私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

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第328話

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 番のコカトリス討伐クエスト。
 それがすべての元凶だった……いいや、仕組まれた罠だった。
 洞窟の奥、確かに番のコカトリスはいた。
 銀翼の戦力であれば、さほど難しいクエストではない。
 いつも通りにアルベルトの指示で戦闘を開始する。
 順調に戦闘を進めていたが、警戒していない背後から攻撃が命中してクウガが倒れる。
 仲間から……オプティミスからの不意打ちとも捉えられる攻撃に重傷を負った。

「オプティミス‼」

 連携を見誤った攻撃かと思いアルベルトが叫ぶ。

「ゴメン、ゴメン!」

 謝ると同時にオプティミスが、すぐにラスティアの所へとクウガを運ぶ。
 意識のないクウガの額に、オプティミスは輪のようなものを取り付ける。

「なにをしているの!」
「静かに!」

 オプティミスの行動に驚き、アリスが問い掛けるが、ラスティアに戒められる。

「どうってことないよ」

 オプティミスがアリスの問い掛けに応え、ラスティアはクウガの治療をする。
 自責の念からか、オプティミスもクウガの側から離れずにいた。

「とりあえず、終わったわ」
「ありがとう、ラスティア」

 クウガの治療を終えるのを確認すると、オプティミスは入って来た場所を爆破する。
 この行動にはアルベルトたち銀翼のメンバー全員が……正確にはラスティア以外のメンバーが驚き、戦闘中のコカトリスから目を離す。
 本当に一瞬だったが、その一瞬で形勢が逆転する。

「気でも狂ったか!」

 ササジールが叫ぶが、オプティミスは聞こえていないかのようにササジールの言葉を無視する。
 爆発音はコカトリスをさらに怒らせる。

「オプティミス!」

 アルベルトがオプティミスの名を叫ぶ。
 それは一連の行動を咎める意味もあった。

「戦え!」

 オプティミスに戦うよう指示をするアルベルト。
 まず、目の前のコカトリスを討伐することを優先するため、戦闘への復帰するよう促すが、その指示に従うことはなかった。
 クウガの戦線離脱に続き、オプティミスも戦闘に復帰しない。
 戦力としては大幅にダウンしているが、雌のコカトリスの討伐に成功する。
 番の雌を殺されたことで、雄のコカトリスの凶暴さが増す。

「そろそろかな」

 オプティミスが呟く。

「なにがじゃ?」

 戦闘をしながらもオプティミスの行動に違和感を感じ警戒していたササジールが、オプティミスの独り言に反応する。
 だが、オプティミスは不敵な笑顔を返すと立ち上がり、アイテムバッグからスクロール魔法巻物を取り出して発動させる。
 オプティミスを中心に視野を奪う煙が周囲を包む。
 コカトリスへの攻撃に集中できないなか、煙がおさまるとオプティミスの姿が見当たらない。
 クウガの治療をしていたラスティアも姿を消していた。
 咄嗟にササジールとアリスが二人を探す。
 完全に連携が途絶えた銀翼は窮地へと追い込まれる。

「頑張れ、頑張れ」

 上から聞こえる揶揄う言葉に視線を向けると、岩に腰掛けて笑顔のオプティミスと、その横で視線を落として立っているラスティア。
 アルベルトたち全員がオプティミスの名を叫ぶより先に、オプティミスが開く。

「僕とラスティアは、この瞬間を以って銀翼を抜けるから。あとは頑張ってね」

 その言葉に思考が停止する……だが、コカトリスは待ってくれない。
 前線にいたローガンとミランを吹き飛ばすと、停止していた思考が戻り自分たちの状況を瞬時に理解した。
 そう、自分たちが圧倒的に不利な立場になったという現実を――。
 立ち上がったローガンとミランもダメージを負っている。

「ラス――」

 アリスは、ラスティアに向かって叫んだ……だが、いつもいる場所にラスティアの姿はない。
 いつもならラスティアが回復をしてくれる。
 その希望が閉ざされる。
 それはアリスだけでなく、銀翼全員が感じていた。
 ローガンとミランも、アイテムバッグからポーションを取り出し飲み干す。
 想定外の出来事に用意していたポーションや、マジックポーションにも限りがある。
 アルベルトは必死で体制を整えようと考える。

(……クウガ)

 倒れているクウガを見る。
 無意識にクウガを頼っていた。
 この状況、クウガなら……と。
 臨機応変な指示は自分より先に出していたクウガの不在。
 改めてクウガの存在の大きさを、アルベルトは痛感する。

 高みの見物をしているオプティミス。
 何とか戦況を有利に戻したアルベルトたちは、もう少しでコカトリスを倒せるところまで来ていた。
 それはオプティミスの妨害がなかったからだ。

「うん。いい頃合いだね」

 オプティミスの言葉に反応したかのように、コカトリスの討伐が完了すると同時に突然、戦場に幾つものサークル魔法陣が出現する。
 そして、そのサークル魔法陣から何人もが戦場に姿を現した。

「オプティミス! なんのつもりだ‼」

 肩で息をしているローガンが叫ぶ。

「さぁ、二回戦の開始だよ」

 オプティミスが笑顔で大袈裟に演劇の開始を告げるように、大袈裟な身振りで下にいる銀翼のメンバーに告げた。
 サークル魔法陣から出てきた者がコカトリスの死体にスクロール魔法巻物を投げつける。

「さぁ、頑張ってね」

 倒れていたコカトリスが起き上がると、銀翼のメンバーに絶望が押し寄せる。
 だが、悲鳴が響き、 サークル魔法陣で現れた者同士で争い始めた。

「う~ん。やっぱり、失敗作は失敗作だね。敵味方も分からないようだしね」

 座って観戦していたオプティミスが、戦闘音にかき消されないような大声が響き渡る。

(さぁ、どこまでやれるかな)

 戦況を見ながら、口角が上がり続けたままのオプティミスを、ラスティアは冷やかな目で見ている。

「もう、いいでしょう」

 これ以上、仲間たちが苦戦する様子に耐えられなくなっていた。

「……そうだね」

 膝の埃を払い、立ち上がる。

「じゃあ、僕たちはこれくらいで御暇するね。アンデッド相手に頑張ってね~」
 
 陽気に手を振ると、サークル魔法陣が発動して、オプティミスとラスティアの姿が消えた。

「……アンデッドか」

 目の前の惨劇に、サークル魔法陣から出現した多くの者がアンデッドだと、オプティミスの捨て台詞をアルベルトたちは理解する。
 そして、アンデッドに最も有効なのは回復魔術師のラスティアだ……しかし、そのラスティアはオプティミスと一緒に姿を消した。
 アルベルトは咄嗟にササジールを見る。
 ササジールの光属性魔法もアンデッドには有効打だが、コカトリスとの戦いで魔力を多く消耗していた。

「大丈夫じゃよ」

 問題無いことをアルベルトにササジールは伝える。
 だが、すでにギリギリの状態なことはアルベルトや他のメンバーも分かっていた。
 アンデッドとして復活したコカトリスは敵味方の判別つかず、お互いに戦っていた。
 近くにいた者やアンデッドたちも踏まれて、蹴飛ばされるなどで数を減らす。
 前線にいたアルベルトとローガン、ミランの三人も後衛まで戻っていた。

「勝手に自滅してくれれば、楽だけどね」
「まぁ、そうだが……あのコカトリスが相打ちになることを祈るだけだな」

 ミランとローガンは静観して、体を休める。

「完全に塞がれている」
「あぁ、へたに攻撃しても崩落の危険が高いじゃろうな」

 アルベルトとササジールは、オプティミスにより崩落した場所を見て、脱出は難しいと悟る。

「仕方ないの」

 ササジールはアイテムバッグからスクロール魔法巻物を取り出す。

「お主が使え」
「えっ……これは」

 目を覚まさないクウガを心配しているアリスにスクロール魔法巻物を渡した。
 上級魔術師であるアリスには、スクロール魔法巻物に施されている魔法がなにかを瞬時に気付く。
 転移魔法だと。

「これなら全員で――」
「悪いの。これは二人用じゃ。転移先には儂の信用している奴が居るはずじゃ。儂と奴以外は、このスクロール魔法巻物の存在を知らんから安心してよいぞ。老い先短い儂よりも、お主とクウガで使え。他の者もそれでよいかの」

 ササジールの言葉に笑顔で、それぞれが想いを口にする。

「戦って死ねるなら、本望だろう」

 戦闘狂のミランらしい言葉だった。

「そうだな。俺もミランと同じで、どこまでやれるか試してみたいからお前らが使え」

 ローガンが自身の拳をぶつけていた。

「アリス、クウガを頼んだよ」

 最後にアルベルトが、クウガのことをアリスに託した。

「みんな、なにを言っているの‼」

 仲間を見捨てて、自分だけ助かろうという考えなど微塵もない。
 死ぬときは一緒だと思っていたからだ。

「アリス。冒険者とは別の幸せを掴んだっていいんだぞ」
「そうそう。お前たちはお似合いだぞ」
「な――」

 ミランとローガンがアリスを揶揄う。
 揶揄われたアリスは、顔を赤く染める。

「お主ら、まだ戦闘の最中じゃぞ。まぁ、もし生きて再会出来たら報酬として、アリスの下着でも貰おうかの」

 ササジールも冗談を言う。
 とても緊迫した戦場での会話ではなかった。

「というわけで、これは僕たちの総意なんだ」
「でも――」
「悩んでいる暇はないよ」

 渋るアリスだったが、ミランが雄のコカトリスが攻撃の対象を自分たちに変更したことに気付く。

「じゃあな、アリス。楽しかったよ」
「起きたらクウガの馬鹿を必ず黙らせろよ。いつも喧嘩しているお前なら大丈夫だよな」
「報酬の下着忘れんでくれよ」

 ミランとローガン、ササジールが別れの言葉を告げてコカトリスに向かって行くと、アリスは涙を流す。

「本当にクウガをよろしく頼むね」

 念押しするかのようにアルベルトが笑顔をアリスに向ける。

「みんな……」

 走り去っていく仲間の背中を見ながら、クウガを託されたのだと自分に言い聞かせる。

「……ゴメン」

 涙を浮かべながらスクロール魔法巻物を使用するとサークル魔法陣が出現する。
 戦っている仲間の姿を目に焼き付ける。
 そう、徐々に消えていく仲間の戦う姿を――。
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