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第三章 自衛隊の在り方(前)
第二十四部
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今、榴弾砲は沈黙している。だが、只黙っているだけには見えなかった。今か今かと、獲物を待っている。猫が姿勢を低くし腰を左右に振っている時の、目が離せなくなり空気が自然と張り詰める感覚がここでは感じられる。
そんな中、横隊を組む火砲の後方、顔を動かさなくともそれらを俯瞰出来る位置に仁王立ちする男がいる。そこに、曹士が偉そうに居るわけがない。自在3佐間違い無しだ。
「自在3佐」
「ん? あぁ。新渡戸大尉か」
「え? 大尉?」
確かに彼は自在3佐であるが、話し方が明らかに違う。
「新渡戸大尉。私の事は、自在少佐と読んでくれ給え」
私には、彼が何かに取り憑かれているとしか思えない。
呆然としていると、第12特科隊の部隊章を付けた3尉が申し訳無さそうに腰を低くしてやって来た。
「すみません。新渡戸1尉。自在3……自在少佐は、訓練等になるとまるで戦闘狂の軍人かの様になるんです」
んなまさか、と口に出掛けたが現実にそれを目の当りにしている以上、否定が出来ない。チョコレートのCMに聞く文言を、ここで聞く事になるとは。
「砲兵中隊! 全部水平に構え。目視出来る直前目標に対して効力射を行う。旋回角0度、細部俯仰角、各小隊長所定。効力射砲、小隊。着発、連射。発射弾数は中隊長の号令に依る」
「ちょっと! それじゃあ、うちの部隊も一緒に吹き飛んでしまいます!」
幾ら他の領域の事とは言え、流石に部隊長として許容出来なかった。それに、中隊全員が車両で退避しているとは考えられない。すると、最適解は車両も歩行者に速度を合わせて、火力支援を行う事だ。だから、私達には他の車両が付いてこなかったのだ。
「ならば、退ければ良い。早くしてくれないと、逆にこちらが危険に晒される」
「どう言う――」
「中隊効力射、斉射用意!」
自在3佐がそう言うと、榴弾砲に付いていた曹士達が動き出す。聞き取れたのは「装填良し」だけで、他は雄叫びにしか聞こえなかった。
そしてまた静かになる。そこに今度は、何かの音が徐々に入ってくる。それは直に、車両のエンジンの音であると分った。車両の形、数も見える様になる。目の前からやってくる車両は、火砲の射線に入っている。
「鈴宮っ!」
「今、呼出してます!」
分っているから何も言うな、と言わんばかりの口調で鈴宮は答えた。
「あ! 1中隊本部?! 理由は聞くな! 直ちに、左右に散開しろ!」
鈴宮が言ったのを確認して、私は射線方向を見た。車両は、綺麗にとは言えないが左右に散開する。特に、中央辺りにいた車両は入り乱れてしまった。
「ふふ」
誰かがにやけた。この状況で考えられるのは、自在3佐だけだ。その証左に、その顔は不気味に破顔している。
「斉射! ってぇい!!」
自在3佐が言いながら右手を前へ突き出した。直後、いやそれと同時に、榴弾砲は一斉に一気に弾と火を口から噴き出した。その弾は、車両が捌けて何もいない大地、ではなく車両を追い掛ける地平線を上書きせんとする大量の軍勢目掛けて飛翔した。
恐らく、陸上自衛隊初めての特科火力による水平射撃だ。仰角は5度に満たない。
「装填よぉし!」
「ってぇ!」
一発目が弾着する前に、次弾が込められ発射された。この中隊の練度は、多職種から見ても目を瞠るものだ。
「第一弾、弾着5秒前! だんちゃーく……今!」
爆発の閃光で、周囲が暗くなった。その閃光は、人々を照らし、吹き飛んだ敵兵の影を作った。
「あはははは! よし! 良いぞ! 降伏後に再び立ち上がった卑劣な奴らを叩き潰せ! ってぇ!」
これは、私は攻撃とは見れなかった。さっき迄繰り広げていた、中近距離での銃撃戦と並べて良いものではない。
これはただの――
「虐殺だ」
そんな中、横隊を組む火砲の後方、顔を動かさなくともそれらを俯瞰出来る位置に仁王立ちする男がいる。そこに、曹士が偉そうに居るわけがない。自在3佐間違い無しだ。
「自在3佐」
「ん? あぁ。新渡戸大尉か」
「え? 大尉?」
確かに彼は自在3佐であるが、話し方が明らかに違う。
「新渡戸大尉。私の事は、自在少佐と読んでくれ給え」
私には、彼が何かに取り憑かれているとしか思えない。
呆然としていると、第12特科隊の部隊章を付けた3尉が申し訳無さそうに腰を低くしてやって来た。
「すみません。新渡戸1尉。自在3……自在少佐は、訓練等になるとまるで戦闘狂の軍人かの様になるんです」
んなまさか、と口に出掛けたが現実にそれを目の当りにしている以上、否定が出来ない。チョコレートのCMに聞く文言を、ここで聞く事になるとは。
「砲兵中隊! 全部水平に構え。目視出来る直前目標に対して効力射を行う。旋回角0度、細部俯仰角、各小隊長所定。効力射砲、小隊。着発、連射。発射弾数は中隊長の号令に依る」
「ちょっと! それじゃあ、うちの部隊も一緒に吹き飛んでしまいます!」
幾ら他の領域の事とは言え、流石に部隊長として許容出来なかった。それに、中隊全員が車両で退避しているとは考えられない。すると、最適解は車両も歩行者に速度を合わせて、火力支援を行う事だ。だから、私達には他の車両が付いてこなかったのだ。
「ならば、退ければ良い。早くしてくれないと、逆にこちらが危険に晒される」
「どう言う――」
「中隊効力射、斉射用意!」
自在3佐がそう言うと、榴弾砲に付いていた曹士達が動き出す。聞き取れたのは「装填良し」だけで、他は雄叫びにしか聞こえなかった。
そしてまた静かになる。そこに今度は、何かの音が徐々に入ってくる。それは直に、車両のエンジンの音であると分った。車両の形、数も見える様になる。目の前からやってくる車両は、火砲の射線に入っている。
「鈴宮っ!」
「今、呼出してます!」
分っているから何も言うな、と言わんばかりの口調で鈴宮は答えた。
「あ! 1中隊本部?! 理由は聞くな! 直ちに、左右に散開しろ!」
鈴宮が言ったのを確認して、私は射線方向を見た。車両は、綺麗にとは言えないが左右に散開する。特に、中央辺りにいた車両は入り乱れてしまった。
「ふふ」
誰かがにやけた。この状況で考えられるのは、自在3佐だけだ。その証左に、その顔は不気味に破顔している。
「斉射! ってぇい!!」
自在3佐が言いながら右手を前へ突き出した。直後、いやそれと同時に、榴弾砲は一斉に一気に弾と火を口から噴き出した。その弾は、車両が捌けて何もいない大地、ではなく車両を追い掛ける地平線を上書きせんとする大量の軍勢目掛けて飛翔した。
恐らく、陸上自衛隊初めての特科火力による水平射撃だ。仰角は5度に満たない。
「装填よぉし!」
「ってぇ!」
一発目が弾着する前に、次弾が込められ発射された。この中隊の練度は、多職種から見ても目を瞠るものだ。
「第一弾、弾着5秒前! だんちゃーく……今!」
爆発の閃光で、周囲が暗くなった。その閃光は、人々を照らし、吹き飛んだ敵兵の影を作った。
「あはははは! よし! 良いぞ! 降伏後に再び立ち上がった卑劣な奴らを叩き潰せ! ってぇ!」
これは、私は攻撃とは見れなかった。さっき迄繰り広げていた、中近距離での銃撃戦と並べて良いものではない。
これはただの――
「虐殺だ」
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