稼業が嫌で逃げだしたら、異世界でのじゃロリ喋る妖刀を拾いました

日向 葵

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公爵家ご令嬢は悪役になりたい!

40.戻ってきた日常

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 ジェネとミーと、あいつらの失敗により生まれた悪魔を撃退してから数日が経った。
 あの後、学園の関係者や騎士様やらいろんな人達が現れた。そして俺にすべてに責任を押し付けようとしてきたが、シンシアとメイドのゼイゴが全て説得してくれた。あの時のシンシアはマジかっこよかった……。
 シンシアが倒したミーと、アッシュが倒したジェネが魔王軍の幹部であり、かなりの賞金がかけられていた。魔王軍幹部を倒したこともありかなりの額の額の報奨金がシンシアとアッシュに送られた。今回は俺、あのヤバそうな悪魔を倒しただけけど、報奨金は……なんてことを考えていたら、飛鳥があの悪魔を倒したことになって報奨金をもらっていた。
 ちなみに悪魔を倒したことになっている勇者の飛鳥と公爵家令嬢のシンシアが猛反発して、俺が倒したんだと喚いた。

 あの時の困り果てたお偉いさんの顔はマジで笑えた。でもお偉いさんの決定は覆ることもなく、報奨金は飛鳥に送られた。

 その後、なぜか報奨金が俺のもとに集まってきた。アッシュも俺のところに世話になるからと報奨金をまるまる全部渡してきたし、シンシアも「授業料です!」と顔を赤らめてもじもじしながら渡してきた。言ってることと仕草が全然違う。
 飛鳥も俺にすべてを渡してきて、結果的にすべての報奨金が俺のところに集まった。
 みんなしてこのお金でお店を立て直してくれ、だと。その言葉で俺はちょっとだけ泣いた。

 あれから俺はシンシアの教師をクビになった。ぶっちゃけ、あの悪役令嬢がどうたらということがなければ全然問題なかったのだ。ジェネとミーの事件が解決した今、俺がお払い箱になるのも仕方のないことだろう。

 シンシアに別れを告げた俺たちは再度お店を立て直すべく帰ったわけだ。そして今、新しいお店が完成した。

「ところでどうしてお前らがここにいる」

「行く当てがないのよ! お願いします」

「ねえさん。ちゃんと説明しなきゃ……。諸刃さん。あのですね、魔王軍の幹部クラスの実力者を収容できる場所がどの国にもないので実力者がそろっているあなたのところで管理するよう言われました。これが書状です」

「いや、うん。それは分かったんだけど。こういうのって普通、国のお偉いさんとかが連れてくるとか、そういうのがあってもいいんじゃないかな」

「「全力で振り切りました」」

 振り切んなよ……。あとでめんどくさいことが起こりそうだ。

 ミーとジェネの世話をすることに決めた後、アッシュが自主練から戻って来て「飯~」とねだってくる。あんまりうれしくない。ただ、新しくできた俺の店は前よりもさらに賑やかになっていた。魔王軍の元幹部が3人もいるけどね。

 でも、ミーとジェネが意外と仕事出来るのでとても助かっている。リセとイリーナに店の中の仕事は任せられないしな。リセは接客できないし、イリーナはほかの仕事を頼みたいし……。

 そんなわけで心機一転して新しいお店で頑張ることにした。

「主殿! 仕入れた材料を入れておきますね。それに、今日から開店です。お客は来るのでしょうか?」

「はは、開店早々人が来ることはないんじゃないかな。こういうのは口伝えでゆっくりと広まっていくものだ」

「え、そういうものなの?」

 話に割り込んできたリセが首を傾げる。そりゃそうだろう。どんなにいい店を作ったって営業して認知してもらえなければお客さんなんて来ないよ。

「なら僕がその仕事しようか? 営業は得意だ」

 ジェネが得意げに言ってきた。出会った時はそうでもなかったけど、意外とあれだな。なんというか、たくましい。それに引き換え……。
 俺はそっと横で漫画を読みながらニタニタしているダメな人間に視線を送った。仕事をやらせればできるけど、基本的にだらだらしていてめんどくさがりなこの女。

「おい、ミー。いつまでサボってるつもりだ」

「何よ! いいじゃない。今は休憩中なの。漫画読みたい!」

「ねえさん……」

 駄々をこねる姉を見る弟。なんというか、ジェネがとても可愛そうに見えた。今までずっと苦労していたんだなと思うと目に汗が……。

「ねえ諸刃。私は何をすればいいの? 仲間外れは嫌よ」

「お前はとりあえずこれを食べてろ」

 リセの目の前にご飯を出してやると、目を輝かせて食べ始めた。とてもうまそうに食べるけど、こいつに仕事は任せられないのだ。それほどもまでに仕事ができないのでどうしようかというのが最近の悩みでもある。仲間外れにすると大泣きするからな……。

「さてお前ら。今日から開店だ! しっかりと仕事しろよ」

 そうなのだ。前は開店前に店が大火事になって燃えてしまったが、今回は開店までこぎつけた。これでようやく俺は念願の自分の店を始められる。異世界でどこまで通用するかは分からないが、自分の腕を信じてやっていきたいと思っている。だから妥協なんかしない。

『や、やめるのじゃ。いやなのじゃ! のじゃああああああああ』

 今日も俺はのじゃロリを包丁として使う。

「お前うるさいから少し黙れよ」

『そういうなら儂を包丁として使うのをやめるのじゃ!』

 喚くのじゃロリ。俺は溜息を吐きながら仕込みを行う。その間にジェネに頼んでお店の暖簾をかけてオープンの立て札をかけてもらった。

「諸刃! 早速お客さんが来たよ」

 最初のお客さんは飛鳥だろうと思いながら、ジェネが連れてきたお客に視線を向けた。

「ご飯食べに来ましよ、先生!」

「え、なんでシンシアが? それに俺はもう先生じゃないんだけど」

 困惑する俺をよそにジェネは淡々とシンシアと、一緒に来たゼイゴを店のカウンターに案内する。
 様子を見ていたミーは、涎を垂らしながら「やっぱあの子素質あるわー」とわけわからないことを言っていた。

「別にいいんです。私にとって先生は先生なんですから! それよりも、ひどいですよ、いきなりいなくなるなんて……」

 シンシアは頬に手を添えて、意味ありげにもじもじとし始める。変な誤解が生まれてしまうような予感がした。何せシンシアの隣に座っているゼイゴがすごい目つきで俺のことを睨んでいるのだから。一体何を言われると俺は身構えたが、シンシアに言われたことは、なんというか嬉しく感じることだった。

「先生のおいしいごはんがなくなって生きていけません。こんな体にしたんですから責任取ってくださいよね!」

 その言い方がなければ素直に喜べるんだけどな……。ただ俺の作った飯をおいしいと言ってくれるのは素直にうれしい。

「この、変態が!」

 ゼイゴにはこの言われようだったので水だけ出してやった。なんかゼイゴの目が点になっているように思える。

「私が一番乗り……ってすでに誰かいる、だとっ」

 店の扉を開けて元気よくやってきたのは飛鳥だった。シンシアの姿を見て肩を落とし、トボトボとカウンターの席に座る。

「私の勝ちです! 先生の開店一番のご飯は渡せませんでしたから」

「く、悔しい……。幼馴染である私が諸刃の一番になる予定だったのに」

 その言い方だとちょっと違う意味にとられるから言うのやめようなとも言えず、俺はもくもくと料理の準備を進める。

 俺は夢である店を再び立て直し、ようやく始めることができた。けどまだ始めたばかり。これからが大変なんだろう。
 まあでも、最初の内は身内でワイワイやるのもアリかなと思った。

『のじゃあああああああ、いやなのじゃあああああああ』

 ただし、のじゃロリは除くものとする。
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