私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

文字の大きさ
329 / 376

第329話

しおりを挟む
 話し終えたアリスは、自分の知っている陽気で自信にあふれる表情とは程遠かった。
 辛い話をさせてしまったことに、リゼも申し訳ない気持ちになる。
もし、自分に会わなければ、こんな表情をすることもなかったに違いない。

「ありがとうございました」

言葉の見つからないリゼが発したのは礼だった。

「バンブーロさんは、ササ爺の幼馴染で親友らしいの。何かあったら……と、何年も前にスクロール魔法巻物を購入した時、この場にサークル魔法陣を設置したと、バンブーロさんから教えてもらったの」

 突然、現れたクウガとアリスを温かく迎え入れたバンブーロ。
 そして、ササジールの身に何が起きて、この二人にスクロール魔法巻物を託したのだと知り、アリスに事情を聞いたそうだ。
 そのうえで、弟子夫婦ということで、この家で暮らすことを提案すると、アリスは感謝して受け入れた。

「クウガさんの記憶は……」
「オプティミスの魔道具の影響かは分からないけど、私たちとの記憶は失っているわ。それに左目も上手く見えていないようなの」

 なにがどうなっているのか理解が追い付かなかったが、片方の目しか見えない者が冒険者を続けることは難しい。
 そう……記憶が戻っても、クウガが冒険者に復帰することはない。
 だからこそ、アリスはクウガに寄り添って生きていくことを決めたのだと感じていた。
 リゼの表情から察したのか、アリスが呟いた。

「もう、私は冒険者としては生きていけないわ……ごめんなさい」
「謝らないでください。冒険者になるのも辞めるのも本人次第です。アリスさんの気持ちが最優先です」
「ありがとう」

 自分の言葉でアリスが少しでも楽になればと思っていた。
 本心でいえば、アリスが冒険者を引退することは寂しい。

「ところで、この村を訪れたのは偶然? それとも……」
「偶然です。本当に、この村にアリスさんたちがいたことは知りませんでした」
「そう……やっぱり、誰も戻って来ていないのね」

 どこからか情報が漏れたということを警戒していたのだと感じたリゼは、アリスが言い終わる前に”偶然”を強調した。
アリスは「ササジールたちが無事に生還したのではないか」という希望もあったが、リゼの言葉で砕け散った。
 アリスの言葉で、そのことに気付いたリゼ。
 再びアリスに絶望を与えてしまったと、残念そうな表情を浮かべるアリスを見ていた。
 銀翼のメンバーたちから託された思い。
 アルベルトたちの最後の言葉……敢えて「遺言」という言葉は使わない。
 その思いに応えようとするアリスを攻める権利などリゼにはない。
 だが、アリスを慕うアンジュには伝えてあげては……という思いもあったが、人目を避けて生きている二人にとって存在を知る者は少ないほうがいいに決まっている。
 その一方で、リゼはアンジュに嘘をつくことに躊躇いもあった。
 目の前のアリスは冒険者の……上級魔術師のアリスでなく、ひとりの女性として座っている。

「アンジュには……会えないですよね」

 ダメもとで問いかけると、アリスは困ったような表情だった。

「そうね。リゼちゃんも私たちのことを他人に言わないでしょう。……もし、アンジュがなにも聞かないという条件であれば、これを渡してくれる」

 アリスは着けていた首飾りを外すと、リゼの目の前に置いた。

「これは?」
「昔、アンジュが欲しがっていたものよ。一流の冒険者になったら渡すと約束をしていたのよ。だから、ここ何年かは仕舞ったままだったけど、この村に来てから着けていたの。アンジュしか知らないから、渡せば分かると思うわ」
「ありがとうございます」

 この首飾りを渡すことが、今のアリスにとってアンジュにしてあげられる最大のことなのだろう。
 それは自分の危険を……存在が知られる危険を承知した贈り物だとリゼは分かっていた。
 そして、それを託された意味も――。

「アーリンという名前は言っても差し支えないですか?」
「……えぇ、いいわ。頭のいいあの子なら、察してくれると思うわ」

 アリスとアーリンが同一人物だと裏付けるものは、なにもないがアンジュなら意味が分かるだろうということなのかもしれない。
 大事な区部飾りを、すぐにアイテムバッグに仕舞うと、リゼは大事なことを思い出す。

「これを預かってもらえませんか?」

 アイテムバッグから取り出した小太刀を、今度はアリスの目の前に置く。

「大事に使っていたんですけど――」

 その言葉に嘘はない。
 だが、折れてしまったことも事実だった。
 申し訳なさそうに話すリゼは、罪悪感からアリスの顔を直視出来ないでいた。

「これは……そうね。クウガとの約束だったわね」

 懐かしそうに、そして楽しかった時を思い出すかのように折れた小太刀を手にする。

(昔のアリスさんだ)

 アリスの声色が変わったこともあり、アリスの顔を見る。
 そこには自分の知っているアリスの顔に戻っていた。

「たしか、銅貨一枚だったわね」

 アリスは小太刀を購入した時の約束を覚えていたのか、財布から銅貨一枚を取り出そうとする。

「待って下さい。その……小太刀をクウガさんに返すまでは、いただくことはできません。それに、出来ればクウガさんからいただきたいです」
「……そうね」

 アリスにリゼの思いが伝わる。
 気持ちは違えど、クウガを慕う思いは同じだ。

「他に聞きたいことは?」
「……いいえ、大丈夫です。ありがとうございました」

 聞きたいことは他にもあったが、これ以上は聞くべきではないと思っていた。

「私が言うことではないですが……幸せになって下さい、アーリンさん」
「……ありがとう、リゼちゃん」

 リゼが”アリス”という名でなく”アーリン”という名で呼んだことの意味をアリスも感じ取っていた。
 冒険者のアリスでなく、アーリンという女性の人生を認めてくれたのだと――。

(みんな……本当に、これでいいの?)

 自分は許されたのだろうか? と、天を仰ぐ。
 空の上にいて欲しくはない仲間たちを思い浮かべながら――。


――――――――――――――――――――

■リゼの能力値
 『体力:四十六』
 『魔力:三十三』
 『力:三十一』
 『防御:二十』
 『魔法力:二十六』
 『魔力耐性:十三』
 『敏捷:百三十五』
 『回避:五十六』
 『魅力:三十』
 『運:五十八』
 『万能能力値:五』 
 
■メインクエスト
 ・魔物の討伐(最低:五十、最大数:百)。期限:三十日
 ・報酬:討伐数、魔物の種類に応じて変動

■サブクエスト
 ・ミコトの捜索。期限:一年
 ・報酬:慧眼けいがんの強化

■シークレットクエスト
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

忍者ですが何か?

藤城満定
ファンタジー
ダンジョンジョブ『忍者』を選んだ少年探索者が最強と呼ばれるまで。

スキル【ファミレス】を使っていたら伝説になりました。

キンモクセイ
ファンタジー
スキル「ファミレス」を手にした。 ハズレスキルかと思い、主人公の思うがまま行動している。 そんな時に1人の少女と出会い、運命が変わる。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~

仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

30代からはじめるダンジョン攻略!脱サラ男によるダンジョン攻略術。

神崎あら
ファンタジー
31歳、独身、職業攻略者。 世界にはダンジョンと呼ばれる不思議な建造物が出現して早20年、現在世界はまさにダンジョン時代と呼ばれるほどにダンジョンビジネスが盛んになった。  これはそんなダンジョン攻略者になったアラサー男性の冒険譚である。 ※話数の表記の修正と同じ話の整理を行いました。 18時更新します

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

処理中です...