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望まぬ来訪者<侯爵令嬢視点>
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「お嬢様、お客人がいらっしゃっております」
翌日。その報を聞いたとき、一瞬で嫌な予感がよぎった。
「……客間でお待ちいただくように伝えてくれる?いえ、待ってちょうだい、ちょっと具合が悪いってことに……もしくは出掛けていると伝えて……!」
「お嬢様、お客人はすでに……」
居留守をしてしまおうかと考える内に、乱暴な足音が既にドアの前まで聞こえていた。焦った門番の声が聞こえる。
「お客様、お待ちくださいませ~~~!」
バターーーン!
「ミレイ!」
っていうかドアも開いていた。
「ミレイ、聞いたぞ!とうとう王家と戦を始めるらしいな!」
「どういった経緯でそういうお話が伝わったのか説明していただけます???」
勢い込んで私の部屋の扉を開けたのは父方従兄弟のサルマン。国内きっての武闘派であり、若くして王国最強の騎士団長をお勤めになっています。
その腰には我が家の門番がくっついて止めようとしているのが見える。私の合図があるまでは通すまいと頑張ってくれたんだろうな……後でお礼とお詫び言おう……
「どういったって、お前がバカ王子からこっぴどく振られて婚約破棄されたって話だけど」
「正しく伝わった上でその反応なんですね!……とにかく帯びている剣を置いてくださいませ……」
読んでいた本をパタンと閉じて彼を迎える。くっついてきた門番には手を振って、元通り門で控えているように伝えた。
この従兄弟、重々しい鎧まで一式着込んで、完全武装じゃないのよ。
とりあえず落ち着いてと言い聞かせ、メイドにお茶の用意を頼んでから重々しい鎧なんかを一度全部脱いでもらった。
こざっぱりと短髪で揃えた精悍な顔立ちだ。若いながら多大なる武勲を上げたことと、その眩しい程の見た目の良さで男女共に絶大な人気があるとか。
長身の体は並の男性より二回りほど大きい。筋肉で膨らんでいて、日々の鍛錬がうかがえる体つきだ。
なんでその鍛錬の賜物をこんなことに使おうとしてるんだ、この従兄弟は。
「大体あなた王直属の騎士団長様でしょう。上司の息子に逆らうということをわかっていらっしゃるの?」
「心配するな、俺の隊は勇敢ぞろいだ。この話をしたら皆口々に誓ってくれたぞ、俺と共に戦うと」
――国への忠誠心は!!
思わず思いっきり心中でツッコミを入れてしまった。
そしてあることに気づいて、頭痛を感じたこめかみを触る。
「っていうかお待ちください。この話をしたら?つまり騎士団ではすでに……?」
「おう、この話で持ち切りだ」
「何っってことしてくれてるんですか!」
「心配するな、あの軟弱王子の私兵なんて高が知れてる。王国の警備は俺たちでもっているようなものだからな!」
「違う。違います。そういったことを心配しているのではなくて……」
言い募っても戦力差のことしか言わない脳筋騎士団長に、私は頭を抱えた。
「大事にしたくなかったのに~~~……」
「そうは言ってもなあ」
茶菓子のクッキーをひょいひょい口に放りながらサルマンは言う。
「幼い頃から共に育ってきたお前は、俺にとって妹のようなものだ。その大事な女の子がコケにされて黙っていられるわけがないだろ?」
「普通、兄は妹のために隊を指揮して戦争を起こそうなどと考えないと思うのです……」
「はっはっはっはっ」
「何笑ってるんですか???」
サルマンは紅茶に手を付け、一息に飲み干してから話を変えた。
「俺のところの方が近いから先に来たみたいだが、そのうちアイツだって来るだろう。気持ちは同じだろうからな」
「ですよね……」
嵐はまだ始まったばかりだ。
翌日。その報を聞いたとき、一瞬で嫌な予感がよぎった。
「……客間でお待ちいただくように伝えてくれる?いえ、待ってちょうだい、ちょっと具合が悪いってことに……もしくは出掛けていると伝えて……!」
「お嬢様、お客人はすでに……」
居留守をしてしまおうかと考える内に、乱暴な足音が既にドアの前まで聞こえていた。焦った門番の声が聞こえる。
「お客様、お待ちくださいませ~~~!」
バターーーン!
「ミレイ!」
っていうかドアも開いていた。
「ミレイ、聞いたぞ!とうとう王家と戦を始めるらしいな!」
「どういった経緯でそういうお話が伝わったのか説明していただけます???」
勢い込んで私の部屋の扉を開けたのは父方従兄弟のサルマン。国内きっての武闘派であり、若くして王国最強の騎士団長をお勤めになっています。
その腰には我が家の門番がくっついて止めようとしているのが見える。私の合図があるまでは通すまいと頑張ってくれたんだろうな……後でお礼とお詫び言おう……
「どういったって、お前がバカ王子からこっぴどく振られて婚約破棄されたって話だけど」
「正しく伝わった上でその反応なんですね!……とにかく帯びている剣を置いてくださいませ……」
読んでいた本をパタンと閉じて彼を迎える。くっついてきた門番には手を振って、元通り門で控えているように伝えた。
この従兄弟、重々しい鎧まで一式着込んで、完全武装じゃないのよ。
とりあえず落ち着いてと言い聞かせ、メイドにお茶の用意を頼んでから重々しい鎧なんかを一度全部脱いでもらった。
こざっぱりと短髪で揃えた精悍な顔立ちだ。若いながら多大なる武勲を上げたことと、その眩しい程の見た目の良さで男女共に絶大な人気があるとか。
長身の体は並の男性より二回りほど大きい。筋肉で膨らんでいて、日々の鍛錬がうかがえる体つきだ。
なんでその鍛錬の賜物をこんなことに使おうとしてるんだ、この従兄弟は。
「大体あなた王直属の騎士団長様でしょう。上司の息子に逆らうということをわかっていらっしゃるの?」
「心配するな、俺の隊は勇敢ぞろいだ。この話をしたら皆口々に誓ってくれたぞ、俺と共に戦うと」
――国への忠誠心は!!
思わず思いっきり心中でツッコミを入れてしまった。
そしてあることに気づいて、頭痛を感じたこめかみを触る。
「っていうかお待ちください。この話をしたら?つまり騎士団ではすでに……?」
「おう、この話で持ち切りだ」
「何っってことしてくれてるんですか!」
「心配するな、あの軟弱王子の私兵なんて高が知れてる。王国の警備は俺たちでもっているようなものだからな!」
「違う。違います。そういったことを心配しているのではなくて……」
言い募っても戦力差のことしか言わない脳筋騎士団長に、私は頭を抱えた。
「大事にしたくなかったのに~~~……」
「そうは言ってもなあ」
茶菓子のクッキーをひょいひょい口に放りながらサルマンは言う。
「幼い頃から共に育ってきたお前は、俺にとって妹のようなものだ。その大事な女の子がコケにされて黙っていられるわけがないだろ?」
「普通、兄は妹のために隊を指揮して戦争を起こそうなどと考えないと思うのです……」
「はっはっはっはっ」
「何笑ってるんですか???」
サルマンは紅茶に手を付け、一息に飲み干してから話を変えた。
「俺のところの方が近いから先に来たみたいだが、そのうちアイツだって来るだろう。気持ちは同じだろうからな」
「ですよね……」
嵐はまだ始まったばかりだ。
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