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【doll#7】亮の本心
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※今回は亮視点のお話です。
玲司が訳のわからない幼馴染に大分入れ込んでいるらしいと葵から聞いた時は、正直チャンスだと思った。そのまま取られちまえば良いとも。
でも・・
「ほら葵、学校行くぞ」
玄関先でへたりこんでしまった葵に声をかけた。
「・・・」
トラウマ級の学校にはそりゃ行きたくないだろう。でも葵をこのまま不登校にはさせられなかった。
「・・玲司の顔も見れるしさ。会いたいんだろ?」
ぱっと顔をあげ数秒迷ったものの、葵は立ち上がった。
チクリと胸が痛んだ。
俺は葵が哀しむ顔は見たくない。できる限り笑ってて欲しい。
だから玲司との仲を取り持つただの親友のフリを、今日も続ける。
本心では、どうにか上手いこと2人の仲を崩す隙を伺いながら・・
『あおの為なら』
学校に来てみれば、早々に厄介な奴に絡まれた。
ガタイが良くてむさ苦しい男。翼のことで、デカイ声で葵に絡むもんだから葵が萎縮しちまって。
「葵は何もしてねえよ!」
って俺が間に入ったが聞きやしねえ。
隣で、ハァ、ハァ・・と葵の息が上がっていくのが分かる。下手するとまた呼吸がおかしくなるぞ。
もう俺はさっさとカタをつけるべく、男のすぐ脇の木をかなり強めに蹴って揺らした。
ミシィ・・ッ!と木が軋む。
『これ本当に当てられてたらやばかった』と認識して貰えたのだろう。相手の顔は蒼白だった。
「・・今度から葵じゃなくて、話があるなら俺に言ってくれな。まあそん時は何も手加減しないけど」
そう言うと、相手は無言で頷いた。
理不尽なイチャモンは、同じく理不尽な力で黙らせるに限るな。
空手で段を持ってて本当に良かった。
周りに随分遠巻きに見られているが、別に俺は構わない。
『翼のことで葵に絡むと、何故か亮に蹴られるらしい』
って噂でも広まってくれる方が葵のためだからな。
鞄を持ち直してと・・授業に行くか。だるいな。
さて葵は・・と振り返るとアイツはただただ目を丸くしていた。それすら(可愛い)と思ってしまった俺は相当だった。
久しぶりの教室で、葵と並んで座る。
教科書忘れちったから見せてとか嘘ついてみる。いつもの邪魔者がいないので俺は満足だった。
葵と一緒だったらこういう大学生活も悪くねえなあ。別にテストにしか興味はないけれど、玲司と終わってくれれば俺はあおちゃんと一緒に大学に通うぜ。
付き合ったら『あお』って呼ぶって内心勝手に決めてる。2文字呼びって何か可愛いから。
さてそんな日は俺にやってくるのか?なんて思っていたところで。
玲司がふと俺達の所にやってきた。
「葵・・ちょっと良いか」
葵がパッとほんのり嬉しそうになったのは、俺は見過ごさなかった。
昼休みに、玲司は葵を連れてちょこっとどっかに抜けていった。
ここ最近のことで何か話をしてるんだろう。俺もついてっても良かったが、俺がいくと玲司をはっ倒しそうだからな。
理解ある親友のテイで2人を送り出した。
葵が戻ってくるまでの暇つぶしに携帯ゲームを起動する。大概のゲームには慣れてしまって、別に暇を潰せるほどでもないのだが。
カチャチャチャ!と激しくボタンを連打する。たまにうるせえって言われるやつ。オンライン上の誰かを倒しながら考える。
ー葵、大丈夫だろうか。
今どんな話をしているんだ?
可能性があるのは・・
1、俺が悪かった戻ってこい、か?
2、お前何で連絡よこさないんだよ、か?
3、翼の言い分ばかり聞いて悪かった、葵の言い分を聞かせてくれよ、か?
4、亮と付き合う気じゃないだろうな、か?
・・いや1と3はあり得ない気がする。そんなこと言える男だったら葵は家出してこないだろう。
とりあえず2から始まってちょこっと最後4に言及して終わり、みたいな感じか?
別にひび割れてもらう分には構わない。
それをまた俺が慰めるという構図が出来るからだ。我ながら性格悪いなとは思うけど。
どうか玲司と良い感じになりませんようにと祈ってたところで、葵が戻ってきた。
授業中、玲司と何話してたんだよとヒソヒソと聞いてみれば、大体俺の予想していた通りの答えが帰ってきた。
「・・ちゃんと返信しろ心配だろ、まさか亮と何かあるんじゃないだろうな、って言われちゃったよ」
へにゃ、と力なく笑う葵にグッときてしたのは内緒だ。
「んな訳ねえじゃん、なあ?アイツ大概だな」
なんて、どの口が言うんだか。
いいぞ玲司、その調子だ。俺はお前の援護なんてしたくないんだよ。
授業終わり。俺は考えあって葵を先に家に返した。それから人目につきやすい大学のカフェのテラスで適当に小型ゲーム機を起動した。
放課後2時間ほどそれをやり、そのまま葵の待つ家に帰る。これを連日ずっと続けた。
さて問題の金曜日。
俺はいつも通り葵と学校に来て、ややこしく絡んでくる奴を蹴散らし、そして放課後1人で大学のカフェでゲームをしていた。
葵に絡んでくるやつも最初に比べたら随分減った。そのうち残機も0になるだろう。そうなったら一安心だ。
だが俺にはやらなきゃならない大きな課題がある。
カフェで小一時間ほど待った。日が沈んで肌寒くなってきたが、奴は来ない。
俺の読み違いか?
一応もう少し粘ってみた、
2杯目のコーヒーを飲み干したころには、もう1時間経っていた。
今回は失敗か?
さすがにそろそろ今日は帰るかとゲーム機の電源を落とした時。
カサリとそばで紅葉を踏む音が聞こえた。
「・・!」
「ね、君亮くんだよね?」
この声は。
振り返ったら、秋の夕暮れを背景にやたらと美しい奴が立っていた。
「最近ここのカフェでよく見かけるって聞いて。
それでさ、葵のことでちょっと相談したいことがあるんだ。実はすごく心配してることがあって・・」
来た来た。狙い通りに、俺の獲物が。
「翼、だったよな?良いよ、実は俺もさアイツには困ってて誰かに相談したいなって思ってたんだよ。・・この後どっか2人で飯でも行く?」
内心(葵ごめん葵ごめん葵ごめん)と謝りつつ、嘘を撒いて引っ掛けた。
翼はちょっと驚いた後、良いよと快諾した。
これでようやく2人っきりだな、サイコパス野郎。
続く
玲司が訳のわからない幼馴染に大分入れ込んでいるらしいと葵から聞いた時は、正直チャンスだと思った。そのまま取られちまえば良いとも。
でも・・
「ほら葵、学校行くぞ」
玄関先でへたりこんでしまった葵に声をかけた。
「・・・」
トラウマ級の学校にはそりゃ行きたくないだろう。でも葵をこのまま不登校にはさせられなかった。
「・・玲司の顔も見れるしさ。会いたいんだろ?」
ぱっと顔をあげ数秒迷ったものの、葵は立ち上がった。
チクリと胸が痛んだ。
俺は葵が哀しむ顔は見たくない。できる限り笑ってて欲しい。
だから玲司との仲を取り持つただの親友のフリを、今日も続ける。
本心では、どうにか上手いこと2人の仲を崩す隙を伺いながら・・
『あおの為なら』
学校に来てみれば、早々に厄介な奴に絡まれた。
ガタイが良くてむさ苦しい男。翼のことで、デカイ声で葵に絡むもんだから葵が萎縮しちまって。
「葵は何もしてねえよ!」
って俺が間に入ったが聞きやしねえ。
隣で、ハァ、ハァ・・と葵の息が上がっていくのが分かる。下手するとまた呼吸がおかしくなるぞ。
もう俺はさっさとカタをつけるべく、男のすぐ脇の木をかなり強めに蹴って揺らした。
ミシィ・・ッ!と木が軋む。
『これ本当に当てられてたらやばかった』と認識して貰えたのだろう。相手の顔は蒼白だった。
「・・今度から葵じゃなくて、話があるなら俺に言ってくれな。まあそん時は何も手加減しないけど」
そう言うと、相手は無言で頷いた。
理不尽なイチャモンは、同じく理不尽な力で黙らせるに限るな。
空手で段を持ってて本当に良かった。
周りに随分遠巻きに見られているが、別に俺は構わない。
『翼のことで葵に絡むと、何故か亮に蹴られるらしい』
って噂でも広まってくれる方が葵のためだからな。
鞄を持ち直してと・・授業に行くか。だるいな。
さて葵は・・と振り返るとアイツはただただ目を丸くしていた。それすら(可愛い)と思ってしまった俺は相当だった。
久しぶりの教室で、葵と並んで座る。
教科書忘れちったから見せてとか嘘ついてみる。いつもの邪魔者がいないので俺は満足だった。
葵と一緒だったらこういう大学生活も悪くねえなあ。別にテストにしか興味はないけれど、玲司と終わってくれれば俺はあおちゃんと一緒に大学に通うぜ。
付き合ったら『あお』って呼ぶって内心勝手に決めてる。2文字呼びって何か可愛いから。
さてそんな日は俺にやってくるのか?なんて思っていたところで。
玲司がふと俺達の所にやってきた。
「葵・・ちょっと良いか」
葵がパッとほんのり嬉しそうになったのは、俺は見過ごさなかった。
昼休みに、玲司は葵を連れてちょこっとどっかに抜けていった。
ここ最近のことで何か話をしてるんだろう。俺もついてっても良かったが、俺がいくと玲司をはっ倒しそうだからな。
理解ある親友のテイで2人を送り出した。
葵が戻ってくるまでの暇つぶしに携帯ゲームを起動する。大概のゲームには慣れてしまって、別に暇を潰せるほどでもないのだが。
カチャチャチャ!と激しくボタンを連打する。たまにうるせえって言われるやつ。オンライン上の誰かを倒しながら考える。
ー葵、大丈夫だろうか。
今どんな話をしているんだ?
可能性があるのは・・
1、俺が悪かった戻ってこい、か?
2、お前何で連絡よこさないんだよ、か?
3、翼の言い分ばかり聞いて悪かった、葵の言い分を聞かせてくれよ、か?
4、亮と付き合う気じゃないだろうな、か?
・・いや1と3はあり得ない気がする。そんなこと言える男だったら葵は家出してこないだろう。
とりあえず2から始まってちょこっと最後4に言及して終わり、みたいな感じか?
別にひび割れてもらう分には構わない。
それをまた俺が慰めるという構図が出来るからだ。我ながら性格悪いなとは思うけど。
どうか玲司と良い感じになりませんようにと祈ってたところで、葵が戻ってきた。
授業中、玲司と何話してたんだよとヒソヒソと聞いてみれば、大体俺の予想していた通りの答えが帰ってきた。
「・・ちゃんと返信しろ心配だろ、まさか亮と何かあるんじゃないだろうな、って言われちゃったよ」
へにゃ、と力なく笑う葵にグッときてしたのは内緒だ。
「んな訳ねえじゃん、なあ?アイツ大概だな」
なんて、どの口が言うんだか。
いいぞ玲司、その調子だ。俺はお前の援護なんてしたくないんだよ。
授業終わり。俺は考えあって葵を先に家に返した。それから人目につきやすい大学のカフェのテラスで適当に小型ゲーム機を起動した。
放課後2時間ほどそれをやり、そのまま葵の待つ家に帰る。これを連日ずっと続けた。
さて問題の金曜日。
俺はいつも通り葵と学校に来て、ややこしく絡んでくる奴を蹴散らし、そして放課後1人で大学のカフェでゲームをしていた。
葵に絡んでくるやつも最初に比べたら随分減った。そのうち残機も0になるだろう。そうなったら一安心だ。
だが俺にはやらなきゃならない大きな課題がある。
カフェで小一時間ほど待った。日が沈んで肌寒くなってきたが、奴は来ない。
俺の読み違いか?
一応もう少し粘ってみた、
2杯目のコーヒーを飲み干したころには、もう1時間経っていた。
今回は失敗か?
さすがにそろそろ今日は帰るかとゲーム機の電源を落とした時。
カサリとそばで紅葉を踏む音が聞こえた。
「・・!」
「ね、君亮くんだよね?」
この声は。
振り返ったら、秋の夕暮れを背景にやたらと美しい奴が立っていた。
「最近ここのカフェでよく見かけるって聞いて。
それでさ、葵のことでちょっと相談したいことがあるんだ。実はすごく心配してることがあって・・」
来た来た。狙い通りに、俺の獲物が。
「翼、だったよな?良いよ、実は俺もさアイツには困ってて誰かに相談したいなって思ってたんだよ。・・この後どっか2人で飯でも行く?」
内心(葵ごめん葵ごめん葵ごめん)と謝りつつ、嘘を撒いて引っ掛けた。
翼はちょっと驚いた後、良いよと快諾した。
これでようやく2人っきりだな、サイコパス野郎。
続く
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