仮想現実という現実世界

絢瀬レン

文字の大きさ
17 / 24

ⅩⅤ.中村祐太の姿をした抜け殻

しおりを挟む
「…ゆう、そろそろ離して欲しいかも。みんなの前で恥ずかしいよ」

「……」


茉莉奈を抱きしめ続ける祐太。離れようとする様子は微塵もない。それを少し離れた距離から見ているモモは複雑な気持ちだった。


「…お前、誰だ?」


今まで口を閉ざしていたダインが不意に"祐太"の方を向いて問いかける。


「ダインさん、どうしたんですか?ボクですよ、中村祐太ですよ?今までずっと一緒に旅をした仲じゃないですか?それをまるで"別人"の様な扱いしてきますね?…これだから勘が鋭い人は嫌いです」

「やはり…M・FCTANによって乗っ取られたか…」

「ダインさん、それは違いますよ」

「…?」

「僕は消えることを望んだ。それだけですよ。この気持ち分かります?僕の全てが蝕まれていく感覚、僕消えちゃうなって分かるんです」

「なっ…!?」


言葉を失った。祐太は思った以上に精神的ダメージを負っている。そこに付け込んだかのように入り込む"何者"か。


「僕はやっぱり駄目な人なんです。"人殺し"と呼ばれたあの日から。僕の人生は終わりました」

「ゆう、そんな事ないよ……だって茉莉奈はこうやって"生きてる"んだよ?それに茉莉奈の死因は自害。ゆうは何も悪くないよ……」

「うるさい!茉莉奈ちゃんはそれでいいかもしれない!でも僕はその後に人殺し扱いされた!この気持ちわかる!?分からないよね!!
……だから僕はもう要らない。さようなら」


そう茉莉奈に告げた瞬間、裕太は地べたにバタリと倒れ込んでしまった。


「ゆう……?ゆう……!?
いっ………イヤーーーー!!!!!」


茉莉奈の叫び声が木霊する。
俯くダイン。
言葉を失うモモ。
叫び続ける茉莉奈。
そんな三人の行動を尽く無視するかのように、裕太は動かない。


みんな……さようなら……さようなら……





あれからどれくらい時間が経ったであろうか。辺りはすっかり夜になっていた。カフェのオープンテラスで起こった事柄なのに、周りの人間たちは気にも止めなかった。やがて店内の証明は落とされて、薄暗い街明かりだけが灯る。泣きじゃくっていた茉莉奈も涙が枯れたのか、放心状態でその場にただ立ったままであった。


「……お兄ちゃん……いなくなった裕太の心って取り戻せないかな……?」


不意に沈黙を破るモモ。何かを決意したかのような顔だ。


「……方法は、あるにはある……」

『!!!?』


想定外の答えだったのであろう、モモと茉莉奈は驚きの表情を隠せない。


「ここから北東へ10キロ程進んだ先に小さな祠がある。噂レベルではあるが、その祠には己の心と向き合う事により開く扉が存在するらしい。その扉の先には自分が大事にしている人の心の真相を知ることが出来るらしい。それを知れば何か裕太を助ける手掛かりになるかもしれない」

「己の……」

「心……」

「つまり、自分の記憶から消えていったものや、思い出したくない記憶と向き合う…と言うことだ……君たちは、自分の心から消し去った嫌な記憶を思い出してでもそこに行きたいかい……?」

「うん」

「もちろん」

「そうか…俺には理由あって裕太を助けてあげられない。だから二人とも、頼んだぞ……」


そして三人は裕太を馬車に乗せ、暗闇の中へと消えていった……






人殺し!


人殺し!


人殺し!


やめてよ……僕は殺してない……


人殺しに近づくと殺されるぞ!

こっち来るなよ!

人殺しとかヤバイよねー


どうして……どうしてこんな事に……?


ゆう……


茉莉奈ちゃん!?


ドウシテイッショニシンデクレナカッタノ…?


うわーーーーーーーーー!!!!!!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

処理中です...