婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

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無題

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子は親の所有物である。
したがって親の仕打ちには全て従うべきであり、その意向を聞く意味など何もない。
モノが意志を持ったような口を利くことに耐え難い苛立ちを覚えた。

ローズが領地を出たと聞いた。
あれには塔で抑え込むために年月をかけて術を掛けていたはずだった。ローズがそうしたと告げてきたのは、あれの婚約者としてあてがった地の令息だった。

どのような形かはまだ知れぬが、入れ知恵をきかされたとみて間違いないだろう。また、その令息はリリアと婚姻を結びなおしたいと述べた。こちらにも何がしかを吹き込まれたか。

仕置きを兼ねて塔へとリリアを閉じ込めたが、こちらに製法を教えた覚えはない。
誰に仕えるべきか、誰に従うべきなのか……思い直すいい機会になるだろう。

(……さて)

今や我が地の魔石の精製は、ローズの運用を前提として行われていた。
抜けた穴を埋めるにしても早急に人を雇うことはならない。何かしらのトラブルがあったと、喧伝するようなことになるためだ。
ローズを見つけ出し、再びこの地に捕らえなければならなかった。

保管庫に降り立った領主は眉を顰める。用途に際して取り分けていた魔石の一角がごっそりとその数を減らしていた。
この部屋に入るには鍵となる石に手を合わせねばならず、開場は一族の血に反応するように出来ている。
荷の運びに視界を封じた使用人を用いたことはあるが、他にこの部屋の扉を開けることが出来るものは、この屋敷には二人しかいなかった。
ローズか、リリアか。

領主は鬱屈を深く眉間へと刻む。
魔石を差し出す期日は迫っていた。

不足分を、どこからか補わなければならなかった。
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