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小話まとめ・短編・番外編
番外編 J− 花火大会(四) ★
しおりを挟む川に浮かべた四角い船の中で、俺の脚の間に雪乃を座らせ、背中から抱き締めて一緒に毛布に包まり、ビーズクッションに深く沈む。
夜になって、ぐっと冷え込んで来た上に、川風で身体が冷える。腕の中の雪乃の体温が心地良い。
雪乃といると、何をしても楽しい。
雪乃と出会う前の俺は、孤独だと感じた事はなかった。
ただ、ただ、退屈な毎日だった。
自由に外を出歩く事も、誰かと身体を重ねる事も、番を持つ事も諦めていた。
自分の邸から出る事も出来ない俺に出会いなどある筈もなく、近くまで来れた者も触れるどころか会話をする事すら出来ない。
そんな退屈な毎日に、突然、ひょっこりと現れた雪乃。
俺の傍に来て、普通に話して、平気で俺に触れる雪乃。
しかも、雪乃が一緒なら外にも行ける。
そんな雪乃が俺の前に現れたんだ。惹き付けられない訳が無い。あっと言う間に、雪乃に夢中になった。
運命の番になれたから良かったが、雪乃は運命よりも、ずっと、ずっと、特別な存在だ。
雪乃が俺の退屈な世界を変えた。雪乃と一緒なら、今迄見てきたものが全く別のものに変わる。本当に、驚くほど違って見える。
『世界が色付く』なんて陳腐な言葉を実体験した。『世界は素晴らしい!』なんて叫ぶ、能天気な奴の気持ちが分かってしまった。
それと同時に、雪乃は俺に孤独の恐怖を植え付けた。
雪乃と出会う前の俺は、何であんなに平気で生きていられたんだ? 雪乃を手に入れた今は、前の俺の世界には戻れない。雪乃を失う事が、独りになる事が恐ろしい。
勿論、手放すつもりなど無いけどな。
雪乃を知れば知るほど、惹き付けられる。
本当に、何でこんなに愛おしいんだ。
周囲を見れば、Wolf Kingを始めジーノやミーノ、ゼーノ達が自身の番を愛でる事に忙しい。あいつらの番も運命の番だ。
あいつらも、同じ気持ちなんだろうな。
「ジェイ、今日食べた中で何が一番美味しかった?」
腕の中の雪乃が頭をずらして下から見上げてくる。
「そうだな……。牛串が美味かったな。あと、苺飴」
「そっか。牛串のお店は焼き肉屋さんだから、今度食べに行こうか」
「焼き肉?」
「バーベキューみたいに、お店の中で自分で焼いて食べるんだよ」
「面白そうだな」
雪乃は、微笑んで頷いた。
こんな風に、雪乃は俺の予定を埋めていく。雪乃と一緒なら何処にだって行く。日本はまだ、安全な国だからいいが、海外はそうはいかない。今後の為にも護衛を揃えないと駄目だな。
狼どもは、どうしてるんだ? 後で聞いてみるか……。
そんな事を考えていたら、ドン、ドン、ドンっと腹に響く様な大砲の音が鳴った。
思わず、雪乃をガッチリと抱き締めた。
「────何だ……?」
「ふふっ、花火の始まりの合図だよ」
雪乃は、警戒している俺の腕を毛布の中で宥める様に擦ってくる。
「近くだから、音が凄いからね。ジェイは平気?」
「ああ」
今迄流れていた音楽が止まって、別の音楽が流れ出す。下から噴き出すような花火が上がり、その少し上にいくつもの花が咲く様に、開いては散っていく。更に高い位置に円形の大きな花火が上がり、追い打ちを掛けるように、もっと大きなものが夜空一面を覆い尽くす。
腹に響く重低音と一緒に、花火が自分に向かって迫って来る様だった。
「凄い──迫力だな……」
思わず、感嘆の声が零れた。
腹に響く音と、カラフルな花火の色。バチバチと弾けて、ジュッっと消える様が美しく……儚い。
最後にひと際大きな音が腹に響き、大きく広がった花火がザアアアっと音を立てながら、火の雨が尾を引いて頭上に降ってくる……。
言葉もなく、その光景に見惚れた。
「離れた場所から全体を見るのも良いけど、俺は間近で見るのが好き。この迫力は、近くじゃないと味わえないからね」
雪乃は、火花が消えた夜空を名残り惜し気に見詰めていた。
知らない景色に、見たことのない店の数々。言葉の違う沢山の異国の人々。非日常の祭りと謂う事もあって、日常と切り離された空間に迷い込んだ気分になる。俺達が今日、着てる服もそうだ。いつもと違う服。目の前の雪乃まで儚げに見えて、強く抱き込んで噛み跡の残る項に顔を埋めた。
「ジェイ? どうしたの? まだ、お酒が抜けてないのかな……? やっぱり、飲ませない方が良かったかな……」
「酔ってない」
何故か、酔っていると勘違いされて、毛布から手を出した雪乃に頭を撫でられる。
雪乃の項を甘噛して抗議すると、首を竦めて、くすくすと笑われた。
頭を撫でていた手が止まって引き寄せられ、雪乃が首を捩って俺の唇に、ちゅっとキスをしてくる。離れて行く頭を捕まえて、深く口付けた。雪乃も直ぐに答えてくれた。甘い飴と苺とビールの味がする。
ピュ~~~……ドンッ……!
花火が上がって、辺りが明るくなった。
構わず雪乃の舌を可愛がっていると、腕をタシタシと叩かれて、仕方が無く唇を離す。
「……ほら、花火を観て?」
雪乃の潤んだ薄い碧の眼に、花火の光がキラキラと輝やいていた。その綺麗な眼で俺を見詰めてくる。
雪乃の身体を横抱きに抱え直し、夜空を見上げた。
さっきとは違い、僅かな間を開けて上がる花火を観ながら、花火が消える度に雪乃にキスをした。雪乃は苦笑しながら応えてくれる。
フィナーレの、これでもかと連続で打ち上げられた花火は、最高の見応えだった。最後に雨のように尾を引く花火が何発も上がり、その火花が消えてしまうと辺りは静けさと暗闇に包まれた。
「終わっちゃったね……」
「ああ……。何だか……寂しいな……」
「そうだね……」
雪乃は、俺の首に腕を回して抱き着いて来て、俺も雪乃の身体を抱き締めた。
大神家の別荘に帰り着くと、其々が番を連れて部屋に戻って行った。
俺達も部屋に戻る。
部屋には大きな水槽があって、金魚すくいで獲った金魚よりも、でっかい魚が泳いでいる。金魚に見えるが……同じ魚なのか……?
「その金魚はね、俺が初めて金魚すくいで獲った金魚だよ」
「今日、獲ったやつは幼魚なのか?」
「うーん、詳しくは知らないけど、生まれて一、二年位みたいだね。こっちのは、十二年以上は経つかな……。ここ迄大きくなるのは、育て方らしいよ? ここを管理してくれている鮎川夫妻は、凄く金魚を育てるのが上手いんだよ」
「凄いな」
大きな水槽の隣に、俺が今日すくった金魚が小さな水槽に入っていた。
暫く、でかい金魚を眺めてから服が窮屈に感じて羽織を脱ぐ。
「雪乃。着替えてもいいか?」
同じ様に羽織を脱いでいた雪乃に尋ねると、彼は頷いて俺の背中に回って帯を解き出す。
「ジェイ……。浴衣ってね……実は、凄く無防備な服なんだよ……?」
「無防備? 窮屈には感じるが……」
キッチリと包み込まれてギュッと締め付けられる感じが、堅苦しく感じる。
「……ほら、此処の合わせから……手が簡単に滑り込めるでしょう……?」
雪乃は、妖しく笑いながら俺の胸元にするりと手を差し入れて、直に胸を滑るように撫で回された。
……本当だな……。これなら、いつでも雪乃の胸を触れたじゃないか。何かあっても、直ぐに手を引っ込めて知らん顔が出来るな……。
何で、気付かなかったんだっ……!
「…………」
「……それに────、こっちも……」
「……ッ……!?」
雪乃は、俺の太腿の脇から手を滑らせ、布の重なりの下にスルリと潜り込むと、太腿の付け根近くを思わせ振りに撫でてきた。
これは──誘われているんだよな……?
これを今、俺に教えるって事は、こうして欲しいって事だよな……?
もしかして、雪乃は期待していたけれど、俺が気付かなかったから教えたのか……!?
Shitッ……!! 何でもっと早く気付かなかったんだっ……!
「──なんてね!」
雪乃は、くすくすと笑いながら手を引っ込めて、途中まで解いていた俺の帯を取り去った。俺の肩からスルリと浴衣を滑り落として脱がされ、下着だけになる。
雪乃は、自分の帯を解き始めた。
まずいっ! 脱がれてしまっては、雪乃の期待に応えられないっ……!
慌てて雪乃を背中から抱き込む。
「ジェイ?」
雪乃が不思議そうな声で俺の名を呼ぶ。
「確認させてくれ」
「っ……!?」
雪乃の胸の合わせ目から、スルリと手を差し込むと簡単に地肌に触ることが出来た。指先が雪乃の胸の尖りに引っ掛かる。
指の腹ですりすりと優しく撫でると、雪乃が身動いだ。
「ジェイ……して欲しい訳じゃ……ないんだけどっ……?」
「本当に? じゃあ、何で教えたんだ?」
「ふっ……か……誂っただけっ……あ……」
「そうか?」
身体をくねらせる雪乃の太腿に、もう片方の手を置き、雪乃がした様に合わせ目から手を入れて内腿をゆっくりと撫で上げる。
合わせ目の間から雪乃の素脚が見えて、何だか厭らしくて興奮する。
「ジェ……ジェイっ……! もうっ……いいでしょ……?」
「まだだ。もっと……確認が必要だな」
「うあっ……!」
雪乃の乳首を親指と人差指で摘んで、クリッと転がすと雪乃の身体がビクリと跳ねた。
内腿の手を撫でながら上に滑らせていって、下着の上から雪乃のペニスの形をなぞる。
「ジェイっ……今日は……もうっ…、したでしょっ……!?」
「してない」
「っ!? ……したでしょっ……! んっ……バスルームでっ……!」
「バスルーム? してない」
「!? このっ……! 酔っぱらいっ……! ふ……」
雪乃は、身体を捩って俺の腕から抜け出そうとする。その度に、乳首をキュッと摘み上げて下着の上からペニスを揉みしだくと、へなへなと抵抗する力が抜けていく。
バスルームでしたのは、ちゃんと覚えている。覚えていない振りをしたら、俺が酔って記憶がないと勘違いしたようだ。折角だから、否定も肯定もしないでおく。
腕の中で雪乃が暴れるから、浴衣がどんどん乱れていく。胸元は大きく開かれ、片方の肩からずり下がって剥き出しになる。脚は布の重なりが広がって、片足が見えている。
凄く、セクシーだ……。だが、下着が邪魔だな……。
雪乃のペニスを撫でていた手で下着を太腿までずり下げて、直に握って濡れる先端を親指で撫で回す。
「ジェイっ……!! そ、……それっ……だめッ……!!」
「何が……?」
雪乃の首筋を舐めて、吸い上げながら囁く。
「そっ……そこだけッ……くりくりするのっ……! やっ……やめてっ……!」
「ん~? わかった」
そこだけは嫌だと言うので、乳首も軽く引っ張って一緒にクリクリしてやると、雪乃の身体がビクビクと跳ねた。軽くイッたみたいだな……。
崩れ落ちそうになる雪乃の腰を腕で支えながら、どちらの愛撫もやめない。
「っ!? ぅあっ……!! ぁあッ……! ……そこっ、だけっ……! だめって……はっ……いってるのにっ……!!」
「……ん? だから、そこだけじゃなく、こっちもクリクリしてるじゃないか?」
「ぁあああっ……!! そ……そうじゃっ……ないっ……!!」
「そうじゃない? ──じゃあ……こうか……?」
「ち、ちがっ……!! あうっ……! やめっ……!!」
胸から手を引いて、前のめりになって行く雪乃の裾を捲し上げ、可愛いく突き出された尻を撫でる。谷間に指を滑らせると、既に濡れて溢れている……。何時間か前に容れたばかりだから、直ぐに容れても大丈夫そうだ。
自身の勃起したペニスを何の予告もなく雪乃の胎内に埋め込んでいくと、突然の快楽に、雪乃は嬌声を上げて潮を吹きながらイッた。
「っッ~~~ぅうああ゙あ゙あ゙あ゙っっッッ~~!!!!」
全身をがくがく震わせながら、崩れ落ちる雪乃をゆっくりと俺の脱いだ浴衣の上に下ろし、俺も一緒に膝を突いて、雪乃の腰を高く支えたまま挿入を繰り返した。
俺の浴衣を握り締めて、床に顔を着けたまま揺さぶられた雪乃は、声にならない声を上げながら為す術もなく俺にされるがままだ。ずっと、ガクガクと震えてイキ続けている。
奥を優しく、クチュン、クチュンと突きながら、雪乃にぎゅむぎゅむ喰い締められ、揉みしだかれて……堪らず、奥に吐精した。
「フッ……! 雪乃ッ……!!」
「んん゙あ゙あ゙あ…あっ~~ッッ~~!!!!」
涙を流しながらブルブルと身体を震わせる雪乃に、更に刺激されて萎えかけたペニスが勃起してしまい、腰を動かしてしまう。
ギリギリまで引き抜いて、また深く入り込む。それを繰り返すと、雪乃は小さく何度も潮を吹き、言葉にならない声で鳴き捲くった。
「んん゙ん゙ん゙~~…!! ……ジェッ……ぁぅッ……! ……ぃいぃ゙ぃ゙~~~っっっ……む……むぅぅ……~~~……っりいぃぃぃ~~ッッ!!!!」
「はああぁ~~ッ……! ゆきのっ……!!!!」
どうにも興奮して……泣きじゃくる雪乃を何度も攻め立てて、溢れるほどにspermを注いだ。
「ハア……ハア……ハア~~……。ゆきの……。花火大会……最高に……愉しかったよ……」
背中から雪乃をぎゅうぅっと抱き締めて、焦点の合わない朦朧とした虚ろな彼の耳元で、荒い息と共に囁く。
「……I can't stop loving you …….The person I love……」
聞こえていたかは分からないが、雪乃は、ゆっくりと目を閉じて気を失った……。
ほんの僅かに、口端が上がっているような気がした……。
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