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第339話
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銀翼館の扉に手をかけると施錠されていない。
これだけのことなのにリゼは嬉しかった。
そして、二人に会ったら最初になんて言葉をかけていいのかと考えて、扉を開けるのを躊躇する。
適切な言葉……が見つからない。
その様子を見ていたレティオールは自分たちに気を使っているのだと勘違いして、リゼに声を掛ける。
「僕たちは外で待っていようか?」
レティオールの言葉で、自分の行動で不安にさせてしまったと思い、すぐに否定して三人で銀翼館に足を踏み入れる。
変わらない光景と、懐かしい匂い。
二年前となにも変わらない。
その時、銀翼館に入った者がいることに気づいたのか、奥から出てきた顔と目が合う。
「リゼ!」
「アンジュ」
嬉しそうに叫ぶアンジュとは対照的に恥ずかしそうなリゼ。
二年ぶりに会ったアンジュは、少し背も高くなっており、アリスを真似るかのように髪も伸ばしていた。
「ジェイド! リゼが戻ってきたわよ」
アンジュに声に誘われるかのようにジェイドも顔を出す。
「元気だったスか!」
「うん」
ジェイドも一回り体が大きくなっており、髪型もローガンを真似ているのか長く伸びた襟足を結んでいた。
アンジュとジェイドは、それぞれ大事な人の面影を忘れないようにしているかのように、自身の姿を似せているように思えた。
そのことがリゼの心を締め付ける……アンジュにはアリスが生きていることや、失敗したクエストで何が起きたのかをジェイドに伝えることができない。
「相変わらず暗い顔ね」
「昔のままっスね」
二人の話しぶりにリゼも懐かしく、変わっていないと感じる。
見た目は変わっても根本的な部分は昔のままなのだと。
「……それで後ろのお二方は?」
アンジュの視線は、リゼの後ろで戸惑いながら立っているレティオールとシャルルに向けられる。
「この二年の間で出会って、今一緒に旅をしていたレティオールとシャルル。アンジュとジェイドが認めてくれるならクランに入ってもらいたいと思っている」
リゼがレティオールとシャルルを紹介すると、二人はアンジュとジェイドに挨拶と簡単な自己紹介をする。
「ジェイドに続いて、リゼもなのね」
「ジェイドも仲間を見つけたの?」
「そうっスよ。自分よりも強いっス」
ジェイドが恥じることなく、自分よりも強いと言い切った。
二年前はジェイドに手も足も出なかったことを思い出す。
そのジェイドに「強い」と断言させた冒険者は、かなりの実力者だと感じる。
「リゼにも紹介するっすね。と言ってもリゼの知っている人っスよ」
「私の知っている人?」
リゼは今まであった冒険者たちを思い出す。
だが、ジェイドが呼んだ名前で、思い出した冒険者たちの記憶が、すべて消し飛んだ。
「フィーネ。リゼが戻ってきたっス。早く来るっス」
そう、懐かしい名前……だが、自分の知っている彼女は冒険者ではない。
間違いだと思いながらも、会いたい気持ちに胸が高鳴る。
奥から恥ずかしそうに顔を出す……自分の記憶にある人物だった。
「お嬢様! リゼお嬢様」
リゼを見たフィーネは駆け寄り泣きながら抱きしめる。
「ご無事で……本当によかった……本当に、本当によかったです」
感動の再会だったが、リゼは骨が折られるくらい締め付けられて苦しみ、アンジュたちは「お嬢様」という言葉に戸惑っていた。
「フィ、フィーネも元気そうでよかった。ごめん、ちょっと力を緩めてくれる」
「あっ、私としたことが! 申し訳御座いません、お嬢様」
「あと、そのお嬢様は止めてね。これからはリゼって呼んでくれる」
「そんな……」
完全にフィーネに場の空気を持っていかれたレティオールとシャルルは立ち尽くしていた。
自分たちは、これからどうしてよいのか分からなかったからだ。
「はいはい、そこまでね。ちょっと、情報量が多いわ。一旦整理するから奥の部屋に移動しましょうか」
アンジュが場を仕切り、全員が奥の部屋へと移動する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「改めまして、私が二代目銀翼のリーダーを務めさせてもらっているアンジュよ」
「自分はサブリーダーのジェイドっス」
「リゼです」
銀翼の三人が最初に挨拶をする。
「リゼの役職はマスコットだから、きちんと自己紹介してよ」
「そうっス。戦うマスコットっス。三人で決めたっスよね」
「えっ!」
役職のない自分に無理やりつけられたと思っていたリゼは、今後の自己紹介ではマスコットを名乗らなければいけないことを知る。
その後フィーネ、レティオールにシャルルの順で自己紹介をする。
「三人がクランに入れるかは実力を見て決めたいと思っている。と言っても、私はフィーネの実力を見て知っているの。私とジェイドの二人は文句はないわ。だから、フィーネに関していえば、リゼが承諾すれば問題ないってことよ」
「それは、アンジュとジェイドはフィーネを認めたってこと?」
「えぇ、そうよ。ジェイドが自分よりも強いと言ったのも、あながち間違いじゃないわ」
「そ、そんなことありません。私なんてジェイドさんの足元にも及びません」
アンジュとリゼの会話をフィーネが否定する。
しかし、アンジュとジェイドの言葉に嘘はないと分かっているリゼは、フィーネが本当に冒険者になったのだと改めて感じていた。
「レティオールとシャルルについては、リゼは認めたってことでいいのよね?」
「うん」
即答するリゼを見て、レティオールとシャルルは嬉しかった。
そして、その思いに応えようと気を引き締める。
「正直、レティオールとシャルルの職業は魅力的だけど、私とジェイドが不合格と判断したら、銀翼には入れないけど、それでいいわよね?」
「はい」
「私もです」
はっきりと答える二人を見て、アンジュはリゼの目に狂いはないのだろうを感じていた。
良くも悪くも、自分の記憶にあるリゼは少しだけ変人だと思っていた。
その変人と一緒に旅をしていたのであれば、人間性には問題ない。
ましてや希少な職業だ。
よほどのことがない限り、自分が不合格を言い渡すことはないだろうと思いながら二人と話をしていた。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十一』
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
これだけのことなのにリゼは嬉しかった。
そして、二人に会ったら最初になんて言葉をかけていいのかと考えて、扉を開けるのを躊躇する。
適切な言葉……が見つからない。
その様子を見ていたレティオールは自分たちに気を使っているのだと勘違いして、リゼに声を掛ける。
「僕たちは外で待っていようか?」
レティオールの言葉で、自分の行動で不安にさせてしまったと思い、すぐに否定して三人で銀翼館に足を踏み入れる。
変わらない光景と、懐かしい匂い。
二年前となにも変わらない。
その時、銀翼館に入った者がいることに気づいたのか、奥から出てきた顔と目が合う。
「リゼ!」
「アンジュ」
嬉しそうに叫ぶアンジュとは対照的に恥ずかしそうなリゼ。
二年ぶりに会ったアンジュは、少し背も高くなっており、アリスを真似るかのように髪も伸ばしていた。
「ジェイド! リゼが戻ってきたわよ」
アンジュに声に誘われるかのようにジェイドも顔を出す。
「元気だったスか!」
「うん」
ジェイドも一回り体が大きくなっており、髪型もローガンを真似ているのか長く伸びた襟足を結んでいた。
アンジュとジェイドは、それぞれ大事な人の面影を忘れないようにしているかのように、自身の姿を似せているように思えた。
そのことがリゼの心を締め付ける……アンジュにはアリスが生きていることや、失敗したクエストで何が起きたのかをジェイドに伝えることができない。
「相変わらず暗い顔ね」
「昔のままっスね」
二人の話しぶりにリゼも懐かしく、変わっていないと感じる。
見た目は変わっても根本的な部分は昔のままなのだと。
「……それで後ろのお二方は?」
アンジュの視線は、リゼの後ろで戸惑いながら立っているレティオールとシャルルに向けられる。
「この二年の間で出会って、今一緒に旅をしていたレティオールとシャルル。アンジュとジェイドが認めてくれるならクランに入ってもらいたいと思っている」
リゼがレティオールとシャルルを紹介すると、二人はアンジュとジェイドに挨拶と簡単な自己紹介をする。
「ジェイドに続いて、リゼもなのね」
「ジェイドも仲間を見つけたの?」
「そうっスよ。自分よりも強いっス」
ジェイドが恥じることなく、自分よりも強いと言い切った。
二年前はジェイドに手も足も出なかったことを思い出す。
そのジェイドに「強い」と断言させた冒険者は、かなりの実力者だと感じる。
「リゼにも紹介するっすね。と言ってもリゼの知っている人っスよ」
「私の知っている人?」
リゼは今まであった冒険者たちを思い出す。
だが、ジェイドが呼んだ名前で、思い出した冒険者たちの記憶が、すべて消し飛んだ。
「フィーネ。リゼが戻ってきたっス。早く来るっス」
そう、懐かしい名前……だが、自分の知っている彼女は冒険者ではない。
間違いだと思いながらも、会いたい気持ちに胸が高鳴る。
奥から恥ずかしそうに顔を出す……自分の記憶にある人物だった。
「お嬢様! リゼお嬢様」
リゼを見たフィーネは駆け寄り泣きながら抱きしめる。
「ご無事で……本当によかった……本当に、本当によかったです」
感動の再会だったが、リゼは骨が折られるくらい締め付けられて苦しみ、アンジュたちは「お嬢様」という言葉に戸惑っていた。
「フィ、フィーネも元気そうでよかった。ごめん、ちょっと力を緩めてくれる」
「あっ、私としたことが! 申し訳御座いません、お嬢様」
「あと、そのお嬢様は止めてね。これからはリゼって呼んでくれる」
「そんな……」
完全にフィーネに場の空気を持っていかれたレティオールとシャルルは立ち尽くしていた。
自分たちは、これからどうしてよいのか分からなかったからだ。
「はいはい、そこまでね。ちょっと、情報量が多いわ。一旦整理するから奥の部屋に移動しましょうか」
アンジュが場を仕切り、全員が奥の部屋へと移動する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「改めまして、私が二代目銀翼のリーダーを務めさせてもらっているアンジュよ」
「自分はサブリーダーのジェイドっス」
「リゼです」
銀翼の三人が最初に挨拶をする。
「リゼの役職はマスコットだから、きちんと自己紹介してよ」
「そうっス。戦うマスコットっス。三人で決めたっスよね」
「えっ!」
役職のない自分に無理やりつけられたと思っていたリゼは、今後の自己紹介ではマスコットを名乗らなければいけないことを知る。
その後フィーネ、レティオールにシャルルの順で自己紹介をする。
「三人がクランに入れるかは実力を見て決めたいと思っている。と言っても、私はフィーネの実力を見て知っているの。私とジェイドの二人は文句はないわ。だから、フィーネに関していえば、リゼが承諾すれば問題ないってことよ」
「それは、アンジュとジェイドはフィーネを認めたってこと?」
「えぇ、そうよ。ジェイドが自分よりも強いと言ったのも、あながち間違いじゃないわ」
「そ、そんなことありません。私なんてジェイドさんの足元にも及びません」
アンジュとリゼの会話をフィーネが否定する。
しかし、アンジュとジェイドの言葉に嘘はないと分かっているリゼは、フィーネが本当に冒険者になったのだと改めて感じていた。
「レティオールとシャルルについては、リゼは認めたってことでいいのよね?」
「うん」
即答するリゼを見て、レティオールとシャルルは嬉しかった。
そして、その思いに応えようと気を引き締める。
「正直、レティオールとシャルルの職業は魅力的だけど、私とジェイドが不合格と判断したら、銀翼には入れないけど、それでいいわよね?」
「はい」
「私もです」
はっきりと答える二人を見て、アンジュはリゼの目に狂いはないのだろうを感じていた。
良くも悪くも、自分の記憶にあるリゼは少しだけ変人だと思っていた。
その変人と一緒に旅をしていたのであれば、人間性には問題ない。
ましてや希少な職業だ。
よほどのことがない限り、自分が不合格を言い渡すことはないだろうと思いながら二人と話をしていた。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十一』
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
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