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第333話
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山沿いを進んで、五日目。
リゼたちは話し合いの結果、これ以上は危険だと判断して、町の方に戻ることを決める。
ポーションやマジックポーションの残りもそうだが、食料問題も発生していた。
火を起こして野草や討伐した魔物の肉などを調理していたところ、匂いにつられて魔物が襲ってきた。
昨夜も火や煙が目印となり、夜行性の魔物に襲われた。
火を嫌う魔物が多いというのは、この世界での一般常識だ。
それは、遠い昔に弱い魔物の多くが火を怖がっているという認識により広まったことが大きい。
普段生活するレベルであれば、火は魔物に対して有効な防衛手段ということは間違いないことも事実だ。
焚火を囲う際に、知らず知らずのうちに警戒していることを冒険者たちは自覚しておらず、就寝の時も必ず見張りをつけることもあり、欲望に負けて襲うような魔物は少ない。
もっとも知能の高い魔物の場合は別だが……。
進行方向とは逆で、山から離れるように進む。
三人ともが、まともに睡眠を取れていないこともあり、疲労が抜け切れていない。
しかし、それは冒険者の宿命だと分かっていた。
これを経験できたことは貴重なことだと感じながら、重い体を動かす。
少しだけ気になっていた異臭が進んでいくと、より強くはっきりと感じられる。
異臭の元から風下にいるため、最後尾にいるレティオールは自分たちの匂いも異臭に交じり風下へと流れていると思い、背後から襲われないように警戒を強めていた。
倒れている木に、綺麗に伐採された跡が残っている。
魔物が暴れて倒木したのは理解できるが、こんな場所まで木材を取りに来た者がいるとは考えにくい。
それほど魅力的な樹木たちが生えているように思えず、町や街道近くに生い茂っている木と変わりないようにも感じたからだ。
「少し、休憩しようか」
「そうだね」
伐採された切り株を椅子にして、少しだけ休憩を取る。
「綺麗に切られているね」
「それに、まだ新しいよ。熟練の職人技かもね?」
「凄いよ」
切り株は綺麗に切られており、まるで包丁で切ったかのように真っ直ぐ切られていた。
リゼも断面を触ると確かに、何度も斧を入れて切った感じではない。
幼いころに育った村で数度見ただけだが、自分の知っている伐採方法ではないのだと思いながら、断面に触れる。
見事な切断面に感服していた。
「だけど、こんなバラバラに伐採するのかな?」
レティオールが疑問を口にする。
確かに不規則に高さも異なるように切られている。
角度もバラバラだ。
「もしかして、誰か戦った後……とか?」
シャルルは考えたくないことだと分かりながらも、レティオールに聞くような話し方をしていた。
「そうだね。シャルルの言うとおり、そう考えると荒れた地面や折れた木も魔物が暴れたってことかな」
改めて切り株の断面を触りながら、剣で切ることが出来るのか? とリゼは考えていた。
かなり実力のある冒険者が集っているクランもしくは、パーティーなのだろうと、顔も知らない冒険者に会ってみたいと思う。
レティオールが立ち上がると、シャルルも同じように立ち上がる。
何も言葉を交わしていないが、リゼも立ち上がり暫しの休憩を終えて歩き始めた。
先頭を歩いていたリゼが右腕を横に伸ばし、後ろの二人に「止まって」と無言で指示を出す。
すぐに気配を感じたシャルルとレティオールは戦闘態勢へと移行する。
リゼも腰から忍刀を抜き、近付いてくる気配に対して注意を払う。
風向きが変わったのか、進んでいる方向から異臭はしなかったが、目視できる距離の二本足の鳥型魔物たちが集団で食事をしているようだった。
「あれは“ロッテンバード”だね。上空から死体を見つけると下りてきて食べる魔物だよ。臆病な魔物だから、こちらの気配に感付けば飛び去って行くと思うよ」
「昔は、ロッテンバードに食べさせることで、死体処理をしていた地域もあったよね」
「うん、そうだね」
知らない魔物の情報を得られるのは貴重なことだと、リゼは二人の話を聞いていた。
クエストのことや経験を積むため、討伐できるのであれば討伐したいと思いながらも、レティオールとシャルルの表情から戦闘は回避したいようだ。
「……あれって、オウルベアじゃない」
シャルルが指差す方向に、頭部だけとなったオウルベアが転がっている。
オウルベアは先日、三人で討伐した魔物だった。
頭がフクロウのように一回転して、視界が広く常に動きを把握されての戦いだった。
死角をついて戦うリゼにとっては、戦い辛い相手だったし、レティオールもタンクとして注意を向かせていたが、オウルベアにとっては有効的ではなかった。
距離を取ろうとすると、退化して翼としての機能は無くなった腕についている羽根を腕を振り回すと投擲のように飛ばしてくる。
その羽根は固く突き刺さる。
攻撃だけでなく、レティオールの盾のように身を守ることも出来る。
体毛自体が固いのだが、腕の羽根はその何倍も固い。
自分に注意を向かせるために攻撃した、レティオールの剣を弾く。
だが、リゼの忍刀では普通に攻撃が通り、切ることが出来た。
改めて武器の重要性について、レティオールは考えさせられる。
一体だけだったが、かなり手こずりながら倒すことが出来た……が、複数体で現れたら重傷を負う戦闘になることは想像できた。
オウルベアこそが、進むのを断念した理由でもあった。
「本当だ!」
レティオールの声に反応したロッテンバードたちが一斉に飛び立つ。
ロッテンバードのいなくなった場所には、オウルベアが三体転がっていた。
しかも全ての死体は頭と体が分かれていた。
「これって、全部同じ人ってことよね?」
「そうだね。別々の人が同じ倒し方するってのは、考え辛いね」
レティオールはオウルベアの堅さを知っていたので、頭が切られて飛ばされていることに驚いていた。
リゼたちの気配に気付いたのか、一斉に飛び立った。
近付いてオウルベルの死体を確認するまでもなく、遠目でもロッテンバードの啄んだ後以外にも、別の歯形がついている。
死んだオウルベアの肉を目当てに、他の魔物が集まっていたのだろうと思い、危険だと感じて、すぐに迂回することにした。
よく見ると、周囲の木々には戦闘の跡が残っていた。
全て同じ傷だが、それはオウルベアの爪痕だということが、リゼたち三人には分かっていた。
そして、それが先程のオウルベアのものだと――。
他にもオウルベアが生息しているとしたらと考えながら、慎重に進む。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十六』
『魔力:三十三』
『力:三十一』
『防御:二十』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百三十五』
『回避:五十六』
『魅力:三十』
『運:五十八』
『万能能力値:五』
■メインクエスト
・魔物の討伐(最低:五十、最大数:百)。期限:三十日
・報酬:討伐数、魔物の種類に応じて変動
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
リゼたちは話し合いの結果、これ以上は危険だと判断して、町の方に戻ることを決める。
ポーションやマジックポーションの残りもそうだが、食料問題も発生していた。
火を起こして野草や討伐した魔物の肉などを調理していたところ、匂いにつられて魔物が襲ってきた。
昨夜も火や煙が目印となり、夜行性の魔物に襲われた。
火を嫌う魔物が多いというのは、この世界での一般常識だ。
それは、遠い昔に弱い魔物の多くが火を怖がっているという認識により広まったことが大きい。
普段生活するレベルであれば、火は魔物に対して有効な防衛手段ということは間違いないことも事実だ。
焚火を囲う際に、知らず知らずのうちに警戒していることを冒険者たちは自覚しておらず、就寝の時も必ず見張りをつけることもあり、欲望に負けて襲うような魔物は少ない。
もっとも知能の高い魔物の場合は別だが……。
進行方向とは逆で、山から離れるように進む。
三人ともが、まともに睡眠を取れていないこともあり、疲労が抜け切れていない。
しかし、それは冒険者の宿命だと分かっていた。
これを経験できたことは貴重なことだと感じながら、重い体を動かす。
少しだけ気になっていた異臭が進んでいくと、より強くはっきりと感じられる。
異臭の元から風下にいるため、最後尾にいるレティオールは自分たちの匂いも異臭に交じり風下へと流れていると思い、背後から襲われないように警戒を強めていた。
倒れている木に、綺麗に伐採された跡が残っている。
魔物が暴れて倒木したのは理解できるが、こんな場所まで木材を取りに来た者がいるとは考えにくい。
それほど魅力的な樹木たちが生えているように思えず、町や街道近くに生い茂っている木と変わりないようにも感じたからだ。
「少し、休憩しようか」
「そうだね」
伐採された切り株を椅子にして、少しだけ休憩を取る。
「綺麗に切られているね」
「それに、まだ新しいよ。熟練の職人技かもね?」
「凄いよ」
切り株は綺麗に切られており、まるで包丁で切ったかのように真っ直ぐ切られていた。
リゼも断面を触ると確かに、何度も斧を入れて切った感じではない。
幼いころに育った村で数度見ただけだが、自分の知っている伐採方法ではないのだと思いながら、断面に触れる。
見事な切断面に感服していた。
「だけど、こんなバラバラに伐採するのかな?」
レティオールが疑問を口にする。
確かに不規則に高さも異なるように切られている。
角度もバラバラだ。
「もしかして、誰か戦った後……とか?」
シャルルは考えたくないことだと分かりながらも、レティオールに聞くような話し方をしていた。
「そうだね。シャルルの言うとおり、そう考えると荒れた地面や折れた木も魔物が暴れたってことかな」
改めて切り株の断面を触りながら、剣で切ることが出来るのか? とリゼは考えていた。
かなり実力のある冒険者が集っているクランもしくは、パーティーなのだろうと、顔も知らない冒険者に会ってみたいと思う。
レティオールが立ち上がると、シャルルも同じように立ち上がる。
何も言葉を交わしていないが、リゼも立ち上がり暫しの休憩を終えて歩き始めた。
先頭を歩いていたリゼが右腕を横に伸ばし、後ろの二人に「止まって」と無言で指示を出す。
すぐに気配を感じたシャルルとレティオールは戦闘態勢へと移行する。
リゼも腰から忍刀を抜き、近付いてくる気配に対して注意を払う。
風向きが変わったのか、進んでいる方向から異臭はしなかったが、目視できる距離の二本足の鳥型魔物たちが集団で食事をしているようだった。
「あれは“ロッテンバード”だね。上空から死体を見つけると下りてきて食べる魔物だよ。臆病な魔物だから、こちらの気配に感付けば飛び去って行くと思うよ」
「昔は、ロッテンバードに食べさせることで、死体処理をしていた地域もあったよね」
「うん、そうだね」
知らない魔物の情報を得られるのは貴重なことだと、リゼは二人の話を聞いていた。
クエストのことや経験を積むため、討伐できるのであれば討伐したいと思いながらも、レティオールとシャルルの表情から戦闘は回避したいようだ。
「……あれって、オウルベアじゃない」
シャルルが指差す方向に、頭部だけとなったオウルベアが転がっている。
オウルベアは先日、三人で討伐した魔物だった。
頭がフクロウのように一回転して、視界が広く常に動きを把握されての戦いだった。
死角をついて戦うリゼにとっては、戦い辛い相手だったし、レティオールもタンクとして注意を向かせていたが、オウルベアにとっては有効的ではなかった。
距離を取ろうとすると、退化して翼としての機能は無くなった腕についている羽根を腕を振り回すと投擲のように飛ばしてくる。
その羽根は固く突き刺さる。
攻撃だけでなく、レティオールの盾のように身を守ることも出来る。
体毛自体が固いのだが、腕の羽根はその何倍も固い。
自分に注意を向かせるために攻撃した、レティオールの剣を弾く。
だが、リゼの忍刀では普通に攻撃が通り、切ることが出来た。
改めて武器の重要性について、レティオールは考えさせられる。
一体だけだったが、かなり手こずりながら倒すことが出来た……が、複数体で現れたら重傷を負う戦闘になることは想像できた。
オウルベアこそが、進むのを断念した理由でもあった。
「本当だ!」
レティオールの声に反応したロッテンバードたちが一斉に飛び立つ。
ロッテンバードのいなくなった場所には、オウルベアが三体転がっていた。
しかも全ての死体は頭と体が分かれていた。
「これって、全部同じ人ってことよね?」
「そうだね。別々の人が同じ倒し方するってのは、考え辛いね」
レティオールはオウルベアの堅さを知っていたので、頭が切られて飛ばされていることに驚いていた。
リゼたちの気配に気付いたのか、一斉に飛び立った。
近付いてオウルベルの死体を確認するまでもなく、遠目でもロッテンバードの啄んだ後以外にも、別の歯形がついている。
死んだオウルベアの肉を目当てに、他の魔物が集まっていたのだろうと思い、危険だと感じて、すぐに迂回することにした。
よく見ると、周囲の木々には戦闘の跡が残っていた。
全て同じ傷だが、それはオウルベアの爪痕だということが、リゼたち三人には分かっていた。
そして、それが先程のオウルベアのものだと――。
他にもオウルベアが生息しているとしたらと考えながら、慎重に進む。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十六』
『魔力:三十三』
『力:三十一』
『防御:二十』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百三十五』
『回避:五十六』
『魅力:三十』
『運:五十八』
『万能能力値:五』
■メインクエスト
・魔物の討伐(最低:五十、最大数:百)。期限:三十日
・報酬:討伐数、魔物の種類に応じて変動
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
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