私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

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第363話

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 先日までの建国祭が嘘だったかのようだ。
 今朝に発表されたシアトムの国葬のため、華やかな装飾品は街角から姿を消していた。
 強制的なものでなく、国民が任意で行っているにすぎない。
 金狼郭に出向くと、すでにナナオから話が伝わっているのか、門番の冒険者の教育が行き届いているのか、無礼な振る舞いをされることはなかった。

 マリックは別の用事で出かけていたので、コウガとナナオの二人相手に話しをする。

「……十日後か。白狼はどうなんだ?」
「商人の護衛がいくつもあるけど、国葬で日程が変わっているので、調整しているところよ。それは銀狼も同じでしょう」
「こっちは国葬で遅れた分は日程調整済だ。早くても十三日後に出立だ。そもそも、店が閉まっているから、物も揃えなかったから、冒険者ギルドとしても仕方ないと思っているだろう」
「コウガはクエストに行かないから気楽よね」
「こっちはこっちで、面倒事があるんだよ」
「はいはい」

 ナナオはコウガの言葉を軽く流した。

「私は参加できるようであれば参加するわ。無理なら、代理を立てさせてもらうけど、いいかしら?」
「はい、構いませんよ。誰が相手でも負けるつもりはないですから」
「それはお互い様よ」

 笑顔で答えるナナオだったが、目は笑っていない。
 個人というよりもクランを背負っている覚悟があったからだ。
 それはリゼも同じだった。
 銀翼の一員として、恥ずかしい姿を見せるわけにはいかない。
 それに成長した姿をアンジュやジェイドに見せたい思いが強かった。
 目の前のコウガを意識する。
 コウガと戦うことが決まってから、二年前の戦いを何度も頭の中でイメージしていた。
 だが、当時の記憶はうる覚えで、思い出すのは同じ場面しかない。

「万全の状態で頼むぞ」
「そのつもりです」

 帰り際にコウガから掛けられた一言が、リゼの内なる炎をさらに強くした。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 銀翼館に戻ったリゼたちだったが、さきほどのジェイドの話が頭を過り、出迎えてくれたフィーネの顔を、昨日までとは違う感じで見てしまっている。
 変に意識していることに気付いていた。

「まだ、二人とも部屋で休まれていますよ」
「そう……じゃあ、先にフィーネだけに話しておくわ」

 アンジュは試験の日程が変更したことを伝えた。

「そうなんだ。残念だけど、僕は帰ろうかな」

 ライオットが飄々とした態度で現れる。

「そうね。さっさと帰りなさいよ」
「もう、そんなに怒らないでよ」

 ライオットの態度に苛立つアンジュが棘のある言い方で返すと、気にすることなくアンジュに近づきアンジュに耳打ちをする。

「仲間に裏切られた気分は、どうだった?」

 咄嗟に振り向くアンジュを軽く躱すライオット。

「あんた、どうして――」

 全部言おうとして、口をつぐむ。

「……師匠は知っていたってこと?」

 アンジュの言葉に、ライオットは笑顔で答える。

「そう――師匠に伝えておいて、問題ないわってね」
「だろうね。一応、伝えておくよ」

 二人のやり取りが分からないリゼたちは、呆然と見ているだけだった。

「ということで、お別れです」

 あまりにも、あっさりと帰ろうとするライオットに驚く。
 引き留めるわけでもないが……。

「ライオット。また、どこかで」 
「リゼの姉御もお元気で」

 寝ているレティオールとシャルル以外の者全員で、ライオットを玄関で見送る。
 元気よく手を振りながら去っていくライオット。

「ふぅ~。厄介者がいなくなったわ」

 アンジュが嬉しそうに話すが、その表情はどこか寂しそうにも感じた。
 よくよく考えると、アンジュはライオットと、ジェイドはフィーネとともに修行をした仲間だが、自分にはいない。
 すこしだけ寂しいと感じるが、隣には頼もしい仲間たちがいることにも気づく。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 夕方になると、レティオールとシャルルが時間差で起きてきた。
 アンジュは調べ物があると、自室にこもっていた。
 ジェイドは用事があると外出していたので、リゼはフィーネと話をして時間をつぶしていた。
 リゼが二人の飲み物を用意していると、銀翼館に来客が訪れた。
 訪れたのはエミリネットとユーリだった。

「リゼ。お客様よ」

 フィーネも気を付けているのか、二人っきり以外はリゼという名で呼ぶ。
 呼ばれたリゼが玄関に行くと、ユーリが手紙を取り出してリゼに渡す。
 手紙を受け取ったリゼだったが、手紙に押してある印に気付く。

「国王様からです」

 エミリネットが差出人が国王であると伝える。
 手紙の中身を知っているのか、「では、後日に」とだけ言い残して去っていった。
 皆が集まっている部屋に戻ると、リゼは渡された手紙の封を開こうとする。

「一人で見なくていいっスか?」
「なんで? どうせ、皆にも言うことだろうし」

 手紙には、シアトムの国葬後に王城に一人で来るように。 と、書かれていた。
 誰もが言葉を失い、リゼを見る。
 すると手紙に重なるようにメインクエストが発生した。
 クエスト内容は『謁見の間で国王の要求を全て拒否する。期限:謁見の間』『報酬(魅力:十増加、運:三増加)』
 国王の要求を全て拒否する……それは国王に逆らうということだ。
 状況によっては反逆罪と捉えられるかもしれない。
 呆然とするリゼ。

「……ゼ、リゼ」

 フィーネたちが動かないリゼを心配して声をかける。

「あっ、ゴメン」

 誰もが国王からの招集に驚いていると思っていた。

(……これにも、なにか理由があるのだろうか?)

 自分が成長に必要なことだと思いながらも、一つ間違えばクエスト失敗となる。
 その罰則が”死刑”だということかもしれない。
 リゼの悩む日々が続く――。


――――――――――――――――――――


■リゼの能力値
 『体力:四十八』 
 『魔力:三十三』
 『力:三十三』 
 『防御:二十一』
 『魔法力:二十六』
 『魔力耐性:十三』
 『敏捷:百四十三』
 『回避:五十六』
 『魅力:三十八』
 『運:五十八』
 『万能能力値:零』
 
■メインクエスト
 ・謁見の間で国王の要求を全て拒否する。
 ・報酬:魅力(十増加)、運(三増加)

■サブクエスト
 ・ミコトの捜索。期限:一年
 ・報酬:慧眼けいがんの強化

■シークレットクエスト


■罰則
 ・身体的成長速度停止。期限:一生涯
 ・恋愛感情の欠落。期限:一生涯
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