稼業が嫌で逃げだしたら、異世界でのじゃロリ喋る妖刀を拾いました

日向 葵

文字の大きさ
7 / 77
稼業が嫌で逃げたらそこは異世界だった

7.外、そして仲間

しおりを挟む
 のじゃロリにも、このリセとかいう変態女にもからかわれて、俺は心が俺そうだった。鬼と戦う時も冷静でいられた……いや、あれを冷静と言っていいのか分からないが、それでもちゃんと戦えてた俺だけど今回ばかりはダメだ。

「ねえ、まだ恥ずかしがってんの。もう、だらしないわね。女神である私が直接声をかけてあげてるんだから、ちょっとはこっちを向いたらどうなの」

『ぷぎゃあああ、報いじゃ、儂をあんな生臭いところに突っ込んだ報いを受けたのじゃ』

 俺はのじゃロリを地面にたたきつけて、再び拾った。

『ぷぎゃ、なぜじゃ、なぜ儂だけ……』

「うるせぇ、こんな恥ずかしい思いをしてるの、お前の余計な一言のせいじゃねえか」

『のじゃ、別に悪いことはしてないからセーフなのじゃ』

 俺とのじゃロリが馬鹿な言い争いをしているところに、リセが近寄る。

「もう、楽しそうなお話しちゃって。私を仲間外れにしないで。私を構ってよ」

「ああ、分かったよ。とりあえず俺たちは外に出たいんだ。でもその前に、あれどうする。お前の仲間だろう」

 俺はゴブリンたちに殺された死体を指して言った。この女、仲間を殺されてるくせに涙一つ流さないで、ヘラヘラ笑ってやがる。ちょっとヤバい女なんじゃないだろうか。そう思えてならない。
 やっぱり逃げるか? うーん、判断に迷う。

「ああ、大丈夫。あれはほっといていいわ。女神である私にゴブリンを押し付けて逃げようだなんて、最低極まりない。死んで当然よっ」

「どうやって埋葬……って、え? あいつら仲間じゃないの」

「そうよ、私に仲間なんていないもの。だって、私が美しい女神だから」

『女神が何なのか知らんが、リセといったかのう。お主から神聖な力なんてなんも感じんのじゃ。リセはただの人間なのじゃ』

「ち、違うもん、私、女神だもんっ」

「まあとりあえず、落ち着け。ちょっと話を整理しよう」

 のじゃロリに女神であることを否定された自称女神はなかなか落ち着きを取り戻さない。正直うざい。まあでも、幼馴染の飛鳥もこんな感じで、時々慌てふためいてうざい感じあったしな。そう思うとこいつは飛鳥に似ている。あいつ元気にしてるかな。

「んで、あいつらは仲間じゃないのか? じゃあなんでお前はあいつらと一緒に」

「一緒にじゃない。私ってば女神だから、仲間になってくれる人が誰もいないの。だからいつものように一人でダンジョンに入ったら叫び声が聞こえて……ゴブリンに追われてる
あいつらが現れた」

 なるほど……敵を押し付けられたのか。それは災難だったな。

「ゴブリンたちは、私をちらっと見たから言ってやったわ。私は女神、崇めなさいと」

 ゴブリンにそんなこと言っても言葉分からないだろう。馬鹿なのか、ある意味大物なのか。

「ちょっと、女神に向かって馬鹿って失礼じゃないっ!」

「な、なんで分かった」

『諸刃は表情でわかりやすいのじゃ』

「そうそう、あなた表情に出すぎ。馬鹿にしないで。私は女神なんだから、あやまって、今すぐあやまってよっ」

「くそめんどくせえビッチだな、おい」

「あー、私のことビッチって言ったっ! 違うもん、私まだ処女だもん、ばーかばーか」

 自分が今、何を口走って言ってしまったのかを途中で理解したリセは、ちょっと顔が真っ赤になった。んで、真っ赤になりながら、恥ずかしさをごまかすように、俺のことを「ばーかばーか、変態、死ね」とののしってくる。
 ちょっと待て、なぜ俺がそこまで言われなければならない。納得いかない。

「あ、もう、分かった。ゴメンって。んで、続きは?」

「心がこもってないけど、まあいいわ。私を構ってくれる唯一の人間だから許してあげる」

 どれだけボッチなんだよ、こいつ。

「私はゴブリンに言ってやったわ。私は女神って」

『そこから始まるのか……。つらいのじゃ』

「まあそこは我慢しようぜ。なんだか楽しそうに語ってるから」

『そうじゃのう。生暖かい目で見守ってやるのが儂らの務めか』

「ちょっと二人とも、アレ、刀は一人でいいんだっけ? まあいいわ。ごちゃごちゃ言わないで私の話を訊きなさいっ」

 別にこいつと喧嘩をしているつもりはないんだけどな。だけど何だろう、なんでこいつ、こんなに楽しそうに話しているんだろうか。あれか、ボッチ過ぎた弊害とか、実は一人じゃ生きられないけどトラブルメーカーだからわざと距離置いてる的な人種か? 後者だったらめんどくさいな。

「聞く姿勢ができたならよろしい。んで、ゴブリンなんだけど、私を一瞬見て戸惑い、元々追っていた冒険者をターゲットにしたっぽい。追われてた冒険者が、そんな、馬鹿なっ、って言ってたから多分そう。そして、私にゴブリンを押し付けようとした冒険者たちが殺された後、ゴブリンが私を襲おうとしたわけ。その時に諸刃たちがやってきたということよ」

 なるほど、直感でこいつの頭の中のヤバさを感じ取ったのか。ゴブリンめ、なかなかやるではないか。敵ながらあっぱれじゃ。

『諸刃よ、なかなか最低なことを考えるのう』

「頼むから心の中を読むのをやめてくれ」

「え、何、二人とも私のこと馬鹿にしてるの。この女神に対して、馬鹿にしてるのっ! で、でも、構ってくれるなら許してあげる」

 くそめんどくせー女につかまったと思った。この時、俺とのじゃロリの気持ちは完全に一致していたと思う。だってこいつ、『くそめんどくさいのじゃー』って言ってたし。



 ある程度情報共有したところで、俺たちは外を目指した。そして一刻も早く、このリセという女と縁を切りたい。なんでかな、たまに漫画とかで出てくる、ヤンデレとか、そんな風な人種に見えるんだよね。ボッチこじらせすぎて誰かと一緒にいたいけど入れなかった子が、自分を構ってくれる人を見つけてなついちゃった的な。まさしくそんな状況なわけだけどさ。

「もーろはっ!」

 突然リセが近寄り、名前を呼んでくる。俺はそっけなく「なんだよ」と返すと「へへ、呼んだだけ」なんてふざけたことを言ってくる。
 まあ、こんな可愛くてきれいな女の子になつかれて、うれしくないわけじゃないんだけど……。やっぱり、こう、ボッチとヤンデレこじらせた感じ、そして自分のことを女神と言っちゃう感じが、とにかく不安だ。

「諸刃、あっち見て。もうすぐ外だよ」

『ほう、アレが外か。初めて見るのじゃ』

「のじゃロリはずっとヒッキーだったの?」

『いや、別にヒッキーという訳じゃないのじゃ。ただ、作られただけで外に出る機会がなかっただけなのじゃ』

「複雑な家庭事情?」

『そんな感じなのじゃ。リセよ。お主なかなかわかるのう。どっかの馬鹿垂れとは大違いじゃ』

 イラっとしたので、俺はわざとごつごつした岩にのじゃロリをぶつけた。

『うべぇ、そういうところが可愛くないのじゃっ!』

「俺なりの照れ隠しとでも思ってくれ」

『うぬぬ、しかたないのう』

 と、馬鹿な話をしている間に、気が付いたら出口までたどり着いた。日の光を感じながら、俺は一歩、外に出る。うっそうと茂った森、後ろを向くと、ザ・ダンジョン的な外見の洞窟。まさに異世界って感じがした。

「やっと出れたっ。諸刃、町はあっちよ」

「そんじゃさっさといくか」

『ゆっくりした場所で手入れをしてほしいのじゃ。まだ若干生臭いのじゃ……」

「あ、待って諸刃」

 俺はリセに呼び止められ、後ろを振り向く。というか、お前が前を歩かないと町がどこだか分からないのだが。

「諸刃、その、あのね」

「なんだよ急に。どうした」

「私とパーティー組んでほしいのっ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...