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第二十二話~生贄の少女と悪魔4~
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俺はとっさにティーナを取り押さえる。ティーナはうめき声をあげて、手に持ったナイフでミーナに襲いかかろうと暴れた。
すでに人間としての品性のかけらもなくなっていて、まるで獣のようなうめき声をあげる。
あの悪魔はこの光景を見て、笑った。楽しそうに、それはもう楽しそうに。
ふざけるな、何を笑っている。
イラつきながらも、ティーナを押さえつけることに成功する。
「がああっぁあああぁぁぁあ」
「ティ、ティーナ……」
「来るなっ! 今は正気じゃない。近づくと怪我をするぞ」
「で、でも」
「いいからここは俺に任せろ」
手がかゆくなってくるのを感じる。こんな時に蕁麻疹が出てくる不甲斐ない自分に腹が立つ。
痒さは女性にふてれいる時に起こる、気持ち悪さを我慢しながら、懐から聖水を取り出した。
もし、この聖水が本物だとして、ティーナが悪魔に操られているような状況なら、効き目があるだろう。
俺は聖水をかけよと思って、躊躇した。
もし、この聖水だけが悪魔に対して有効なものだったとして、これをティーナに使った後、俺はどうやって悪魔を退治すればいいのだろうか。
聖水は一本しかない。
でも、俺の迷いは一瞬で吹き飛ぶ。操られて、奇声をあげながらもティーナは涙を流していた。
口ではひどいことを言っているけど、この涙が本心を語っているように見えた。
俺は迷わずティーナに聖水を使うと、暴れるのをやめて、気を失った。
静かな寝息をするティーナを床に寝かせると、ミーナが寄って来て、ティーナの手を強く握る。
悪魔は俺たちを見てけたけたと笑っていた。すごく楽しそうに笑っていた。
「あははは、そう来るか。なるほどなるほど。私としてはぶすっとやってほしかったんだけどなー」
「お前っ」
「っぷ、怒ったその顔、ウケるんですけど」
俺は懐から剣を構えた。魔物を切ることは出来た。あいつも形こそ人間だが、村をさまよっていた化け物と同じだ。あいつとなら、俺は戦える。
「あれ、私と戦うんですか。やめたほうがいいと思いますけどっ!」
「うるさい。人を平気で陥れて楽しむ悪魔にかける情けはない」
「あなたは神を信じるか?」
突然問われた意味が分からなかった。
「私は神から切り捨てられてここにいる。何のために生まれたのか分からない。好きなことをして、好きな風に生き、人生、いや悪魔生か? まあいいや。それを謳歌している。私は切り離されるときに、一つの意味を与えられたの」
「意味?」
「そう、生きる意味。私という存在の意義。私は、死ぬために生まれたの。私を捨てたあれが、願いを叶えるために生み出された道具。君からはアレの存在を感じる。あなたは神を信じているの。それとも、あれを知っている?」
やっぱり、こいつもあの得体のしれない何かを知っている。というよりも、こいつ自信が得体のしれない何かの一部だと言っているようなものだ。
やっぱり……。
「俺はアレを知っている。あいつにこの場所に送り出されたようなものだ」
「なるほど。だったら、私が生きるのもここまでってことですね。ああ、結構楽しかったんだけどなー」
「どういうことだ」
「いやね、割と楽しんでたよ。人の不幸は蜜の味ってね。でも、ほらさ。私はアレに死ぬために作られたんだよ。君に殺されて、ハイ終わり。でもどうせだったら最後にでかい花火でもあげたいよね」
「花火?」
「だって、君が死んじゃったら、あれはどんな顔をするんだろうってねっ!」
悪魔が突然俺に迫ってきた。突然の動きに反応できず、俺は悪魔に押し倒される。また、身に着けていた武器が
そして悪魔は俺の首に手をかけた。
じわじわと手に力が加わり、首が絞められていく。
「ねぇ、これでもし君が死んじゃったら、あいつはどんな気持ちになるんだろうねっ」
「がはぁ……」
苦しい、この状況をどうにかしなければ、だけど押し倒された時に、武器を手放してしまったので、この状況を打破できない。
このまま殺される、そう思った時だった。
「だぁ!」
ミーナが悪魔の後ろから剣を横薙ぎした。剣が悪魔の頭に当たり、その勢いで俺の上から吹っ飛んで転がった。
「ん、お、あれ? いったいどうなった?」
ダメージは入っていないようだったが、いきなり吹っ飛ばされたことによって悪魔は混乱する。その間に、俺は手放してしまった武器を拾い上げ、悪魔に切りかかった。
「……あ」
すごく間抜けそうな声が聞こえる。俺はアレに変な祝福を受けていた。
こいつは、人を騙し不幸にする。それは許されないことだと思っている。だけど、こいつの存在そのものが、なんとなく哀れに見えた。
悪魔は剣をかわすことが出来ず、そのまま切られてしまう。
それでも、まるでダメージ入っているようには見えなかった。だけど……。
「あーあ、一撃入っちゃった。これで私はおしまい。あんたも哀れなものね。あれに魅入られてしまったんですもの。私は先にいってるから、まぁ頑張って」
悪魔はそう言い残すと、体が砂になり、風に飛ばされて消えてしまった。
「奏太っ! 大丈夫?」
「それよりティーナは……」
「ティーナの方は大丈夫。というより、一番危なかったのは奏太でしょうっ。殺されかけてたじゃない」
「いや、あれは、その……」
「でも、一撃で倒してしまうなんて、やっぱりイディア教の使徒様なんだわ。すごい……」
「あれは、えっと」
ミーナにうまく説明できなかったが、まあいいだろう。俺達は、何とか悪魔を撃退することが出来た。
あの悪魔を倒して、数日が経った頃。
俺たちはカルディナ村にいた。
あの悪魔を倒してから、魔物の存在は見えなくなった。
あの異常発生は、あの悪魔がやったことだったらしい。
まあ考えてみれば当たり前か。そのほうが悪行ポイント溜まりそうだしな。
んで、それを一撃で倒したということになっている俺は神イディアの使徒として、この辺り全域に広まってしまった。
外を出るたびに、「使徒様ー」なんて言われて、なんだか恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。
まあなんというか、悪魔を倒したことによって、俺はこの地域での信仰を集めることに成功したようだ。
俺は、自分の荷物をまとめて、ミーナとティーナのところに顔を出す。
「ねえ奏太。やっぱり行っちゃうの」
「まあ、偉大なる神様の使命やらなんやらがあるからね。それに、俺はなんとしても成し遂げたい目的がある」
「そっか、行っちゃうんだ。ティーナ、準備はいい?」
「うん、ばっちりだよお姉ちゃんっ」
「え、ちょ、二人とも、何をしているのっ」
「何って、戸締り?」
「あと荷物整理っ!」
「いやいや、そういうことじゃなくて」
「もう、見てわからないの。あなたについていくって言ってるの。一人じゃ大変でしょう? 一緒に行く仲間でもいれば助かるんじゃない」
「今ならお買い得で妹までついてついてきますっ」
ミーナとティーナは、爛々と目を輝かせて俺を見つめて来た。
こりゃ断っても、ついてきそうだな。しゃあない。
「わかったわかった」
「「やったっ」」
「だけど結構大変な旅になるぞ」
「奏太と一緒なら大丈夫」
「お姉ちゃんはともかく、私は家事全般を一通り出来るので役に立つと思いますよ。泥船に乗ったつもりでいてくださいっ」
笑顔でそんなこと言われても困る。せめて泥船はやめて……。
そんな冗談はさておいて、二人は絶対についていくという意志を曲げるようなことはないようだ。
「よし、いくか」
「「うんっ」」
俺は神の使徒として、この世界にやってきた。神と自称する得体のしれない何かに、幼馴染を人質に取られ、意味の分からない要望を叶えるため、この世界にやってきた。
まだあの得体のしれない何かの願いを叶えられていないし、幼馴染の唯奈を助けられてもいない。
だから俺は旅に出る。信仰を集めるにしても何をすればいいのか分からない。
けど、俺は絶対にあいつを救う必要があるから、唯奈を助けるその日まで、俺の旅路は終わらない。
すでに人間としての品性のかけらもなくなっていて、まるで獣のようなうめき声をあげる。
あの悪魔はこの光景を見て、笑った。楽しそうに、それはもう楽しそうに。
ふざけるな、何を笑っている。
イラつきながらも、ティーナを押さえつけることに成功する。
「がああっぁあああぁぁぁあ」
「ティ、ティーナ……」
「来るなっ! 今は正気じゃない。近づくと怪我をするぞ」
「で、でも」
「いいからここは俺に任せろ」
手がかゆくなってくるのを感じる。こんな時に蕁麻疹が出てくる不甲斐ない自分に腹が立つ。
痒さは女性にふてれいる時に起こる、気持ち悪さを我慢しながら、懐から聖水を取り出した。
もし、この聖水が本物だとして、ティーナが悪魔に操られているような状況なら、効き目があるだろう。
俺は聖水をかけよと思って、躊躇した。
もし、この聖水だけが悪魔に対して有効なものだったとして、これをティーナに使った後、俺はどうやって悪魔を退治すればいいのだろうか。
聖水は一本しかない。
でも、俺の迷いは一瞬で吹き飛ぶ。操られて、奇声をあげながらもティーナは涙を流していた。
口ではひどいことを言っているけど、この涙が本心を語っているように見えた。
俺は迷わずティーナに聖水を使うと、暴れるのをやめて、気を失った。
静かな寝息をするティーナを床に寝かせると、ミーナが寄って来て、ティーナの手を強く握る。
悪魔は俺たちを見てけたけたと笑っていた。すごく楽しそうに笑っていた。
「あははは、そう来るか。なるほどなるほど。私としてはぶすっとやってほしかったんだけどなー」
「お前っ」
「っぷ、怒ったその顔、ウケるんですけど」
俺は懐から剣を構えた。魔物を切ることは出来た。あいつも形こそ人間だが、村をさまよっていた化け物と同じだ。あいつとなら、俺は戦える。
「あれ、私と戦うんですか。やめたほうがいいと思いますけどっ!」
「うるさい。人を平気で陥れて楽しむ悪魔にかける情けはない」
「あなたは神を信じるか?」
突然問われた意味が分からなかった。
「私は神から切り捨てられてここにいる。何のために生まれたのか分からない。好きなことをして、好きな風に生き、人生、いや悪魔生か? まあいいや。それを謳歌している。私は切り離されるときに、一つの意味を与えられたの」
「意味?」
「そう、生きる意味。私という存在の意義。私は、死ぬために生まれたの。私を捨てたあれが、願いを叶えるために生み出された道具。君からはアレの存在を感じる。あなたは神を信じているの。それとも、あれを知っている?」
やっぱり、こいつもあの得体のしれない何かを知っている。というよりも、こいつ自信が得体のしれない何かの一部だと言っているようなものだ。
やっぱり……。
「俺はアレを知っている。あいつにこの場所に送り出されたようなものだ」
「なるほど。だったら、私が生きるのもここまでってことですね。ああ、結構楽しかったんだけどなー」
「どういうことだ」
「いやね、割と楽しんでたよ。人の不幸は蜜の味ってね。でも、ほらさ。私はアレに死ぬために作られたんだよ。君に殺されて、ハイ終わり。でもどうせだったら最後にでかい花火でもあげたいよね」
「花火?」
「だって、君が死んじゃったら、あれはどんな顔をするんだろうってねっ!」
悪魔が突然俺に迫ってきた。突然の動きに反応できず、俺は悪魔に押し倒される。また、身に着けていた武器が
そして悪魔は俺の首に手をかけた。
じわじわと手に力が加わり、首が絞められていく。
「ねぇ、これでもし君が死んじゃったら、あいつはどんな気持ちになるんだろうねっ」
「がはぁ……」
苦しい、この状況をどうにかしなければ、だけど押し倒された時に、武器を手放してしまったので、この状況を打破できない。
このまま殺される、そう思った時だった。
「だぁ!」
ミーナが悪魔の後ろから剣を横薙ぎした。剣が悪魔の頭に当たり、その勢いで俺の上から吹っ飛んで転がった。
「ん、お、あれ? いったいどうなった?」
ダメージは入っていないようだったが、いきなり吹っ飛ばされたことによって悪魔は混乱する。その間に、俺は手放してしまった武器を拾い上げ、悪魔に切りかかった。
「……あ」
すごく間抜けそうな声が聞こえる。俺はアレに変な祝福を受けていた。
こいつは、人を騙し不幸にする。それは許されないことだと思っている。だけど、こいつの存在そのものが、なんとなく哀れに見えた。
悪魔は剣をかわすことが出来ず、そのまま切られてしまう。
それでも、まるでダメージ入っているようには見えなかった。だけど……。
「あーあ、一撃入っちゃった。これで私はおしまい。あんたも哀れなものね。あれに魅入られてしまったんですもの。私は先にいってるから、まぁ頑張って」
悪魔はそう言い残すと、体が砂になり、風に飛ばされて消えてしまった。
「奏太っ! 大丈夫?」
「それよりティーナは……」
「ティーナの方は大丈夫。というより、一番危なかったのは奏太でしょうっ。殺されかけてたじゃない」
「いや、あれは、その……」
「でも、一撃で倒してしまうなんて、やっぱりイディア教の使徒様なんだわ。すごい……」
「あれは、えっと」
ミーナにうまく説明できなかったが、まあいいだろう。俺達は、何とか悪魔を撃退することが出来た。
あの悪魔を倒して、数日が経った頃。
俺たちはカルディナ村にいた。
あの悪魔を倒してから、魔物の存在は見えなくなった。
あの異常発生は、あの悪魔がやったことだったらしい。
まあ考えてみれば当たり前か。そのほうが悪行ポイント溜まりそうだしな。
んで、それを一撃で倒したということになっている俺は神イディアの使徒として、この辺り全域に広まってしまった。
外を出るたびに、「使徒様ー」なんて言われて、なんだか恥ずかしい気持ちでいっぱいだ。
まあなんというか、悪魔を倒したことによって、俺はこの地域での信仰を集めることに成功したようだ。
俺は、自分の荷物をまとめて、ミーナとティーナのところに顔を出す。
「ねえ奏太。やっぱり行っちゃうの」
「まあ、偉大なる神様の使命やらなんやらがあるからね。それに、俺はなんとしても成し遂げたい目的がある」
「そっか、行っちゃうんだ。ティーナ、準備はいい?」
「うん、ばっちりだよお姉ちゃんっ」
「え、ちょ、二人とも、何をしているのっ」
「何って、戸締り?」
「あと荷物整理っ!」
「いやいや、そういうことじゃなくて」
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「今ならお買い得で妹までついてついてきますっ」
ミーナとティーナは、爛々と目を輝かせて俺を見つめて来た。
こりゃ断っても、ついてきそうだな。しゃあない。
「わかったわかった」
「「やったっ」」
「だけど結構大変な旅になるぞ」
「奏太と一緒なら大丈夫」
「お姉ちゃんはともかく、私は家事全般を一通り出来るので役に立つと思いますよ。泥船に乗ったつもりでいてくださいっ」
笑顔でそんなこと言われても困る。せめて泥船はやめて……。
そんな冗談はさておいて、二人は絶対についていくという意志を曲げるようなことはないようだ。
「よし、いくか」
「「うんっ」」
俺は神の使徒として、この世界にやってきた。神と自称する得体のしれない何かに、幼馴染を人質に取られ、意味の分からない要望を叶えるため、この世界にやってきた。
まだあの得体のしれない何かの願いを叶えられていないし、幼馴染の唯奈を助けられてもいない。
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