私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

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第338話

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 王都エルドラード。
 商人は東地区の門から入ると以前に聞いていたので、東地区の門の列に商人の馬車に乗りながら順番を待っていた。
 待ち時間にも商人は馬車の上から、話しかけてきた商人仲間たちと情報交換に精を出す。

「西地区は危険だ」

 西地区で喧嘩になった際に、クラン赤鰐のメンバーに向かって「俺は蒼月のメンバーだ!」と名乗り大怪我をさせたことで、リーダーのエネミーが蒼月のことを調べているという噂もあり、治安が一層悪くなっている。
 絶対に近寄らないことは当たり前だが、ほかの地区でも西地区よりの場所には近づかないほうが無難だにと話をしているのが聞こえてきた。 
 たった二年だが、自分が思っている以上に王都が変化しているのだと感じていた。
 そして、すぐにそれを実感することになる。

 門をくぐり、二年ぶりの王都に足を踏み入れる。
 建国祭の影響もあり「懐かしい」と思うよりも「賑やか」という印象の方が強く感じた。
 本当であれば、最初に向かうべきは冒険者ギルド会館だが、リゼはレティオールとシャルルの宿屋を確保するため、いくつかの宿屋を回っていたが、建国祭ということもあり、どの宿屋も満室だった。

「僕らなら野営でも大丈夫だから」
「うん」

 気を遣う二人に申し訳ない気持ちになる。
 最悪、アンジュかジェイドに二人を銀翼館に宿泊させてもらえるように頼んでみようと思う。
 一旦、宿屋探しを諦めて銀翼館へと向かうことにした。
 期待と不安を抱きながら足を進める。
 後ろを歩くレティオールとシャルルの二人は、リゼよりも不安が大きかった。
 もしかしたら、リゼとの関係がここで終えてしまうという思いが払拭できない。
 リゼの姿に顔見知りの冒険者が気づく。
 そして、銀翼が再活動する前触れは間違いないと小声で話している。
 当然、リゼが王都エルドラードに戻ってきたということは、金狼にも伝わる。
 クランとしては終わっていると思っていても、当時の銀翼を知る冒険者たちは再活動することに注目をしていた。
 アルベルトたちの銀翼は越えられない。
 クランの名声をさらに下げて、恥をかくだけだと思う冒険者も多い。
 自分でも気づかず、自然と足早になるリゼ。
 早く会いたいという気持ちが行動に出ていた。
 荒くなった呼吸に気づかないまま、足を止めた。
 そして、建物を見上げる。

(変わっていない)

 クランの旗こそないが、記憶の中にある銀翼館だった。

「ここは?」
「銀翼の活動拠点……銀翼館だよ」

 レティオールの質問に答えるリゼの表情は、どこか嬉し気に見えた。
 それだけリゼにとって大事な場所なのだとレティオールとシャルルは感じ取る。
 そして、自分たちが簡単に入れるような場所ではないと――。

「入ろうか。ジェイドに紹介するよ」

 二人の気持ちを汲むことなく、あっさりと銀翼館に招くリゼに二人は困惑する。
 扉に手をかけると鍵がかかっているのか開かない。
 運悪くジェイドが外出していると思い扉から手を放す。
 このまま、銀翼館の前で待っていてもいいが――。

「閉まっているようだから、先に冒険者ギルド会館に行こうか」

 自分のために、レティオールとシャルルの時間を無駄にできない。
 リゼたち三人は冒険者ギルド会館へと向かう。
 気持ちに余裕がでたリゼは、自分が注目されていることに気づく。
 この二年で金狼は王都で一番強いクランになっていた。
 金狼のリーダーであるコウガに傷を負わせたリゼの名声も上がっていたのだ。
 初めて見るリゼに驚く冒険者のなかには、「俺のほうが強い」という者もいる。
 だが、すぐに近くの冒険者たちに「見た目で判断すれば痛い目に合う」と笑われていた。
 噂に尾ひれがついているのか、この二年の間にジェイドが銀翼の名を上げたのか不明だが、リゼは「小さいが恐ろしく強い」という認識になっていた。
 当然、そんなことになっているとは知らないリゼは、普段通りに歩いていた。
 その視線は一緒に歩いているレティオールとシャルルにも向けられる。
 新しい銀翼のメンバーではないか? と小声で話している声が二人の耳にも入っていた。
 銀翼に入るために来たことは間違いないが、想像以上の状況に耐えられなりそうだった。

「リゼ!」

 王都に戻ってきて初めて名前を呼ばれたので、期待しながら名前を呼ばれた方向を見る。
 そこにいたのは金狼のマリックだった。

「戻ってきたんだね」
「はい」
「強くなった?」
「コウガさんに恥をかかせない程度には、強くなったつもりです」

 リゼの言葉にマリックの表情が緩む。
 後ろにいる金狼のメンバー三人をリゼは覚えていなかったが、二人はコウガ相手にあきらめずに戦う姿を知っていたからこそ、マリックとの会話に言葉を挟まずに静観していた。
 だが、ここ二年の間でクランに入った冒険者が先輩メンバーに「本当に強いんですか?」と耳打ちをする。
 耳打ちされたメンバーの顔が青ざめるよりも早くマリックが新参者のメンバーの胸倉を掴む。

「おい。リゼを疑ったってことはコウガの実力も疑ったてことだぞ」

 リゼとコウガの戦いを侮辱することはマリックにとって……いいや、あの戦いを見ていた者たちにとって憤りを感じるには十分だった。
 マリックは優しい口調の時と、そうでない時がある。
 どういう風に使い分けしているのか不明だが、リゼは変わっていないマリックを見て、王都に戻ってきた実感を一つ得る。

「す、すみません。そんなつもりじゃ……」

 目の前で萎縮するメンバーに申し訳ない気持ちになるリゼ。
 レティオールとシャルルは、改めてリゼの評価に驚く。

「まぁ、いいよ。リゼ、こういう奴らが多くいるから舐められないように」
「出来るだけ頑張ります」
「リゼらしい答えだね。もう、銀翼館には行ったのかい?」
「はい。でも施錠されていたので、ジェイドが外出しているのだと思います」
「ジェイドなら、もう少ししたら戻ると思うよ」
「知っているんですか?」
「それなりにって感じだね。ジョエリオに手解きを受けているらしいし、それに――いや、なんでもない」

 何か言おうとしたが、言葉を飲み込んだマリックを不思議そうに見ながら、リゼは王都を去る時にジェイドが言っていたことを思い出して納得する。

「有難う御座います。冒険者ギルドに行ってから銀翼館に戻ります。それと、コウガさんや金狼の皆さんはお元気ですか?」

 思いもよらない言葉にマリックが噴き出す。
 王都一といわれている金狼に向かって「お元気ですか?」と言うのは、王都を探してもリゼくらいだからだ。

「コウガは元気だし、他のメンバーも元気だ。王都で活動すれば、そのうちに顔を合わせるだろう。まぁ、コウガにはリゼに会ったことを話しておこう。じゃあね」

 笑顔のマリックは仲間とともに去っていく。
 マリック相手に怯むことなく会話するリゼを他の冒険者たちは遠巻きで見ていた。
 金狼も一目置く冒険者に変わりがないと証明されたようなものだった。
 それからも何人かの顔見知りの冒険者が声を掛けてくる。
 それなりに交流のあった冒険者だから、リゼと仲が良いことを他の冒険者に見せつけてやりたい気持ちだったが、リゼは素直に王都に戻ってきた挨拶をしていた。
 冒険者ギルドの到着すると、午後の遅い時間なので人もいないだろうと思っていたが、建国祭前ということもあり昔懐かしい仲間や友人と会うために、冒険者ギルド会館を訪れる人たちが多くいた。
 すでに建国祭でも始まっているかのような賑わいだった。
 リゼたちは受付へと移動をするが、案の定というかリゼのことに気づいた冒険者たちがいる。
 建国祭で王都に戻ってきたのだと思い、すでに酔っぱらっている冒険者などが絡んでくる。
 対応に困っていると、この日のために雇っていたのか冒険者たちが宥める。
 王国の騎士団だけでは、王都全体を警備できないため、いくつかのクランに指名クエストを出していた。
 金狼や、元天翔旅団などの大きなクランにだ。

 受付に到着すると、リゼたちは手続きをする。
 リゼの対応をしていた受付嬢が尋ねる。

「銀翼で活動されるのですよね?」
「はい。クランリーダーのアンジュが王都に戻ってきたら、本格的に活動するつもりです」
「アンジュさんなら二日ほど前に戻られて、登録済ですよ」
「えっ!」

 まさか、自分が一番最後だとは思わなかった……王都に戻っているなら、アンジュは今どこに?
 さきほどマリックが言おうとしたのはアンジュのことだったかもしれないと思い返す。
 レティオールとシャルルの登録も済んだので、再び銀翼館に向かう。


――――――――――――――――――――


■リゼの能力値
 『体力:四十八』 
 『魔力:三十三』
 『力:三十三』 
 『防御:二十一』
 『魔法力:二十六』
 『魔力耐性:十三』
 『敏捷:百四十三』
 『回避:五十六』
 『魅力:三十一』
 『運:五十八』
 『万能能力値:零』
 
■メインクエスト


■サブクエスト
 ・ミコトの捜索。期限:一年
 ・報酬:慧眼けいがんの強化

■シークレットクエスト
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