かった。まだ夜目が完全には治っていない為、一瞬ばかり背景の森林と同化して見えた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...