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第360話
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国王が司祭たちとの話を終えたころ、リゼたちは別の部屋にいた。
話は自然と、銀翼の加入試験と、金狼との交流戦へと移っていく。
その中心はアンジュとコウガだったが、オルビスも話に加わる。
冒険者として、クランやギルドとしての在り方など、リゼたちは置き去りにされて、話はどんどんと大きくなっていく。
コウガが「王都が混乱している一因は、天翔旅団を解散させたオルビスにある」と言うと、オルビスは「そうかもな」と暗に認めた。
あまりにあっさりとオルビスが認めたことで、発言したコウガも拍子抜けする。
気まずい雰囲気が部屋に流れる。
「はいはい、辛気臭いわね」
ナナオが立ち上がり、手を叩いて部屋の空気を変える。
それに合わせたかのように、リアムが入室してきた。
「待たせて悪かったな……ん、なにかあったか?」
「何もないです」
ナナオが代表して答える。
「そうか」
場を仕切り直すように、リアムたちが座ると、立っていた冒険者たちは座る。
別室で行われた司祭たちの話をかい摘んで話してくれた。
特に極秘事項でもないので、関係しているリゼたちには知る権利があるという理由らしい。
しばらくアルカントラ法国とは緊迫した状況が続くようだ。
「司祭がいない期間、『神の加護』を授かる儀式は、どうなるのですか?」
リゼが思わず口を挟む。
「それは現在検討中だ……が、唯一西地区の司祭だけが、アルカントラ法国を仕業だと認めた。少なくとも彼だけは司祭のなかでも別格のようだ。彼に頼むという話も出ていることは事実だ」
「そうですか」
リゼの質問にリアムが答えるが、結論は出ていないようだった。
十歳になり与えられるスキルを楽しみにしている者もいる。
その後の人生が左右される重要なことだ。
先送りにされるのが、いつまでか分からなければ不安を助長するに違いない。
「アルカントラ法国と対立を強めれば、リリア聖国が関係強化を迫ってくるのでは?」
「それも十分に考えられるだろう。それも問題の一つだ」
アンジュの質問に、リアムが面倒くさそうに答えた。
国家間の問題だけに、対策をいくつも考えたうえで最善策を導く必要がある。
シアトムが亡くなったことで、リアムも静観できる立場ではなくなった。
女神ユキノでなく、女神リリアを信仰することは別に問題ない。
ただ、国内で宗教間の対立が激化することを危惧していた。
そのシアトムだが、数日後に死去したことを国民に伝えるそうだ。
アルカントラ法国から戻ってきてから、体調を崩したことによる”病死”だということで決定したそうだ。
曲がりなりにも一国の王子が操られていたなど、発表できるわけなどない。
発表したとしても、スキルなのか魔法なのかも分からない。
不安を煽ることだけは避けるべきだという理由もあった。
シアトムは国葬として取り扱われるため、その準備などもあると話す彼の表情は、悲しみを必死で隠しているように感じられた。
「今回は、本当に助かった」
リアムから礼を言われるリゼだったが、王子からの言葉にしきりに恐縮していた。
国王には今回の件については、リゼが王都に戻ってくる時に酒場で聞いた話を、顔見知りの自分に相談したということで通したそうだ。
「クエスト報酬は冒険者ギルドに連絡しておいたから、後ほど確認しておいてください」
「ありがとうございます」
「銀翼の新たな船出に華を添えられましたかね」
「それは十分すぎるほどです」
クリスパーがアンジュにクエスト報酬について、支払い終えたことを告げる。
「リアム王子。私は、そろそろ失礼させていただきます」
オルビスが先に帰る挨拶をリアムにする。
「いろいろと助かった。グラマスに就任後もよろしく頼む」
「まだ、先の話ですよ」
笑って返すオルビス。
「あっ、そうだ。銀翼と金狼の交流戦、楽しみにしているぞ」
振り返ると、リゼやコウガたちに向かって嬉しそうに言葉をかける。
苦笑いするアンジュと、自信満々に微笑むコウガが対照的だった。
「交流戦ってなんだ?」
「そうですね――」
リアムが話に食い付くと、アンジュが説明を始めた。
「面白そうだな。俺たちも観戦に行くか」
「いいな」
賛同するのはジョエリオだけだった。
「仕事が山ほど残っているでしょう」
「そうそう。私たちは行けてもリアムは無理ね」
各々が意見を言い始めた。
結局、リアムがたまっている仕事を終えれば、観戦できることに落ち着く。
クリスパーとエミリネットは、自分たちが手伝う羽目になるのだろうと覚悟していた。
それでも、心のどこかで「自分たちも交流戦を見たい」という思いがあった。
簡単に実力を確認するだけの試験が、どんどんと大事になっていく。
入団試験を取り仕切るアンジュにとって、頭の痛い問題だった。
リゼたちも帰ろうとすると、リアムが呼び止める。
「リゼのスキルについては、インペリアルガードしか知らないし、絶対に口外しない」
と、小声で約束してくれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
解放されたリゼたち三人は銀翼館に戻ってきた。
三人を迎えるフィーネとライオット。
「あれ? レティオールとシャルルは?」
「戻ってきていませんね」
「そうなんだ」
二人のことだから無茶はしていないと思い、心配はしていない。
だが、いると思っていた二人がいなかったことに、残念な気持ちになっていた。
「被害は、ここまでなかったようだけど、街中は酷い状況ね」
「はい。多くのクランに復旧作業のクエストが発注されると、冒険者たちから聞きました」
「まぁ、そうなるっスね。自分たちも出来ることをするだけっスね」
お互いに情報交換を続けていた。
建国祭が終わったことで、フィーネの頭の中は銀翼の入団試験でいっぱいだった。
「とりあえず、食事にする……といっても、帰ってこないわね?」
「もう少し待ちましょう」
アンジュの言葉にフィーネが答える。
だが、レティオールとシャルルが、その日銀翼館に戻ってくることはなかった。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十八』
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
■罰則
・身体的成長速度停止。期限:一生涯
・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
話は自然と、銀翼の加入試験と、金狼との交流戦へと移っていく。
その中心はアンジュとコウガだったが、オルビスも話に加わる。
冒険者として、クランやギルドとしての在り方など、リゼたちは置き去りにされて、話はどんどんと大きくなっていく。
コウガが「王都が混乱している一因は、天翔旅団を解散させたオルビスにある」と言うと、オルビスは「そうかもな」と暗に認めた。
あまりにあっさりとオルビスが認めたことで、発言したコウガも拍子抜けする。
気まずい雰囲気が部屋に流れる。
「はいはい、辛気臭いわね」
ナナオが立ち上がり、手を叩いて部屋の空気を変える。
それに合わせたかのように、リアムが入室してきた。
「待たせて悪かったな……ん、なにかあったか?」
「何もないです」
ナナオが代表して答える。
「そうか」
場を仕切り直すように、リアムたちが座ると、立っていた冒険者たちは座る。
別室で行われた司祭たちの話をかい摘んで話してくれた。
特に極秘事項でもないので、関係しているリゼたちには知る権利があるという理由らしい。
しばらくアルカントラ法国とは緊迫した状況が続くようだ。
「司祭がいない期間、『神の加護』を授かる儀式は、どうなるのですか?」
リゼが思わず口を挟む。
「それは現在検討中だ……が、唯一西地区の司祭だけが、アルカントラ法国を仕業だと認めた。少なくとも彼だけは司祭のなかでも別格のようだ。彼に頼むという話も出ていることは事実だ」
「そうですか」
リゼの質問にリアムが答えるが、結論は出ていないようだった。
十歳になり与えられるスキルを楽しみにしている者もいる。
その後の人生が左右される重要なことだ。
先送りにされるのが、いつまでか分からなければ不安を助長するに違いない。
「アルカントラ法国と対立を強めれば、リリア聖国が関係強化を迫ってくるのでは?」
「それも十分に考えられるだろう。それも問題の一つだ」
アンジュの質問に、リアムが面倒くさそうに答えた。
国家間の問題だけに、対策をいくつも考えたうえで最善策を導く必要がある。
シアトムが亡くなったことで、リアムも静観できる立場ではなくなった。
女神ユキノでなく、女神リリアを信仰することは別に問題ない。
ただ、国内で宗教間の対立が激化することを危惧していた。
そのシアトムだが、数日後に死去したことを国民に伝えるそうだ。
アルカントラ法国から戻ってきてから、体調を崩したことによる”病死”だということで決定したそうだ。
曲がりなりにも一国の王子が操られていたなど、発表できるわけなどない。
発表したとしても、スキルなのか魔法なのかも分からない。
不安を煽ることだけは避けるべきだという理由もあった。
シアトムは国葬として取り扱われるため、その準備などもあると話す彼の表情は、悲しみを必死で隠しているように感じられた。
「今回は、本当に助かった」
リアムから礼を言われるリゼだったが、王子からの言葉にしきりに恐縮していた。
国王には今回の件については、リゼが王都に戻ってくる時に酒場で聞いた話を、顔見知りの自分に相談したということで通したそうだ。
「クエスト報酬は冒険者ギルドに連絡しておいたから、後ほど確認しておいてください」
「ありがとうございます」
「銀翼の新たな船出に華を添えられましたかね」
「それは十分すぎるほどです」
クリスパーがアンジュにクエスト報酬について、支払い終えたことを告げる。
「リアム王子。私は、そろそろ失礼させていただきます」
オルビスが先に帰る挨拶をリアムにする。
「いろいろと助かった。グラマスに就任後もよろしく頼む」
「まだ、先の話ですよ」
笑って返すオルビス。
「あっ、そうだ。銀翼と金狼の交流戦、楽しみにしているぞ」
振り返ると、リゼやコウガたちに向かって嬉しそうに言葉をかける。
苦笑いするアンジュと、自信満々に微笑むコウガが対照的だった。
「交流戦ってなんだ?」
「そうですね――」
リアムが話に食い付くと、アンジュが説明を始めた。
「面白そうだな。俺たちも観戦に行くか」
「いいな」
賛同するのはジョエリオだけだった。
「仕事が山ほど残っているでしょう」
「そうそう。私たちは行けてもリアムは無理ね」
各々が意見を言い始めた。
結局、リアムがたまっている仕事を終えれば、観戦できることに落ち着く。
クリスパーとエミリネットは、自分たちが手伝う羽目になるのだろうと覚悟していた。
それでも、心のどこかで「自分たちも交流戦を見たい」という思いがあった。
簡単に実力を確認するだけの試験が、どんどんと大事になっていく。
入団試験を取り仕切るアンジュにとって、頭の痛い問題だった。
リゼたちも帰ろうとすると、リアムが呼び止める。
「リゼのスキルについては、インペリアルガードしか知らないし、絶対に口外しない」
と、小声で約束してくれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
解放されたリゼたち三人は銀翼館に戻ってきた。
三人を迎えるフィーネとライオット。
「あれ? レティオールとシャルルは?」
「戻ってきていませんね」
「そうなんだ」
二人のことだから無茶はしていないと思い、心配はしていない。
だが、いると思っていた二人がいなかったことに、残念な気持ちになっていた。
「被害は、ここまでなかったようだけど、街中は酷い状況ね」
「はい。多くのクランに復旧作業のクエストが発注されると、冒険者たちから聞きました」
「まぁ、そうなるっスね。自分たちも出来ることをするだけっスね」
お互いに情報交換を続けていた。
建国祭が終わったことで、フィーネの頭の中は銀翼の入団試験でいっぱいだった。
「とりあえず、食事にする……といっても、帰ってこないわね?」
「もう少し待ちましょう」
アンジュの言葉にフィーネが答える。
だが、レティオールとシャルルが、その日銀翼館に戻ってくることはなかった。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十八』
『魔力:三十三』
『力:三十三』
『防御:二十一』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百四十三』
『回避:五十六』
『魅力:三十八』
『運:五十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
■罰則
・身体的成長速度停止。期限:一生涯
・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
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