名字大戦争

プロローグ

「いい？これは"戦争"よ！」
ダンッ！と目の前の机を力強く叩き、女性が高らかに宣言した。
「私達は長年アイツらによって虐げられてきたわ。不当な扱いを受け、本来私達が得るはずのものを奪われ、苦い思いをし続けてきた」
うんうん、とその場にいる多くの面々が同意を示す。
「鷹端(たかはし)！」
「ウス！」
筋肉質の男が返事をする。
「綿鍋(わたなべ)！」
「はい！」
華奢な女性が応える。
「那加叢(なかむら)！」
「ここに」
落ち着いた雰囲気の、眼鏡をかけた男が言う。
「古囃(こばやし)！」
「ハーイ！」
活発な女性が声を上げる。
「そして…棚架(たなか)！」
「……おう」
呼びかけの声とは逆に、テンションの低い声が響く
「『赤の同盟』リーダーの朱槻(すずき)がここに宣言する！」
ごくり、とこれから始まるものへの期待で嵐の前のような静けさがその場を支配する。
「我々はここに名字大戦争を決行する！」
おおおお、と1人を除いてその場が沸き立つ。
「…頼むから帰らせてくれねえかな」
1人男が誰に聞こえるでもなく静かに呟いた。