仮想現実という現実世界

絢瀬レン

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ⅩⅥ.現実逃避という選択肢

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沢山の大型船や漁船が停泊する街、ビバラッド市。国の指定港湾都市であり、他国の船も多数行き来している。


「ここが、仮想世界…?」

「ゆーやくん、そうだよ!君の感染という体質を思う存分"発揮"出来る場所。ゆーやくんは現実世界が住みにくいと思ってたでしょ?」

「奏音ちゃん、僕は確かにそう思ってるけど、こんな"作り物の世界"に召喚されたって何の解決にもならないと思うけど……?
あと、正直くだらないって思う」

「そっか……でもね、ここでの治療は現実世界にも繋がるんだよ?
完治して現実世界に帰ればそこでも病気は完治してる。
この世界は仮想であり、現実でもある。実際今、君の存在は現実世界には無い。当然よね」


そういう事か……
彼女はこの世界に連れ込むのが目的だったんだ。騙されたんだね、僕。


「僕はここでボスでも倒して現実世界に帰ろうとかそんな感じなんでしょ、どうせ」

「そんなゲームみたいな感じでは無いよ?この世界はそんなに単純なものじゃないもの」

「じゃあ何すればいいのさ?」

「んー、強いて言うなら人間離れした能力の人たちを殺す事。通称ワンスと呼ばれているゆーやくんを除いた8人を殺してこの世界を統制して欲しいの。ちなみにゆーやくんはNo.6」


血の気が引いた。人を殺して世界の統制?なんでそんなに淡々とその様な言葉が出てくるのだろう。僕は不幸感染症候群を持ってるから人が死ぬのを見ても何も思わないもでも思ってるのだろうか…?


「僕には人殺しなんて無理だよ。だって仮想世界で死んじゃったら現実世界でも…」

「もちろん死亡する」

「……!?」

「当たり前でしょ?現実世界では逮捕案件でも、この世界ではそんなのお構い無し。ね?すごいでしょ?」


狂ってる。この子は本当に同じ小学生なのか…?


「あっそうそう、ゆーやくんの能力教えるね?」


相手の気持ちなんて気にしないって事か……でも、僕は元々そうやって人々を"殺してきた"人間だからこれは償いかな……


「ゆーやくんの能力は黒魔術。正確的には呪術と言った方がしっくりくるかな?」

「呪術?」

「そ、ゆーやくんは人の心に呪いをかける事が出来るの。そして呪い殺すことが出来る。慣れてくれば遠距離にいる人にも呪縛をかける事が出来るんじゃないかな、多分」

「……すごい」

「でしょ!?経験、心理的体力、精神力は必要だろうから色々大変だろうけど、ゆーやくんならきっと大丈夫だよ!」


そっか……ここは仮想世界だから僕みたいな人殺しはヒーローなんだ。現実世界では嫌われていてもこの世界は違う。街の人たちはみんな優しいし、僕の事を避ける人なんて誰一人としていない。


「奏音ちゃん、僕、幸せになりたいよ……ずっと一人だった……大好きだったお母さん、お父さんもいなくなって、おばあちゃん、おじいちゃんも……」


涙が止まらない。ずっとずっと我慢してた何かがどんどん溢れてくる。そっか……これが僕の居場所だったんだね。


「奏音ちゃん、ありがとう」

「どういたしまして!」














「……はい。No.6、浪川裕也を無事に転送しました……。
……もちろんです。全ては"ゼロ"のお導きのままに……」











「茉莉奈ちゃん、少しお話ししない?」


揺れる馬車の中でモモは茉莉奈に静かに問いかける。


「……ん。どうしたの」

「結局仮想世界って何なんだろ?」

「仮想現実ね。茉莉奈にとってはここは第二の人生でもあるし、唯一現実逃避出来る場所かな」

「現実逃避?」

「そう。茉莉奈はもう死んじゃってるから現実世界には戻れない。だったらここで楽しくゆうと過ごしたいなって思ってた。けどね、前みたいな日常には……」

「そっか……」


そう一言言うと、モモは俯き、黙り込んでしまう。


「この世界に住む"元現実世界人"は殆どの人が社会不適合者と言われているわ。もちろん、記憶が残ってる人なんて殆どいないからそんな前世みたいな記憶なんて無いだろうけど。そうやって現実逃避をしてやり直す。
でもこれってダメな事なのかな?茉莉奈はそう思わない。そんな選択肢だってあってもいいと思うんだ。新しい自分になれるみたいでさ」

「茉莉奈ちゃんは強いね」

「ううん、茉莉奈は全然強くないよ。ただのヤンデレだよ。
元々ね、ゆうはワンスメンバー候補でも無かったんだよ」

「え?」

「ある人にお願いしてNo.1という地位を与えてもらったの」

「ある人?」

「ごめん、これ以上は言えないんだ」

「うん、分かった。色々話してくれてありがと!茉莉奈ちゃん、絶対に裕太を取り戻そうね!」

「当たり前でしょ!」


少し茉莉奈の笑顔が曇って見えた感じがした。
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