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アル、中央到着2
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目が覚めたアルを出迎えたのは見知らぬ白い天井だった。ひっそりと横を眺めてみると、ベッドがいくつか並んだ白い部屋のようだった。
(病院?いや、得体の知れない行き倒れを拾うわけないし)
とすると、ここはおそらく教会なのだろう。どこぞの親切な人か聖職者に運び込まれた……のかもしれない。指や腕を動かしてみるが、特に拘束されている気配もなかった。
不用心にも程がある、と一瞬考えたが、教会はその運営上敷地内での魔力、暴力の封じる陣が敷いてあるとされている。アルの体格は貧相とは言えないが厚みは薄く、どう見てもパワータイプとされることはない。
特に危険性なし、と判断された……のかもしれない。しかしこうしてるわけにもいかなかった。幸い見張りはいないようだが、ひっそりと抜け出すよりは手続きを踏んで出る方が無難だろうか?
旅の軽装から上着を剥かれて、旅費や私物も無くなっているようだが、肌着の隠しポケットに入れた請求書その他は残っていた。ほかに、ブランに繋がる情報を持っていた覚えはない。
数瞬迷っているうちに、扉からこちらを覗く人影があった。ぱち、と目が合ってしまう。どうやら教会の職員のようだった。
「お目覚めですか、気分はいかがですか?」
「ああ、いや、もう何とも……ここは教会ですか?」
「それはよかった。そうです、あなたは……通りの近くの、木陰のところで倒れていたようで」
手に持っているボードで何かを確認しながら話す男。一連の情報が書かれているらしい。
「術の兆候があったために、教会へ連れられて来たようです。ご希望ならば診断も出来ますが……?」
術。そういえば結界じみたものに弾かれたんだった。しかしかけた人物の検討はついている。
「……や、えーと。使いの途中なんで。また今度に……」
「かしこまりました、それでは出たところにある執務室にてここのベッド番号をお伝えください。私物をお返し致します」
身なりからしてどこぞの有力者に仕えている人物、と判断されたらしい。貴族と密な関わりがあるとされる場合、審査が甘くなるというのはままあることだ。アルの場合もそれは全くもって正しいために特権を甘んじて使わせてもらう。
(さて)
視線を伏せて繋がっている小鳥との通信を試みる。
結界に近づいて弾かれたほうの小鳥だ。やはりそちらの反応はなかった。
同時にブランとの通信も難しくなっているが、これはおそらく教会という建物の性質上だろうと考えられる。特定の通信以外は遮断しやすい何かが張ってあるのか、一度敷地の外に出なければ音声通信は難しそうだ。
逆にいうと、教会内部を探るなら今が好機、ということだった。ローズがここにいる可能性は高い。
自分は気絶をしたばかりなのだと、迷ったのも一瞬だった。
下手な探知はここでは使えない。中庭に通じる廊下を見つけた。アーチ状のおおいがあるだけで外に繋がっていたため、すっとそのまま野外へ出る。物陰に身を寄せたアルは人差し指を軽く曲げて、関節を唇に当てた。高い音を鳴らす。
人間には聞こえないその音に反応して、ばさばさと小鳥が何匹か地面へと降りてきた。
「どーのーこーにー、しーよーうーかーなー」
急ごしらえの連携だ。なるべく波長の合う鳥を選ぶ。ぷち、と自前の茶髪を一本抜いて鳥に飲み込ませる。不慣れな鳥とのシンクロ度合いが大きくなると弊害も出るが、置いてきた小鳥を使えなくされた今、あまり手段を選んでもいられない。
アルの髪を飲み込んだ小鳥は、ピ、ピ……と小首をかしげていたが、やがてアルの繊維が身に馴染んだらしく、意思の疎通が可能になった。
中庭に連なる木々の合間を飛ばして、そこかしこを探ってもらう。
そして、アルは程なくして、目当てのローズを見つけた。
(病院?いや、得体の知れない行き倒れを拾うわけないし)
とすると、ここはおそらく教会なのだろう。どこぞの親切な人か聖職者に運び込まれた……のかもしれない。指や腕を動かしてみるが、特に拘束されている気配もなかった。
不用心にも程がある、と一瞬考えたが、教会はその運営上敷地内での魔力、暴力の封じる陣が敷いてあるとされている。アルの体格は貧相とは言えないが厚みは薄く、どう見てもパワータイプとされることはない。
特に危険性なし、と判断された……のかもしれない。しかしこうしてるわけにもいかなかった。幸い見張りはいないようだが、ひっそりと抜け出すよりは手続きを踏んで出る方が無難だろうか?
旅の軽装から上着を剥かれて、旅費や私物も無くなっているようだが、肌着の隠しポケットに入れた請求書その他は残っていた。ほかに、ブランに繋がる情報を持っていた覚えはない。
数瞬迷っているうちに、扉からこちらを覗く人影があった。ぱち、と目が合ってしまう。どうやら教会の職員のようだった。
「お目覚めですか、気分はいかがですか?」
「ああ、いや、もう何とも……ここは教会ですか?」
「それはよかった。そうです、あなたは……通りの近くの、木陰のところで倒れていたようで」
手に持っているボードで何かを確認しながら話す男。一連の情報が書かれているらしい。
「術の兆候があったために、教会へ連れられて来たようです。ご希望ならば診断も出来ますが……?」
術。そういえば結界じみたものに弾かれたんだった。しかしかけた人物の検討はついている。
「……や、えーと。使いの途中なんで。また今度に……」
「かしこまりました、それでは出たところにある執務室にてここのベッド番号をお伝えください。私物をお返し致します」
身なりからしてどこぞの有力者に仕えている人物、と判断されたらしい。貴族と密な関わりがあるとされる場合、審査が甘くなるというのはままあることだ。アルの場合もそれは全くもって正しいために特権を甘んじて使わせてもらう。
(さて)
視線を伏せて繋がっている小鳥との通信を試みる。
結界に近づいて弾かれたほうの小鳥だ。やはりそちらの反応はなかった。
同時にブランとの通信も難しくなっているが、これはおそらく教会という建物の性質上だろうと考えられる。特定の通信以外は遮断しやすい何かが張ってあるのか、一度敷地の外に出なければ音声通信は難しそうだ。
逆にいうと、教会内部を探るなら今が好機、ということだった。ローズがここにいる可能性は高い。
自分は気絶をしたばかりなのだと、迷ったのも一瞬だった。
下手な探知はここでは使えない。中庭に通じる廊下を見つけた。アーチ状のおおいがあるだけで外に繋がっていたため、すっとそのまま野外へ出る。物陰に身を寄せたアルは人差し指を軽く曲げて、関節を唇に当てた。高い音を鳴らす。
人間には聞こえないその音に反応して、ばさばさと小鳥が何匹か地面へと降りてきた。
「どーのーこーにー、しーよーうーかーなー」
急ごしらえの連携だ。なるべく波長の合う鳥を選ぶ。ぷち、と自前の茶髪を一本抜いて鳥に飲み込ませる。不慣れな鳥とのシンクロ度合いが大きくなると弊害も出るが、置いてきた小鳥を使えなくされた今、あまり手段を選んでもいられない。
アルの髪を飲み込んだ小鳥は、ピ、ピ……と小首をかしげていたが、やがてアルの繊維が身に馴染んだらしく、意思の疎通が可能になった。
中庭に連なる木々の合間を飛ばして、そこかしこを探ってもらう。
そして、アルは程なくして、目当てのローズを見つけた。
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