私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

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第342話

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 金狼郭の門前に立つリゼは緊張していた。
 閉門していないので、ここからでも中の様子は見える。
 それに門を守っている金狼メンバーが立ち止まったリゼを不審者だと思い、威勢よく文句を言ってきた。

「おいおい、ここが金狼郭だと知って何をしているんだ?」
「早く立ち去れ。でないと、何をされても文句は言えないぞ」

 動じることなくリゼは答える。

「リゼと言います。コウガさんに呼ばれてきました」

 門を警護する冒険者二人は顔を見合わせると大笑いする。

「嘘も大概にしておけよ」
「そうそう。リーダーが、なんで弱そうなお前に会うんだよ。もしかして殴られたいのか?」

 リゼの名を聞いても態度を変えるそぶりはなかった。
 困惑するリゼだったが、金狼郭内で歩いている顔見知りを見つける。

「アンバーさ~ん!」

 リゼが思いっきり叫んで名を呼ぶと、アンバーが声に気づき寄って来た。

「馬鹿か、こいつ」
「アンバーさんに殺されるぞ」

 金狼でも、かなりの実力者になっているアンバーを呼んだことで、門の護衛二人も動揺していた。
 自分たちでも簡単に話などできない存在だからだ。

「よぉ、リゼ。王都に戻ってきたんだってな。さっき、マリックさんから聞いたよ」
「はい。偶然会って、少しだけ話をさせていただきました」
「っで、コウガさんに呼ばれているんだよな」
「はい。アンジュから伝言を受け取りましたので、お待たせしては悪いと思い、さっそく伺いました」
「相変わらず律儀だな。……それより名前を名乗って、きちんとコウガさんに会いたいって言ったんだよな?」
「はい」

 リゼの答えにアンバーの目つきが鋭くなり、門の護衛二人に向けられる。

「コウガさんにリゼという客人が来ることは連絡してあったよな?」
「は、はい。でも、まさかこんなチビだとは――」
「チビね……リゼはコウガと戦って、傷を負わせた最後の冒険者だぞ。お前たちも聞いているだろう。銀翼のリゼだよ」
「えっ!」
「あ、あの噂の‼」

 二人の顔が青褪める。
 どれだけ倒されても、傷だらけで毎朝門の前に現れたという“銀翼のリゼ”。
 しかも、コウガの頭をたたき割ったと、当時の戦いを見たメンバーから聞いていた。
 姿を見たことがない冒険者たちの間では、本当に存在しているのかさえ疑われていた存在だった。

「新しいメンバーはリゼのことを知らないから許してやってくれるか」
「はい。門を護衛していただけですし、門前払いされても仕方ないです」
「そう言ってくれると助かるよ。お前たちもアンジュの時みたいに燃やされたくなければ、きちんとしろよ」
「アンジュの時って、なんですか?」
「今日の昼過ぎに、クラン代表として挨拶に来たんだが、コイツ等が今みたいな態度だったんで、アンジュが魔法で体に火をつけたんだよ。まぁ、そのおかげでウチは大騒ぎだったけどな。クランの代表が挨拶に来たのに、取り次ぎせずに勝手な判断で襲い掛かろうとしたんだから、こっちとしては言い訳のしようがない」

 アンバーが睨むと、二人は顔を伏せる。
 門の護衛は誰彼構わず追い払うことではない。
 きちんと用件を聞き、取次ぎをして判断を仰ぐことが仕事だ。
 今も昔も、血気盛んな冒険者が尽きることはない。

(アンジュも無茶するんだな)

 門でのアンジュの対応が意外だと感じる一方で、勝気な性格は変わっていないのだと心の中で笑っていた。

 アンバーに案内されて金狼郭に入り、コウガの部屋まで歩く。
 金狼のメンバーがリゼに視線を送っている。
 好意的に受け取る冒険者や、反対に敵意をむき出しにしている冒険者もいる。
 ここ二年で銀翼の評価は、落ちぶれたクランだったからだ。
 その銀翼のリーダーでもない、ただの冒険者が王都一のクラン金狼のリーダーに会おうとしているのだから、不満を持つ者がいるのも仕方のないことだ。

「アンバーです。銀翼のリゼと一緒です」

 扉の前で室内に向かって叫ぶと、室内から返事が返ってくるとアンバーは扉を開けた。
 部屋の中には中央にコウガが座り、向かい合うようにマリックと女性が座っている。

「よく戻って来たな。歓迎するぜ」

 金狼のメンバーは外見だけ見れば二年前と変わっていないように思える。

「まぁ、座れよ。アンバーもついでに座るか?」
「ついでは酷いですよ」
「冗談だよ」

 リゼが座るとコウガが話し始める。

「っで、マリックから聞いたが、それなりに強くなったんだって?」
「はい。それなりに強くなりました」
「それなり……ね」

 リゼを品定めするかのように見ていると、隣の女性がコウガに苦言を呈する。

「気持ち悪いわよ。それよりも私を紹介してくれるかしら?」
「ナナオはリゼと会ったことがなかったか? それは悪かったな」

 女性はナナオと言い、金狼のサブリーダーで白狼のリーダーだった。

「ちなみに銀狼のリーダーはマリックに譲った。金狼も組織を変えたんだよ」

 リゼの認識では金狼と銀狼のリーダーはコウガが兼用し、サブリーダーもナナオとマリックの二人体制だった。
 王都一のクランになった影響なのかは分からないが、他所のクランの事情なので話を聞くだけに留めた。

「それで早速だが、俺と戦わないか?」

 マリックとナナオは凡その予想がついていたのか、驚く様子もなかったがアンバーは言葉を失っていた。
 以前は手加減をしてもらって、一撃を与えることが出来た。
 今の自分が、どれだけ強くなったのか……試してみたい気持ちはあったが軽はずみは行動はできない。
 だがすぐに、「それはコウガも同じ」だと気づく。
 損得勘定なしに本能のままで誘ってくれたことを嬉しく感じた。

「分かりました。でも、建国祭が終わるまでは、いろいろと忙しいでしょうし、その後も銀翼は新しいメンバーの試験を行います。その後でもいいですか?」
「へぇ~、新しいメンバーね。あのフィーネって冒険者も、そのなかに入っているのか?」
「はい」

 断らずに条件を提示したところ、コウガでなくマリックが話に食いついてきた。

「どうするよ、アンバー」

 コウガがアンバーに話を振る。
 リゼがアンバーの顔を見ると目を見開いて体を震わせていた。

「なにかあったんですか?」

 気になったリゼがマリックに質問をする。

「簡単なことだよ。建国祭の護衛などを請け負うため、金狼からも数人だけど何回か城に行って模擬戦のようなことをしていたんだよ。その時に、気に入っていた槍をフィーネに折られたそうだ。そうだったよな、アンバー」
「はい。でもあれはないですって、槍を掴んだら握力だけで折れたんですよ。戦う以前の問題ですって」
「討伐の時でも同じことが言えるのか?」
「それは……」

 反論できないアンバーだったが、マリックの言うことは当たり前のことだ。
 リゼは未だ見ていないフィーネの戦いを聞いて、アンバーには申し訳ないが少しだけ嬉しい気持ちになっていた。

「その新メンバーの試験だが、俺も見に行っていいか?」
「はぁ⁈」
「は?」

 コウガの発言にマリックとナナオが奇妙な声をあげる。

「ちょっと待ちなさいよ。他のクランの新メンバーの入団試験に行くなんて前代未聞よ。なによりも銀翼側が了承するわけないじゃない」

 ナナオが馬鹿な提案をするコウガを叱る。

「どうせ、リゼとアンジュたちも戦うんだろう?」

 コウガが不敵な笑みを浮かべて、リゼに問う。
 回答に困っているリゼだったが、それは暗に正解と言っているのと同じだった。

「戦いの判定を決める奴がいるだろう。俺が直々に行ってやるってんだからいいだろう?」
「だから、それは銀翼の承諾が必要だって言っているでしょう」
「そうだ。それに行くなら俺とナナオも同行する。お前ひとりじゃ心配だ」
「そうね。マリックの言うとおりね。私も同行するわ」
「別に構わねぇよ。リゼ、戻ったらアンジュに伝えてくれ。金狼のリーダー三人が直々に伺うってな」
「分かりました。でも、三人で来ていただくよりも、私とアンジュが伺わさせていただきます」

 リゼの回答は正しかった。
 銀翼館に金狼のリーダー三人が訪れたら、町で噂になる。
 意図的に悪い噂が流される可能性もあるから、再開したばかりの銀翼が王都一の金狼を訪れるのであれば、悪い噂は立ちにくい。
 頭の回る冒険者だとナナオは感心したが、リゼにはそんな考えなどなかった。

「分かった。アンジュに頼んでくれ」
「はい」

 リゼが答え終わるとコウガは肩の荷が下りたかのように、背伸びをして天井を見つめる。

(クウガ。賭けの約束は守っているぞ。まぁ、リゼも守られるような冒険者じゃなくなったかも知れないけどな……)

 二年前の賭け。
 リゼの勝利で終わったアンバーの戦い。
 コウガはクウガとの約束を守っていた。
 自分たちがいない間、リゼを守るという約束を……。


――――――――――――――――――――


■リゼの能力値
 『体力:四十八』 
 『魔力:三十三』
 『力:三十三』 
 『防御:二十一』
 『魔法力:二十六』
 『魔力耐性:十三』
 『敏捷:百四十三』
 『回避:五十六』
 『魅力:三十一』
 『運:五十八』
 『万能能力値:零』
 
■メインクエスト


■サブクエスト
 ・ミコトの捜索。期限:一年
 ・報酬:慧眼けいがんの強化

■シークレットクエスト
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