私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

文字の大きさ
350 / 376

第350話

しおりを挟む
 ここはリアムの部屋なのだろうか?
 連れてこられた城の一室。
 目の前にはリアムとクリスパーが座り、部屋の扉横にはジョエリオが立っている。
 しばらくすると、リアムの仲間のビスマルクとエミリネット、ユーリが部屋に入ってきた。

「急用ってなによ。私たちも忙しいのよ」

 入室早々、リアムに文句を言うエミリネットだったが、部屋にリゼがいることや、リアムたちからの重々しい雰囲気を感じ取る。

「全員揃ったな。悪いが、ジョエリオとビスマルクは扉横で聞いててくれ。外の者には聞こえない声量で話すので、聞こえなかった内容は、後から話すから勘弁してくれ」
「別に構わない」
「そうだ。外の警戒を強めておくので、詳しいことは後で頼む」

 リアムの口調から、自分が知らぬ間にリアムの逆鱗に触れてしまったのではないかと、リゼは自分の行動を思い出す。

「……リゼ」
「はい」
「正直に言え、インペリアルガードのことは誰から聞いた?」

 誰からも聞いていない。
 自分のスキルで知った言葉だ……が、重要な言葉だったのだ! と、今になって知り、軽々しく口にしたことを後悔する。
 国王の殺害阻止協力が最重要事項だ……であれば、エルガレム王国に仇なす相手ではないと判断する。

「私のスキルで、その人たちに国王様の殺害阻止協力を頼むようにと――」

 ここでスキルのことを聞かれれば、素直に話すしかないという覚悟はあった。
 もしも、この場でリアムたちに話をしなければ、国王が殺害される可能性が高くなる。
 そうなれば、殺害した者たちが暗躍して、エルガレム王国自体が大きな渦に巻き込まれる。
 何も知らずに平和に暮らしている人たちが被害にあうのは、リゼ自身が許せなかった。

「どういうことだ?」

 実の父親であるエルガレム国王の殺害と聞けば、リアムとて正気ではいられない。
 隣のクリスパーがリアムを落ち着かせると、再度リゼに言葉の真意を問う。
 リゼに悪意がないことは、この部屋にいる全員が分かっていることだったが、簡単に聞き流せる話でもない。

「スキルが関係しているってことなのかい?」
「はい」
「それは未来を予測できるようなスキル……なのか?」
「違います。でも……」

 メインスキルで表示された内容は、近い将来に起こりうる出来事なのは間違いない。
 そういう意味では、クリスパーの言っていることは合っている。

「私のスキルは“クエスト”です」
「クエスト?」
「はい」

 インペリアルガードとかは既にどうでもよく、父親を守りたいリアムに協力したいという気持ちが大きかった。
 肉親を失う辛さを知っていたから――。
 リゼは包み隠さずに全てを話した。
 クエストが表示されて達成されれば報酬を受け取り、未達成であれば罰則を受ける。
 ただ、今までクエスト内容に間違いはなかったこと。
 バビロニアのスタンピードも、クエストから事前に情報を得ていたことを伝える。

「報酬目当てだと罵ってもらっても構いません。ですが、国王様が亡くなり、国の人たちが不幸になるのは嫌です……ですから、インペリアルガードについて教えてください。お願いします」

 リゼは立ち上がり、リアムに頭を下げる。
 自分が頭を下げたところで、一国の王子であるリアムにとっては意味のないことだと分かっている。
 だが、この場で今の自分に出来ることはこれくらいだった。

「分かったよ」

 リアムがリゼの申し出を了承してくれた。

「俺たちがインペリアルガードだ。と言っても、世間には明日発表する極秘事項だ」

 まさか、リアムたちがインペリアルガードだったとは予想外だった。
 リゼを連れ出したのは、建国祭の式典前に情報が漏れるのを防ぐためと、ごく一部のものしか知らない情報をリゼが知っていたことで、内通者の可能性などを考えていたそうだ。

「ありがとうございます」
「礼を言うのはこっちだ。絶対に国王を殺させはしない」

 リアムが力強く拳を握り、リゼに向かい笑顔を見せる。
 その瞬間に『クエスト達成』の表示が現れると、リゼはひとまず安心する。
 ひとまずというのは、メインクエストの……国王を守らなければ意味がない。

「今の話は疑う余地がないので、城内の警備を増やす必要がありますね」
「いいや。警備を増やせば、かえって敵を迎え入れる可能性もある。ここは信頼できる奴で固めるのが正解だろう」
「信頼できると言っても……誰が」
「銀翼だよ」

 リゼを見て口角を上げるが、「銀翼」の名前が出たことに、リゼは驚き戸惑う。
 二代目銀翼として初めての指名クエストになる。
 しかも国からのクエスト……指名クエストとしては最高のクエストだが、同時に不安が頭をよぎる。
 フィーネやレティオールとシャルルの三人は銀翼ではないので、アンジュとジェイドを含めた三人で対応する必要がある。
 力不足だと三人とも分かっている状態で、クエストを達成することができるのか。
 リゼの不安をよそに事態は刻一刻と変わっていく。

「ジョエリオ! いますぐ、冒険者ギルドに俺の名で銀翼に指名クエストを出す手続きをしてくれ」
「任せろ! 報酬はどうする」
「お前に任せる」
「えっ!」

 勢いよく部屋を出ようとしたジョエリオの動きが止まり、不安な表情でリアムの顔を見る。

「リアム。これ」

 こうなることを予測していたのか、エミリネットがアイテムバッグから紙を取り出す。
 それはクエスト発注用紙だった。
 すぐに依頼するクランに“銀翼”、クエスト内容に“建国祭中の王都警護”と記入する。
 未記入は依頼者名と、報酬の欄だけだ。

「さすがだな」
「当たり前よ。毎回毎回、用意するのも大変だから」
「……悪いな」
「もう慣れたわ。それよりも一刻を争うんだから、さっさと記入してよ」

 ばつの悪そうなリアムだったが、そんな状況ではないとエミリネットがまくし立てる。

「そうだな」

 自慢気なエミリネットからクエスト発注用紙を奪うように取り、机の上に置くと、すぐに自分の名前と、報酬として“白金貨二十枚”と記入したクエスト発注用紙をジョエリオに向かって投げる。
 存外の扱いをするリアムに、エミリネットは怒るが書類を受け取ったジョエリオは颯爽と部屋を出て行こうとする。

「ジョエリオ、待って!」

 エミリネットの声で、またしても足を止める。

「外にいるジェイドを連れて行きなさい。そして、そのまま銀翼には至急こちらに来るようにと」
「任せろ‼」

 今度こそ勢いよく部屋を飛び出していった。


――――――――――――――――――――


■リゼの能力値
 『体力:四十八』 
 『魔力:三十三』
 『力:三十三』 
 『防御:二十一』
 『魔法力:二十六』
 『魔力耐性:十三』
 『敏捷:百四十三』
 『回避:五十六』
 『魅力:三十三』(二増加)
 『運:五十八』
 『万能能力値:零』
 
■メインクエスト
 ・エルガレム王国国王の殺害阻止。期限:建国祭終了
 ・報酬:魅力(五増加)

■サブクエスト
 ・ミコトの捜索。期限:一年
 ・報酬:慧眼けいがんの強化

■シークレットクエスト
 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

忍者ですが何か?

藤城満定
ファンタジー
ダンジョンジョブ『忍者』を選んだ少年探索者が最強と呼ばれるまで。

スキル【ファミレス】を使っていたら伝説になりました。

キンモクセイ
ファンタジー
スキル「ファミレス」を手にした。 ハズレスキルかと思い、主人公の思うがまま行動している。 そんな時に1人の少女と出会い、運命が変わる。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~

仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

30代からはじめるダンジョン攻略!脱サラ男によるダンジョン攻略術。

神崎あら
ファンタジー
31歳、独身、職業攻略者。 世界にはダンジョンと呼ばれる不思議な建造物が出現して早20年、現在世界はまさにダンジョン時代と呼ばれるほどにダンジョンビジネスが盛んになった。  これはそんなダンジョン攻略者になったアラサー男性の冒険譚である。 ※話数の表記の修正と同じ話の整理を行いました。 18時更新します

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

処理中です...