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第341話
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「お久しぶりです。リゼお嬢様」
膝をつき改めて挨拶をする。
昔にリゼが「二人の時は止めるように」と言った行動だったが、今は懐かしく感じる。
「フィーネ。二人の時にそれはしない約束だったでしょ」
「そうでしたね」
笑顔のフィーネを見て、心から「本当によかった」と思えた。
「でも、どうして冒険者になろうとしたの? 他にもいろいろな仕事はあったのに」
「それは……」
フィーネは言葉を詰まらせていたが、隠すことではないと判断したのか、はっきりとした口調でリゼの質問に答えた。
「チャーチルお坊ちゃまとのことは聞きました」
「えっ!」
フィーネを賭けた腹違いの兄チャーチルとの模擬戦。
そのことをフィーネが知っているのは意外だった。
「リゼお嬢様が私のために――」
涙で最後まで喋ることができずに黙り込む。
そんなフィーネを昔のように慰める。
今も昔も変わらないフィーネ。
誰も助けてくれない閉鎖された屋敷で助け合って生きていた。
その時のことを思い出すと、それだけでリゼの心は温かくなっていた。
フィーネが泣き終わり、話し始めるのを静かに待つ。
気持ちが落ち着いたフィーネが再び話始めた。
リゼが死んだと聞いて絶望したこと……自分が傍にいれなかった悔しさ。
その後、キンダル家の没落。
そこでリゼが冒険者になったことや、チャーチルとの模擬戦での出来事を知った。
冒険者になったのも、形は違えどリゼの隣に立ちたいと思ったことを伝える。
だが、ここでリゼは思いもよらぬことを聞く。
「リアム王子のお仲間であるジョエリオさんに弟子入りをして、ずっと鍛えてもらっています」
「リアム……王子?」
「はい。エルガレム王国第三王子のリアム王子です」
リゼはリアムが王子だとは知らなかった。
そして、リアムに対して無礼な振る舞いをしなかったかを記憶を呼び覚ます。
「大丈夫ですか、リゼお嬢様」
「うん。ちょっとビックリしただけ……まさかリアムさんが王子だなんて」
「もしかして、ご存じなかったのですか?」
「うん。普通の冒険者だと思っていた」
顔を見合わせた二人は不思議と笑っていた。
昔も二人で何気ない会話で笑っていたことを思い出す。
アンジュやジェイド、レティオールとシャルルは、もちろん嫌いではないが、どうしても顔色を見てしまう。
それが自分の意思でなく自然となっていることにもリゼは気付き、出来るだけ直そうともしていた。
だが、フィーネとは違う。
長年の積み重ねだと思うが、フィーネと話すときは素直に、素の自分をさらけ出しているように感じていた。
知らぬ知らぬ間に、フィーネを心のよりどころにしていたのかもしれないと、気付く。
母親が亡くなってから唯一、心を許せる人だったからだろう。
「リゼお嬢様」
「なに?」
「もし、リゼお嬢様から見て、私が銀翼にふさわしくないと判断を下したなら、遠慮なく不合格にしてください」
その目は自分の実力を見て判断してくれという強い意志の表れだった。
「うん、分かった。きちんとフィーネの実力を見て判断するね」
「ありがとうございます。リゼお嬢様」
「……フィーネ」
「なんでしょうか、リゼお嬢様」
「そのお嬢様という呼び方は今日までね。私はフィーネと同じ冒険者だから」
「でも……分かりました。これからはリゼとお呼びします」
「それと敬語も禁止ね」
自分も人のことが言えないと分かったうえで、フィーネに頼む。
「分かりました。でも一つだけお願いを申して宜しいでしょうか?」
「なに?」
「二人の時は昔のように、お呼びしてもいいですか?」
虚ろな瞳で頼み込むフィーネに「駄目だ」とは言えず、「いいよ」と承諾した。
「あまり遅くなると、金狼にも迷惑が掛かると思いますので、私との話はここら辺で切り上げましょうか?」
「そうね。そうしようかな」
積もる話もあるが、あまり遅くに金狼郭へ行くと迷惑になると思い、フィーネとの楽しい時間を終える。
「お見送りしますね」
「いいよ。もうお互い冒険者同士だし」
「いいえ。同じ冒険者でもリゼお嬢様は銀翼の正式メンバーで、私は入団希望している冒険者ですから、天と地の差があります。それに先輩冒険者を敬うことはいけませんか?」
リゼは言い返せなかった。
多分、自分が逆の立場であったならフィーネと同じことをしていたと思ったからだ。
「じゃあ、玄関までね」
「はい!」
フィーネは嬉しそうに答える。
その笑顔を見て、こんな日がもう一度来るとは思いもよらなかった……リアム王子に感謝をする。
「そういえば、ジョエリオさんの修行の時に、リアム王子もいるの?」
「いいえ。王都に戻ってきてからは、お忙しいようでお会いしていません。ジョエリオさんもお忙しいなか、私とジェイドさんに稽古をつけていただいています」
「そうなんだ」
出来ればリアムに会って直接、礼を言いたいと思っていたが立場上難しいことは想定していた。
会う機会があれば、忘れずにきちんと礼を言おうと心に誓う。
話を終えたフィーネが銀翼館に扉まで見送りに来てくれた。
まだ、お嬢様と使用人の関係が抜け切れていないが、徐々に冒険者らしくなればと思い金狼郭へ向かう。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十一』
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
膝をつき改めて挨拶をする。
昔にリゼが「二人の時は止めるように」と言った行動だったが、今は懐かしく感じる。
「フィーネ。二人の時にそれはしない約束だったでしょ」
「そうでしたね」
笑顔のフィーネを見て、心から「本当によかった」と思えた。
「でも、どうして冒険者になろうとしたの? 他にもいろいろな仕事はあったのに」
「それは……」
フィーネは言葉を詰まらせていたが、隠すことではないと判断したのか、はっきりとした口調でリゼの質問に答えた。
「チャーチルお坊ちゃまとのことは聞きました」
「えっ!」
フィーネを賭けた腹違いの兄チャーチルとの模擬戦。
そのことをフィーネが知っているのは意外だった。
「リゼお嬢様が私のために――」
涙で最後まで喋ることができずに黙り込む。
そんなフィーネを昔のように慰める。
今も昔も変わらないフィーネ。
誰も助けてくれない閉鎖された屋敷で助け合って生きていた。
その時のことを思い出すと、それだけでリゼの心は温かくなっていた。
フィーネが泣き終わり、話し始めるのを静かに待つ。
気持ちが落ち着いたフィーネが再び話始めた。
リゼが死んだと聞いて絶望したこと……自分が傍にいれなかった悔しさ。
その後、キンダル家の没落。
そこでリゼが冒険者になったことや、チャーチルとの模擬戦での出来事を知った。
冒険者になったのも、形は違えどリゼの隣に立ちたいと思ったことを伝える。
だが、ここでリゼは思いもよらぬことを聞く。
「リアム王子のお仲間であるジョエリオさんに弟子入りをして、ずっと鍛えてもらっています」
「リアム……王子?」
「はい。エルガレム王国第三王子のリアム王子です」
リゼはリアムが王子だとは知らなかった。
そして、リアムに対して無礼な振る舞いをしなかったかを記憶を呼び覚ます。
「大丈夫ですか、リゼお嬢様」
「うん。ちょっとビックリしただけ……まさかリアムさんが王子だなんて」
「もしかして、ご存じなかったのですか?」
「うん。普通の冒険者だと思っていた」
顔を見合わせた二人は不思議と笑っていた。
昔も二人で何気ない会話で笑っていたことを思い出す。
アンジュやジェイド、レティオールとシャルルは、もちろん嫌いではないが、どうしても顔色を見てしまう。
それが自分の意思でなく自然となっていることにもリゼは気付き、出来るだけ直そうともしていた。
だが、フィーネとは違う。
長年の積み重ねだと思うが、フィーネと話すときは素直に、素の自分をさらけ出しているように感じていた。
知らぬ知らぬ間に、フィーネを心のよりどころにしていたのかもしれないと、気付く。
母親が亡くなってから唯一、心を許せる人だったからだろう。
「リゼお嬢様」
「なに?」
「もし、リゼお嬢様から見て、私が銀翼にふさわしくないと判断を下したなら、遠慮なく不合格にしてください」
その目は自分の実力を見て判断してくれという強い意志の表れだった。
「うん、分かった。きちんとフィーネの実力を見て判断するね」
「ありがとうございます。リゼお嬢様」
「……フィーネ」
「なんでしょうか、リゼお嬢様」
「そのお嬢様という呼び方は今日までね。私はフィーネと同じ冒険者だから」
「でも……分かりました。これからはリゼとお呼びします」
「それと敬語も禁止ね」
自分も人のことが言えないと分かったうえで、フィーネに頼む。
「分かりました。でも一つだけお願いを申して宜しいでしょうか?」
「なに?」
「二人の時は昔のように、お呼びしてもいいですか?」
虚ろな瞳で頼み込むフィーネに「駄目だ」とは言えず、「いいよ」と承諾した。
「あまり遅くなると、金狼にも迷惑が掛かると思いますので、私との話はここら辺で切り上げましょうか?」
「そうね。そうしようかな」
積もる話もあるが、あまり遅くに金狼郭へ行くと迷惑になると思い、フィーネとの楽しい時間を終える。
「お見送りしますね」
「いいよ。もうお互い冒険者同士だし」
「いいえ。同じ冒険者でもリゼお嬢様は銀翼の正式メンバーで、私は入団希望している冒険者ですから、天と地の差があります。それに先輩冒険者を敬うことはいけませんか?」
リゼは言い返せなかった。
多分、自分が逆の立場であったならフィーネと同じことをしていたと思ったからだ。
「じゃあ、玄関までね」
「はい!」
フィーネは嬉しそうに答える。
その笑顔を見て、こんな日がもう一度来るとは思いもよらなかった……リアム王子に感謝をする。
「そういえば、ジョエリオさんの修行の時に、リアム王子もいるの?」
「いいえ。王都に戻ってきてからは、お忙しいようでお会いしていません。ジョエリオさんもお忙しいなか、私とジェイドさんに稽古をつけていただいています」
「そうなんだ」
出来ればリアムに会って直接、礼を言いたいと思っていたが立場上難しいことは想定していた。
会う機会があれば、忘れずにきちんと礼を言おうと心に誓う。
話を終えたフィーネが銀翼館に扉まで見送りに来てくれた。
まだ、お嬢様と使用人の関係が抜け切れていないが、徐々に冒険者らしくなればと思い金狼郭へ向かう。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十一』
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
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