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王太子編
ランドラーク・パラバーデ (一)
しおりを挟む私は、ランドラーク・パラバーデ。このパラバーデ国の王太子だ。
父王の治めるこの国は、とても善い国だと思う。
この国の国王は、代々、賢く有能で政略に長けていた。国王が引き継ぐ私的な商会も持っている。その商会を上手く廻すことによって私財を増やしているので、王族には力がある。
父王には、正妃と二人の側室がいる。正妃との間に産まれたのが、私だ。第二側室との間に、腹違いの弟も産まれた。父王は、弟が産まれて直ぐに私を王太子に据えた。継承争いを避ける為だ。弟を担ぎ上げる様な野心を持つ貴族がいれば、国王に背いたものとする、と暗に脅しているのだ。
最も、私の出来が悪ければ、父王は容赦なく切り捨てるだろうけれど。私が愛されていない訳ではない。家族を愛する事と国を治めることは、切り離して考えなければならない事だからだ。其れが出来なければ、国が衰退して行くのだと父王は仰った。
私の容姿は、父王と同じ力強い金髪。猫っ毛なのは母上譲り。父王と同じ翠の眼。少しだけ吊り目なのは母上のもの。顔立ちも父王と母上から良い所を貰い、誰の目から見ても二人の間に産まれた子だ。
私が三歳の頃から教育が始まったけれど、無理なく的確に教えて貰えるので、特に辛いと感じることはなかった。長時間掛けて勉強するのは、時間の無駄だと父王は仰る。例え、それで覚えたとしても暗記しているだけで理解はしていない。メリハリを付けて勉強するのが一番効率もいいし、人としての感情も育てられるのだ。其れが、代々引き継がれて来た我が王族の教育方針だと仰った。
そんな訳で私は、勉強する時間は厳しく、遊びに剣の稽古を混ぜながら、自由な時間もあり、のびのびと生活していた。
六歳になると、将来の側近と婚約者候補を選定する為に、お茶会が開かれた。
「今回で決めなければならないと謂う事ではない、あまり気負う必要はないぞ」
父王がそう仰たので、気軽に参加した。
伯爵家以上、八歳以上、十八歳未満の子息令嬢が呼ばれ、私に次々と挨拶を述べて来る。其れに同じ言葉を返していると、一人の子どもが目に止まった。
私よりも少しだけ背丈のあるその子は、無表情な顔でシュザーク・キディリガンと名乗った。
白金髪に薄い碧色の眼。伏せ目がちな眼には陰がある。着ている服も、何処か古めかしい。
その子は挨拶が済むと、さっさと自分に充てがわれた席に座った。
茶会が始まり、私が交流の為に席を立つと、あっと言う間に子息令嬢達に囲まれた。ちらほらと話をしながら相手をする。段々それに飽きてきて、ふと周りを見渡すと何故かあの子が目に入った。
一人、席に着いたまま、じっとテーブルを見詰めている。此方を気にする事もなく、ただ、じっと。
おかしな奴、と思いながらも眼を反らし交流を続ける。
でも、何となく眼がいって…其の度に、じっとテーブルを見詰めて居るあの子を見た。
「誰か、気になる子は居たか?」
其の日の夕餉の席で父王に聞かれた。
私の側にも来ず、席に座ったまま、じっとテーブルを見ていた子の話をした。
「ああ…キディリガンの……。そうか…。他に目に付いた者は?」
父王は、話を流して先を促したので、感じの良かった者の名を幾名か挙げておいた。
其の事は時間とともに薄れ、七歳の茶会を迎えた。
挨拶に来たあの子を見て、あっと思い出した。
一年前に見た時よりも痩せて顔色も悪い。薄い碧色の眼は、更に暗く陰を落としている。服も去年と同じ様な? その子は挨拶を終えると、やっぱり席に座ったまま、じっとテーブルを見ていた。…去年よりも更に人を寄せ付けない雰囲気を醸し出しながら…。私に寄って来る事も此方を気にする事もなく、ずっとテーブルを見詰めていた。
私は幾度となく視線を向けて、あの子を見てしまった。
「今回は、どうだった?」
夕餉の時に父王に聞かれたので、あの子の話をした。酷く痩せて、恐らく去年と同じ服を着ていた事。私の事など気にも留めないで、暗い眼でじっとテーブルを見詰めて居たと。人を寄せ付けない雰囲気を醸し出していて、話し掛ける事が出来なかったとも。
「…お前は…前回もキディリガンの子息を気にしていたな?……ふむ……」
父王は、顎を撫でてからキディリガン辺境伯爵家の事を教えてくれた。
キディリガン家は、先代が騙されて莫大な借金を抱えているそうだ。社交界では、貧乏辺境伯として知らぬ者はいないらしい。父王の側近であるイグディス・ダリダラント公爵の実家で、妹のミーメナ・キディリガンが当主を務めているそうだ。だが、ここ数年、妹と話せないのだとダリダラント公爵が零していたらしい。王宮主催の舞踏会には出席するが、話し掛ける暇もなく帰ってしまうのだと謂う。
「キディリガン辺境伯は、借金があるからと謂って、領民の税を上げたりしていないのだ。…貴族の矜持は素晴らしいが…借金が減らないのも、また事実。──お前は気に掛けているようだが…キディリガンの子息を側近候補には出来ない」
「そう謂うつもりでは……」
父王に釘を刺された。
その後は、他の者を数名挙げて終わった。
自室で一人考える。私は、どうしてあの子…シュザーク・キディリガンが気になるのだろうと。
私を見ないから…?
他の者のように、すり寄って来る訳でもなく、遠くから此方に視線を向けるでもなく、終われば用は無いと言わんばかりにさっさと帰る。
私は彼の……シュザークの眼に留まりたいのか……?
もやもやしたまま、一年が過ぎた。
そしてまた、催される八歳の茶会。
また、無表情で暗い眼をして、テーブルばかりを見詰めるのだろうか……?
だが、今回は違った。私よりも小さい子を連れて挨拶に来た。
シュザークと同じ白金髪の灰青の眼。彼の弟だと言う。二人共、痩せてはいるが無表情だった顔は和らいでいた。
席に着いた二人をチラチラと盗み見ていると、弟が席から立ち上がり、シュザークの身体や頭をぽんぽんと叩き出した。シュザークが慌てて諫めているようだが、困った顔をしながらも、その眼は優しい。
何故か、酷く衝撃を受けた……。
何故、衝撃を受けているのかも分からず、交流を続ける。その間も何度か彼等に眼が行き、見る度に…二人でにこやかに話している。
何故か、気持ちが落ち込んでいく。
それでもまた、眼が勝手に彼等に向いてしまう。すると、彼等のテーブルに王宮の料理人が居て、彼等と話しているではないかっ! 何故か怒りを覚えた。
私がシュザークと話せないと謂うのに……何故、料理人がにこやかに話をしているっ?
無意識に足が向いた。
近付くと、用意した菓子とは違うものを食べて、シュザークが美味しいと言いながら顔を綻ばせているっ!
「へぇ…、私も食べてみたいな…」
無意識に言葉を発していた。
しまったっ……! そう思った時にはもう遅く、二人は驚いて席を立ち、礼を執った。
ど、どうしよう……。
内心酷く焦っていた。後ろから、殿下…? と戸惑った声がして、慌てて後ろに居た者達を追い払った。
使用人がすっと私の席を作ったので、私も其れを食べたいと言って腰掛けた。
顔には出さなかったが動揺して胸の鼓動が煩い。
目の前に置かれた菓子を訳も分からないまま食べようとしたら、護衛に止められた。
毒見がどうこう言うから、私は思わず、シュザークが手を付けたものを引き寄せて食べていた…。美味い…。
更なる自分の失態に気が付き、青くなる。
これではっ…辺境伯の子息を毒見役にしたと謂う事になるのではないのかっ……!? 何て事をっ……!
私の心の中の動揺は荒れ狂うばかり……。
折角、シュザークと話が出来ていると謂うのにっ!
動揺しながらも、口は勝手に動く。自分自身を褒めたい位だ。
えっと…菓子に使う砂糖の話だな…? 砂糖の量を減らすだけで、シュザークがあんな顔で喜ぶのなら…私が変えてやろう…!
そして砂糖を減らす宣言をして、その場を立ち去った。
最初は、あの料理人が憎たらしかったが…今は、報奨でもやりたい気分だ。私専属の菓子職人にしてやろう。
その後は、頭も身体もふわふわしてよく覚えていない…。
茶会が終わって自室に戻る。落ち着いてくると、自分の大失態に頭を抱える羽目になった……。
何をやっているんだっ、私はっ…!?
彼等の功績を奪い取るような真似をしてっ…!!
私は、すっかり落ち込んでしまった。
夕餉の後に給仕されたデザートのケーキを口にした父王が、満足そうに微笑んだ。砂糖を適量に使ったケーキだ。
「今日の茶会の話は聞いたぞ。良くやった。砂糖に財力を誇示する力はもう無い、か…。なかなか良い事を言う。──お前の初めての功績だな」
父王が褒めて下さる。だが…。
「…違うのです…父上…。本当はキディリガンの兄弟が話していた事なんです…」
私は正直に茶会であった事を話した。
「ふむ…。それでもやはりお前の功績だ」
「何故ですか…?」
「ははっ。王族のお前が宣言するからこそ、周囲の貴族達に浸透するのだ。──王族と謂うものは、其れだけの影響力を持つ。キディリガンの子息が声高く言った処で、誰も耳を貸すまい。キディリガンの子息達も、其れは解っているだろう。──だから、お前の功績だ」
父王は、私の傍に来て頭を撫でてくれた。
私は漸く、安心する事が出来た。
「しかし…お前、やけにキディリガンの子息を気に掛けるじゃないか?」
父王に言われ、シュザークを思い出し頬が熱くなった。
「……その……何故か……気になるのです……」
「………」
父王は、珍しく困惑した表情をして私を見る。
「手遅れになる前に……今の内に言っておくが……お前は王太子だ。子を残す務めがある。残念だが…男では駄目なのだ…男では、子は成せぬ」
「…はい…??」
父王は、何を言っているんだ……?
「愛人であれば、傍に置くことも出来るが…シュザークはキディリガン辺境伯の嫡男だ…。諦めなさい」
「???」
首を傾げる私に、父王は気の毒そうな慈愛の眼を向けてくる。
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父王は、もう一度私の頭を撫でて退室した。
「──初恋……??」
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そして、九歳のお茶会。
一年振りのシュザークは、また背丈が伸びていた。
いつも通りの挨拶を済ませ、弟と二人で席に着いたまま動かない。二人の関心は私には無く、いや…他の子息令嬢にも無いな…二人で楽しそうに話しながら微笑み合っている。
其れを見ていると酷く胸を締め付けられた。
何故…あの眼が私には向けられないのだろう…。あんな風に…私を見て微笑んで欲しい…。私だけを…見て欲しいのに…。
シュザークの弟に嫉妬すら覚える。そんな、良くない感情が沸々と湧いて来る…。
ふと、去年の父王の言葉が思い出された。
───初恋は、叶わない。
そうか──私はシュザークに…一目惚れをしていたのだと気付かされた…。理解した時には、すでに失恋は決まっていた…。
私は暫く、情緒不安定になった。
苦しい、悲しい、辛い、憎い、妬ましい。
─────恋しい……。
私の中にある、多くの感情を知ることになった……。
諦めよう……。そう決めて迎えた十歳の茶会。挨拶を受けたら…それで終わりだ…。
だが…目の前に来た二人に息を飲む。
二人とも背が凄く…伸びた。健康的になった二人はとても麗しかった……何より……。
何だっ…!? その髪型はっ…!? 可愛過ぎるだろっ!!!
胸に、グッサリと何かが突き刺さった。
二人の髪は少し高めに結い上げられて、結い上げた根元の周りを編み込んだ髪で、ぐるぐると巻かれ、馬の尻尾のように中心から垂らされている。シュザークの尻尾は、肩を過ぎた位で…剥き出しになった項が、何とも艶めかしい…。何だ…? 頭に血が上りそうだっ…!
胸の鼓動が高くなる。
可愛い…! 可愛いっ…!! 可愛いっっ…!!!
ああ…どうしよう…? 胸を抑えて悶えてしまいそうだっ…!
でも……もっと見て居たい……。
何か…何かないか…? ふと視線を巡らした先に弟の髪が目に入った。……ん? 髪の色が前と違わないか…?
「─お前の弟は…確か…お前と同じ白金髪ではなかったか…?」
何でも高熱のせいで色が抜けたらしい。だが…美しい銀髪だ…。シュザークと二人並ぶと、金と銀でまるで対のよう…。
今回の茶会は、シュザークをチラチラと盗み見ては胸を高鳴らせ、他の者と話すときも彼等が見える位置に立った。もう誰と何を話したのか、全く分からないまま茶会は終わった……終わってしまった……。
心、此処に非ずで夕餉を摂る。味など分からない…。頭を占めるのは、シュザークの麗しい姿……。
「……い……おいっ!……ランドラークっ!!」
「はっ…はいっ!」
気が付けば、いつの間にか食事は済んでいた。目の前には、お茶とケーキが置かれ、傍に来た父王に肩を揺すられていた。
「──お前…大丈夫なのか…?」
父王が心配そうに聞いてくる。
父王の顔を見て現実に引き戻された。
…そう…だった…。諦めなければならなかった筈だ…。だけど、私は…今日───。
眼が熱くなって、ポロリと涙が落ちた……。
「父上……私は…諦めるつもりで居たのです…。だけど…私は今日、……前よりも強く、…彼に恋をしてしまったのです……」
俯いた私の眼から…ポロポロと涙が落ちた。
「───ラルク……」
父王は、私を抱き上げてソファに座った。
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「ああ、お前が気にしているキディリガンの子息が気になってな……遠見の魔法で見て居たよ……」
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「……だがな……どれ程麗しくても、あれは…お前と同じ男だ…。一緒にはなれない…」
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「……ラルク……」
父上は、私を愛称で呼んで抱き締める力を強めた。
「…年に、一度しか会えないのに……それでも……駄目ですか……?」
父上の胸に顔を埋めて泣いた。
「………」
父上は、ただ黙って背中を撫で続けた。
それから何ヶ月か過ぎた頃、私は側近候補と婚約者候補を選らんだ。
その者達と新たに茶会を催して交流することになった。皆、善く出来た者達で、なかなかに有意義な時間だったと思う。
「キディリガン領の隣国が不穏な動きを見せている」
ある朝、朝餉の席で父王が仰った。
何かと忙しい母上も、朝餉だけは余程の理由が無い限り一緒に摂る。
「キディリガン領の隣国ですか? 確か…彼処の王太子は、婚約者の公爵令嬢と婚約破棄をして男爵令嬢と婚姻を結んだとか…」
母上が僅かに顔を顰めた。
「そうだ。隣国のオクシトロン辺境伯が爵位を剥奪され、国外追放になったそうだ。彼を頼って付いて来た領民と共に、難民としてキディリガン領に身を寄せて居るらしい」
「まあ! 何て事っ…! 寄りにもよってキディリガン領にだなんて…。キディリガン辺境伯に難民を養う力は無いでしょう?」
渋い顔の父王に、母上は困った顔を向ける。
「取り敢えずは、難民達に食料を渡したそうだ」
「まあ…どうやって捻出したのでしょう…?」
「キディリガン辺境伯自身に加え、夫君と子息二人、キディリガン家の使用人数名が冒険者としてダンジョンで収入を得ているようだ。金こそ無いが食料には困っていないらしい」
「キディリガン辺境伯自身が冒険者…? 子息と言えば十三歳と十一歳の筈…。しかも使用人…?」
「ああ、私も最初は驚いたが…本当の事だとイグディスが言っていた。辺境伯は領民の税を上げてはいないから、手っ取り早く収入を得るには、冒険者は最適だな」
「善い領主であるのに…お気の毒に…」
母上は心底同情している様子だ。
それから父王は、隣国の俄には信じられない話を聞かせてくれた。
「国民が憐れでなりませんね……」
私が呟くと父王と母上は、憂い顔で頷いた。
「国からも、少しキディリガンに支援金を出すか…。だが、更に隣国から逃げてくるものが増えるのは困るな…」
「頭の痛い事ですわ…」
二人は深く溜息を吐いた。
「キディリガン辺境伯も次から次へと災難ですわね……オクシトロン辺境伯も、ですが」
「だが、キディリガン辺境伯は、意外とケロッとしていたぞ? 食料には困っていないと言うだけあって、健康的だったしな。何れにせよ、隣国とキディリガン領の現状を調べないとな…」
──シュザークが冒険者…? 危険ではないのか…?
大丈夫だろうか…。心配だ…。私も、もっと体を鍛えよう。
別の日、父王に呼び出されて執務室を訪れるとイグディス・ダリダラント公爵がいた。
「キディリガン領の事だから、お前も知りたいかと思ってな」
父王は、そう言って苦笑した。私を気遣ってくれたのか…。
お礼を言って父王が示した場所に座る。
「で、キディリガン領の様子は?」
イグディス公爵が父王に促されて話し出す。
キディリガン領は活気付いていて、隣国の難民も上手く引き入れたようだ。難民達も、今では元気に暮らしているらしい。
「キディリガン辺境伯は、有能なのだな」
父王は、感心して頷いた。
「ふふっ、真に有能なのは息子二人ですよ」
イグディス公爵は含んだ様に笑った。
「どういう事だ…?」
「ご存知の通り、キディリガン辺境伯には莫大な負債があります。其れをダリダラント公爵家で全額肩代わりしたのですよ。私の生家の事ですからね…。ダリダラント前公爵と妻に、必死で頼み込んでどうにかお願いしたのです。公爵家としても決して安い金額ではありませんから…。肩代わりした金額の二割を上乗せして返済する約束で、どうにか頷いて頂いたのです…」
イグディス公爵は、苦く笑う。
「そうであったか…」
「キディリガン辺境伯が何もしなければ、返済など何時になるのか分かりませんでしたが…。ダリダラント前公爵には、本当に感謝しかありません。ところが、既に負債額の半分以上をキディリガン辺境伯から返済されましてね? 今でも毎月結構な金額を返済してくれるのですよ」
「何とっ……!」
「最初は我が甥っ子達が、空腹の余り…家の皆の為にも冒険者になると言い出しまして。八歳と十歳ですよ? 食料も手に入るし、負債も減らせると言って…健気でしょう? 其れを聞いたキディリガン辺境伯が子どもだけにそんな事はさせられない、と言って冒険者に。主が行くなら、と執事までもが冒険者になりましてね」
「ほう…!」
「四人で冒険者になって、キディリガンのダンジョンに向かったのですよ。食事の量が増えると、庭師見習いと料理人見習い、メイド見習いの女性二人までもが、当主一家が自分達の為にダンジョンに行くのなら自分達も行きたい、と申しましてね。其処に理由あって離れて暮らしていた夫と、甥っ子が拾って来た冒険者を入れて、パーティーを組んでダンジョンに行くようになったのですよ」
「見習いばかりではないかっ!」
父王も私も物語を聞くように惹き込まれていく。
「其れからは、破竹の勢いで稼ぎ捲りまして。私にもダンジョン土産を沢山持って来てくれるのですよ。勿論、ダリダラント前公爵の処にも。孫の様に可愛がられております。ダンジョンのものは、とても美味しくて、お陰ですっかり舌が贅沢になってしまいました」
「何とっ…!」
「そんな訳で、キディリガン辺境伯は、食料だけは困っていないのです。おまけに領内の問題も自分達が出向いて次々と解決しているんですよ。自分達が借金だらけでも領内の税は上げないし、領内の問題も即解決してくれる。お陰で領内のキディリガン辺境伯家の人気は、凄まじいですよ?」
「そうなのか…」
「隣国の難民の件も、甥っ子二人が荒れ地の開発ついでに難民も救済、そして、ゆくゆくは領民を増やして税金を取る、という一石三鳥を狙っているんですよ? 荒れ地だって、魔法でザクザク耕して石や木の根を取り除いてから難民に後を任せていますし、取り除いた石は魔法で加工して、木の根は手頃な大きさに切って難民の生活に役立てて有効活用しております。…全く、抜け目の無い子達ですよ」
「凄いな……」
「安心して頂けましたか?」
「ああ、ランドラークの側近に欲しくなったな」
「ふふっ、恐らくあの子達は辞退するでしょう。ダンジョンの方が稼げますからね。すっかりダンジョンの虜ですよ」
「むむっ…そうか…残念だ」
父王は本気でがっかりしていた。私もだけれど。
「詳しくは、お話し出来ませんが……あの子達はちょっと辛い目に遭ってましてね…。貴族の柵は、最低限にしてあげたいのです。今は、あんなに元気になって…とても嬉しいのですよ」
イグディス公爵は涙ぐんでいた。
辛い目……? 一体、何が……?
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