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ⅩⅣ.修也
しおりを挟む『緊急避難警報が発令されました。当市内に於いて突然変異した"天災"発生の予測です。直ちに安全な建物の中へ避難して下さい。繰り返し……』
鳴り響くサイレンと繰り返される警報と割れた声。和服を見に纏った人々が足早に避難を始める。経験の無い出来事に困惑する人も。
「何だか外が騒がしい……」
洗濯物を取り込んでいた奈菜はその異様な雰囲気に何か悍ましいものを感じ始めていた。
今までに体験した事の無い出来事である。
「奈菜お姉ちゃん、早く洗濯物取り込んだ方がいいよ?この後すごーい雨がザーザーくるから」
「あっうん、そうだね!直ぐに取り込むね!」
違和感。桜ちゃんの表情がいつもと違う…?
「修にぃ、奈菜お姉ちゃんと戦うならわたしが許さないから……」
小さな声であったが、明らかにそう言っていた。桜ちゃんの顔が少し強ばっている。
「桜……ちゃん?」
「何でもないよ!早くしよ?雨ザーザーで奈菜お姉ちゃんが風邪ひいちゃうよー?」
あからさまに嘘を隠そうと身振り手振りで誤魔化そうとする桜を見て、可愛いと感じた奈菜は、騙されてあげようとニコニコしながら建物内へと避難する。
「はいはい、じゃあ風邪ひかないようにお家の中入りますねー」
そう言って洗濯物を抱えて居間に入った瞬間
「……なさい、……ちゃん」
意識が遠のいていく。自分が畳の上に倒れ込んだのが分かる。い草の香りに包まれながら静かに眠りについた。
「ここが、京か。霧子のおばちゃん、ここにワンスが"二人"もいるのか?」
「間違えないよ、修也。早く殺して数を減らしてくれんかね?ワンスは全部で九人、その頂点に立てば修也の好きなアニメキャラと交流出来る世界に出来るからね?」
「オタクにとって至福の世界、素晴らしい。ボクは幸せになるんだ!」
脳内で自分の世界を堪能している修也と呼ばれている青年。第三者が見たら非常に不快感を感じる程、彼の顔は悦に浸っていた。
「修にぃあいかわらずきもちわるーい」
修也の前に現れる一人の少女、桜。
しかし修也から一歩離れている様にも見える。
「ボクは三次元の幼女には興味無いから、ごめんね」
「私も修にぃ生理的にムリだし、アニメの世界に行けるなんて本気で思ってるの?そんなことないって!」
その後、桜はクスクスっと笑う。
「桜ちゃん、ボクはキミが最悪の魔女なのも知ってるし魔法がとんでもなく強いのも知ってる。多分ボクの能力じゃ勝てないと思う。だから静かに死んで…?」
「!?」
次の瞬間、突如姿を現した雷が桜の身体を直撃する。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドゴーンという凄まじい音と共に雷の眩い光で辺り一面何も見えない。桜の断末魔も拝めないようだ。
「キミなら分かってたよね!?ボクの能力は天候操作!どんな天気にだって自由自在に操れるんだよ!!大丈夫、苦しいのは一瞬だけだから。安心して逝ってね!!」
次第に光は消え、そして桜の姿も消えていた…
「燃え尽きてしまったみたいだね!!!チリもカスも拾えそうにないや。ごめんね」
「修にぃはすっごく強いね!"ふつうのひと"ならまちがいなくお星さまだったよ♪」
「!!?」
「修にぃうしろだよ?うーしーろ」
「…なんて事だ、あの攻撃が直撃して生きているどころか傷一つ付いていないだと…?」
修也がふと振り返った先には楽しげに笑っている桜の姿。完全に小馬鹿にしているのが伝わる。
「はっはは…ボクの力だとキミの足元にも及ばないって事か…完敗だ…」
「それはちがうよ?たたかいってだいじな人がいるかいないかで全然かわってくるんだよ?私にはだいじな"家族"がいるの。だからつよい。修にぃみたいにアニメの女の子となかよくしたいなんてどーでもいい理由じゃないんだよ?」
「なるほど…それは勝てない訳だよ」
「うん!私、とってもつよいから!わかったら早くお家にかえったほうがいいよ!そこにいる"おばあちゃん"と一緒に!」
「おばあちゃん…か。あたしゃまだ50なんだけどねぇ、まあお嬢さんから見たら充分におばあちゃんだね
修也、いったん引くよ。この子は後回しだ、グズグズしない」
そして修也と霧子はそそくさと桜の前から消えていった。
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