婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド

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どうして

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そうだ、塔に近づこうとして弾かれたなんて言っていた。
防犯の仕掛けは施してあるかもしれないけど、そんな……近づく小動物を気絶……もしくは、悪意を伴って傷つけてしまうような。そんな恐ろしいまでのもの、使っていたかしら……
……そもそも、自分の屋敷のことをほとんど知らないのも問題だったんだけど。

『君のところの使用人が言うには、今は夫妻を共にして屋敷を離れているらしい。が……おそらく、未だ彼女はあの屋敷の敷地内にいる、と思う』

……本当かしら?それは、父がリリアと子爵を引き離したいだけなのかもしれないけど。

『それから……これは、関係があるのか分からないが』

「何か?」

『……何日か前から、嫌な気配がある。上手くは言えないが。それが、ちょうどリリアと会えなくなった日から増している感覚があるんだ』

「嫌な気配……?」

『君の屋敷に隣接している森があるだろう。あそこから漏れる邪気みたいなものが……色濃くなっているような気がする』

「森から、」

息を飲んだ。その森では、魔獣が発生する。
魔石の原料になるからと言って、わたしがずっと間引いて来たけれど。わたしが領地を出てしまったことで、何か……歯止めのようなものが外れている……?
わたしは、この追放も婚約破棄もすべて父が了承済みだと思ってた。だから、当然替えの人物も用意していたと思っていたけど……でもそうじゃなかった。

「お、お父様は……何て言っていたの?あなたが計画したんでしょう、わたしを追い出すことを。父に何と言って、父は何と言ったの。魔石は、浄化係はどうなってるの?」

『それは……』

矢次早に浮かんだことを口にすると、次から次へと不安が溢れている。

どうして、どうして。
目の前にいるのはどう見たってただの小鳥だ。でも、その小鳥が、子爵とつながっていて……子爵はセスティア管轄うちの領地にいて……
もどかしい。言葉だけじゃ何も感じ取ることが出来ない。
どうして今、領地にいるのがわたしじゃないの!?

キュゥ、と。
何かがねじれる音がして、目の前に光があふれた。




「……へ?」

目の前の空気がぐにゃっとねじれて、ぎざぎざした輪郭の光の輪が空間をこじ開けるみたいに開いていく。そこにいたのは、ブラン子爵だった。

「はっ!?」

向こうは向こうでめちゃくちゃ驚いてるのが分かるけど、それどころじゃなくて……
子爵の後ろ!あれ、きっとどこかの……うちの領地の宿屋!

「その部屋、どこの!?」

「い、一番街通りの宿だ!セスティア家の屋敷から、ほど近い……っ」

それを聞いてわたしは迷うことなく、光の輪に飛び込んだ。

「おい!」

アストが叫んでいるのが、頭の後ろの方で聞こえた。
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