49 / 96
塔への突入3
しおりを挟む
…………後には、浄化しきっていないという大量の魔石と、ブランとリリアが取り残された。
入り込んでくる外の空気と、部屋の中の空気が混ざっていく。
目には見えないはずのそれが、マーブルのように絡み合っていくような錯覚にあう。
残された二人はしばらく、呆然とする。
思考を揺さぶられるような感覚は続いているが、ともあれ、姉を追い出す事には成功した。
吐いてしまいたいような胸の悪さと、計画第一段階の達成に伴う爽快。
そして何が原因か分からない、脳を混ぜられるような不快さがあった。
横を見ると、共犯者もまた顔色がよくない。
それでも二人は讃え合った。
(さて、魔石を、回収しなければ)
浮かんだ考えが、頭のど真ん中を占めて動かない。
(ん?ここに来た目的は何だった……?)
時折空気が入れ替えられて、そんな気持ちも湧くのだが……
(いヤ、今はそうだ、魔石を。
魔石を回収しなけレばならない、魔石を。
魔石ヲ。魔石、魔石を……)
この思いで全ては覆われた。
リリアは手際のいいことに、回収用の袋を用意してくれていたらしい。
二人はギラついた、血走った目で、浄化しきっていない魔石を袋へと次々放り込み……
そして、塔を破壊した。
「ぶはぁっっ!!」
粉塵巻き上がるガレキの中でガバッッと起き上がる。
リリアが、二人を覆うようにシールドを貼ってくれたらしく、擦り傷の他に大きなケガもないようだった。
「ゲホッ、ゴホッ……!なんだっ、今のは……っ」
大きく咳き込むと、喉の痛みに反して頭の晴れていくような心地がする。
いやに頭部がスース―した。風の通りがよくなっているような……
リリアがブランの手を取って、ガレキの中から引っ張り出してくれた。
「ああ、すまないリリア……ありがとう……!」
礼を言う内に、巻き上がった砂埃がやや落ち着いてきたようだった。
一言二言簡単にかわす。やはり、リリアもこの出来事には動揺を隠せないようだった。
ブランは何故か視線を頭の上へと受けながら、屋敷へ向かうことにしたのだが……
自分で吐き出した言葉に、また疑問はよみがえる。
(『罰を与える』?
罰とは、いったい……)
(ああ、そうか。あの女が、魔石を独リ占めしようとしたから)
瞬間、そのような思考に切り替わる。しかし、呼吸を繰り返すうちに薄れていくようだった。
□□□
リリアの家で手当てを受け、塔の再建という奇跡を目の当たりにし………………
翌日、である。
様々な疑惑はあれど、とにかくセスティア家の領主夫妻が帰還される前に、もう少しリリアと話を詰めたい。
側近のアルから報告を受け、少し話した後に宿を出て屋敷に向かう。
その日、セスティア家は慌ただしかった。
すわ塔の事が露見したかと思いきや、忙しない様子は屋敷の内側に集中している。
顔色をやや悪くしたリリアがブランを出迎えて、挨拶もそこそこにこう言った。
「お、お父様とお母様が……予定を切り上げて、お帰りになると……!」
入り込んでくる外の空気と、部屋の中の空気が混ざっていく。
目には見えないはずのそれが、マーブルのように絡み合っていくような錯覚にあう。
残された二人はしばらく、呆然とする。
思考を揺さぶられるような感覚は続いているが、ともあれ、姉を追い出す事には成功した。
吐いてしまいたいような胸の悪さと、計画第一段階の達成に伴う爽快。
そして何が原因か分からない、脳を混ぜられるような不快さがあった。
横を見ると、共犯者もまた顔色がよくない。
それでも二人は讃え合った。
(さて、魔石を、回収しなければ)
浮かんだ考えが、頭のど真ん中を占めて動かない。
(ん?ここに来た目的は何だった……?)
時折空気が入れ替えられて、そんな気持ちも湧くのだが……
(いヤ、今はそうだ、魔石を。
魔石を回収しなけレばならない、魔石を。
魔石ヲ。魔石、魔石を……)
この思いで全ては覆われた。
リリアは手際のいいことに、回収用の袋を用意してくれていたらしい。
二人はギラついた、血走った目で、浄化しきっていない魔石を袋へと次々放り込み……
そして、塔を破壊した。
「ぶはぁっっ!!」
粉塵巻き上がるガレキの中でガバッッと起き上がる。
リリアが、二人を覆うようにシールドを貼ってくれたらしく、擦り傷の他に大きなケガもないようだった。
「ゲホッ、ゴホッ……!なんだっ、今のは……っ」
大きく咳き込むと、喉の痛みに反して頭の晴れていくような心地がする。
いやに頭部がスース―した。風の通りがよくなっているような……
リリアがブランの手を取って、ガレキの中から引っ張り出してくれた。
「ああ、すまないリリア……ありがとう……!」
礼を言う内に、巻き上がった砂埃がやや落ち着いてきたようだった。
一言二言簡単にかわす。やはり、リリアもこの出来事には動揺を隠せないようだった。
ブランは何故か視線を頭の上へと受けながら、屋敷へ向かうことにしたのだが……
自分で吐き出した言葉に、また疑問はよみがえる。
(『罰を与える』?
罰とは、いったい……)
(ああ、そうか。あの女が、魔石を独リ占めしようとしたから)
瞬間、そのような思考に切り替わる。しかし、呼吸を繰り返すうちに薄れていくようだった。
□□□
リリアの家で手当てを受け、塔の再建という奇跡を目の当たりにし………………
翌日、である。
様々な疑惑はあれど、とにかくセスティア家の領主夫妻が帰還される前に、もう少しリリアと話を詰めたい。
側近のアルから報告を受け、少し話した後に宿を出て屋敷に向かう。
その日、セスティア家は慌ただしかった。
すわ塔の事が露見したかと思いきや、忙しない様子は屋敷の内側に集中している。
顔色をやや悪くしたリリアがブランを出迎えて、挨拶もそこそこにこう言った。
「お、お父様とお母様が……予定を切り上げて、お帰りになると……!」
16
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる