361 / 376
第361話
しおりを挟む
人払いをした部屋で、親子が四人揃う。
一人は拘束された状態で寝ている。
その周囲は氷で覆われていた。
生きているように見えるが、寝ている男性が目を覚ますことはない。
「シアトム……」
言葉が返ってくることなどないと分かっていながら、期待を込めて息子の名を呼ぶ。
悲痛な表情の三人。
親子だけの特別な空間に静寂な時が流れる。
気丈な振る舞いをする父親と、兄弟を失った悲しさを表に出さずにいたマルコムとリアムは、国民の前の態度が嘘かのように、横になっているシアトムを見ていた。
触れようとするが、氷が邪魔をして触れることさえできない。
三人それぞれが、自身の気持ちを整理している時間が続く……そして、三人がそれぞれ納得する時を迎えた。
「親子、兄弟としての時間は終わりだ。これからは、王族としての振る舞いを忘れずに」
「分かっています」
「はい」
国王の言葉にマルコムとリアムが答える。
その表情は、悲しみの感情を完全に封じ込め、王族としての表情に戻っていた。
「リアムよ」
「はい、なんでしょうか?」
「お主に助言をしたという、あの銀髪の冒険者は何者なのだ?」
「何者というか……リゼという冒険者というだけです」
「そういうことではない。私の殺害も、そうだが……騎士が襲ってきた時、あの冒険者の声がなければ危なかった……そう、命を落とすか怪我を負っても不思議ではなかった」
「たしかに、そうですね……まるで、あの騎士が襲うことを分かっていたかのようだった」
国王の発言に、マルコムも同意する。
「それだけ周囲に気を配っていたということでしょう。それに彼女は銀翼です」
「銀翼? お主の友人がいたクランか?」
「はい」
「そうか……今回は私の命と国を守ってくれた。それなりの褒美を与えなければならぬな」
国王は、国と自分を救ったことによる功績を考え、リゼに褒美を与えるべきだと考えていた。
「そうですね。今回の件でなにもしなければ、よからぬ噂を立てる輩がいるかもしれませんね」
「たしかに、そうだな……シアトムの葬儀が終わり次第、彼女を呼ぶように手配をしてくれ」
「分かりました。私のほうから彼女に伝えておきます」
「うむ、頼んだぞ」
三人は最後にシアトムの顔を見てから部屋を出た。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
朝になってもレティオールとシャルルは銀翼館に戻ってこなかった。
不安になるリゼの頭に、嫌な予感が過ぎる。
……もしかして、被害にあったのかもしれない! と。
落ち着かないリゼは、心配からすぐに二人を探しに町を出ようとする。
アンジュたちもリゼに続く。
その時、銀翼館の扉が開いた。
誰もがレティオールとシャルルが戻ってきたと思ったが違っていた。
「あ、あの――」
冒険者ギルドの受付嬢だった。
「あっ、すみません」
アンジュが、何事もなかったかのように受け答えをする。
「申請を出されている地下訓練場の件で、お伝えすることがあるので冒険者ギルド会館までお越しいただきますようお願いいたします」
この場では伝えられないことのようだと察知して、申し出を受け入れる。
「ありがとうございます。では、私はこれで」
受付嬢が去っていくと、入れ替わるようにボロボロになった姿のレティオールとシャルルが姿を現した。
「レティオール‼ シャルル‼」
思わず叫ぶリゼ。
「ただいま」
申し訳なさそうに帰宅の挨拶をするレティオールだったが、怪我などはしていないようだった。
(……よかった)
リゼは胸をなでおろす。
「そんなに汚れて、どうしたのですか?」
心配するフィーネに、レティオールとシャルルは顔を見合わせた。
目の前に並ぶ顔から、自分たちを心配してくれていることは感じ取れた。
そう、正式な仲間でもない自分たちを心配してくれた……そのことが、レティオールとシャルルの二人にとっては、なによりも嬉しかった。
リゼに会うまでは、仲間というものに恵まれていなかった……本当の仲間というものに。
「実は――」
レティオールがフィーネの問いに答える。
騎士団や、他の冒険者たちにまじり、夜通し倒壊した建物から救出作業をしていたそうだ。
明け方になり、他の場所から応援もあって戻ってきた。
二人は知らないが、王都で見かけたことがない冒険者が救出作業をしていたため、現場では噂になっていた。
クラン同士の会話でも、誰も自分のクランではない……見たことがなかったからだ。
建国祭で王都を訪れた冒険者が、無償で救助活動をしてくれたのではないか。
そう話す者たちが多くいた。
救出された人たちからも感謝の言葉をかけられるが、「ただの冒険者です」としか言わなかった。
そう……嘘偽りなく本当のことだからだ。
レティオールとシャルルの二人は救助活動をしていたら朝になったと説明して、心配をかけていたことが分かったのか、全員の顔を見て謝る。
「疲れているんだから、早く休みなさい」
アンジュが二人に休息を促す。
「そうっス。体を休めるのも大事っスよ」
ジェイドもアンジュの言葉に続く。
「ありがとうございます」
「少し休ませてもらいます」
レティオールとシャルルが感謝の言葉を言って、部屋へと移動した。
「じゃあ、私たちは冒険者ギルド会館に行ってくるから」
「二人は私が見ておきますので」
「僕もいるよ」
フィーネとライオットが留守番をしながら、二人の様子を見ていると言ってくれた。
「じゃあ、留守をお願いね」
「はい」
「じゃあね~」
対照的な二人に見送られる。
(さてさて、仲間の裏切りに二人は、どう対処するのかな)
不敵に笑うライオットであった。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十八』
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
■罰則
・身体的成長速度停止。期限:一生涯
・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
一人は拘束された状態で寝ている。
その周囲は氷で覆われていた。
生きているように見えるが、寝ている男性が目を覚ますことはない。
「シアトム……」
言葉が返ってくることなどないと分かっていながら、期待を込めて息子の名を呼ぶ。
悲痛な表情の三人。
親子だけの特別な空間に静寂な時が流れる。
気丈な振る舞いをする父親と、兄弟を失った悲しさを表に出さずにいたマルコムとリアムは、国民の前の態度が嘘かのように、横になっているシアトムを見ていた。
触れようとするが、氷が邪魔をして触れることさえできない。
三人それぞれが、自身の気持ちを整理している時間が続く……そして、三人がそれぞれ納得する時を迎えた。
「親子、兄弟としての時間は終わりだ。これからは、王族としての振る舞いを忘れずに」
「分かっています」
「はい」
国王の言葉にマルコムとリアムが答える。
その表情は、悲しみの感情を完全に封じ込め、王族としての表情に戻っていた。
「リアムよ」
「はい、なんでしょうか?」
「お主に助言をしたという、あの銀髪の冒険者は何者なのだ?」
「何者というか……リゼという冒険者というだけです」
「そういうことではない。私の殺害も、そうだが……騎士が襲ってきた時、あの冒険者の声がなければ危なかった……そう、命を落とすか怪我を負っても不思議ではなかった」
「たしかに、そうですね……まるで、あの騎士が襲うことを分かっていたかのようだった」
国王の発言に、マルコムも同意する。
「それだけ周囲に気を配っていたということでしょう。それに彼女は銀翼です」
「銀翼? お主の友人がいたクランか?」
「はい」
「そうか……今回は私の命と国を守ってくれた。それなりの褒美を与えなければならぬな」
国王は、国と自分を救ったことによる功績を考え、リゼに褒美を与えるべきだと考えていた。
「そうですね。今回の件でなにもしなければ、よからぬ噂を立てる輩がいるかもしれませんね」
「たしかに、そうだな……シアトムの葬儀が終わり次第、彼女を呼ぶように手配をしてくれ」
「分かりました。私のほうから彼女に伝えておきます」
「うむ、頼んだぞ」
三人は最後にシアトムの顔を見てから部屋を出た。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
朝になってもレティオールとシャルルは銀翼館に戻ってこなかった。
不安になるリゼの頭に、嫌な予感が過ぎる。
……もしかして、被害にあったのかもしれない! と。
落ち着かないリゼは、心配からすぐに二人を探しに町を出ようとする。
アンジュたちもリゼに続く。
その時、銀翼館の扉が開いた。
誰もがレティオールとシャルルが戻ってきたと思ったが違っていた。
「あ、あの――」
冒険者ギルドの受付嬢だった。
「あっ、すみません」
アンジュが、何事もなかったかのように受け答えをする。
「申請を出されている地下訓練場の件で、お伝えすることがあるので冒険者ギルド会館までお越しいただきますようお願いいたします」
この場では伝えられないことのようだと察知して、申し出を受け入れる。
「ありがとうございます。では、私はこれで」
受付嬢が去っていくと、入れ替わるようにボロボロになった姿のレティオールとシャルルが姿を現した。
「レティオール‼ シャルル‼」
思わず叫ぶリゼ。
「ただいま」
申し訳なさそうに帰宅の挨拶をするレティオールだったが、怪我などはしていないようだった。
(……よかった)
リゼは胸をなでおろす。
「そんなに汚れて、どうしたのですか?」
心配するフィーネに、レティオールとシャルルは顔を見合わせた。
目の前に並ぶ顔から、自分たちを心配してくれていることは感じ取れた。
そう、正式な仲間でもない自分たちを心配してくれた……そのことが、レティオールとシャルルの二人にとっては、なによりも嬉しかった。
リゼに会うまでは、仲間というものに恵まれていなかった……本当の仲間というものに。
「実は――」
レティオールがフィーネの問いに答える。
騎士団や、他の冒険者たちにまじり、夜通し倒壊した建物から救出作業をしていたそうだ。
明け方になり、他の場所から応援もあって戻ってきた。
二人は知らないが、王都で見かけたことがない冒険者が救出作業をしていたため、現場では噂になっていた。
クラン同士の会話でも、誰も自分のクランではない……見たことがなかったからだ。
建国祭で王都を訪れた冒険者が、無償で救助活動をしてくれたのではないか。
そう話す者たちが多くいた。
救出された人たちからも感謝の言葉をかけられるが、「ただの冒険者です」としか言わなかった。
そう……嘘偽りなく本当のことだからだ。
レティオールとシャルルの二人は救助活動をしていたら朝になったと説明して、心配をかけていたことが分かったのか、全員の顔を見て謝る。
「疲れているんだから、早く休みなさい」
アンジュが二人に休息を促す。
「そうっス。体を休めるのも大事っスよ」
ジェイドもアンジュの言葉に続く。
「ありがとうございます」
「少し休ませてもらいます」
レティオールとシャルルが感謝の言葉を言って、部屋へと移動した。
「じゃあ、私たちは冒険者ギルド会館に行ってくるから」
「二人は私が見ておきますので」
「僕もいるよ」
フィーネとライオットが留守番をしながら、二人の様子を見ていると言ってくれた。
「じゃあ、留守をお願いね」
「はい」
「じゃあね~」
対照的な二人に見送られる。
(さてさて、仲間の裏切りに二人は、どう対処するのかな)
不敵に笑うライオットであった。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十八』
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
■罰則
・身体的成長速度停止。期限:一生涯
・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
95
あなたにおすすめの小説
スキル【ファミレス】を使っていたら伝説になりました。
キンモクセイ
ファンタジー
スキル「ファミレス」を手にした。
ハズレスキルかと思い、主人公の思うがまま行動している。
そんな時に1人の少女と出会い、運命が変わる。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~
仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
30代からはじめるダンジョン攻略!脱サラ男によるダンジョン攻略術。
神崎あら
ファンタジー
31歳、独身、職業攻略者。
世界にはダンジョンと呼ばれる不思議な建造物が出現して早20年、現在世界はまさにダンジョン時代と呼ばれるほどにダンジョンビジネスが盛んになった。
これはそんなダンジョン攻略者になったアラサー男性の冒険譚である。
※話数の表記の修正と同じ話の整理を行いました。
18時更新します
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
新作
【あやかしたちのとまり木の日常】
連載開始しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる