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稼業が嫌で逃げたらそこは異世界だった
17.どうやら国全体でゴブリンが大量発生しているようですよ?
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飛鳥が委員長を断罪、というか討伐? してから数時間後。俺たちは再度委員長の家に集まった。
でっかい豪邸だと思ったら集会場みたいな使われ方をしていたようだ。俺たちと飛鳥達の前に、村長が立つ。
「この度はこの村のごたごたに付き合わせてしまい申し訳ありませんでした。私が、ソン・チョウと申します」
「改めて、俺は鬼月諸刃。ゴブリンの討伐依頼を受けた冒険者だ。んで、こいつが俺のパーティーメンバーのリセ」
「リセよ。女神なの。崇めなさい」
「という、ちょっと頭のネジが外れたとても残念な子だけど、優しく見守ってほしい」
「そうですか。おかわいそうに……。分かりました」
「え、ちょ、二人とも、私の扱いひどくないっ!」
わたわたするリセを横に、俺と村長はクスっと笑う。裏で合わせてもいないのにここまで合わせてくれるなんて、この村長、できる。きっと仲良くなれるかもしれない、そんなことを思った。
『のじゃ、儂の名は……』
「ああ、のじゃロリ、お前は少し黙ってろ」
『のじゃ! 儂も仲間じゃろうに、なぜ紹介せんのじゃ。リセは紹介しているのに不公平なのじゃ!』
いや、だって刀を紹介したってなぁ、どうしようもないと思うんだけ。というか、喋る刀を紹介しても意味ないし。別に良いだろう。
のじゃロリはとりあえず後で痛めつけるとして、今回は無視と言うことで。
『のじゃあああ、何か言ってほしいのじゃ』
そいうやって保護欲を刺激するような声で喚かないでほしい。リセがあたふたし始めたじゃないか、たく。
ちらりと飛鳥の方を見ると、こっちもどうしようか迷っている状態だった。こう、出るタイミングを間違えたような感じで、凄く困っている。あいつはすぐは思ったことがすぐ顔に出るところがあるからな。
仕方ないと思い、目で合図すると、飛鳥はコクリと頷いた。
俺と飛鳥のやり取りに気が付いた騎士っぽい男は、俺のことをじろりと睨む。うわぁ、こわっ。
「我らは王都よりゴブリン盗伐の為に派遣された勇者様のお供である。こちらにおられるのが我らが勇者、飛鳥様だ」
「ちょ、そんな恥ずかしい自己紹介しないでくれるっ!」
「ですが飛鳥様、こういうのは初めが肝心とおっしゃっていたではないですか」
「だって……諸刃がいるって思わなかったんだもんっ」
あ、今ので察した。こいつ、異世界に来てから好き勝手にやってたんだ。あれだ、一人でこっそりコスプレして、中二的な発言をしているところを親に見られて白い目で見られるのと同じ状況。中二病は消したい黒歴史だしな……。
こうなってしまうのも無理はない。
「勇者様、そして冒険者諸刃とその一行、よくおいでくださいました。この度はゴブリン盗伐の依頼を受けていただいてありがとうございます」
あれ、なんだろう、村長がまともな人間というか、子供だからスーパーキッズみたいに見えて来た。
「勇者様と冒険者の諸刃さんと依頼が被ってしまいましたが、我々がお願いしたいのは夜な夜な村を襲うゴブリンたちの討伐です。最近なんか増えてきてるみたいで」
「ええ、それは分かっています。ゴブリンの出現が全国的に増えていて、そのために陛下が勇者様を順次派遣しているのです」
へえ、そんなことになっていたのか。
俺が召喚された場所にもゴブリンいたと言うことを思い出した。あいつらは別にすごく強いという訳じゃない。むしろ雑魚な部類だと思う。だけど、雑魚でも数が多くなれば厄介になるものだ。
「それはありがたいです。最近はゴブリンの季節ですからね」
村長の一言に俺は首を傾げる。ゴブリンの季節って何? よく分からずリセに目線を送るとリセもよく分かっていないのか首を傾げていた。試しにのじゃロリにも思念を送ってみたら、鼻で笑われた。イラっとしたので後でお仕置きをしよう。
「不思議そうな顔をしていますが、冗談ですからね」
「え、あ、うん」
まあ分かっていたけどね。ゴブリンに季節なんてあるわけないし。でもこの中でリセに加えて一人、冗談だと思っていなかった奴がいた。
飛鳥、お前顔に出すぎだよ。唖然とした表情が全てを物語っているよ。
「試し切りの季節でもあるのかと思った……」
寂しそうな表情で凄い物騒なことを言っている。俺の幼馴染の闇の部分というか、なんというか、狂気? 見ちゃいけない部分を見たような気がする。
「季節どうのこうの冗談ですが、ゴブリンが大量発生しているのは事実ですね」
「あー、そういえばどの依頼もゴブリン盗伐だったな」
『のじゃ、どの依頼もじゃなくて、すべての依頼がゴブリン討伐だったのじゃ』
俺の記憶が正しければゴブリン盗伐以外の依頼もあったような気がするのだが……。
依頼の詳細を思い出そうとしていると、飛鳥のお供の一人がゴブリンの大量発生について肯定する。
「最近は全国的にゴブリンが増えていますので、こうして我々が派遣されているのです。まあ、今回は冒険者と被ってしまいましたが」
お供がそう言うと、飛鳥がぽんと手をたたいて、何か閃いたような表情を浮かべた。どうせろくでもないことを俺は知っている。こういう時、すごくめんどくさいことしか言わないんだよな。
「そうだ、全国的に大量発生しているなら担当地域をちゃんと決めて順番に討伐していけば問題ないんだわっ。地図持ってきて」
こいつは担当地域を誰と分ける気でいるのだろうか。まあ、なんとなく察しているが、察しているがっ!
飛鳥のお供がこの地図を持ってきて机の上に広げた。そして広げた地図にゴブリンの目撃情報を書き込んでいく。ゴブリンの情報が一つ、二つ、三つと増えていき、三桁超えたところで数えるのをやめた。
異常発生と聞いていたけど、本当に多いな。一体どこからそれだけのゴブリンが湧いてきているのだろうか。
飛鳥のお供がゴブリンの情報を書き終わったことを報告した。すると飛鳥はお供からペンを受け取って、地図の中心に直線をガッと引いた。
「諸刃、どっちがいい? 選ばせてあげる」
「いや選ばせてあげるって……」
地図を覗き見ると、若干片側の方が少なく見えた。こいつ、何も考えずに直線引きやがったな。
俺は「はぁ」とため息をはいた後、ゴブリンの出現情報が多く記載されている側を選んだ。こいつは俺の家の道場に通っていただけのただの女の子だ。剣術を学んでいても実践をしたことなんてない。
たとえゴブリンと言えども危険がないわけじゃないからな。まあ、こういう小さなことぐらいしかできないけど、飛鳥に降りかかる危険が少しでも減るのならいいかな。
「なんでっ! 諸刃なら私に多い方押し付けてくると思ったのにっ!」
「俺にどないせいっちゅうねん」
飛鳥の為にと思って、討伐数の多い方を選んだのに文句を言われるという理不尽。こいつ、異世界に来て、ちょっと強い力貰って、ヒャッハーでもしてたんじゃねって思ってしまう。というかしてただろう。そして敵を倒す快感にハマっていって…………どんなバトルジャンキーだっ。
「諸刃…………」
「どうしたリセ。そんな残念なモノでも見るような顔をして」
『学習せんのう……。すべて口に出しているのじゃ』
「……は?」
『じゃから、今思っていたことをすべて口に出しとると言っておるのじゃ。幼馴染がバトルジャンキーとか、笑えない冗談はちゃんと心の中にしまったほうが良いのじゃ。ほら、あっちで幼馴染殿が震えておるぞ』
ゆっくりと視線をずらす。飛鳥が生まれたての小鹿のようにプルプルと震えていた。その表情には、ちょっとだけ怒りのようなものが見えている。
「諸刃、こっち来て」
「え、なんで」
「いいからこっち来るっ!」
俺はその後、別室で色々と愚痴を聞かされる羽目になった。どうして俺がこんな目に。しかも話している内容がちょっとだけ理不尽な気がするのだが……。
ちなみに、その話し合いが終わったのは、太陽が一度沈み、再び顔を出した後だった。
でっかい豪邸だと思ったら集会場みたいな使われ方をしていたようだ。俺たちと飛鳥達の前に、村長が立つ。
「この度はこの村のごたごたに付き合わせてしまい申し訳ありませんでした。私が、ソン・チョウと申します」
「改めて、俺は鬼月諸刃。ゴブリンの討伐依頼を受けた冒険者だ。んで、こいつが俺のパーティーメンバーのリセ」
「リセよ。女神なの。崇めなさい」
「という、ちょっと頭のネジが外れたとても残念な子だけど、優しく見守ってほしい」
「そうですか。おかわいそうに……。分かりました」
「え、ちょ、二人とも、私の扱いひどくないっ!」
わたわたするリセを横に、俺と村長はクスっと笑う。裏で合わせてもいないのにここまで合わせてくれるなんて、この村長、できる。きっと仲良くなれるかもしれない、そんなことを思った。
『のじゃ、儂の名は……』
「ああ、のじゃロリ、お前は少し黙ってろ」
『のじゃ! 儂も仲間じゃろうに、なぜ紹介せんのじゃ。リセは紹介しているのに不公平なのじゃ!』
いや、だって刀を紹介したってなぁ、どうしようもないと思うんだけ。というか、喋る刀を紹介しても意味ないし。別に良いだろう。
のじゃロリはとりあえず後で痛めつけるとして、今回は無視と言うことで。
『のじゃあああ、何か言ってほしいのじゃ』
そいうやって保護欲を刺激するような声で喚かないでほしい。リセがあたふたし始めたじゃないか、たく。
ちらりと飛鳥の方を見ると、こっちもどうしようか迷っている状態だった。こう、出るタイミングを間違えたような感じで、凄く困っている。あいつはすぐは思ったことがすぐ顔に出るところがあるからな。
仕方ないと思い、目で合図すると、飛鳥はコクリと頷いた。
俺と飛鳥のやり取りに気が付いた騎士っぽい男は、俺のことをじろりと睨む。うわぁ、こわっ。
「我らは王都よりゴブリン盗伐の為に派遣された勇者様のお供である。こちらにおられるのが我らが勇者、飛鳥様だ」
「ちょ、そんな恥ずかしい自己紹介しないでくれるっ!」
「ですが飛鳥様、こういうのは初めが肝心とおっしゃっていたではないですか」
「だって……諸刃がいるって思わなかったんだもんっ」
あ、今ので察した。こいつ、異世界に来てから好き勝手にやってたんだ。あれだ、一人でこっそりコスプレして、中二的な発言をしているところを親に見られて白い目で見られるのと同じ状況。中二病は消したい黒歴史だしな……。
こうなってしまうのも無理はない。
「勇者様、そして冒険者諸刃とその一行、よくおいでくださいました。この度はゴブリン盗伐の依頼を受けていただいてありがとうございます」
あれ、なんだろう、村長がまともな人間というか、子供だからスーパーキッズみたいに見えて来た。
「勇者様と冒険者の諸刃さんと依頼が被ってしまいましたが、我々がお願いしたいのは夜な夜な村を襲うゴブリンたちの討伐です。最近なんか増えてきてるみたいで」
「ええ、それは分かっています。ゴブリンの出現が全国的に増えていて、そのために陛下が勇者様を順次派遣しているのです」
へえ、そんなことになっていたのか。
俺が召喚された場所にもゴブリンいたと言うことを思い出した。あいつらは別にすごく強いという訳じゃない。むしろ雑魚な部類だと思う。だけど、雑魚でも数が多くなれば厄介になるものだ。
「それはありがたいです。最近はゴブリンの季節ですからね」
村長の一言に俺は首を傾げる。ゴブリンの季節って何? よく分からずリセに目線を送るとリセもよく分かっていないのか首を傾げていた。試しにのじゃロリにも思念を送ってみたら、鼻で笑われた。イラっとしたので後でお仕置きをしよう。
「不思議そうな顔をしていますが、冗談ですからね」
「え、あ、うん」
まあ分かっていたけどね。ゴブリンに季節なんてあるわけないし。でもこの中でリセに加えて一人、冗談だと思っていなかった奴がいた。
飛鳥、お前顔に出すぎだよ。唖然とした表情が全てを物語っているよ。
「試し切りの季節でもあるのかと思った……」
寂しそうな表情で凄い物騒なことを言っている。俺の幼馴染の闇の部分というか、なんというか、狂気? 見ちゃいけない部分を見たような気がする。
「季節どうのこうの冗談ですが、ゴブリンが大量発生しているのは事実ですね」
「あー、そういえばどの依頼もゴブリン盗伐だったな」
『のじゃ、どの依頼もじゃなくて、すべての依頼がゴブリン討伐だったのじゃ』
俺の記憶が正しければゴブリン盗伐以外の依頼もあったような気がするのだが……。
依頼の詳細を思い出そうとしていると、飛鳥のお供の一人がゴブリンの大量発生について肯定する。
「最近は全国的にゴブリンが増えていますので、こうして我々が派遣されているのです。まあ、今回は冒険者と被ってしまいましたが」
お供がそう言うと、飛鳥がぽんと手をたたいて、何か閃いたような表情を浮かべた。どうせろくでもないことを俺は知っている。こういう時、すごくめんどくさいことしか言わないんだよな。
「そうだ、全国的に大量発生しているなら担当地域をちゃんと決めて順番に討伐していけば問題ないんだわっ。地図持ってきて」
こいつは担当地域を誰と分ける気でいるのだろうか。まあ、なんとなく察しているが、察しているがっ!
飛鳥のお供がこの地図を持ってきて机の上に広げた。そして広げた地図にゴブリンの目撃情報を書き込んでいく。ゴブリンの情報が一つ、二つ、三つと増えていき、三桁超えたところで数えるのをやめた。
異常発生と聞いていたけど、本当に多いな。一体どこからそれだけのゴブリンが湧いてきているのだろうか。
飛鳥のお供がゴブリンの情報を書き終わったことを報告した。すると飛鳥はお供からペンを受け取って、地図の中心に直線をガッと引いた。
「諸刃、どっちがいい? 選ばせてあげる」
「いや選ばせてあげるって……」
地図を覗き見ると、若干片側の方が少なく見えた。こいつ、何も考えずに直線引きやがったな。
俺は「はぁ」とため息をはいた後、ゴブリンの出現情報が多く記載されている側を選んだ。こいつは俺の家の道場に通っていただけのただの女の子だ。剣術を学んでいても実践をしたことなんてない。
たとえゴブリンと言えども危険がないわけじゃないからな。まあ、こういう小さなことぐらいしかできないけど、飛鳥に降りかかる危険が少しでも減るのならいいかな。
「なんでっ! 諸刃なら私に多い方押し付けてくると思ったのにっ!」
「俺にどないせいっちゅうねん」
飛鳥の為にと思って、討伐数の多い方を選んだのに文句を言われるという理不尽。こいつ、異世界に来て、ちょっと強い力貰って、ヒャッハーでもしてたんじゃねって思ってしまう。というかしてただろう。そして敵を倒す快感にハマっていって…………どんなバトルジャンキーだっ。
「諸刃…………」
「どうしたリセ。そんな残念なモノでも見るような顔をして」
『学習せんのう……。すべて口に出しているのじゃ』
「……は?」
『じゃから、今思っていたことをすべて口に出しとると言っておるのじゃ。幼馴染がバトルジャンキーとか、笑えない冗談はちゃんと心の中にしまったほうが良いのじゃ。ほら、あっちで幼馴染殿が震えておるぞ』
ゆっくりと視線をずらす。飛鳥が生まれたての小鹿のようにプルプルと震えていた。その表情には、ちょっとだけ怒りのようなものが見えている。
「諸刃、こっち来て」
「え、なんで」
「いいからこっち来るっ!」
俺はその後、別室で色々と愚痴を聞かされる羽目になった。どうして俺がこんな目に。しかも話している内容がちょっとだけ理不尽な気がするのだが……。
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