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公爵家ご令嬢は悪役になりたい!
35.たまにいる愉快な奴ら
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さて、ミーが何を始めたかを簡単に言うと、全方位に魔法をばかすか打ち始めやがった。周りにも被害が出ているが、幸いなことにまだ負傷者は出ていない。
飛鳥はリセとイリーナと協力して周りに被害が出ないように行動している。とはいっても、あいつらの方向に飛んで行っている魔法は、流れ弾みたいなもので、ほとんどの魔法は俺とアッシュに向けられていた。
俺たちが魔法無効化体質であるため、ぶっちゃけ効かないのだが、だからと言ってそのまま攻撃をくらうのに抵抗があるのは仕方のないことだと思う。俺は向かってくる魔法をのじゃロリで切って抵抗していた。アッシュも同じようにしているが、いつもより真剣な表情ですべての魔法を刀で切り裂いている。
『のじゃっ! 痛いのじゃっ! とてつもなく痛いのじゃっ!』
「わめくなのじゃロリ。魔法だろ? お前ならいける、大丈夫だっ」
「諸刃、気づいていないのか。だったら教えてやる」
「何言ってんだよアッシュ。気づいていないって」
「諸刃、雪合戦って知ってるか? 雪球をぶつけ合う遊びだ。魔族の住む国は主に北の方にあって寒いし、雪もよく降るからな。よくやるんだ」
何を唐突に語りだすんだこいつ。アッシュは真面目に話しているため、俺も黙って話を聞くことにした。
「その雪合戦の時に、雪玉に石を詰め込む奴が、たまにいる」
「ま、まさか……」
嫌な予感がした。確かに雪合戦で石を詰めるという愚行を犯す輩がたまにいる。子供だから分からなかったということもあるのだろうが、下手をすると死んでしまう恐れすらある行為だ。この学校に入学するほど優秀な奴だからそんなことはしないと思いたい。だけど俺の予想が外れることはなかった。
「あいつは雪玉に石を詰め込んで全力投球してくる奴だ。あいつのせいで何人の怪我人が出たことか。それに、石とか物を詰め込む癖は雪玉だけじゃない。魔法にも詰め込まれているんだよっ」
「そういえば、さっきから何かを切っている感覚があった!」
のじゃロリが痛いというのも納得ができた。あの魔法には石のような何かが詰め込まれている。魔法という名の物理攻撃だった。
「アンタたちに魔法が効かないのは分かってるのよ。でも魔法に物理的な攻撃を混ぜたらどうかしら?」
「っち、めんどくさいなこれ」
魔法だけなら霧散して消えるだけだ。何かに例えるなら、雪玉が近いだろう。柔らかい雪玉はぶつかると粉々になる。ぶつかったという感触は残る。要は砕け散って消えてなくなるが、魔法によって生まれた運動エネルギーを消すことはできない。魔法だけなら脆すぎて霧散してなくなるだけだが、石を詰め込まれているとなるとそうはいかない。
魔法という力で打ち出された石の勢いは俺やアッシュの体質でも無効化できない脅威となる。
「なんていうえげつない攻撃をしてきやがる」
「全く持ってその通りだ」
ミーの固定砲台的な攻撃に対応していると、後ろから応援が聞こえてきた。ちょっとまて、お前ら何をしている。
本当なら後ろを振り向いて確かめてやりたいが、それをすることすらできない。声だけで判断するのなら、シンシア、ゼイゴ、リセ、イリーナ、飛鳥あたりが応援をしていると思える。個人的には飛鳥にも戦ってほしい……。
「おい、諸刃。気を付けろよ」
「あ、何がだよ」
「横、敵来てるぞ」
アッシュが言うと同時に、強烈な殺気を感じ取った。いつの間にか近づいて来たジェネが短刀を持って俺を刺そうとしてくる直前だった。どうしろっていうんだ、これっ!
俺はのじゃロリの鞘で何とか攻撃を反らす。のじゃロリからちょっと聞こえてはいけないようさ声が聞こえてきたが、さほど気にすることはない。
攻撃に失敗したジェネは存在が希薄になり、ミーの弾幕的な魔法攻撃の中に溶けて消えていった。
消えたと錯覚したところから襲い掛かるミーの物理的なものを加えた凶器の魔法。なんて言うえげつない攻撃をするんだ、この二人はっ!
これは、アッシュより手ごわいんじゃないだろうか。隣にいるこいつは、刀バカだから結構戦いやすいのだが、ジェネとミーは違う。長距離からの射撃、それに加えて射撃に対応している間に襲い掛かってくるミーの隠密性。直接攻撃する側と乱射、援護側と作業分担されている分、とても厄介だと思う。どうやって戦えばいいんだよ、こんなの。
「おい諸刃。お前今失礼なこと考えただろう」
「は? 失礼なことってなんだよ。お前よりジェネとミーの方が厄介だと思ったことか?」
「それだよそれ! なんだよ俺の方が弱いみたいじゃないか」
これはどちらが強い弱いの問題じゃない。単に相性の問題なのだが、その辺をアッシュに説明したところで理解は得られないだろう。
というより説明しても無駄だし、今はそんな状況じゃない。
だから何も言わなかったのだが、アッシュはそれを肯定と受け取った。
「はっ、上等じゃねぇか。俺の力見せてやるよ」
そういうと、アッシュが常人では知覚できない速度で刀を振った。下手に使えば折れてしまいそうな使い方だが、どういうわけかアッシュの刀は刃こぼれ一つなく、まるで鬼伐刀《きばつとう》のように丈夫だった。というかあれ、もしかしたら鬼伐刀《きばつとう》なんじゃないだろうか。
よく見たら実家で見たことあるような気がする……。
そして、アッシュは俺の予想の範疇を超えた攻撃を繰り出した。
なんと、斬撃が飛んだのだ。しかもその斬撃は、ミーの放つ魔法を切りながら進んでいき、ミーの目前で霧散した。霧散したのは斬撃が魔法によって打ち消されたからではない。ジェネが間に割り込んでその斬撃を受け止めたからだ。ジェネが斬撃を受け止めた瞬間、その勢いに押されて後方に追いやられるが、それでも何とか踏ん張って耐えたようだ。
「これを耐えるとは、腕を上げたじゃねえか、ジェネ」
「そっちこそ。ここまでの斬撃を飛ばせなかったはず」
「つええ奴と戦うと、自分自身も強くなるんだよ、てめぇも俺の糧になりやがれっ」
アッシュとジェネの熱い戦いが始まる。俺とミー、そしてリセやイリーナをはじめとするその他大勢はなぜか避難済みだった。気が付けばあの何とか王子すらこの場所にはいない。まあ、あんなに馬鹿スカ魔法を放つ奴がいるのだから、この場所は危険だと判断して逃げるのは当たり前と言えば当たり前か。
シンシアも気が付けばいない。まあ、シンシアがいなくなるのは構わないが、飛鳥はこの場にいてほしかった。あいつ勇者だろうとツッコミを入れてやりたい。
「ああ、もう、気が付いたらほかの人誰もいないじゃない。 ジェネもいないし。もう、何なのよっ」
「なんなのって、こっちが言いたいわ。ああもう、倒してやるからかかってこい」
誰もいない戦場は、鬼狩り時代を思い出す。あの時はいつも一人で前に出て戦っていた。ともに戦ってくれる仲間なんて誰もいなかったし、誰も頼らなかった。あの時と同じだ。
俺とミーの間に緊張が走る。相手の隙を伺いながらいつでも斬りかかれるように構え、呼吸を整えて集中力を上げた。それはミーも同じだ。さっきまで少しおちゃらけていた雰囲気が一変して、かなり真面目た表情になっていた。多分さっきまでは癇癪を起して暴れていただけだ。これが魔王軍の指揮を任されている立場にいる者の本気なんだろう。
じわりじわりと距離を詰め、そして一気に駆け抜けようとしたその時だった。
「そろり、そろりっ! お命、頂戴つかまつる!」
とシンシアが叫びながらミーに突撃し、
「必ず、ホシを、あげるっ! ひっとらえよっ」
と喚きながらロープを振り回すリセがいた。そして最後に……。
「タコ焼きうま~」
イリーナが屋台で買ったのであろうタコ焼きを口に含み、ほふほふさせながら頬を膨らませていた。実においしそうな表情だった。
「って、何してんだお前ら、全員違うよ、違うからな! 今はそう言った場面じゃないんだよ」
たまにいるよなこういう奴ら。こう、空気の読めない奴らがよ。ほら、ミーも目をぱちくりとさせて唖然としているじゃないか!
全部ぶち壊し……あれ? 相手は魔王軍の幹部クラスなんだから、これでいいのだろうか。まあとりあえず、いったん仕切り直して考えよう。
飛鳥はリセとイリーナと協力して周りに被害が出ないように行動している。とはいっても、あいつらの方向に飛んで行っている魔法は、流れ弾みたいなもので、ほとんどの魔法は俺とアッシュに向けられていた。
俺たちが魔法無効化体質であるため、ぶっちゃけ効かないのだが、だからと言ってそのまま攻撃をくらうのに抵抗があるのは仕方のないことだと思う。俺は向かってくる魔法をのじゃロリで切って抵抗していた。アッシュも同じようにしているが、いつもより真剣な表情ですべての魔法を刀で切り裂いている。
『のじゃっ! 痛いのじゃっ! とてつもなく痛いのじゃっ!』
「わめくなのじゃロリ。魔法だろ? お前ならいける、大丈夫だっ」
「諸刃、気づいていないのか。だったら教えてやる」
「何言ってんだよアッシュ。気づいていないって」
「諸刃、雪合戦って知ってるか? 雪球をぶつけ合う遊びだ。魔族の住む国は主に北の方にあって寒いし、雪もよく降るからな。よくやるんだ」
何を唐突に語りだすんだこいつ。アッシュは真面目に話しているため、俺も黙って話を聞くことにした。
「その雪合戦の時に、雪玉に石を詰め込む奴が、たまにいる」
「ま、まさか……」
嫌な予感がした。確かに雪合戦で石を詰めるという愚行を犯す輩がたまにいる。子供だから分からなかったということもあるのだろうが、下手をすると死んでしまう恐れすらある行為だ。この学校に入学するほど優秀な奴だからそんなことはしないと思いたい。だけど俺の予想が外れることはなかった。
「あいつは雪玉に石を詰め込んで全力投球してくる奴だ。あいつのせいで何人の怪我人が出たことか。それに、石とか物を詰め込む癖は雪玉だけじゃない。魔法にも詰め込まれているんだよっ」
「そういえば、さっきから何かを切っている感覚があった!」
のじゃロリが痛いというのも納得ができた。あの魔法には石のような何かが詰め込まれている。魔法という名の物理攻撃だった。
「アンタたちに魔法が効かないのは分かってるのよ。でも魔法に物理的な攻撃を混ぜたらどうかしら?」
「っち、めんどくさいなこれ」
魔法だけなら霧散して消えるだけだ。何かに例えるなら、雪玉が近いだろう。柔らかい雪玉はぶつかると粉々になる。ぶつかったという感触は残る。要は砕け散って消えてなくなるが、魔法によって生まれた運動エネルギーを消すことはできない。魔法だけなら脆すぎて霧散してなくなるだけだが、石を詰め込まれているとなるとそうはいかない。
魔法という力で打ち出された石の勢いは俺やアッシュの体質でも無効化できない脅威となる。
「なんていうえげつない攻撃をしてきやがる」
「全く持ってその通りだ」
ミーの固定砲台的な攻撃に対応していると、後ろから応援が聞こえてきた。ちょっとまて、お前ら何をしている。
本当なら後ろを振り向いて確かめてやりたいが、それをすることすらできない。声だけで判断するのなら、シンシア、ゼイゴ、リセ、イリーナ、飛鳥あたりが応援をしていると思える。個人的には飛鳥にも戦ってほしい……。
「おい、諸刃。気を付けろよ」
「あ、何がだよ」
「横、敵来てるぞ」
アッシュが言うと同時に、強烈な殺気を感じ取った。いつの間にか近づいて来たジェネが短刀を持って俺を刺そうとしてくる直前だった。どうしろっていうんだ、これっ!
俺はのじゃロリの鞘で何とか攻撃を反らす。のじゃロリからちょっと聞こえてはいけないようさ声が聞こえてきたが、さほど気にすることはない。
攻撃に失敗したジェネは存在が希薄になり、ミーの弾幕的な魔法攻撃の中に溶けて消えていった。
消えたと錯覚したところから襲い掛かるミーの物理的なものを加えた凶器の魔法。なんて言うえげつない攻撃をするんだ、この二人はっ!
これは、アッシュより手ごわいんじゃないだろうか。隣にいるこいつは、刀バカだから結構戦いやすいのだが、ジェネとミーは違う。長距離からの射撃、それに加えて射撃に対応している間に襲い掛かってくるミーの隠密性。直接攻撃する側と乱射、援護側と作業分担されている分、とても厄介だと思う。どうやって戦えばいいんだよ、こんなの。
「おい諸刃。お前今失礼なこと考えただろう」
「は? 失礼なことってなんだよ。お前よりジェネとミーの方が厄介だと思ったことか?」
「それだよそれ! なんだよ俺の方が弱いみたいじゃないか」
これはどちらが強い弱いの問題じゃない。単に相性の問題なのだが、その辺をアッシュに説明したところで理解は得られないだろう。
というより説明しても無駄だし、今はそんな状況じゃない。
だから何も言わなかったのだが、アッシュはそれを肯定と受け取った。
「はっ、上等じゃねぇか。俺の力見せてやるよ」
そういうと、アッシュが常人では知覚できない速度で刀を振った。下手に使えば折れてしまいそうな使い方だが、どういうわけかアッシュの刀は刃こぼれ一つなく、まるで鬼伐刀《きばつとう》のように丈夫だった。というかあれ、もしかしたら鬼伐刀《きばつとう》なんじゃないだろうか。
よく見たら実家で見たことあるような気がする……。
そして、アッシュは俺の予想の範疇を超えた攻撃を繰り出した。
なんと、斬撃が飛んだのだ。しかもその斬撃は、ミーの放つ魔法を切りながら進んでいき、ミーの目前で霧散した。霧散したのは斬撃が魔法によって打ち消されたからではない。ジェネが間に割り込んでその斬撃を受け止めたからだ。ジェネが斬撃を受け止めた瞬間、その勢いに押されて後方に追いやられるが、それでも何とか踏ん張って耐えたようだ。
「これを耐えるとは、腕を上げたじゃねえか、ジェネ」
「そっちこそ。ここまでの斬撃を飛ばせなかったはず」
「つええ奴と戦うと、自分自身も強くなるんだよ、てめぇも俺の糧になりやがれっ」
アッシュとジェネの熱い戦いが始まる。俺とミー、そしてリセやイリーナをはじめとするその他大勢はなぜか避難済みだった。気が付けばあの何とか王子すらこの場所にはいない。まあ、あんなに馬鹿スカ魔法を放つ奴がいるのだから、この場所は危険だと判断して逃げるのは当たり前と言えば当たり前か。
シンシアも気が付けばいない。まあ、シンシアがいなくなるのは構わないが、飛鳥はこの場にいてほしかった。あいつ勇者だろうとツッコミを入れてやりたい。
「ああ、もう、気が付いたらほかの人誰もいないじゃない。 ジェネもいないし。もう、何なのよっ」
「なんなのって、こっちが言いたいわ。ああもう、倒してやるからかかってこい」
誰もいない戦場は、鬼狩り時代を思い出す。あの時はいつも一人で前に出て戦っていた。ともに戦ってくれる仲間なんて誰もいなかったし、誰も頼らなかった。あの時と同じだ。
俺とミーの間に緊張が走る。相手の隙を伺いながらいつでも斬りかかれるように構え、呼吸を整えて集中力を上げた。それはミーも同じだ。さっきまで少しおちゃらけていた雰囲気が一変して、かなり真面目た表情になっていた。多分さっきまでは癇癪を起して暴れていただけだ。これが魔王軍の指揮を任されている立場にいる者の本気なんだろう。
じわりじわりと距離を詰め、そして一気に駆け抜けようとしたその時だった。
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とシンシアが叫びながらミーに突撃し、
「必ず、ホシを、あげるっ! ひっとらえよっ」
と喚きながらロープを振り回すリセがいた。そして最後に……。
「タコ焼きうま~」
イリーナが屋台で買ったのであろうタコ焼きを口に含み、ほふほふさせながら頬を膨らませていた。実においしそうな表情だった。
「って、何してんだお前ら、全員違うよ、違うからな! 今はそう言った場面じゃないんだよ」
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